魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第4話 魔法少女同盟崩壊の危機!?!? 崩れていくなにか!!!!(前)

「ゆめちゃんと真赤ちゃん、楽しく過ごせたみたいでよかったね!!」

 

前を歩く少女が、軽く振り返りながら朗らかな声を響かせる。

 

「しかしコンピューターねえ……。……。暴走したりしないのかしら」

 

その横を歩く少女が独り言のようにつぶやく。

笑って流したいところだが、笑えない状況になったことを思い出した。

 

「まあ少ししたかな、暴走。伊藤さんほどじゃないけど」

 

横の少女から異議が飛んできた。

 

「真赤さん、それはどういう意味でしょうか?」

 

どういう意味もなにも、言葉通りの意味だ。

 

2×2の列になって僕たちは歩いていた。

僕の横には伊藤さん、前には真田さんと村田さん。

 

今日は休日。

ゆめちゃんが全員の近況を知りたいとのことで、招集をかけたのだ。

 

伊藤さんが謁見を許されたのか定かではないが、

しれっと混じるつもりなのだろうか。

 

僕らは来る途中で偶然にも出会った。

僕はいつもと同じ5分前着を狙ったので、他の3人の動きがその時間に重なったということだ。

 

「あのじゃじゃ馬娘と高橋真赤が上手くやっているなんて意外ね……。

あ、別に失礼な意味じゃなくて……」

 

ごにょごにょと村田さんが口ごもった。

僕は別に気にしないのだが。

 

手はマフラーへと触れていた。

この癖も指摘されなければ、無意識のままでいられたのに。

 

 

 

ふと、このマフラーをプレゼントしてくれた友人たちのことが頭によぎる。

最近は僕がこっちを優先しているから、付き合いの悪い奴と思われているかもしれない。

 

でも同時に、それに対して諦めを持っているという信頼があった。

 

僕らはみんな、バラバラになることがわかっていたはずだし、それを良しとしていた。

 

別の中学校へ行くやつもいるし、趣味もバラバラだし、

いずれそれぞれが別のグループに入って、それをまた何年かのスパンで繰り返すのだろう。

 

 

みんなには何かやりたいことがあった。

短絡的であっても、迷いがなかった。

 

僕には何もなかった。

 

だから、その友人たちのことがまぶしかった。

 

その子たちが悩んだり、傷ついた時に助けることくらいしかできなかった。

 

ただ、目の前の繋がりが大切だった。

 

 

誰にも理解されない、だから一人だ。

そんな悦に入った孤独を粉々に打ち砕いてくれた。

彼女たちに出会う前の自分はきっと、寂しい瞳をしていたのだろう。

 

僕の頭には昨日の帰り際、博士からの言葉が残っていた。

 

 

「そういえば真赤さん、昨日は博士とお話をしていたようですが」

 

伊藤さんが心を読んだかのような話題を出す。

僕はああ、と答えて少し考えた。

伊藤さんと真田さんにも関係することだし言ってしまおう。

 

「実は僕、Dチームに……元のチームに戻らないかって」

 

空気が沈んだ。

 

目を丸くする真田さん。

口元がひきつる村田さん。

真顔で表情の読めない伊藤さん。

 

なんだろう。

確かに喜ばしくない話題かもしれないが、

僕の念願がかなったのだからもう少しオブラートに包んでほしい。

 

あと少しの間でも、思い出作りにしかならなかったとしても、大切な時間だ。

 

「あ、あのね真赤ちゃん!!」

 

「私から言うわ、真田天。あの男……パーティだとか何とか言わなかった?」

 

僕は頷いた。

最近分かったが、村田さんがあの男と言うのは必ず父親のことだ。

難しい年頃らしい。

 

「言ってたね。特上の寿司を取るかって。来たいの?」

 

「何でそうなるの!? それにしてもあの男……!! 相変わらず浅ましい考えね!!

