魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第2話 出会え!!!! 魔法少女と謎の少女×2!!!!(後)

「さすがは天さん……一般の客とも交流を欠かさないのですね……ふふふ……」

 

「あ、こっちの分の片づけはもうほとんど終わってたんだけど……手伝った方がよかったよね、ごめん!!」

 

「いや、いいよ。こっちもほぼ終わってたし。発光してたのが目立って気になっただけ」

 

「し、知らない人間が二人も来た……!!」

 

突然の来訪者に影ちゃんの体はわなわなと震え出した。

話し相手が増えて嬉しいのかな?

 

「……影ちゃん?」

 

「やってくれたわね魔法少女……!! 心を許したと思ったのに……!!

私が自分以外の3人が知り合いの空間で話せるわけがないのを知ってておびき出したわね!!」

 

「え、影ちゃん?」

 

「どうやら探りを入れすぎたようね……!! 今日はここまでにしといてあげるわ……!!」

 

「ま、待ってよ。帰っちゃうの? せっかくお話できたのに……」

 

「そ、そんな顔しないでよ……あ!!」

 

影ちゃんは何かを思い出したように顔色を変えた。

花ちゃんと真赤ちゃんは小さい子に頭の花をむしり取られそうになったとか、異動願いが聞き入られないとか雑談をしている。

 

影ちゃんはやっぱり何かを言いたそうなので私が聞くと、

最後に質問があるらしく私は二人の雑談を中断してもらった。

影ちゃんは短く「ありがと……」と私にお礼を言うと真面目な顔つきをして言った。

 

「あなたたち……村田零……って知ってる?」

 

「……? どこかで聞いたことがあるような」

 

私がうんうん唸りをあげていると花ちゃんが答えた。

 

「博士のフルネームでは?」

 

「あ~!! それだ!! いつも博士って呼んでるから忘れてた!!」

 

「一応上司の名前だから覚えといた方がいいよ」

 

村田零博士。

私たちのお世話になっている魔法研究所の所長さんで、

モンスター対策部の部長さんも兼任している。

 

「上司なのね。あなたたちの。ふうん……」

 

「ええ。村田零博士と言えば世界でも有数の研究者にして魔法力学の第一人者。

私も博士の論文は愛読しておりますわ。

一般向けの書籍なら「五番目の力 魔法力」「魔法伝搬のいろは」「だれでもわかるガルガンチュア理論」「魔法力とわたし」などなど……」

 

「……やめてよ。聞きたくないわそんなの……」

 

聞こえるか聞こえないかのその声。

影ちゃんの顔が険しくなったのを、私は見てしまった。

 

「博士、優しいよね、とっても」

 

「僕たちにはね。その調子で異動願いも受理してくれると嬉しいんだけど」

 

「そう……なのね」

 

話題を変えたつもりだったんだけど

そう言った影ちゃんはどこか寂しそうだった。

 

「影ちゃん、またお話できる機会もあると思うし。またゆっくり話すの、どうかな」

 

「ええ、劇もまたやる予定ですしそれ以外にも交流の機会はあるかと」

 

「次やるなら僕は木の役だと思うけどよろしく」

 

「そ、そうね……お言葉に甘えようかしら……。

真田天!!!!」

 

「は、はい!!」

 

「な、なんというか……その……べ、別にあなたの心遣いに感動してるわけじゃないんだからね……!!

今日はありがとう……じゃ、じゃあね!! さようなら!!」

 

影ちゃんはこちらの返事は待たずに外に出る……というより逃げ去っていった。

私たち3人はその場に取り残され、棒立ちになっていた。

 

「博士のことを探っていたようですが……一体何者でしょうか?」

 

「さあね。真田さんあの子と何を話してたの?」

 

「えっと、サインを書いたり、名乗りを決めたりしたよ!!」

 

「すると天さんの熱烈なファン……でしょうか。

しょうがないですわね……天さんの明るさは万人を明るく照らしますから……」

 

「よし、定時だ。帰ろう」

 

腕に付けた真っ赤なアナログ時計を見ながら真赤ちゃんが言う。

真赤ちゃんの時計は正確だ。

片付けも終えた私たちはぞろぞろと外に出ようとした。

 

その時だった。

私の頭の中で何かが聞こえたのは。

 

(は……な……)

 

(え!? これって頭の中に直接話しかけるタイプのやつ!?)

