魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第2話 ご無沙汰してます!!!! 集いし希望は我らが魔法少女たち!!!!(前)

ゆっくりと歩幅と足を動かす速度を調整する。

このままだと10分前に着いてしまう。

 

待ち合わせで到着するのは5分前というのが僕の最適解。

 

遅刻して人の時間を奪うのも嫌だし、待たされて自分の時間を失うのも嫌だ。

 

だから5分。

これくらいの時間なら早めに着いた人と雑談して、ちょうど良く定刻を迎えられる。

 

初めて訪れる家の前に立ち、表札の田中という文字を確認する。

時間は6分前。

 

さすがに1分間立ち尽くすほどのこだわりはないのでインターホンを押す。

勢いのある声は田中のお姉さんのようだった。

 

「ほーい!! どなたですか?」

 

「高橋です」

 

「あ!! 高橋さんね!! 入って入って!!」

 

ドアが勢い良く開き、田中さんが手招きをする。

僕は軽く礼をして建物へと入った。

 

小綺麗な玄関に並べられた靴を確認する。

恐らくは家族のものであろう靴の一群に、離れて2人分の子供靴が並んでいた。

僕の予想が正しければ真田さんと伊藤さんのものだろう。

あの二人は早めにくるタイプだ。

 

僕はその横に靴を脱ぐと、笑顔の少女に招かれるまま客間へと進んだ。

昨日から感じていたが、田中のお姉さんはよくしゃべるしパワフルだった。

僕の語彙で適切な言葉だと、豪放磊落といったところか。

 

彼女は今回の訪問の話をする際にトイレに行っていた。

なので事情は知らないはずだが、純粋に妹が人を招き寄せたのが嬉しいらしい。

「ゆめも魔法少女に興味あるのかなあ~」なんて無邪気に笑っていた。

 

和室へと僕は入った。

そこには予想通りというか真田さんと伊藤さんがおり、

こちらに気づいて挨拶をした。

 

田中のお姉さんは飲み物を出すからと退出していく。

 

「真赤ちゃんこんにちは!! ゆめちゃんは準備があるから時間になったら来るって!!」

 

朗らかな真田さんの声が和室に響く。

中央には大きなテーブルがあり、僕はその一角を陣取らせてもらった。

 

「二人とも早めに来てたんだ」

 

「ええ。ちょうど10分前に『たまたま』家の前で出くわしたので、一緒に来たのですわ。

ねえ、天さん?」

 

「うん!!」と真田さんが答える。

たまたまの文字列に妙に力が入っていたので、勘繰りたくなる。

伊藤さんなら単身家で待つのを嫌い、門の前で待っていた……というシナリオもありそうだったが、

口には出さないでおいた。

 

二人は小冊子を広げて読んでいたようだった。

一体何なのか聞いてみる。

 

真田さんがジャン、と口で効果音を付けながら冊子を掲げると、

過剰に丸みを帯びたフォントで「魔法少女の手引き」と書かれていた。

 

来年度から研究所はこれを新人さんに配るらしく、その見本らしい。

意見があれば更に次のものに反映される可能性があるとのこと。

自分には直接関係しないので、気乗りはしなかったが僕も見せてもらった。

 

ぱらぱらとページを捲る。

全体的に挿絵が多い……というよりイラスト主体でそこに説明が入っている、という印象だった。

恐らく、口頭の説明や文字だけだと不都合が生じたのだろう。

特に重要なルールを浸透させるのが目的らしかった。

 

最後には魔法色占いなるものが付いている。

真田さんと伊藤さんも顔を近づけて覗き込んでくる。

 

なんでも覚醒した魔法色による性格診断のコーナーらしい。

どうも、楽しいフレーバーを添えて魔法少女の活動に抵抗を減らしたいらしい。

便宜上の分け方なのでここでは7種となっていた。

血液型よりは多いが、星座よりも少ない。

信憑性が疑問視されるところだ。

 

真田さんと伊藤さんはともかく、

村田さんのことは良く知らないので気休めにはなるかもしれない。

 

そう思って紫の欄を見ると「ミステリアス」と書かれていた。

 

「村田さんってミステリアスなの……?」

 

「えっと……あ!! 自分でミステリアスって名乗っていたことがあるよ!!」

 

果たしてそれはミステリアスと言うのだろうか。

占いが非常に怪しくなってきた。

 

伊藤さんが食い入るように顔を近づけてきた。

 

「黄色は……まあ!! みんなの中心!! 明るさ!! 天さんにぴったりですわよ……!!」

 

「え……? そ、そうかな……?」

 

真田さんは照れているのかポリポリと頬を掻いた。

 

黄色は確かに明るい色だ。

みんなの中心は……7つ並んだ項目で真ん中になっているから、それでだろうか。

 

伊藤さんは気分が良くなったのかそのまま読み上げた。

 

「ちなみに赤は……情熱と先導のリーダータイプ!! 良かったですわね真赤さん!!

