別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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他の作品を更新する筈が、思わず書いてしまいました。


突然の侵入者

 ここは迷宮都市オラリオ。世界で唯一『迷宮(ダンジョン)』が存在する円形の都市。堅牢かつ巨大な市壁に囲まれており、外周ほど高層の建造物が多く、中心ほど低層となり、中心部にはバベルと呼ばれる50階建ての白亜の摩天楼施設がある。

 

 その建造物の中に人気の酒場がある。『豊饒の女主人』と呼ばれる冒険者向きの酒場でありながらも、一般人までが訪れる人気店の一つ。料理の質が高いことと、店員たちが可愛いことで評判でもある。

 

 人気店であるが故に店は大忙しであり、最後の客が出て閉店になったのは深夜寸前となった。

 

「きょ、今日も疲れたニャ~~……」

 

「それには同意です」

 

 精根尽き果てるような嘆息する女性猫人(キャットピープル)――アーニャ・フローメルに、女性エルフ――リュー・リオンも同感だと頷いていた。

 

 人気店と言えば聞こえは良いが、その分忙しい所為で彼女達にとっては地獄の日々も同然だった。勿論他のウェイトレスや料理人たちも同様に。

 

「リュー、今日の当番はおミャーだけやってくれないかニャ~?」

 

「ダメです。さぼっているのがバレたら、ミア母さんに怒られますよ?」

 

 閉店後の作業として見回り当番をやる事となっており、今夜はアーニャとリューが行われる事になっていた。いつもは一人でやるのだが、今日は偶々二人でやっている。

 

 獣人とエルフと言う珍しい組み合わせだが、この店にはそんなの関係無い。種族間の諍いなど起きようものなら、皆の母親でもあるドワーフの女主人――ミア・グランドが黙っていない。

 

 ミア母さんという単語を聞いた瞬間、アーニャはビクッとするも渋々やる事となった。これまで何度も折檻されている事が若干のトラウマとなっているので。

 

 いつものように何事も無く順調に見回りを終わるだろうと二人は思った。倉庫から慌ただしい音を聞くまでは。

 

「な、何ニャ!?」

 

「今のは……倉庫の方からしましたね」

 

 耳をピンと反応させた獣人とエルフは、揃って倉庫の方へと視線を向けた。

 

 扉は間違いなく施錠されている。だと言うのに、倉庫の中から聞こえた音は一体何だろうかと二人は疑問視する。

 

「ま、まさか泥棒ニャ!?」

 

「だとしても、一体どうやって侵入したのでしょうか?」

 

 あの倉庫にはミアのお気に入りである酒が保管されている。中には樽で今も漬け込んでいる果実酒も含まれた。

 

 過去に起きた騒動の所為で倉庫が吹っ飛び、そこにあった酒が全て木っ端微塵になった事で、ミアの逆鱗に触れてしまった事がある。あの時の折檻は恐ろしかったと、当事者であるアーニャとリューは今でも鮮明に憶えている。

 

「ま、不味いニャ! もし酒が盗まれたなんて母ちゃんに知られたら大目玉確実ニャ!」

 

「確かに」

 

 二人は顔を青褪めながらも思い出した。ミアの逆鱗に触れ、折檻が如何に恐ろしかった事を。

 

 見回り当番をしていながらも酒が盗まれた。そんな事が起きればアーニャの言う通り確実にミアが激怒するだろう。

 

 あんな恐ろしい目に遭いたくない二人としては、一刻も早く倉庫の中を確認しようと動き出した。

 

 アーニャがすぐに施錠していた鍵を開けた直後、勢いよく扉をバンッと開けて中に入り、リューも後に続く。

 

 そして――

 

「コラァァァ! ここをミア母ちゃんの倉庫と知っての狼藉かニャ~~!?」

 

何者(だれ)だ!?」

 

 二人の予想が当たったように、中には泥棒らしき賊が入り込んでいた。見知らぬ服を身に纏った男が。

 

「!?!?」

 

