Fate/Diclo   作:syuu

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4白兵戦と魔術

灰神は魔力不足を回避するためにサーヴァントに魂食いの許可を出したのだが、生贄の首を落としたせいで噴水の様に噴出し二人は頭から血を被っていしまったのだった。

サーヴァントは一度霊体化してしまえば問題は無いがマスターの方はそうはいかない。そのためバスルームには灰神が疲労を引き摺りながら温かいシャワーを浴びて、血を洗い流しセレクターにはこの死体だらけの家から出て行く準備をさせていた。

 

『次に魂食いをするときは、心臓をベクターで掴んで心臓麻痺を起こすか、動脈や脳の血管を引き千切って病死を装うか、せめて飛び散らないように殺ってよ!?』

 

もう喋るのも億劫になったのか令呪のパスを通じて文句を言う。

 

『すまないマスター、まさかあんなに血が吹き出るとは思わなかったのだ』

 

『はあ、街中での魂食いでは特に慎重にね。ところで、セレクターはどんな逸話や伝承を持っているんだ』

 

髪に付いた血の匂いのする泡を流し湯船に浸かりながら、聞きそびれた彼の者の偉業を聞こうとする。

 

『嘗て………か、ここでは既に分離した未来の出来事だが。生前俺は死徒に襲われたところを返り討ちにし。その死徒を追いかけていた代行者の養子兼弟子となり様々なジャンルの魔道に手を出し封印指定と角のことがばれて討伐対象となった時に魔術協会と聖堂教会の二つの組織を物理的に潰し英雄エミヤに敗れた過去を持っている』

 

『え?それって』

 

『いや、本当に殺されるかと思った。壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)の爆煙に乗じて逃げなければ確実にやられていた』

 

『あっなんだ生き残ったんだ』

 

『ああ、なんとかな。だが戦闘の後遺症で現役を退いてウイルスの伝播に残りの人生を捧げたな。妻もいたので引退には丁度良い区切りにはなった』

 

何故だろうか、セレクターがどこか遠い目をしているのがわかってしまう。

 

『何が有ったのかこのまま聞いたほうが良い?それとも、もうここは別の平行世界なのだからと納得してスルーしたほうが良い?』

 

『知らないほうが幸せだと思うぞ』

 

 

『………そっちもそっちで大変なんだね。もう上がるから新しい服を出して』

 

『了解した』

 

「ありがとう、セレクター」

 

シャワーを浴び終わり、髪と身体をタオルで拭き終わると着替えを持って来たセレクターに礼を言いオレンジ色のパーカーを着始めた。

 

「そうそう、マスター。敵の前ではクラス名を言わない方が言い。クラスによる傾向や戦略を読まれるということは無いだろうが。必要以上に警戒心を持たせると相手は隙を見せなくなる」

 

セレクターは、着替えを届けると玄関に行き自らのベクターを使い大きいキャリーバックに灰神の着替えや食糧(缶詰め)、両親の預金通帳を詰め込んでいた。端から見ると物が勝手に浮かび上がり収納される奇妙な光景だ。

 

「確かに、そうだが。マスターのステータスを見る能力を使われたらすぐにイレギュラークラスだとわかってしまうぞ?」

 

因みにセレクターのステータスは、白兵戦を左右する筋力、敏捷、耐久が全て最低の『E』という悲惨な状況である。

 

代行者として戦闘経験があるらしいのだが筋力と敏捷がEとはどういうことなのか聞くと淘汰者(セレクター)のクラスはスキルや宝具に特化した(クラス)らしく直接戦う事は滅多にないものらしい。ハイガミヤナギ自身も直接己の肉体で戦ったことはそれほどなく魔術を用いた罠を張るといった戦法を好んでいた。

だが、ディクロニウスであるこの身なら宝具化したベクター『新徒の見えざる手腕』を使った白兵戦擬きでステータスを補う程の動きで三騎士クラス一人位なら対応可能だと豪語していた。

 

 

