Fate/Diclo   作:syuu

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1殺人鬼と儀式

「みたせ、みたせ、満たして、みたせ。繰り返すつどに四……ど?あれ?五度??」

 

冬木の一軒家のリビングに響く詩の朗読のような言葉の羅列。それはある儀式に臨む者なら誰しもが唱える詠唱の一部であった。しかしそれを唱えている人物はまったく見当違いな使い方をしていた。

 

 

 

彼は、今まで続けてきた三件の殺しと同じように土足で家に入り込み中に居た家族四人のうち三人を殺害し、年端も行かない男の子を縛り上げ、自分の実家の蔵から見つけた古い本に記された内容の読めた部分だけの要所を拾い上げながら儀式の真似事をし始めた。

その死体から臓器ごと血を抜き取りバケツに集め、フローリングされた床に大体の召還陣とおもしき幾何学模様を描くと肉片を足の指で摘まみながら細かい部位を描く。

 

彼の名は雨生龍之介、ここ最近の冬木の町で起きている連続殺人の元凶である。

 

「悪魔って本当に居ると思うかい。坊や?」

 

陣の仕上げに掛かり詠唱の間違っていた箇所の訂正を行っていたころ、丁度ニュースで自身のことが出てきて派手に動き過ぎたことに反省をするも、テレビを消して無かったとにし。片方の足に肉片を挟ませながら万が一の保険である男の子に近づき質問をする。男の子は縛られた口を動かすも龍之介には答えない。

 

「新聞や雑誌だとさ、俺のことを悪魔呼ばわりするんだけどさぁ。もし本当の悪魔がいたら一寸ばかし失礼な話だよね。そこんとこスッキリしなくてさ……チーーーッス!!『雨生龍之介は悪魔であります!!』なんて名乗っちゃっていいのかどうか」

 

「んーーーんん!!」

 

男の子は、龍之介の名を聞いた途端ガムテープで体を縛られていながらも大きく体を揺らし目の前の男を無視して何かに恐れていた。

 

 

「あー、やっぱりここまで言っちゃうと俺が何したいのか判っちゃうよねー」

 

龍之介は男の子の怯えた呻き声を今まで殺してきた子供たちと同じくこれからの自分の運命に絶望し足掻いているモノだと勘違いしたまま壁際に押し退けた椅子に行儀悪く後ろ向きに座りながら必死に動いている生贄を見下ろし。

 

「マジで悪魔さんを呼んで茶飲み話でハイ、さよなら~って訳には行かないだろうからさ。ここは一つ殺されちゃってくんない?……くははっはっはっはっは、悪魔に殺されるってどんなんだr痛って。なんだこれ?」

 

友人に借りっぱなしの金の返済期間を伸ばすよう頼み込むような軽いノリで死ねと言い放ち爆笑する。

その後、自分の右手に痛みが走ったと思った途端魔法陣に紫電が走り室内であるのにも拘わらず風が舞い始めた。

それと同時に龍之介から力が抜けていくような感覚が身体に走る。彼には知る由もないがこの儀式を行うに当たり必要不可欠な魔術回路が起動し魔力(エネルギー)を全て送り続けているのだ。

 

「ふざけんな」

 

だが、室内の風は更にもう一つ『別の存在』が意図的に起こしているモノであってこの召喚の儀には必要のない異物であった。その風は龍之介に縛られた男の子のを中心に荒れ狂い鋭い一陣の衝撃が口を塞いでいたタオル地の布を切り裂き彼は呟いた。

 

「お……おお!!はい?」

 

光る魔法陣に気を取られていた龍之介は床から聞えて来た声に反応し下方に再び視線をずらすと。空中に浮かび上がる男の子の姿を捉えた。

 

「お前は唯では殺さない」

 

そう男の子が宣言をした。龍之介は唖然と宙に浮かぶその姿を見て悪魔がこの男の子に憑依でもしたのかと狂った脳でもっともらしい仮説を立てた。

 

男の子は鋭い目つきで目の前の殺人鬼の右手に狙いを定め意識を集中させる。

空気が揺れるような斬撃が、椅子から立ち上がっていた龍之介の右手首を腕から切り離し大きく回っていた。

それは龍之介が自分の腕が切り離されたことに気付かない程、彼の心臓が鼓動しようやく動脈から噴水のように噴き出して床を濡らす血液をと少年を二、三度見比べてようやく認識する程の早業。居合い切りの達人による時代劇のような間がそこにあった。

 

「あはっつ、ハハハハハ。なんだよこれ無茶苦茶イッテ―」

 

左手で取り敢えず傷口を押さえるも絶え間なく血液は流出して行った。

魔法陣は、施術者の魔力供給が中断され輝きを失い役割を果たせないまま床に染み込まれ続けていた。

 

宙に浮いている蓑虫のような状態から男の子の身体を拘束していた縄がひとりでに切り裂かれたかのようにバラバラとなり足にきつく巻かれたガムテープが自動的に引き剥がされ空中で丸められた。

 

「フ、」

 

「グフェ!?」

 

男の子が鼻で笑いながら痛みに打ちひしがれる龍之介を見下ろし空中で丸められたガムテープの塊が大人の拳位からウズラの卵程にまで目に見えないナニカに圧縮され、獲物に目掛けて襲い掛かる誘導ミサイルと同じように弧を描きながら。しかしその威力は銃弾と同レベルに彼の無防備な左脇腹に着弾する。

 

拘束から外れた男の子は、切り離され部屋の四隅の床に転がっている男の右手を掴み上げその掌に刻まれた三つの入れ墨のような図形を何度も見直し絶望した声で呟いた。

 

「Fate……か。今回は月型の世界だったのか」

 

先程の暴風の中でもズレ落ちることの無かった普通の円錐形のナイトキャップではないピエロのような二つに分けられた双帽子がズレ落ち、そこから見えるのは燃えるような赤い髪に埋もれることなく覗く側頭部に生えた白い角が生えていた。

 

 

彼の名は灰神柳。人類を進化させるために生まれた新人類(バケモノ)である。

 

彼は、この世界以外に異なる生を何度も受け、数々の旧(現)人類の世界を滅ぼし新たな秩序を生み出して人類世界の世代交代を担って来た。最初は馬鹿な管理者の隠蔽工作だったような気もしないが彼(転生した肉体によっては彼女)自発的に世界を動かし続けていた。それは灰神の願いなのか唯の繁殖を推し進めたいという種の本能なのかはわからないが彼はソレを毎回、生を受ける度に楽しんでいるようだ。

無論、転生では前世の記憶は知識とでしか運用することが出来ない為。肉体的な才能や資質は今世の肉体によって左右されており生まれて直ぐに死んだりしたことも多々あった。

 

故に、灰神は焦っていた。

 

「勢いでやっちゃったけど。この令呪どうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は召喚と差異……の予定です。
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