魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第4話 魔法少女の本分は勉強です!!!! 愛と勇気のかけ算!!!!(前)

学校の給食を食べ終わり、鞄を出して先生へと挨拶をする。

私は校門を出て研究所の方へと歩いていた。

 

なんでも研究所で新しい素材の実験をするとのことで

そのお手伝いが目的だった。

 

魔法少女はこうして午後の授業がお休みになって

研究所のお手伝いをすることがある。

 

学校を出てバスに乗って30分ほど。

 

「止まります」と書かれたボタンが、

誰よりも早く私の指に押されて、赤く点灯する。

(もっとも他に乗っている人が少なかったんだけど)

 

「研究所前」と書かれた停留所にバスが停まる。

私は黄色のケースに入れた定期券を握り、席を勢いよく立った。

 

バスを降りて右手の方向。

最初のころは方向を間違えてしまい、えらい目にあった。

 

見上げると研究所の頂上にあるハート形のシンボルが

今日も目を引いた。

 

私は時計を確認する。

まだ2時。

1時間は余裕がある。

 

遅刻遅刻~と叫びながら研究所に飛び込んでいた私はもういないのだ。

私は少しの満足感を得ながら、悠然と研究所へ入っていった。

 

「あ、こんにちは。真田さん」

 

「真赤ちゃん、こんにちは!!」

 

私は時間に余裕があったので今日の宿題をするために

休憩室へと入った。

そこでばったりと真赤ちゃんに出くわしたというわけだ。

今日も真っ赤なマフラーは健在だ。

 

真赤ちゃんも今日の研究のお手伝いをするはずだ。

たぶん給食を早めに食べて私より一本早いバスに乗ったんだろう。

机には教科書とドリルが並んでいた。

 

「真赤ちゃんも宿題?」

 

「うん。複写で終わる科目をやってる。集中できなくても時間をかけたら終わるし」

 

「へえ!! 複写で終わる科目!!」

 

具体的にどの科目かは正直わからなかったが私は復唱した。

私は勉強を極めれていないため、たぶん真赤ちゃんには別の何かが見えているのだろう。

 

「隣、いい?」

 

「別にいいよ」

 

「ありがとう!!」

 

マフラーの先を指でいじりだす真赤ちゃん。

その隣に私が腰かけた。

 

さて、と私はランドセルから教科書とノートを漁った。

どの教科をやろうか。

 

いつもは社会や理科など興味のわく教科からスタートする。

好きなものは先に食べてしまう派だ。

だって我慢できないから。

 

そのせいで最後の方は頭を抱えることになるのだが。

特に算数は常に最終ボスとして私の前に君臨を……。

 

「……あ!! 真赤ちゃん算数得意だったよね!!」

 

「得意でもない。普通」

 

真赤ちゃんは謙虚だからこういう言い方をする。

でも得意というのは確かに言葉が違ったかもしれない。

 

学校の授業は同じ時間を受けているはずなんだから、

きっと真赤ちゃんは私よりたくさん授業を聞いて、

家でたくさん勉強しているんだ。

 

私は授業中に給食のことや次の時間の体育のことを考えているんだから

しょうがないと言えた。

 

「じゃあ、真赤ちゃんは算数がえっと……算数と仲良しみたいな?」

 

「あんまり嬉しくないなあ、それ……。まあいいや、どこがわからないの?」

 

真赤ちゃんは察しが良い。

勉強を教えてほしいと言わなくても、もうそこまで話が進んでいた。

既に広げていた真赤ちゃんの教科書とドリルを見て、少し申し訳なくなる。

 

「えっと……自分の宿題をやりながらでいいからね?」

 

「別にいいよ。飽きてきたし。……まあ真田さんには異動願い出すのを手伝ってもらっちゃってるし」

 

真赤ちゃんは両手でマフラーをもふもふと触りはじめた。

私は意気揚々と苦手な算数の宿題を取り出すのだった。

 

「A子さんの歩く速さは1分間あたり50メートルです。A子さんは10分間、歩きました。

A子さんの歩いた距離は何メートルでしょうか。う~ん……、割ってみようかな!!」

 

「ノリ。割り算が好きなの?」

 

「足し算引き算よりテクニカルな感じがして好きかも!!