 男は気付いてアーニャとリューを見た途端、信じられないように目を見開いていた。

 

 聞いた事の無い言葉を口にしながら戸惑っている男に、アーニャは気にする事なく詰問しようとする。

 

「おミャー誰ニャ!? 一体どうやって忍びこんだニャ!?」

 

「???」

 

 指をさしながら言うアーニャに対し、男は言葉が通じてないのか只管戸惑うばかりだった。

 

「―――――! ――――――!」

 

(一体どこの言葉だ? それに……)

 

 先程から男が口にしてるのは共通語(コイネー)でなかった。身形も含めて、明らかにオラリオの住民でなく外部の者である事が一目瞭然だ。

 

 一体どうやって侵入したのかがリューには全く分からない。扉は施錠されており、唯一ある窓もキチンと閉めている筈。

 

 そもそも、あんな奇妙な格好をした男は今まで見た事がなかった。もし客として来てれば間違いなく印象強くて記憶に残る。

 

 動機はどうあれ、この男は恐ろしい目に遭うのは確定だ。後で知った女主人からの折檻で沈むだろうと思いながら。

 

「なにを言ってるか分からなニャいが、ミャーが捕まえてやるニャー!」

 

 そう言ってアーニャが侵入者の男を捕らえようと、素早い身のこなしで突進していく。

 

 だが――

 

「ニャ? き、消えたニャ?」

 

「なっ!」

 

 捕まえようとした筈の男が突如消えた事にアーニャが動揺し、リューは信じられないと言わんばかりに目を見開いていた。

 

 直後、消えた筈の男がアーニャの背後を取っていた。

 

「アーニャ、後ろです!」

 

「へ? ニャ……」

 

 気付いて声を上げるリューに、アーニャは後ろを振り向こうとする寸前、彼女の首筋にトンと手刀を当てられた事で意識を失い、そのまま倒れてしまった。

 

(バカな! あのアーニャをたった一撃で!?)

 

 豊穣の女主人で働いている者達は色々と訳ありな集まりであり、ウェイトレスをやっているアーニャは相当な実力者の一人だ。下級冒険者達が何人束になっても勝てない『Lv.4』の実力である彼女が、手刀一発だけで倒されるなどあり得ない。

 

 この瞬間、リューは目の前の侵入者に対する認識を改めた。とても危険な存在であり、自身の知己であるシルに害を及ぼすかもしれないと思いながら。

 

「―――――――」

 

 男は呆れているように呟いていたが、分からない言葉である事に変わりはなかった。

 

 警戒しているリューを余所に、男が気絶してるアーニャをジッと見ていたかと思いきや、突然膝を折り彼女に向かって手を伸ばそうとする。

 

「っ! アーニャから離れなさい!」

 

 リューがそう警告するも、男は自身の言葉が通じてない所為か無視していた。

 

「貴様ぁ!」

 

 あと少しでアーニャの顔に触れそうになろうとした為、状況が状況の為にリューは実力行使で阻止しようと突進していく。

 

 男はそれに気付いて、大して慌てた様子を見せることなく振り向くも――

 

 

「人の倉庫で一体何騒いでいるんだい!?」

 

 

 突如、倉庫の出入り口から聞き覚えのある叫び声がした。

 

 足を止めるリューだけでなく、言葉が通じていない男も揃って振り向く。アーニャは気絶している筈なのに、何故かビクッと震えていた。

 

「ミ、ミア母さん……!」

 

 そこには怒りの表情をしているドワーフの女主人――ミア・グランドがいた。それによってリューは非常に焦った表情となっている。三年前にやらかしたあの出来事を思い出しながら。

 

「…………」

 

 男も男で、彼女の怒りを見てる事で思わず驚愕していた。言葉が通じずとも、ミアが途轍もなく怒っている事を察している。

 

「リュー、これは一体どういう事だい? アーニャが見慣れない男の前で寝てるように見えるんだが?」

 

「あ、いや……アーニャが倉庫に侵入したと思われる賊を捕らえようとしたところ、気絶させられてしまいまして……」

 