その他は橙が未来の希望、行動力……青は知識と平穏……」

 

「情熱て。いや……ここまで合っていないと清々しいというか……」

 

ニコニコと笑みを浮かべているが、多分に嫌味を含んでいるのだろう。

やる気もない、なるべく休みたい、これで何を先導するというのか。

 

ともかくこれで、この占いの信用はガタ落ちした。

担当者がノリで書いた物だろう。

 

「まあ魔法少女が4人集まるんだし話の種にはなるかもね」

 

「あ、真赤ちゃん。そのことなんだけど……ゆめちゃんも魔法少女だから……うん、5人だよ」

 

驚きで声が漏れた。

 

田中のゆめさん。

彼女の髪色は真っ黒だったはずだ。

黒の魔法色というのは海外でも確認されてないので、すなわち地毛のままということだ。

 

「今はまだなんだけど……これから覚醒するから!! 桃色に!!」

 

「そうなんだ」と、とりあえず返事をする。

込み入った事情があるらしいし、本日の議題に関わってくるのだろう。

 

何とはなしに占いの桃色の欄を見ると「慈愛」という文字が飛び込んできた。

昨日、ポカポカと叩かれたことが頭によぎる。

やっぱり信用できないぞ、この占い……。

 

 

 

 

 

しばらくして村田さんが息を切らして入ってきた。

待ち合わせには慣れてないらしく「前は早めだったから今回はちょうどを狙って……」ということだった。

紫のベレー帽は彼女のトレードマークらしく、今日もしっかりとかぶっていた。

 

ほどなくして襖が軽快な音を立てて開く。

鋭い眼光にぴんと張った眉。

今日の主役、田中ゆめ議長だ。

 

議長がテーブルの奥、いわば上座へと鎮座する。

ちなみに僕は入り口に一番近い位置だ。

不届き物が乱入してきたら僕が真っ先に狙われるということだ。

なんのこっちゃ。

 

田中のお姉さんがお菓子と飲み物を持ってきて、

和やかなお茶会は始まった。

そう、和やかなお茶会が……。

 

……。

 

何だろう、空気が重たい気がする。

 

ゆめ議長は目が座っているし、

真田さんはたまに田中のお姉さんの方をチラチラ見て顔を赤らめているし、

伊藤さんはそれを見て修験者のような構えをしていたし、

村田さんはキョロキョロと落ち着かない様子だった。

 

僕と田中のお姉さんは学校の様子とかを無難に話していた。

このあたりなので当然なのだが、同じ学校だった。

A組なので僕、伊藤さんとも真田さんとも違うクラスだった。

 

A組と言えばと、僕の友達の社会システムに興味満々な奴と売れっ子漫画家(予定)の奴の話をしたら

そこそこに盛り上がった。

二人とも上手く自分の本性は隠しているらしく、田中さんには普通の子に映っているらしい。

僕は心の中で大いに笑っていた。

後で本人たちに伝えてネタにしてやろう。

 

しばらくして首長……ゆめ首長が姉に席を外してほしいと伝えた。

お姉さんには本気で魔法少女を目指している妹が恥ずかしがっている……

というストーリーが出来上がっているようだった。

ゆめ司令官があらかじめそう仄めかしたのかもしれない。

 

お姉さんは「ふふふ……ゆめも私に秘密を持つようになったか……」などと満足気に笑みを浮かべ、

襖に手を当て、「何か用があれば……」「飲み物が欲しければ……」「お菓子のおかわりは……」などと

なかなか出ていかず、最後にはゆめ大将軍からお叱りを受けていた。

(だがちゃっかりお菓子のおかわりだけは注文していた)

 

真田さんが彼女が完全に出て行くまで感謝を示し、出ていった後もしばらくそこを見詰めていた。

その動作が完全に終わるまで待ってから、キャプテンゆめさんが口を開いた。

 

「それではこれから、どうしたらお姉ちゃんを救えるのか会議を開きます」

 

「やる気だねゆめちゃん!!」

 

「はい。今日の私はキャプテンと呼んでください」

 

「キャプテン……!! 私は真田天……えへへ」

 

