別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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前話の内容がリューセー視点になってる話です。


元神、酒場に現る

「いててて……くそっ、アザゼルの奴。碌でもない物を俺に押し付けやがって……!」

 

 皆さん、初めまして。それと、こんにちは。もしくは、こんばんは。俺は聖書の神こと、人間に転生した兵藤隆誠と申します。

 

 駒王学園の地下にある堕天使総督アザゼルが(密かに)設計した実験室(ラボ)にて、ヤツが作った転移装置の暴走により巻き込まれ、見知らぬ場所へ転移されてしまいました。着いたかと思いきや、突然俺をまるで叩き出されたかのように地面に激突して今に至る。

 

 アザゼル曰く、平行世界へ転移すると物だと言っていた。それなら駒王学園に転移されてもおかしくないんだが……全く見知らぬ建物だった。

 

 現在俺がいる建物内は、倉庫と思われる。その証拠に保存してると思われる(たる)や酒瓶がいくつもあった。此処を管理している者がいると言うのが一目瞭然だ。

 

「取り敢えず、早く此処から出ないと……っ!」

 

 突如、ドタドタと慌ただしい音がして、倉庫の扉らしき物が開いた。

 

 それに反応した俺が振り向くと――

 

 

「~~~~~~~~~~!?」

 

「――――!?」

 

 

「なっ……。獣人に、エルフ……?」

 

 目の前には異常な組み合わせと言える存在二人がいた。猫耳をした獣人に、耳の尖ったエルフが何故かウェイトレスらしき服を身に纏っている。

 

 兵藤隆誠(おれ)が人間になる前の聖書の神(わたし)だった時、何度も見た事はある。だが、あんな組み合わせは見た事がない。特にエルフが野蛮だと忌み嫌ってる筈の獣人と一緒なのが意外過ぎる。

 

 エルフは基本的に他種族との馴れ合いを嫌う習性があり、余程の事が無い限り村から出ようとしない。中には例外もいるだろうが、少なくとも自分の知る限り、獣人とあそこまで普通に接してるエルフは見た事が無い。

 

「~~~~~!? ~~~~~~~!?」

 

「は? 何だって?」

 

 獣人娘が俺を指しながら何か言ってるが、向こうの言葉が全く分からなかった。

 

 明らかに聖書の神(わたし)の知らない言語だ。日本語や英語、否、自分の知ってる世界の言語じゃない。

 

 人間界、天界、冥界の言葉を知ってる筈の聖書の神(わたし)が知らないと言う事は即ち、此処は異世界という事になる。

 

 その推測は早計じゃないかと思われるだろうが、全世界の言葉を知ってる筈の聖書の神(わたし)が全く知らないのだ。聡明なアザゼルだってそう考える。

 

「ちょ、ちょっと待て! 俺は怪しい者じゃ……!」

 

「~~~~~~! ~~~~~~~!」

 

 俺に敵対意思が無いようにジェスチャーするも、獣人娘は全く訊く耳持たないと言わんとばかりに襲い掛かろうとする。

 

 本当は戦いたくないのだが、向こうが仕掛けてくるならやむを得ない。なるべく最低限の攻撃で済ませるとしよう。

 

 突進してくる獣人娘の攻撃が当たる瞬間、俺は超スピードで簡単に回避する。

 

「????」

 

「!?」

 

 俺が消えた事に獣人娘は動揺しており、もう一人の女性エルフは驚愕を露わにしている。

 

 二人の表情を余所に、俺は獣人娘の背後を取っている。

 

「―――――!」

 

「?」

 

 気付いた女性エルフが叫ぶも、獣人娘は後ろを振り向こうとする。だが、首筋にトンッと手刀で当てた瞬間、彼女は意識を失ってそのまま倒れた。

 

 一応加減したけど、大丈夫かな? すぐに目覚めて再び襲われても困るから、聖書の神(わたし)の光を少しばかり注ぎ込んで眠ってもらっている。あくまで少ない量だから、身体に倦怠感など走ったりはしない。

 

「襲い掛かってくれなきゃ、こんな事はしなかったのに……」

 

 呆れるように言い放つ俺に対し、女性エルフは先程とは打って変わる様に、まるで厄介な敵と遭遇したかのような警戒感を見せている。

 

 気絶させただけとはいえ、自分の仲間が倒れたからそうなるのは無理もないか。

 

 外傷はないと伝えたいのだが、生憎言葉が通じない状態だ。それが無理だとすれば、無事だと言う事をアピールすれば良いんだが……。

 

 取り敢えずやるだけやってみようと、俺は気絶している獣人娘を介抱する為に、一旦膝を折って両手を伸ばそうとするも――

 

「! ――――!」

 

 女性エルフが再び叫んだ。まるで獣人娘に手を出すなと言うような感じがする。

 