真に愛と勇気のある人間は特上寿司なんかに釣られたりしない!!」

 

そうなの? と聞きたくなってしまうが、横やりを入れるのはやめておこう。

伊藤さんが相変わらず無表情でつぶやいた。

 

「いつもより、大分早いですね」

 

「真赤ちゃん、よく聞いて。今まで時間が巻き戻ってるって話をしたけど……、

真赤ちゃんの異動記念パーティで反魔法力が研究所に集まって……その……」

 

「私の覚えている限りでも一度、真赤さんは博士に魔法力を吸い上げられて昏倒しました。

あなたは集まった友人たちといっしょに食堂に倒れていましたよ」

 

途中から下を向いた真田さんについで、伊藤さんが淡々と説明をした。

 

現実感のない話なので僕はどうとも思わなかったが、

もしかすると真田さんの方がショックを受けてそうだ。

 

「それにしてもどうしてこのタイミングで?

あの男の考えることはわからないわ」

 

「恐らくは博士も打てる手が限られているのでしょう。

その時もですが意図的に天さんがいない時を狙って事を起こしました」

 

「博士、最近、私が研究所に行ったらいつも不在で……」

 

「それもです。博士も恐らくは記憶を引き継いでいる。

そして失敗しているパターンは繰り返さない。今回も何かしら変化を付けてくるはずです」

 

「……あなた、記憶は魔法力うんぬんって言ってなかった?

あの男が魔法少女だとでもいうの?」

 

ふむ、と伊藤さんは考え込んでしまった。

 

何にせよ今日の議題は決まったようだった。

 

 

僕にとって馴染のあるメンバーとの祝いの場であるパーティー。

この人たちにとっての重要な事柄の切っ掛け。

 

両者が交わっているのが何だか不思議な感覚だった。

 

 

 

 

 

田中家に入る前に伊藤さんが抜けていった。

なんでも「急用ができた」ということらしい。

もともとゆめちゃんにも呼ばれてなかったのかもしれない。

 

村田さんはしきりと「悪いことを考えてるんじゃないでしょうね!?」と

釘を刺していたが、掴みどころのない微笑みが返ってくるだけだった。

 

「もう暴走はいたしません。さらば」

 

そんな捨て台詞を残して去っていったが、わざわざ言及すると余計に不安になる。

 

気を取り直して僕は田中家のインターホンを押す。

出てきたのはやはりというか、お姉さんの方だった。

 

「ほいほーい。どなたですかあー」

 

「魔法少女ご一行」

 

インターホン越しにゲラゲラと爆発音が聞こえてくる。

ボーリングでストライクを取ったような気持ちだ。

 

程なくして扉が開いて僕らは入っていった。

 

いつものように靴を揃えて、客間へと進む。

 

僕ら3人が座ると、田中のお姉さんも胡坐をかく。

 

今日はご両親は買い物でしばらくいないらしい。

姉妹二人で留守番の予定だったが、僕らが来て賑やかになると嬉しそうだった。

飲み物を出すからと田中のお姉さんが立った時に、真田さんがもじもじと体を動かしていた。

 

「真田さん? トイレ?」

 

「ち、違うよお!! ……こころちゃん一人でいつも準備してくれて、悪いなって」

 

「真田天」

 

横を見ると村田さんが満足しているような、含みのある笑みを浮かべていた。

恍惚な表情というやつだ。

 

「手伝いなさいよ。魔法少女として」

 

「……魔法少女として。うん、それなら……。ここ……田中さーん!! 手伝うよー!!」

 

真田さんは吹っ切れたのか、立ち上がって田中のお姉さんの後を追いかけていった。

 

満足げな笑みを浮かべる村田さんへと僕は声をかけた。

 

「ナイスアシストってこと?」

 

「最近、田中こころといっしょに下校してるけど……

まあ真田さん真田さんって、3秒に1回は言ってるわよ。

真田さんみたいな魔法少女はすごいなあーって。生粋の真田天のファンね、あれは」

 

困ったように肩をすくめる。

共通の知人としてよく話題に出たのだろう。

 

そうなんだ、と僕は返して会話はそれっきりになってしまった。

 

……。

 

横にいる少女もそわそわとした様子を見せ始めたあたり、気づいたらしい。

残された僕らは、それこそ共通の話題がない。

 

真田さんはしばらく帰ってこなかった。

静かなのは別に気にしないのだがこのままだと、

二人で会話をするほどの仲ではない、という悲しい結果が残ってしまう。

 

僕はなんとなく、マフラーを巻きなおした。

 

「それ、ずっと付けてま……付けてるわよね」

 

