月はどうして輝くの?   作:うさぎと世界

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気月く(きづく) 前編

 初レースを経験してから少し経ち、自分は確信した。

 トレーナー殿に頼っていてはダメだ。と。

 あの敗北後も何も変わらず意味不明な練習ばっかり。

 こんなことでは真面目に練習している他のウマ娘に勝てるわけがない。

 まずは効率的な練習法を調べなければ。

 そう思い、図書室へと足を運んだ。

 何冊もの文献を広げていく。

 はじめての生体力学(バイオメカニクス)、よくわかるウマ娘の歴史、鍛えて最強ウマ娘を育てる....

 様々なジャンルの本を読んでは、トレーニングに役立ちそうなページを印刷していく。

 そうして古書とインク、熱されたコピー機の匂いの中で格闘していると、ある文章が目に留まった。

『ウマ娘は別世界のウマと呼ばれる生物の魂...いわばウマソウルを受け継いで生まれた存在です』

『ウマ娘は、ウマソウルから名前や得意不得意、性格、運命、固有の能力を継承するとされています』

 ウマ娘の成り立ちだ。何度も聞いた、多くの人にとって当たり前のこと。

 けれど、一つだけ不可解なことがある。

 自分は、()()()()()()()()()()()()()()

 今あるモントベルガーと言う名前は、母親に仮でつけてもらったものだ。

 三女神の誤謬(バグ)か、ソウルの欠如か。難しいことは何も分からない。

 どうしていいかわからず、母親と自分だけで抱え込んだ秘密。

 もし、自分のウマソウルと共鳴できたなら___

 考えながらもめぼしいところを探し、複写し、本を戻す。

「おっとっと。君。勉強熱心なのは構わないが、周りに気を付けてくれたまえよ」

「あっ、ごめんなさい..」

「タキオンもな。すみません、怪我はないですか?」

「ふゥん。トレーナー君はこの私より他のウマ娘を気にかけるんだね? 

確かに今回は私も注意を怠っていた。それは認めよう。しかしトレーナーたるもの、担当ウマ娘を第一に考えるのが....」

 ぶつかり、立ち上がり、謝罪し、見上げる。淡く発光する男性とアグネスタキオン殿が視界に映る。

「あっ..はい、大丈夫です、アグネスタキオン殿、それにモルモット殿..」

「も..」

「ククッ..モルモットさん..聞いたかい、君は本名よりモルモットだという事実のほうが広まっているらしい。私もトレーナー君ではなくモルモット君と呼んでやったほうがいいかい?」

 夫婦漫才みたいだ。

「..それで、君は..確か、高等部のモントベルガーちゃんだったね。真面目な子だとは聞いていたけれど、こんな時間まで勉強かい?」

 気が付けばカラスが鳴いている。集中しすぎて時間を忘れるのは悪い癖だ。

「いえ..それは..」

「ああ、トレーナー君、もうこんな時間だ。先に帰って夕餉に準備をしておいてくれたまえ」

「おい、タキオン..」

「いーいーかーらー!君は大切な担当にカップラーメンを食べさせる気なのかい?」

「はぁ..わかったよ。ごめんねモントベルガーちゃん、こうなると聞かないんだ。ご飯、作りに行くよ。遅くならないように帰るんだよ」

「は、はい..モルモット殿、お気遣いありがとうございます..お気をつけて..」

 モルモット殿が足早に去っていくのを見届けると、

「さて、モントベルガー君、モルモットにならないかい?」

「え」

 あまりの突拍子のなさに、固まってしまった。

「ああすまない、端折りすぎてしまったね」

 タキオンさんが、自分が印刷したページを一瞥する。

「この幅広い分野の印刷、一見すると走り方の研究に見えるが、ウマソウルなど、生まれ持った因子(ファクター)についての記述が多い..」

「それに、トレーナー君に勉強か、と問われた時、僅かに何かを隠すような素振りをしていたように見えた。

ヒト、あるいは学園の関係者に知られてはまずい何か、とりわけ生まれ持った何かについて調べていたんだろう?」

 言い当てられてしまい、思わずたじろぐ。

「そこでだ、君をモルモットにさせておくれよ。何かウマ娘同士だからこそわかることがあるかもしれない。Win-Winの関係だ。そうだろう?」

 まくしたてられて、混乱しながらも、言葉を紡ぐ。

「..もし、アグネスタキオン殿の言うモルモットが、ドーピングに関わること、なら、自分は..辞退、させていただきます」

「ドーピングねぇ。そんなもの、白けるだけだろう?薬品を使うなら目指すは永続的な身体能力の向上であるべきだ。

まぁ、こんな所で立ち話もなんだ。とりあえず研究室まで来たまえよ。この時間ならカフェもいるだろうが、なに、気にすることはない。むしろ先輩モルモットを知るいい機会だ」

 

 

 

 

 

「..それで、つれてきてしまった..と」

「ああ、先輩モルモットとして、いろいろ教えてあげてくれたまえ。ああ、待たせてすまないねぇ、もう入って構わないよ」

 許可をいただけたのでおそるおそる入室する

「失礼します..」

「モルモットになった覚えはないのだけれど..」

「あ、あの..初めまして。自分は、モントベルガー、です....ご指導ご鞭撻のほど..」

「私はマンハッタンカフェ....」

「......」

「..ようこそ。()()()も歓迎しているわ..ほら」

 机の上のコーヒーカップがコト、と音を立てて、ビーカーが震えて奇妙な音を発する。

 自分のためにこんなマジックを用意してくれるなんて、なんと素敵な先輩モルモットさんなのだろう。うまくやっていけそうだ。

「..さて、無駄な時間は嫌いだ。君が隠している不都合な真実(興味深い事実)、早速教えてくれたまえよ」

「自分は..」

 




投稿が遅れてごめんなさい~!
既存のキャラを描写するのに大苦戦でした、
ちょっとシリアスな話になっちゃってます!
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