あ、でも分数はあんまり好きじゃない……。

分数が発生しちゃうリスクもあるよね……どうしようか」

 

「それじゃあA子さんは一生真理にはたどり着けないかもね。

真田さん、公式とか覚えている?」

 

「うーん、なんか距離、時間、速さの頭文字を取って、

こんな感じの図が……」

 

私は円を書いて上下を分けるように直線を1本、

更に下の半円を左右にわけるように1本線を引いた。

 

「ハジキ、だったっけ? あれがハキジなのかキジハなのかキハジなのか

ジキハなのかジハキなのかわからなくなっちゃって……。

距離じゃなくて道のりのパターンもあるから他にもハジミとハミジと

ミジハとミハジとジミハとジハミが……」

 

「それをすらすら言える方がすごいと思うけど。

真田さんの場合もっと直感的にとらえた方がいいのかも。

同じ時間歩いたら、速く歩くほど長い距離進めるよね。

速さが同じ人が歩き続けたら、時間が長いほど長い距離が進める」

 

「ふんふん」

 

「これを数字で考えると速さが2倍になると距離も2倍。

時間が2倍になっても距離は2倍ってこと」

 

「掛け算っぽい!! ちょっと待ってね!!

ええっと、時間と速さが大きくなったら距離も大きくなるはずだから……

500メートル!! A子さん、500メートルも歩いたんだ!!」

 

「まあA子さんが何メートル歩こうが僕らの人生には関係ないけどね」

 

「うーん。A子さん、頑張って歩いたかもしれないし。

……これって逆に、家と学校の距離がわかったら遅刻しないギリギリの速さがわかるってこと?」

 

「まあそうなるね」

 

「やってみよう!! 私の家と学校の距離が……えーっと……25メートルプール10個分くらい……

短いかなあ。半分の曲がり角がそれくらいだから20個として……500メートル!!」

 

私はひっ算でノートに書いた500という数字を真赤ちゃんに見せた。

 

「朝のドラマを見てたらうっかりホームルームまで残り5分として……」

 

「うん、もっと早く出た方がいい」

 

「距離が500メートルだから5で割って……1分間に100メートルの速さなら遅刻しない!!

……これくらいかな?」

 

私は休憩室の机の周りをぐるぐると早歩きで回った。

真赤ちゃんは真顔で私を見ている。

 

「秒速になおした方がわかりすいかも。

60で割ると三分の五だから切り捨てで1.66メートル。

僕らの身長より高いくらいだね」

 

「じゃあ、これくらいだね!!」

 

私は手を軽く振ってさっきより勢いよく真赤ちゃんの周囲をぐるぐると回った。

当の真赤ちゃんの顔が真顔から苦笑いに変わる。

 

「やっぱり、もっと早く出た方がいい」

 

「えへへ……」

 

私は席に座るとそのまま他の問題も解いていった。

今回の宿題は全部この応用だったから自分でも驚くくらい解けてしまった。

 

私は改めて真赤ちゃんに感謝するのだった。

 

「真赤ちゃんありがとう!! 今は持ってないけど今度グミあげるね!!」

 

「別にいいよ。親からちょっとしたものでも貸し借りはするなって言われてるし」

 

「あ……そっかあ……」

 

「そんな顔しないでよ。……さっきも言ったけど真田さんは異動願い書くの手伝ってくれてるから、それでチャラ」

 

「……うん」

 

異動願い。

本来は職員さんが別の部署に移りたい時に書くものらしいんだけど、

真赤ちゃんはその用紙をコピーして別チームに移りたい旨を書いて博士に送り続けている。

 

最近は私もそれを手伝っている。

理由の欄くらいしか工夫できそうなところがないから、そこだけだけど。

少しでも真赤ちゃんの力になれたら、と思ってだった。

 

「僕が言うのもなんだけどさ、いいの?」

 

「え? 何が」

 

「僕が抜けたら2人になっちゃうでしょ、Cチーム」

 

「えーっと、うん。でも私がもっと頑張ればなんとかなるかなって。

花ちゃんもすごいし」

 

「その伊藤さんと2人なのがいろいろと……まあいいや」

 

「?」

 

真赤ちゃんの言わんとしていることはわからないが、

心配してくれているのはわかった。

でも大丈夫だ。

私はその人がいるべき場所にいるのが一番だと思うから。

 

「……あ!! ちょっとごめんね真田さん!!」

 

真赤ちゃんは弾かれたように立ち上がると、そのまま休憩室から出ていった。

窓から見えた何人かの人影を追っていったのだとすぐわかった。

アルファベット順ではお隣、Dチームの面々だった。

たぶん、今日のお昼パトロールの当番で戻ってきたのだろう。

 

真赤ちゃんはもともとDチームの一員だった。

 

私たちのCチームが今年度は2人しかいなかったので、

急遽、5人いたDチームから真赤ちゃんが移ることになったのだ。

 

窓の外で真赤ちゃんが声をあげて笑っているのがわかった。

照明に照らされた髪色は、5人で赤と青と緑と黄と桃。

まるで窓の枠がキャンバスで、絵画のように鮮やかで綺麗だなと思った。

 

誰がしゃべっているのかわからないくらい会話は盛り上がっているようで、

真赤ちゃんはずっと笑顔だった。

 

 

――よし。

 

 

その光景を見て私は真赤ちゃんの異動を成就させてあげようと心の中で誓うのだった。

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