魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第3話 地元の祭りだ魔法少女もわっしょいわっしょい!!!!(前)

「いってきまーす!!」

 

私、真田天、学生です!!!!

振り返ると少し眠そうだけど、微笑んで外に出てきたお父さん。

少し心配そうだけど、ぐっと手に力を込めて応援してくれるお母さん。

 

私は手を大きく振る。

 

 

 

 

今朝、学校のことや魔法少女の活動の話をしたら

お父さんは「そうかそうか!!」 と気勢よく笑顔で聞いてくれた。

どれほど理解をしてくれたのかはわからないけど、

私はそれだけで安心するのだった。

 

家を出て、最寄りの駅の方向へとへ進む。

待ち合わせ場所は10分ほどで着く。

途中でお父さんとお母さんの様子を思い出して

自分もまた、笑顔になるのだった。

 

今日は地元のお祭りだ。

といっても、楽しむために行くわけではない。

服は、いつもの魔法伝導率の良いセーラー服。

手には魔法棒を携えて、今日も今日とて町の人が楽しめるようにパトロールをするのだ。

 

「天さん。今日もご機嫌うるわしゅう……」

 

「花ちゃん、こんにちは!! もう着いてたんだ。待たせちゃったかな?」

 

「ふふ、私も今ついたところです……。このやり取り……定番という感じでたまりませんね……ふふ」

 

「?」

 

花ちゃんも今ついたところということで、私はちょうど良かったと思った。

もちろんパトロールが目的なので私と同じでセーラー服だ。

 

真赤ちゃんは今日はお休み。

何でも、与えられた休みはフルに使うことが正しい使い方なんだとか。

よくわからないけど、真赤ちゃんは真面目だなあと思った。

 

「では行きましょうか、二人っきりで、ふふ……ふふふ……」

 

今日の花ちゃんは何だかとても嬉しそうだ。

気持ちはわかる。

 

だって今日はお祭りだから。

 

たくさんの屋台、食べ物、出し物、食べ物、食べ物……。

人のにぎわい。

聞こえてくる様々な音。

 

風に、たくさんの人の楽しい!! って気持ちが運ばれてくるみたい。

 

見て、聞いて、触って、体全身で楽しむこの感覚。

いつもと同じ場所なのに、いつもと違う一日。

楽しいってたぶん、こういうことなんだろうなと実感する。

 

花ちゃんとパトロールを開始した。

決められたルートを歩いているだけと言われたら頷くしかないのだが、これも立派なお仕事だ。

何よりこうして魔法少女である自分が歩いているだけでみんな安心してくれるのなら、

それだけで十分だと思った。

 

「天さん、疲れてはいませんか?」

 

「ううん、大丈夫!! 私、体力と元気と気合と根性とやる気には自信があるから!!」

 

「ふふ、大分重複してそうですね。とはいえ適度な休憩も大切ですよ」

 

「確かに!! 真赤ちゃんならそろそろ休んでいるタイミングかも!!」

 

私たちはベンチに腰掛けた。

 

「天さん、水はいかがいかがですか?」

 

「あ、今日は水筒を持ってきたの。お母さんがお茶つくってくれたんだ~」

 

私はちょっと得意げになってしまった。

花ちゃんはしっかり者だけど、いつまでも花ちゃんにお世話をされる自分ではないのだ。

 

けれど、花ちゃんは2リッターのペットボトルを持ったまましょんぼりしているのだった。

 

「そ、そうですか……。間接キッスのチャンスが……」

 

「……? よくわからないけど一口ずつ交換する?」

 

「……!! あ、ありがとうございます!! ああ、天さんはやはりこの世界に降り立った天使……

救世主……創世神……」

 

褒められていることだけはわかって私はえへへ、と顔をかいた。

こうしてお話しているだけで、誰かの役に立てたというだけで、胸が暖かい気持ちになってくる。

きっとこれは自分だけじゃなくてみんなそうなんだ。

だから、みんなの楽しい気持ちや嬉しい気持ちを守りたい。

あらためてそう思うんだ。

 

横を見ると花ちゃんが必死の形相でさっきまで私が飲んでいたペットボトルをしゃぶっていたが、

私は声をかけなかった。

目を見張るほどの集中力を発揮していてすごい。

ペットボトルの口ってそんなにおいしいのかなあ。

 

ペットボトルを満喫したのか花ちゃんが蓋をする。

そのままベンチを立った。

 

「さあ、そろそろ行きましょうか、天さん」

 

「うん!!」

 

私も立ち上がって伸びをした。

あらためて辺りを見渡す。

 