冷汗が出る。

一瞬、頭の中を覗かれたのかと思った。

それにしても僕は既にキャプテンゆめさんと命名していた。

キャプテンキャプテンゆめさんとでも呼べばいいのだろうか。

 

「では」とゆめ長官はノートとスケッチブックを取り出した。

まずはノートを開き、今の状況をまとめるらしい。

各人が知っていることを話すと切りがないので、必要な情報を擦り合わせるのだそうだ。

 

ノートに箇条書きで情報が足されていく。

 

・田中こころさんは襲われるので守らないといけない

・モンスターはある時から研究所から増えだす(この町が機能しなくなる程度? もっと増えるかもしれないとのこと)

・黒幕は所長である村田博士?(真田さんは乗っ取られている可能性を示唆したが、村田さんは否定していた)

・この世界は時間が何度も巻き戻っているらしく、4-5回程度? ただし各人の記憶を根拠にしているので正確には不明

 

ここまで聞いていて、にわかには信じがたい話というのが所感だ。

4人で僕を驚かそうとしている、というのが一番納得できる説だった。

 

どうやら僕も異動記念パーティーで襲われたり、博士を襲撃する現場にいたらしい。

全く覚えがないのでどうにもむず痒かった。

毎回モンスターが増えだしてからは危ない感じらしいが、真田さんが何とかしているようだった。

そこだけは何故か、納得がいった。

 

ゆめCEOがならば、と今後やらなければいけないこと!と太字で書いた。

同じように箇条書きで書き加えていく。

 

・お姉ちゃんを守ること

・黒幕(誰でもいい)をぶっ潰すこと

 

「発言してよろしいでしょうか?」と伊藤さんが横槍を入れた。

一同に緊張が走る。

どうもこのグループだと伊藤さんは特殊な立ち位置……らしい。

 

「時間逆行の仕組みを解き明かすことも必要ではないでしょうか?

少なくともそれを握っている存在が優位なのは間違いないでしょう」

 

「あんたなんじゃないの?」

 

村田さんがやる気なさそうに答える。

もう何度目かわからないが真田さんが仲裁に入る。

 

 

「だいたい解き明かすってどうやってよ!!

それを考える時間であの男を倒す方法を考える方がいいに決まってるわ!!」

 

「ですから今まで倒せてないではないですか。

何かが起こってまた元に戻っている。

それが起こっている条件がわからない限り私たちに勝利は訪れないのでは?」

 

「そんなこと言ってまた永遠の命とか言い出すんでしょ……!!」

 

「ご心配なく。私は正しい手段でそれを目指すと決めたので……」

 

真田さんが村田さんを、僕が伊藤さんをなだめる。

「やはりこんな感情的な方が博士の娘など……」と不平を垂れていたが、

僕は永遠の命とかいうワードが普通に出てきたのにびっくりだよ。

聞かなかったことにしよう。

 

ゆめ皇帝が真田さんへと意見を仰いだ。

昨日から真田さんは調停役に回っていたので良い判断だと思う。

 

真田さんは少し思案顔をしてから、口を開いた。

 

「まずは……私、ゆめちゃんに謝りたい。ごめんなさい!!!!」

 

「ちょ!? どうしたの真田天!?」

 

「天さん? この方に何か言われたのですか?」

 

突然の謝罪。

下がる頭に強い語気。

 

真田さんの両隣りの二人が狼狽えているあたり、事情を知らないのは僕だけじゃないらしい。

謝られた当の本人もまじまじと眺めていた。

 

「……どうしたんですか? 私、別に真田さんに謝ってほしくありません」

 

「ううん、私、いつもこころちゃんを守りたいって……近くにいなくても助けになれたらって思ってて……

でも、それって……ゆめちゃんに大変なこと、やってもらってた。

こころちゃんの近くで大事な時に戦ってたのは……ゆめちゃんだった。

だから私……こころちゃんとゆめちゃんに謝らないと……」

 

「別にいいです。お姉ちゃんを守り切れなかったのは私の責任です」

 

「でも……」

 

「私はお姉ちゃんの傍で、真田さんはお姉ちゃんから離れて戦う。

そういう話だったと思いますが?」

 

「でも……でも……」

 

惑星ゆめが爆ぜた。

2日連続2回目である。

 

「シャラップ!! でももヘチマもありません!!

お姉ちゃんに対する全権は私が有しているんです!!

いくら真田さんでもそこは間違えないでください……!!」

 

そうなの? と思わず聞きたくなってしまう。

妹の権利も随分と拡大したものだ。

 

真田さんは呻き声のようなものを漏らし、おずおずと座りなおすのだった。

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