「ほう」

 

 怒気に当てられたリューは素直に白状した。それだけ恐れている証拠だ。

 

 簡単に聞いた後、ミアはリューからアーニャの近くにいる男の方へと視線を向ける。

 

「どこの誰かは知らないけど、あたしの倉庫に忍び込むとは随分いい度胸してるじゃないか」

 

「―――――」

 

 ミアの台詞に男は言い返すも、相変わらず言葉が通じない為に分からなかった。

 

「? 共通語(コイネー)じゃなさそうだね。お前さん、一体何者だい?」 

 

「……………」

 

 尋ねようとするミアの姿勢を見た男は、突如無言となり彼女をジッと見た。何を考えているのかを問おうとしたところで無駄だ。相手の言葉を理解しない限り。

 

 例え此処から逃げる為の算段を立てたところで見過ごす気など毛頭無い。目の前の男は既に詰んでいるのだ。ミアがこの場にいる時点で。

 

 万が一にでも無駄な抵抗をしようものなら即座に拘束しようと身構えるリューとミア。

 

 すると、男は立ち上がりながら両手を上げた。まるで降参すると言わんばかりの意思表示をしている。

 

 言葉が通じないなら、ジェスチャーで表そうとしたのだろう。それを理解してるリューとミアは伝わっても、簡単に警戒を緩める気など無い。もしかすれば、そう見せかけた演技と言う可能性を考慮している。

 

「……………」

 

 男はアーニャから離れ、両手を上げたまま、ゆっくりと二人に近付こうとする。

 

 そしてある程度の距離で立ち止まり、次にまたしてもジェスチャーをしてきた。握手をして欲しいと。

 

「!!!」

 

「「?」」

 

 ミアとリューは当然それに気付くも、何故そんな事をするのか分からずに訝っていた。

 

 けれど、男は握手をして欲しいとアピールするようにジェスチャーを続けている。

 

(よく見たらこの男、まだ坊主じゃないか)

 

 先程まで顔の辺りが暗くて大して見えなかったが、近付いてきた事で分かった。自分より遥かに年下と思われる人間(ヒューマン)の青年であると。

 

 普通ならこんな怪しい侵入者なんかと握手などせず、即刻【ギルド】か【ガネーシャ・ファミリア】に突き出すべきだろう。

 

 だが、ミアはそんな事を微塵も考えなかった。自分達に必死に伝えている青年の顔を見て、何か訳ありかもしれないと考えながら。

 

(コイツには無理だねぇ……)

 

 リューはエルフ故に、見知らぬ相手と握手などするのは以ての外だ。

 

 ここはドワーフの自分がやろうと、ミアは訝りながらも彼に合わせる事にした。もし良からぬ事をすれば、即刻張り倒せば良いだけなので。

 

 握手をしてくれるミアに伝わったと分かった男は、感謝の意を示すように頭を下げていた。

 

 ミアが男と握手をした瞬間――二人が繋いでいる手からバチッと火花が走った。

 

「っ!」

 

「ミア母さん!」

 

 驚くミアとは別に、心配そうな声を出すリュー。対して男は両眼を閉じており、急に無言となる。

 

 やはりこの男は良からぬ事をする為だったかと結論し、リューが即座にミアと握手している男の手を引き離そうとするが――

 

「成程。『共通語(コイネー)』と呼ばれるギリシアに似た言語だったのか」

 

「「!」」

 

 すると、先程まで言葉が通じなかった男が途端に自分達が解る言葉――共通語(コイネー)で言ってきた。

 

 予想外な事に驚愕してる二人を余所に、男は握手していたミアの手を放した後、一礼しながらこう言った。

 

「見知らぬ自分の為に合わせて頂き感謝します。こんな状況ですが、自分は隆誠・兵藤と申します」

 

 言葉が通じた男――隆誠・兵藤、もとい兵藤隆誠は二人に自己紹介をする。




いまいちな内容でしょうが、次回はリューセー視点になります。
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