 

(はな……な……)

 

(はなな? はなな? なんだろう……はなな?)

 

(はなしが……ながい!!)

 

(え!?)

 

よくわからないが怒られているようだった。

私はきょろきょろと見渡すとこの一室にもう一人、人が残っているのに気づいた。

髪にウェーブがかかった子。

私がその姿をまじまじと見ていると目が合い、

それを確認したかのように少女は顎をくいっと外の方へ突き出した。

 

その少女は私たちがいる方とは逆側の、後ろのドアから出ていった。

 

「真赤ちゃん!! 花ちゃん!!」

 

「どうされましたか!! 天さん!! まさかモンスターが突然に大規模襲撃をしかける予兆を!?」

 

「まさかが物騒すぎる」

 

「かっこいい感じで顎をくいっと外に出すのって!! どういう意味だろう!!」

 

「ふむ?」「はい?」

 

(外に出て二人で話したいってことですよ!!!! わかってください!!!!)

 

頭の中で少女の声らしきものが鳴り響く。

さっきより大音量で。

 

「ひえ!? そ、そっかあ!! 私もう出るね!! また明日!! ばいばい!! またね!!」

 

私は急いで外に出て少女を追った。

まだ先ほどの大音量謎ボイスの影響で頭の中には「きーん」と残響が鳴り響いていた。

 

「誰か追っていくみたい。今日の真田さん、いろんな人に絡まれて忙しそうだね」

 

「……」

 

「伊藤さん?」

 

「顔をのぞかせるのは真実か、あるいは我々が虚構を見ているのか」

 

「伊藤さーん?」

 

「絡み合った運命の糸は、決してほどけず、絡み合い続けるだけなのかもしれません……

そう、さしづめ無造作に配線されたコードのように……ね」

 

「なんだ、新作の詩だね。なんだかそれ癖になってきたよ、僕」

 

 

 

 

 

公民館から出るとまだ陽は高く、季節の割には暖かな陽気をもたらしていた。

私は周囲を見渡すと離れたところに仁王立ちしている少女を見つけた。

 

どうやら待ってくれていたらしい。

 

「ごめんね!! お待たせ!!」

 

「……」

 

「いやあ、私も頭に直接話しかけられたのは初めてで……

戸惑っちゃった!! ごめんなさい!!」

 

「……」

 

「さっきの劇を見てくれた子かな? 劇、楽しんでくれた?

あ!! サインならさっき書いたし、もしよかったら……」

 

「……い」

 

「い?」

 

「いりません!!!!」

 

ひえっと声が上がってしまった。

心当たりがないがどうやらそうとうお冠らしい。

 

「えっと……私、何か……」

 

「まず話が長いです!! 私もよくわからないから顔を見て挨拶して終わろうと思ったら

やれサインだ……名乗りだ……。ベレー帽の人にも一言、言ってやろうかと思いました……!!」

 

ベレー帽の人。すなわち、今日仲良くなった影ちゃんであろう。

 

「やっぱり劇を見てくれた子なんだ!! お話したかったんだね、ごめ……」

 

「そうじゃないです!! あと子供扱いしないでください!! 私は小学5年生です!!」

 

『子』、というのに子供扱いの意味を込めたつもりはないのだが、

確かにそういう風に取れるかもしれないし、それを嫌がる子……嫌がる少女もいるかもしれない。

私はいたく反省した。

 

「劇を見てくれた淑女さん、よかったらお名前を……」

 

「今更遅いです」

 