渡りに船、と言わんばかりに少女が話題にした。

 

「部屋の中では取ってもいいんじゃ……?」

 

「……これ、友達からもらったものなんだ」

 

だからずっと付けている。

それは理由にはなってないはずだった。

 

「……。そうなんだ」

 

「変だと思った?」

 

「い、いえ……そういうわけじゃあ……」

 

また、沈黙が流れる。

けれど先ほどの動きがない静けさとは違う。

お互い、しゃべりそうでしゃべらない。

そんな震える感覚。

 

「そ、その……!!!!」

 

思ったよりも大きな声が部屋に響く。

僕も、その声の主も驚いていた。

 

「私も……このベレー帽、お母さんの形見だから……!!」

 

形見。

それはつまり村田さんのお母さんは。

 

僕は狼狽えてしまった。

博士に家族のことを聞いたことなんてないから、もちろん知らなかった。

 

かける言葉が見つからなかった。

 

「その……大事なものって人によって違うって……そう言いたかっただけ!!!!」

 

気まずさを察してか、強引に会話は終わった。

また違う沈黙が支配する。

今度のは燃え盛った後の灰のような、もう何も起こらないという半ば確信めいたものがあった。

 

 

 

 

 

廊下から楽し気な声が聞こえてきた。

 

襖が開いてボリュームも上がる。

僕と村田さんの視線はそちらの方向へさっと動く。

 

飲み物やおやつの乗ったオボンを持って登場した3人。

田中のお姉さんと真田さんとゆめちゃん。

どうやら3人で盛り上がっていたらしく、それで遅くなったらしい。

 

「いやあ、ゆめが甘いものがいいって聞かなくて……」

 

「言ってない!! 今日はマフィンの気分だって……」

 

「ゆめちゃんはお姉ちゃんの作ったお菓子が大好きなんだね!!」

 

「それも言ってなーい!!」

 

お姉さんと真田さんに挟まれる今日の首長。

気づけばむくれているゆめちゃんを目で追っていた。

 

彼女の表情はころころと変わって可愛らしい。

僕なんかとは大違いだ。

 

似ている人間と似ていない人間。

仲良くなれるのは前者だろう。

 

だから、この感情は気のせいだ。

 

全員が席を着く。

今日も表向きはゆめちゃんが魔法少女に関して相談することになっている。

ゆめちゃんの髪色は依然として綺麗な黒色のままだったが、

傍らにはどこで用意したのか魔法棒が置かれていた。

 

唐突に田中のお姉さんがみんなでボードゲームやりて~、と言うものだから、

最終的にゆめちゃんが折れてこの会議が終わったらみんなで遊ぶことになった。

 

伊藤さんがいないのは間が良いのか悪いのか。

 

呼び鈴が鳴った。

 

田中のお姉さんが出ていく。

 

「そういえば伊藤さんって呼んだの? 途中まで付いてきてたんだけど」

 

「呼んでません。伊藤さんは基本的に出入り禁止です」

 

ぴしゃりと言いきる。

この無慈悲さがある意味、信頼できる。

やはり伊藤さんはしれっと混じるつもりだったか。

 

真田さんが、そういえば、と瞳を輝かせた。

 

「でもゆめちゃんすごいよね。情報を集めるのにインターネットを使うなんて……!!」

 

村田さんが怪訝そうな顔を見せた。

もうすっかりリラックスしたようだ。

 

「真田天、これからは情報社会なのよ。私だってその発想はあったわ!!

……使い方がわからないけど」

 

ゆめちゃんは下を向いて顔を赤らめていた。

どうしたのかと思ったら僕の耳に、口を近づけてきた。

 

少しの空間を隔てて、体の温もりを感じる。

 

「あのこと、話してないんですか?」

 

あのこととは、僕らのおかした失敗のことだろう。

 

「話してないよ。必要ないから」

 

「……そうですか」

 

「本とかよく読むの?」

 

僕はゆめちゃんが専門用語を言っていたことを思い出した。

 

「まあ読みますけど。普段は歴史とかの本です。特に好きなのは戦国時代です!!」

 

「さすがは田中家って感じね……」

 

「村田さん、どういうニュアンスで言ってますか?」

 