「そこは、俺のもう一つの宝具で誤魔化す。パラメータをすべて隠す必要はないだろうからそこまで魔力は使わないだろう。まあ、魔術を使えるから適当にローブでも羽織ってキャスターを偽るさ」

 

確かにステータスだけを見ればキャスターにしか見えなくも無い。

 

「本当に、そんなんで上手くいくのかな?」

 

「大丈夫さマスター。自分のサーヴァントを信じろ」

 

セレクターは自身あり気に宣言をし、再び荷物の準備に取り掛かる。

 

「そのカソックは目立つから適当なスーツを着てから出てくれよ。後、帽子も」

 

ニット帽を目深に被り、更にその上にフード被るとセレクターが着替えずに玄関にいたので目立つから着替えろと暗にいう。

 

「ああ、そうだな。少し待っていてくれ」

 

父親の部屋へと消えたセレクターを見送ると不意に視線をずらす。リビングの扉を見ると生乾きの血と死体の手足が覗いていた。

 

「冬だからそんなに早く腐ることはないけどご近所や両親の職場が不信に思うのは時間の問題だし、急いでここを出よう。さっきも言ってたけどセレクターは暗示系統の魔術は使える?」

 

「安心しろマスター。最初の時にも言ったが本来は魔術師(キャスター)のクラスにも適性があると。

どこかに拠点を構える位造作ないさ

最も、魔力が限られているので出来ることは限られるが」

 

少し大きめの黒のスーツを着たセレクターがネクタイを締めながらこちらへと近づく。藍色のニット帽は灰神に合わせたのか二人が並ぶと親子にしか見えない。

 

「魔力の補給と拠点のことは任せるよ。ただし余程のことがない限りベクターの使用射程は20m以内に抑えて行動して」

 

自分の魔力不足に付いては誰よりも理解しているため魂喰いを許可し。両手を斜め前に突き出す。

 

「マスター、その手は一体?」

 

「疲れたから抱っこかおんぶして移動して」

 

「……それは命令か?」

 

「うん、命令。魔力を回復させるためにそのまま休む……くぁあー」

 

体力の限界が近いのか灰神は眠たそうに欠伸をした

セレクターは、左手にキャリーバックを持ち、右手とベクターを使い灰神を負ぶさる。

 

「家にある死体の方はどうする?」

 

「火を付けて燃やして。でも扉の鍵は掛けて置いて」

 

「了解したマスター。拠点に目処が着いたら少し髪を貰うが構わないか?」

 

「いいよ。けど何をするつもりなんだ?」

 

「いやなに、ちょっとした礼装を作るだけさ。安心しろ俺が必ず守り抜く」

 

「俺の呼び出したサーヴァントながら随分と頼もしいな」

 

と灰神は、顔をセレクターの背中にうずめて静かに寝息を立てた。

 

「全く。一言余計だぞ、マスター。………―--炎よ、死者を弔え」

 

家を出てマスターと荷物を運びながら静かに詠唱を行う。

予め、死体に刻んでいたルーンが詠唱に反応し、輝きながら炎を出現させ死体を焦がし部屋の床や家具に延焼していき家を一軒燃やしていった。

 

今、七体目のサーヴァントが召喚され聖杯戦争の第一戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「舞弥」

 

「はい、マダムたちは既にこちら(冬木)に訪れている頃合です。昨日の夜から使い魔を二体、間桐邸と遠坂邸に監視させていますが両陣営に動きはありません。それと、冬木周辺の市街で今日だけで二十人以上倒れ病院に運ばれました」

 

「そうか」

 

薄暗いホテルの一室にくたびれた黒いコートを着た男性がベットに腰掛けバイオリンでも入る程の大きさのトランクを開け、中に入っている物を取り出しながら同室している女性からの報告を冷静に頭の中で整理していた。