つーん、と跳ねつけて横を見る女の子……もとい淑女に私は困ってしまった。

どうしたら機嫌を直してもらえるんだろうか。

 

いや、そもそも――。

 

「あのー、呼び出したのって何でなのかな」

 

「わかりません」

 

「ええ!! わからないの!!」

 

「うん。何となくそうしないといけないってことだけわかったから。

自分も何で今日ここに……って思ったけど、どうやらあなただったみたい」

 

「そっかあ。私かあ」

 

私はよくわからないまま相槌をうった。

 

「よくわからないまま相槌をうたないでください。

さっきのテレパシーみたいなのも自分でどうやったかわからないんです。

見ての通り魔法力も強くないはずなんです」

 

淑女の髪色は黒色。つまり地毛のままということだろう。

黒色の魔法色というのは存在しなかったはずだ。

 

「うーん、不思議だね!!」

 

「そうです、不思議なんです。……真田天さん、ひとついいですか?」

 

「なになに? なんでも聞いてね!!」

 

「アークは天、ってなんですか?」

 

思ってもみなかった質問で私は驚いた。

 

「えーっと、アークは天!!はかっこいいよ!!」

 

「答えになってません。アーク、アーク……天……うーん……何か思い出しそうな」

 

「アークは天!! 私も天!!」

 

「やらなくていいです!!」

 

ポーズを制止されて私はけらけらと笑った。

この名乗りがかっこよくて気に入っているのは本当だ。

 

もう……と鼻をならす淑女さんも大分緊張がほぐれたようで、

気持ち表情が穏やかになった気がする。

 

「やっぱり何か出てきそうな……まとまらない。

今日はもう帰ります」

 

淑女さんは憮然と表情に戻ってしまったが、

私は笑顔で答えた。

 

「うん、また会えるといいね!!」

 

「……」

 

「あれ? 淑女さん?」

 

「いいことかはわかりません」

 

「……淑女さん?」

 

「あ、あと最後にひとつ忘れてました」

 

淑女さんがこちらに向き直る。

目線と目線が重なり、その瞳は私の姿を映していた。

更にその奥に、綺麗な、桃色の光を見た気がした。

 

少女さんの口元が緩む。

それはきっと、今日初めて見せてくれた笑顔だった。

 

「お姉ちゃんを守ってくれて、ありがとうございました」

 

淑女さんの体からまぶしい光が発せられる。

その光は私も包み込むように広がっていった。

とても懐かしくて、優しい気持ちに覆われているようだった。

 

光がなくなった時、淑女さんの姿もまたなかった。

 

「消え……!!」

 

私が遠くに目をやると歩道を頑張って走って逃げ去る淑女さんがいた。

 

「消えてない!! おおーい!! 走ると危ないよー!!

また会おうね淑女さーん!!」

 

どうやら面と向かって別れの挨拶をするのが恥ずかしかったらしい。

私はその後姿を見届けながら力のばかり手を振った。

 

太陽は相変わらずこちらを元気に照りつけてくる。

 

影ちゃんと淑女さん。

一日に二人も友達ができて何だか良い日だなと思った。

 

 

 

 

 

その日の少し陽が傾いたころ、田中家と表札の書かれた家。

 

「ただいまー」

 

「あ、ゆめ。お帰りー。お父さんとお母さんは買い物だって。

帰ったら手をちゃんと……」

 

「洗っている!! 子供扱いしないでって!! まったく……」

 

「今日は何をしにいってたの?」

 

「……威力偵察」

 

「そう? なんかかっこいいね」

 

「偵察の内容は子供扱いしてくるお姉ちゃんには教えません」

 

「あはは。ごめんごめん。ちょうどマフィン焼きあがったんだけどなー。

物資の補給ということで。どう?」

 

「これで私の機嫌を取ろうなんて……パクパク……思わないでよね……ムシャムシャ……」

 

「おかわり、あるよ」




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