お祭りの中心部からは離れていたが、ぱらぱらと屋台が並んでおり、

人もまばらながら、その分ひとりひとりの楽しそうな様子がよくわかった。

中には私よりも小さい子たちが浴衣でこの雰囲気を満喫している。

今日は車も通ることがないから安全だ。

 

一瞬、自分がセーラー服なのを思い出す。

 

少しもったいない気分になったがすぐに頭をぶんぶんと振って、

そんな気持ちを追い出した。

今日はお祭り、されど魔法少女にとってはいつもと同じパトロール日。

そうだ、だから焼きそば屋さんの匂いも決して負けるわけには……。

 

「……あ」

 

「どうかなさいましたか天さん? 水ならまだたくさんありますよ」

 

私が耐え切れず焼きそば屋さんに目をやると、そのすぐ前に見覚えのある……

ううん、もうずっと忘れたくない人の顔が入ってきた。

 

こころちゃんだ。

 

桃色の浴衣がとってもよく似合っている。

傍には、同じくらいの歳の子と、大人の男の人と女の人が一人ずつ。

 

家族だ。

 

こころちゃんはトウモロコシを持って満面の笑みを浮かべている。

その横のわたあめを持った子もよく見たら知っている顔だった。

前に公民館で劇をした日に会った淑女さんだ。

 

お姉ちゃんを守ってくれてありがとうって言ってたもんね。

そういうことだったんだ。

 

こころちゃんが妹さんを小突く。

お父さんと思しき人がそれを慌てて制止する。

こころちゃんは口をとがらせて何か言葉を……たぶん擬音とかを自分で口にしているんだと思う。

妹さんは憮然としていたが、やがて耐え切れずほころんだ笑顔を見せていた。

お母さんは一番どっしりと構えていて、楽しそうにそれを眺めていた。

 

私はそこに混じるつもりはなかった。

気づかれないように、そっと足を運んだ。

 

だって私は魔法少女だから。

 

こころちゃんが楽しく過ごせていると知って、それだけで満足だから。

 

そうだ、私は――。

 

「天さん、少しお待ちを」

 

私の思考は花ちゃんの一言で散り散りになった。

花ちゃんは私たちのグループのリーダーなので、研究所との通信に使う無線機を持っている。

その無線機から連絡がある時はだいたい――。

 

「天さん、モンスターが出現したようです。場所はここから北。山のふもとです」

 

「……行こう!!」

 

「ええ、私と天さんの平和なデ……パトロールを乱すものには制裁ですわよ……!!」

 

私たちは急いで山へ向かって走った。

 

途中ですれ違う人たちの姿が目に入る。

 

こんなにもみんなが楽しんでいるんだ。

お祭りの邪魔なんてさせない。

 

 

自分以外、誰も傷つけなんてさせない。

 

 

空には雲が増えて、日の光を遮りつつあった。

 

 

 

 

 

現場に駆けつけるとカエルのような真っ黒な怪物が鎮座しており、

それとは別に黒い球体がごろごろと4つほど転がっていた。

連絡では怪物は一体だけだったはずだ。

 

「こいつら増えるタイプだ……!!」

 

「天さん、ご明察です。カエル型は分裂して数を増やすと博士の本にも書いていました。

あまり見ないタイプですが……」

 

心配そうにする花ちゃんをよそに私は魔法棒を構えた。

真赤ちゃんがいたらきっと無駄なく戦える作戦を提案してくれただろう。

でも、今はその真赤ちゃんはいない。

 

私にできることは……。

 

 

 

「アークは天!! 私も天!!」

(大好きなみんなを……この町を……!!)

 

「魔法少女ォ!!!!」

(守るためなら!!)

 

「ガルガンチュアアアアアアァァァァァ!!」

(私は……!!!!)

 

「アアアアアァァァァァク!!!!」

(どんな相手とも戦う!!!!)

 

 

 

「天さん!? いきなり本気を……!?」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

私は球体のひとつに突っ込んでいき、そのまま大鎌を解放する。

そのままの勢いで、振りかぶり――

 

球体を真っ二つに引き裂いた。

 

「すごいですわ……!!」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

私はそのまま2つ目の球体へ突っ込む。

こいつら怪物の行動パターンはわかっていない。

いつ、気まぐれで町の方へ動き出すかわからない。

それなら全速力で全員倒すだけだ。

 

が、向かっている球体から突如4本の足が生えた。

 

「うおおおおおお…………!?」

 

掛け声は音の調子が狂ったみたいに途中から変なトーンになった。

球体に似合わないサイみたいな太い足。

 

だが、私は急には止まれない。

 

そして別の球体からも足が生えて、突っ込んでくるのに気づいた。

 

「天さん!!」

 

花ちゃんの叫び声が聞こえる。

心配をかけてしまい、ごめんなさいと言いたくなる。

 