セイバーのマスター、『魔術師殺し』の衛宮(えみや)切嗣(きりつぐ)は第四次聖杯戦争に確実な勝利を齎す為に千年間の純血を守って来たアインツベルンが招き入れた言わば傭兵。彼の戦い方は魔術師らしからぬ現代兵器を用いた暗殺がメインであり。銃殺、爆殺、狙撃、毒殺、必要と有らば標的の身近な人間を誘拐し恐喝し、一般人を巻き込むことも厭わない。正確には厭おうとしないようにしている。9を生かす為に1を切り捨てる、それが衛宮切嗣の正義だ。

彼は表の聖杯戦争には彼女達を囮にやって来たマスターを討つという戦略を立てたのだ。

一時武装を整えるために協力者であり切嗣の正義を成すための助手である久宇(ひさう)舞弥(まいや)と共に陰ながら別行動をとっていた。

部屋にあるトランクやバックの中身はこの第四次聖杯戦争のために準備をした武器の数々だ。ハンドマシンガン、サイレンサー、煙幕弾、手榴弾、コンバットナイフ、地雷など日本の銃刀法違反をガン無視したラインナップである。

 

「それから、今日未明。監督役である教会から七体目のサーヴァントの召喚が確認され、聖杯戦争が正式に開戦されました」

 

「遂に来たか、舞弥。例の物は?」

 

「こちらです」

 

彼女の取り出した箱には揃えられた武器の中では唯一効率を捨て一の敵を殺すために弾丸一発の威力のみを求めたトンプソン・コンテンダーが入っていた。衛宮切嗣の切り札である魔術礼装『起源弾』を撃つための銃だ。その威力は、銃というより小型の大砲に近い代物だ。

 

「二秒か、衰えたな」

 

「そうですね」

 

切嗣は銃を構え銃身を開き次弾装填のシュミュレートを行い呟く。

実戦では、更に時間が掛かることを想定するといささか遅すぎる。

アインツベルンに婿養子となる前に戦場を駆けていた切嗣はもっと早く正確に動けた。

聖杯戦争に当たる準備の合間、家族の温もりを知りそれを受け止め戦場から離れていた切嗣に手持ちのワルサーの重さとドイツの雪の城に残してきた娘を重ねて悲しみに顔を歪める。

 

「イリアの体重はそこのワルサーよりも軽いんだ。もう八歳になるのに、っ!?」

 

涙を流しかけた瞬間、舞弥が彼の唇を奪い涙に熱くなった心を冷やす。彼女は切嗣を9を生かす為に1を確実に切り捨てるためだけの殺人機械(キリングマシン)にするための部品(パーツ)、拾われる前から少年兵として生きていた彼女が自ら選んだ役割を果たす。

 

「今は、目の前の戦いにだけ集中してください」

 

 

「ああ、わかっている」

 

錆付いた心に油が刺され衛宮切嗣は武器を取り進む。この聖杯戦争で流れる犠牲を人類最後の流血にするために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日の見える海岸で此度の聖杯戦争に参加するに当たり冬木の地に訪れた二人の女性が日の沈む夕闇景色を見つめていた

 

「はぁ、セイバー。今日は一日中私と一緒に街を歩いてくれてありがとう」

 

雪の精霊が人の姿になって現れたような、銀髪の麗人。アイリスフィール・フォン・アインツベルンは、後ろに佇むダークスーツを着た金髪の男装をしたサーヴァント、セイバーにお礼の言葉を言う。

彼女等は表向きには、サーヴァントとそのマスターということになっている。

セイバーはアイリスフィールに笑みを浮かべながら応える。

 

「こうして実際に自分の足で歩いて自分の目で見て改めて世界の美しさを、人々の生活を目の当たりにできて本当に良かった」

 

「アイリスフィール……」

 

「切嗣が聖杯に願う平和って、誰しもがああいう普通の生活を送れる世の中になること何でしょうね」

 

「そうですね。戦の合間にあった治世のみの時間は武人であった私には税収や領地の管理に追われ苦痛もありましたが民にはこれまであった戦の悲しみを乗り越えた笑顔が確かにありました。……っ!?アイリスフィール!!」

 

アイリスフィールの生きて来た人生とその大半を埋め尽くす夫の夢を応援する姿に嘗ての国の過去を振り返っていると自分と同じサーヴァントの気配を察知し、仮初めのマスターの前に立つ。