村田さんがそっぽを向く。

僕は先ほどから真田さんが静かなのに気づいた。

彼女はめちゃくちゃにしゃべる方でもないが、適度に相槌は打つタイプだった。

 

「真田さん? どうかした?」

 

「……え、その。……こころちゃんちょっと遅いかなって」

 

そういえばと僕たちは襖の方を見た。

 

「知らない人でも来たんじゃない? 怪しい訪問販売じゃなければいいけど」

 

「――知らない人」

 

「しまった!!!!」

 

ゆめちゃんのその一声が号令だった。

二人の少女がほぼ同時に、態勢を崩しながら傍らに置いてあった魔法棒を掴み取る。

そのままの勢いで部屋の外へと駆けこんでいった。

 

一拍遅れて村田さんが立ち上がった。

 

「行くわよ!! 高橋真赤!!」

 

「どういうこと? 僕には全然わからない」

 

「前にモンスターが人間の姿をしてこの家に来たことがあるのよ!! 呼び鈴を鳴らしてね!!」

 

僕は引っ張られるように外へと向かった。

田中のお姉さんは少し戻ってくるのが遅かっただけだ。

恐らく大事ではないだろう。

 

何も騒ぎは起きず、今日もまた謎の会議をやって、

僕がゆめちゃんに怒られて、ちょっとだけ助言を出して、

それで田中のお姉さんとボードゲームを遊ぶんだ。

 

その光景を見るまでは、そう思っていた。

 

「こころちゃん!! 下がって!!」

 

「真田さん……?」

 

「お姉ちゃん、説明は後!!」

 

「あんたは……!! よくもノコノコとやってこれたわね!! この場で終わらせてやるわ!!!!」

 

ゆめちゃんと真田さんがバリケードのように前に立つ。

田中のお姉さんが困惑して後ろへといた。

隣の村田さんは、鬼の形相で既に魔法で作り上げた銃を握っている。

 

全員の視線の先には僕もよく知っている人物が立っていた。

 

玄関へと上がっていたのは村田零博士だった。

 

応対をしていた少女が困惑をそのまま音に乗せた。

 

「この人、村田さんのお父さんだって……」

 

「……ええ、そうよ。こいつが全ての元凶!! こいつのせいでお母さんは……!!」

 

博士が口を開く。

まるで重力が歪んだように重々しい声がこだまする。

 

「全員、揃っているようだな。……高橋君、君は逃げ出さないのかい?」

 

急に名指しをされ、僕は体温の変化を感じた。

それは背筋が凍る類のもの。

逃げ出す?

この人は何を言っているんだ。

 

「しゃべるな!!!!」

 

隣のベレー帽の少女が吠えた。

その顔は怒りのあまり強張り、苦しそうですらあった。

 

「博士!! 正気に……これ以上、影ちゃんを悲しませないでください!!」

 

「まあいい。好都合だ。今日、ここで実施する」

 

真田さんの悲痛な叫びもものともせず、博士は高らかに宣言をした。

 

「高橋真赤の異動記念パーティをな!!!!」

 

頭がその単語を受け付けない。

ここは田中さんの、ゆめちゃんの家だ。

僕のパーティをするなんて全く道理が通っていない。

 

頭の冷静な部分がささやいた。

 

今までの話を総合しろ。

玄関にいる男はパーティで僕を、友人たちを昏倒させた、のだ。

つまりパーティという単語を魔法少女を一網打尽にする催しとして使っている。

 

く――。

 

 

「落ち着きたまえ。戦うのは私ではない。言っただろ。全員が集まったと」

 

くるりと、スケートリンクでターンするように博士が外を向いた。

 

「入ってきたまえ……私の新しい協力者だ」

 

扉が少しずつ開く。

その人物について脳がフルに稼働して情報を集めようとする。

時空が歪んだように思考が走る。

 

シルエットは小さく僕らと同じくらいの背丈で緑の髪を――。

 

「……ふふ、久しぶりですね。みなさん」

 

全員の息を飲む音が聞こえる。

そこにいたのは、僕ら全員が知る人物だった。

 

「花ちゃん!!」

 

「伊藤花……!! あなたやっぱり裏切ったのね!!」

 

「それ以上近づかないでください。……あなたは出入り禁止と言ったはずです」

 

博士の横には伊藤さんが立っていた。

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