魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~ 作:MOPX
私たちは結局その場でおしゃべりをすることになった。
田中家のお父さんお母さんから改めてお礼を言われる。
既に、あの日の後に研究所を通してお礼は伝えられたのだが、
いくら感謝しても足りないらしい。
この手の挨拶は花ちゃんが手慣れていて、
丁寧に受け答えをしていた。
しゃべることがあまり残されていなかった私は、
これが魔法少女のお仕事ですから!! と少し胸を張って答えるのだった。
こころちゃんは私の戦い方がすごかったと興奮気味に話そうとしていたが、
無茶をしたことを両親と妹にたしなめられてバツが悪そうだった。
特に妹さんは「無鉄砲で無計画。ついでにいびきがうるさい」と辛口のコメントを出していた。
私はその妹さんに話しかけた。
前会った時は名前すらわからなかったから、ちゃんと話しておきたかった。
「ゆめちゃん……あ、淑女さんって呼んだ方がいいかな。また会えて嬉しいね!!」
「ちょ、ちょっとその呼び方は……!!」
「淑女……?」
こころちゃんがにやりと笑みを浮かべる。
ご両親も吹き出していた。
「やめなさいやめなさい!! 私は田中ゆめ!! 淑女などではないわ!!」
「え……でもこの前は淑女さんって呼ばれて嬉しそうに……違ったっけ」
「やめなさい!!」
「ゆめ、立派な淑女を目指そうね」
「便乗しない!! やめやめ!!」
田中家のお父さんがうちの娘は二人ともお転婆なんだよ~と話をまとめた。
誰に似たのやら……と言った瞬間に隣のお母さんから鋭く睨まれて咳ばらいをする。
伊藤さんと真田さんは礼儀正しくて偉い、と褒められてしまった。
そろそろパトロールの時間は終わる。
そうなると、またお別れなんだろうか。
「あ!! 帰る前に山登りたい!! 真田さんたちも……どうかな?」
こころちゃんの突然の提案に一同は驚いた。
ゆめちゃんだけは少し思案顔をして答えるのだった。
「……。私はいいや。お姉ちゃんと真田さんで行ってきたら?」
「え、ええ?」
ゆめちゃんの発言の意図がわからぬまま、私はあたふたとした。
「あと、『山登りたい』じゃ勘違いする。途中の高台でしょ?」
そうそう!! とこころちゃんが相槌を打つ。
話しかけるのすらためらっていたのに
こころちゃんと二人っきりなんて。
その時になってやっと、私は気づいて声を出した。
「あ!! 花ちゃんは……どうするの?」
「……。では私もいいです。3人でのシチュエーションなんて望んでませんもの。
田中こころさん、覚えておいてくださいね……!!」
「伊藤さん、なんで目が血走ってるの?」
「いえ、いいのです。私もそちらの田中ゆめさんとお話したいことがあったので」
「……? 別にいいけど?」
訝しがるゆめちゃん。
そのゆめちゃんにこころちゃんが疑問を投げた。
「でもゆめもあの場所好きだったよね? 今日は歩くの疲れた?」
「何でもいいでしょ。早く行ってきてよ」
「?」
ゆめちゃんが何を言わんとしているのか、わかるような気もしたが
わからないということにした。
「じゃあ真田さん行こうか。二人で」
「……うん!!」
こうして私とこころちゃんの二人きりの散策は――
「子供たちだけで行くの危険じゃないかしら。不審者が出ても困るし……」
「あ、じゃあ俺ついていくよ。愛はゆめたちを見てて」
田中家両親の数秒のやり取りでひっくり返ったのだった。
私たちは北へ北へと進んでいく。
こころちゃんは逸る気持ちを抑えきれないのか、
前へ前へとどんどん進み、私を手招きした。
桃色の浴衣のこころちゃんは、お祭りの空気をそのまま引き連れてるみたいに活気にあふれていて、
私も元気を少しわけてもらえるような気がした。
途中でこころちゃんが私の服を引いた。