私は両の足に力を込めると、そのまま高くジャンプした。

 

景色が空のものに変わる。

 

一回転して着地を決めると怪物同士でぶつかって、よろめいているのが確認できた。

 

ふうっ、と一息つく。

 

「天さん、お見事です。しかし、なぜそんなにも急いで……?」

 

「だって……」

 

私は花ちゃんへと向き直る。

思っていることが、そのまま言葉になって出てくる。

 

「これ以上町の方へ進んだらお祭りが中止になっちゃうかもしれないから……」

 

花ちゃんは考え込んだ顔をすると、少しの笑みを浮かべていた。

 

「ふふ……なるほど。確かに戦うのに理由は必要です。私も全力で臨みましょう……!!」

 

「花ちゃん……!!」

 

とにかく花ちゃんも全力を出してくれると私はわかって、嬉しくて声をあげた。

あんなに、みんなが楽しそうにしていたお祭りだから。

 

「さて、どうしましょうか。相手はあと4体ですが……」

 

球体だった3体からは既に全て足が生え、こちらへ向いている。

親玉のカエルも数を増やすのはもう満足したのか、小刻みに飛び跳ねてこちらに近付こうとしている。

本気で飛び跳ねられたら、私たちをたやすく抜き去っていくかもしれない。

 

「私が爆発でだいたいやっつけて花ちゃんは残りのをギュイーンって……」

 

「ふふ……ギュイーンですか、なるほど……」

 

「へ、変だったかな?」

 

「いえいえ伝わりましたよ。……ではギュイーン、いたしましょうか」

 

花ちゃんの口元が鋭くなった。

決してさえた作戦ではないかもしれない。

 

でも、やるんだ。

 

私は大鎌モードの魔法棒に力を込めた。

鎌の部分がどんどん膨らんでいく。

 

大鎌を両手で持ち、正面へ構える。

そのまま体を思い切りのけぞらせて、小さな体の全体重を預けて――

 

振り下ろした。

 

「アァァァァク!! ウェェェェイブ!!!!」

 

前方一帯、視界の限りに魔法力による黄の爆発が巻き起こる。

爆発は球体の3体を飲み込み、風と共に消し去っていった。

残りの一体は――

 

姿が見えない。

 

「花ちゃん!!」

 

花ちゃんは魔法棒を取り出していた。

その口が大きく開く。

 

 

 

「渇ききった地獄に咲く一輪の花……」

(頭の花をひとつもぎ取り口元に近づける)

 

「魔法少女ォ!!」

(唇に当てた花がそこから枯れていく)

 

「ガルガンチュアフラワー……!!」

(手を振って花を完全に投げ捨てる)

 

 

 

「ふん!!」

 

花ちゃんは上空を一瞬だけ確認すると駆けだした。

ある地点で止まると棒を真上へと、高々と掲げる。

 

次の瞬間には、鈍い音とともに怪物がそこに突き刺さっていた。

思った通りだ。

 

「さて……私と天さんの慎ましやかな日常を邪魔した罪は重いです……」

 

怪物は身動きを取れずじたばたとしている。

 

「死んで償いなさい」

 

花ちゃんの握っている部分から緑の茨が生えていき、棒に巻き付いていく。

茨はやがて棒全体を覆いつくし、怪物の体にも食い込んでいった。

 

「フラワアアアアァァァァ!! チェェェェンソォォォォ!!」

 

巻き付いていた茨が、目に止まらない速度で回転し始める。

棒を突き立てた位置から、怪物の体がねじ切れていく。

 

あの位置はたぶん急所ではない。

でも大丈夫だろう。

 

怪物の体が回転に合わせて沈んでいく。

それに合わせて花ちゃんは棒を思いっきり振った。

まるでもともと何もないところを通るように何の抵抗もなく、

怪物の体を通過していった。

 

怪物が裂け目から黒いものを噴出し霧散していく。

 

「制裁……ですわよ」

 

言い終わった花ちゃんは満足げな笑みを浮かべていた。

それにしても花ちゃんの技はすごい迫力だなあ、と思った。

 

 

 

 

 

終わったころには陽は傾きだしていた。

 

花ちゃんが駆け寄って怪我がないかを聞いてくれたので、私も聞き返した。

(聞き返しただけなのだが花ちゃんはいたく感動してくれた)

 

二人とも無事だとわかるともと来た道へと戻る。

パトロールの時間はもう少しだけある。

 

夕方から次の日の朝まではモンスターは出ないので安心だ。

それまでもうひと踏ん張りだ。

 

歩きながら考える。

こころちゃんはまだお祭りを楽しんでるかな、と。

家族の人と何かお話してるのかな。

焼きトウモロコシはおいしかったのかな。

 