 けれど、何を言ってるか分からない俺は敢えて聞き流した。

 

「―――!」

 

(あっ、やっぱり無理か)

 

 あと少しで獣人娘を介抱する寸前、これ以上は見過ごせないと言わんばかりに女性エルフが襲い掛かろうとする。

 

 くそっ。やっぱり言葉が通じなければ、俺がやろうとしてる事が分からないか。どんなにアピールしても裏目に出てしまう。

 

 理解させる為には能力(ちから)を使い、相手の言語を知らなければ話しの仕様がない。

 

 こうなったら、あの女性エルフの頭の中を覗いて情報を得るしかない。その為には、一度彼女を気絶させなければ。

 

 相手せざるを得ないと、俺は突進してくる彼女を迎撃しようとするも――

 

 

「――――――――――――!?」

 

 

 突如、建物の出入り口から第三者の叫び声がした。と言っても、俺には何を言ってるか全くわからないが。

 

 それを聞いた女性エルフが足を止めて振り向き、俺も声がした方へ視線を向けると、如何にも怒っていると思われる体格が大きい中年の女性が佇んでいた。

 

「―――――……!」

 

 中年女性を見た事により、女性エルフは困惑、と言うより恐れているように顔を青褪めていた。

 

 俺も俺で言葉を失っている。彼女から発せられる怒りとプレッシャーが凄く伝わっているので。

 

「――――――? ――――――――?」

 

「―――……――――――――――」

 

「――」

 

 何を言ってるのか相変わらず分からないが、中年女性と女性エルフが話し合っている。

 

 恐らく今の状況を知る為に女性エルフが説明してるんだろう。その割には随分と恐れ多いような感じがするのは気のせいか?

 

 一通りの話を聞き終えたのか、中年女性は次に俺の方へと視線を向けてくる。

 

「―――――――――――」

 

「だから何を言ってるのか分からないっての」

 

 思わず言い返したが、やはり俺の言葉が分からないようだ。

 

 すると、中年女性は途端に怒りが消えて、怪訝な表情となった。

 

「? ――――――。――――――?」

 

「…………」

 

 再び訊ねてくる中年女性に、俺は敢えて無言とさせてもらった。言ったところで言葉が通じないから。

 

 けれど、一つ分かった事がある。この女性は襲い掛かってくる獣人娘や女性エルフとは違い、俺が何者なのかを尋ねようとしている。

 

 こちらの話を聞いてくれるなら非常に好都合だ。けれど、今はまだ言葉が通じないから、ジェスチャーで何とか伝えるとしよう。

 

 未だに警戒してる二人の女性を見ながら、俺はスクッと立ち上がり、すぐに両手をあげた。降参とも受け取れるジェスチャーだが、それでも攻撃の意思はないと伝わる筈だ。

 

「「………」」

 

 俺のジェスチャーが伝わったのか、二人は俺の行動に警戒しながらも黙って見ている。

 

 今度は近づこうと、獣人娘から離れ、降参の意思を示したまま中年女性に向かって、ゆっくり歩いていく。

 

(よし、後は俺に触れてくれれば)

 

 そう思いながら俺は、中年女性に片手を差し出した。握手して下さいとジェスチャーをしながら。

 

「「?」」

 

 俺のやる事に、中年女性だけでなく女性エルフも訝った表情だ。多分伝わっているだろうが、何故握手をするのかに疑問を抱いているんだろう。

 

 それでも俺は『握手をして下さい』のジェスチャーを続けている。これでしか表現をする事が出来ないのだから。

 

「……………」

 

 此方の熱意が伝わってくれたのか、ジッと見ている中年女性が片手を差し出してくれる。

 

 感謝するように頭を下げながら、俺は彼女の手に触れ、握手をした。同時に能力(ちから)を発動させ、彼女から言語情報を得ようと。

 

「!」

 

「――――」

 

 能力(ちから)を使った為に、俺と中年女性が握手をしてる手から一瞬の火花が走った事に、女性エルフが心配そうな声を出していた。

 

 けれど俺は一刻も早く情報を得ようと、ハイスピードで脳に詰め込み――

 

「成程。『共通語(コイネー)』と呼ばれるギリシアに似た言語だったのか」

 

「「!」」

 

 異世界の言語――『共通語(コイネー)』を漸く理解した。

 

 向こうは俺の言葉を完全に理解したのか、信じられないように目を見開いている。先程まで言葉が通じなかった筈なのに何故、と言う感じだ。

 

 握手していた中年女性の手を放した後、俺は一礼しながら告げた。

 

「見知らぬ自分の為に合わせて頂き感謝します。こんな状況ですが、自分は隆誠・兵藤と申します」

 

 外国だからと言う理由で、俺は普段名乗ってる姓名を逆にする事にした。

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