私は自分がセーラー服だったのを思い出すと同時に、
そんなことを忘れていたのにも気づいた。
だって目に映っていたこころちゃんがはしゃぐ姿は
お祭りそのものだったから。
私たちは楽しい空気を突き抜けていった。
「とうちゃ~く!! 私が1番!! 真田さんが2番だね!!」
弾ける笑みを見せるこころちゃん。
別に競争はしてなかったのだけど、負けてしまいちょっと悔しくなる。
田中家のお父さんはというと、私たちの体力に着いていけなかったのか遥か後方にいた。
「真田さん!! 見て見て!!」
こころちゃんのもとへ、隣へと歩く。
そしてその指をさした方向へと目を向けた。
「わあ……!!」
視界一面に、町と夕焼けとが広がっていた。
もう雲ひとつない。
まるで天から照明を受けて、町がライトアップされてるみたいだ。
「とってもきれいだね……」
「あはは。そうでしょ。もともと好きな場所なんだけど真田さんに見せたいなーって思ったから来ました!!」
「……田中さん」
「ん? なに」
私はこころちゃんと呼ぶか、田中さんと呼ぶか少し迷ったけど田中さんと呼んだ。
こころちゃんと口に出したら、自分の中で何かが弾けてしまいそうだと思ったから。
「本当にありがとう。私、今日初めてお祭りらしいことができた気がするの」
「……そうなんだ。うん、真田さんみたいな子が頑張ってるから私たちは楽しめるんだよね、お祭り」
こころちゃんは私の方を向くとにっこりと笑顔を浮かべてお辞儀をした。
「だから私からもありがとう!!」
私はこころちゃんのそのお辞儀をずっと見ていた。
たぶん感極まるという言葉はこういう時に使うのだと思う。
こう感じてくれる人がいるから
私はいつまでも戦っていられるんだ。
帰り道で田中家のお父さんとも少し話をした。
私の両親がどんな人か聞かれたから、お母さんは優しくて明るい、
お父さんは元気で明るい……あと趣味がロボットの模型ですと答えた。
「へえ!! そりゃいいや!! この間出た新しいシリーズも買ってるのかな?
最近はメーカーの技術の進歩もすごくて新しいギミックがさ……」
「お父さん、真田さん困ってるよ~」
「あはは……すまんすまん。子供のころ好きなものってやっぱりいくつになっても変わらなくてさ……
最新シリーズのアニメがまたすごくってなあ、最新話も……いたた!! こころ!! 脇腹はやめてくれ!!
俺はお母さんと違って鍛えてないから……」
こころちゃんのジャブのサンドバックにされるお父さんを見て何だか微笑ましい気持ちになってくる。
と、同時に私も自分のお父さんとお母さんの顔が浮かんできた。
同い年で、仲の良いお父さんとお母さん。
今日の晩御飯は確か私の大好きなお肉、ハンバーグ。
今も、帰ってからも楽しい時間が続くのだろう。
私は何だか軽くなった足取りで、
こころちゃんとお父さんのやり取りを見つめるのだった。
私たちは花ちゃんたちと合流して、お別れの挨拶をした。
別れた後、私は家路につく田中家の背中を見ていたが、
横からの息を吐く音で我に帰るのだった。
「花ちゃん、待たせちゃったね。ごめん」
「いえ、いいのですよ」
「あ、あれはやらないの」
「あれ、とは?」
「えっと、真赤ちゃんが最近の花ちゃんは別れ際に新作の詩を披露するって」
「……詩? ……。生憎ですが今日はそんな気分ではないので……申し訳ないです」
「あ!! 無理に言ってほしかったんじゃないの。何かごめんね」
「いえいえ、お気になさらず」
少女たちが歩み出す。
その頭から花が地面へと落ち、ひとりが足を止める。
手で拾われるかと思われたそれは、
代わりに足で踏みつけられ、そのまますり潰された。
見る見るうちに、無残にもちりぢりになっていく。
緑がかった髪のその少女は後ろを振り返り、先ほどまでいっしょにいた4人を見つめた。
「本当に、さぞ仲の良い家族のようで……」
続