 

「ええ、遂に来たわね」

 

「向こうが此方に気付いている様子は無いようですね。どうしますか?」

 

「戦いましょう。敵を確認してしまった以上臆して引く通りは無いわ」

 

「わかりました、行きましょうアイリスフィール。我らの初陣です」

 

 

 

 

 

倉庫街の一角で鉄の面に深緑のカソック姿のセレクターは荷物のようにマスターらしきモノを脇に抱え、彼の話に聞いていた聖杯戦争の大雑把な内容からセイバーとランサーが死合うこの場でライダー陣営、バーサーカー陣営の両方か若しくはどちらか一方と同盟を結ぶ為にやって来たのだが。

 

『セイバーしか来ていないな、マスター』

 

脇に抱えたマスターを無視して念話でこの場にいない(・・・・・・・)本当のマスターに状況を伝えた。

 

セイバーのサーヴァントであろう青い戦装束に銀の鎧の美少女が不可視の剣翳し姿を見せるように促す。

 

「臆病者!!それでもわれら英霊の端くれか!!」

 

『丁度いいや、白兵戦において最優のセイバー相手にどこまで通じるのか俺たち(ディクロニウス)の宝具の性能を見せて』

 

 

『了解した、マスター』

 

 

 

 

 

 

大声でセイバーが現れない敵を挑発していると小さな子供を脇に抱えた顔を鉄の面で顔どころか頭部全体を隠したサーヴァントがコンテナの奥からゆっくり歩きながらその姿を電灯に照らした。

そのサーヴァントは一度立ち止まり子供を下ろすとセイバーたちの壁になる位置に立ち、両手の指の間に何かを挟みながら構える。

 

「ふん、やっと現れたか。アイリスフィール下がっていてください」

 

「セイバー、気をつけて。私は正規のマスターじゃないから治癒魔術のサポートぐらいはできるけど、それ以上のことは……」

 

セイバーにだけ聞こえるようにアイリスフィールは予め自分のできることを伝える。

彼女には敵のサーヴァントのステータスを見るといった聖杯戦争に参加するマスターの能力を使用することができないのだ。

 

「心配要りません、たとえ何者だろうと私は全力で以って戦います」

 

「セイバー、お願い。私に勝利を!!」

 

キシャッ――アイリスフィールが叫ぶと目の前のサーヴァントの指から刃が飛び出してきた。右手に三本、左手に二本。

 

「―――~~~」

 

鉄の面で言葉がくぐもって聞こえないが恐らく何か詠唱を行っているのだろう。対魔力を持つセイバーは魔術を行使する敵を見て好機と一気に接近するが。

 

「なっ!?」

 

敵が手に持つ刃を地面に突き刺すという奇行を見て、その疾走を止めた。

すると突き刺さった刃が意思を持ったかのように突き刺さったまま各々が別の方向に動き出し地面に線を刻み始めたのだ。

 

「セイバー!!あの剣を止めて、何かはわからないけどあれは陣を刻んでいるわ!!」

 

「くっ」

 

魔術師であるアイリスフィールはすぐにその行動の意味を察するとセイバーに剣を止めるように指示を出す。が、既にセイバーからは見えない場所に刃は移動し砂利に金属の当たる音があちこち響き渡る。

セイバーは、唖然としていると地面を刻んでいた五本の刃は相手のサーヴァントの抱えていた子どもの立っている傍に正五角の基点を形作り止まった。

 

「この場に人払いと認識阻害の結界を張っただけだ」

 

相手のサーヴァントが、顔が隠れて見えないながらもセイバーたちにも聞こえるようにはっきりとしゃべった。

 

 

「これは、気を利かせたつもりか?」

 

「いいや、君が待っていたお陰でマスターを守る防御の陣も張れた。こちらの都合もあったな」

 

さあ、聖杯戦争を始めよう。カソック姿のサーヴァントは何も持たずにいながらも何か得物を構えるように両手を握った。

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