隣に私はいないけど。

1年に1度でも、10年に1度でも。

こうしてこころちゃんが平和に暮らしているのわかれば。

みんなの平和を守るのが魔法少女だから。

 

私はそれで――。

 

「あ!! 真田さんだ!! やっほー!!」

 

「ぶうううううう!!!!」

 

「天さん!! 突然吹き出してどうなさいましたか!?」

 

とてもよく、聞き覚えのある声が耳に飛び込んでくる。

反射的に声の方を向いてしまうと、

家族と一緒にいるこころちゃんがこちらに手を振りながら接近しつつあった。

 

考え事をしすぎて考えてなかった。

もと来た道をそのまま戻っているのだから、鉢合わせてもおかしくない。

しまった。

 

こころちゃんはそのままズンズンとこちらに近づいてくる。

速い。

 

私もかけっこには自信があるが、こころちゃんを振り切れるかはわからない。

ならばこれしかない。

 

私はヘルメットを取り外すと顔を覆うように持った。

目の前が真っ暗だ。

 

「人違い……かもしれません!!」

 

「ん!? 人違い!? でもそのサイドテールは……!?」

 

またしてもしまった、と私は思った。

ヘルメットからはみ出た髪の毛がピクピクと小刻みに跳ねていた。

 

「やっぱり真田さんですよね!? 真田さん!! 真田さんですよね真田さん!!」

 

名前を連呼されて余計に私は焦ってしまった。

真田さんというワード1回ごとに髪が衝撃で吹っ飛ぶ。

アクション映画とかで銃弾に撃たれた人のごとし。

 

「ち、違い……違わないけど……違うかもしれません!!」

 

暴れまわる髪を抑えようと魔法力を集中させたが、余計に反応が鋭くなったようで

もはや風車のように毛先が回転していた。

 

自分のすぐ前から「んー」と唸り声が聞こえてくる。

こころちゃんはもう目の前、いやヘルメットの前にいる。

 

「先ほどからあなた、ご無礼ですわよ。私をさしおいて真田さん真田さんなどと親し気に……

あら、お会いしたことが……?」

 

「えーっと、伊藤さんですよね。ほら、前に助けてもらった。高橋さんは今日はいないんですか?」

 

そういえば、花ちゃんとこころちゃんも面識があるんだった。

もう完全に言い逃れのできない状況になってしまった。

 

「顔が見えなくてもやっぱり真田さんって感じがするけどなー」

 

「ほう? よろしければ理由をお聞かせ願えますか? それでお里も知れるというものです」

 

「うーん、何というかやっぱり」

 

なぜかはわからないけど、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

 

「雰囲気がなんかこう……落ち着くんだ、とっても」

 

私の顔はたぶん赤くなっていただろう。

ヘルメットで隠していて正解だったかもしれない。

 

ふん……と花ちゃんが鼻をならす。

肯定されても否定されても、私はちょっと困っただろうからしょうがない。

 

きっとこころちゃんはニコニコと満面の笑みを浮かべているのだろう。

 

「いつまでやってるの、お姉ちゃん」

 

もう一人、聞き覚えのある声が会話に加わった。

 

この前、劇を見に来てくれた淑女さんだ。

どうやらこころちゃんの家族も追いついて傍にいるらしい。

 

「あ、ゆめ!! 助けて!!

この子、私を前に助けてくれた真田さんだと思うんだけど顔を隠しちゃって……!!

同じくらいの背丈で同じくらいの声の高さで同じような髪型で同じヘルメットをしてる子の可能性があるんだよ!!

どうしよう!! ゆめ!!」

 

「……お姉ちゃん。本人じゃなかったら顔を隠す必要がない。以上」

 

「あ!!」「あ!?」

 

私とこころちゃんの声が重なった。

これは盲点だった。

ゆめちゃん、もとい淑女さんはすごい。

 

「ゆめ……賢い!!」

 

「お姉ちゃんは少しは頭を使って? 頭突きって意味じゃないからね」

 

こころちゃんの声色が、一段と丸みを帯びた。

 

「真田さん、やっぱり顔が見たいな……ダメ?」

 

私の髪がまた波打つようにうねった。

私も見たくないわけじゃない。

 

ヘルメット少しずつずらすと視界に光が広がっていく。

花ちゃん、ゆめちゃん、田中さん一家のお父さんお母さん。

みんなそろっていたようだけど、やっぱり最初に目が合ったのはこころちゃんだった。

 

「真田さん、みいっけー」

 

いたずらが成功した後のような楽しそうな口調。

こころちゃんの笑顔は真っ暗で想像した時よりも、

ずっとずっと、まぶしかった。

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