別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


休日

 リューと手合わせから更に一週間経過した。

 

 店の雑用仕事に慣れた俺は完全にルーチンワークとなっている。そつなくこなしてる事にミア母さんは只管感心されるばかりだ。

 

 そんな俺の頑張りに、ミア母さんから突如休みを与えられた。羽を伸ばすついでに、オラリオを散策してこいと。

 

 因みにそれを聞いたアーニャとクロエが物凄く五月蠅かった。

 

 内容としては――

 

「リューセーだけ休みなんてズルいにゃ! ミャーも欲しいニャ!」

 

「おミャー、ミア母ちゃんに気に入られてるからって、少しばかり調子に乗り過ぎニャ! 先輩のミャー達を差し置いて休むなんて生意気ニャ!」

 

 完全に妬み丸出しな言い掛かりだった。

 

 まぁその後、ミア母さんからの拳骨でノックアウトされ、そのまま店の奥へ強制連行されてしまったが。

 

 羨ましそうに見ているシル達を余所に、俺は事前に貰ったお金(ヴァリス)を懐に収めて、散策を始める事にした。

 

 

 

 

(思っていた以上に広いな……)

 

 オラリオを散策して今は昼時。店から出て数時間以上経ったが、全て把握するのは流石に無理だった。

 

 都市と呼ばれてるから広いのは分かっていたが、自分が予想した以上の広さだ。

 

 この都市の内部は、その中央から八方位に伸びた放射状のメインストリートにより分けられた八つの区画から構成されている。その一つの区画を見るだけでも、とてもじゃないが一日だけで見て回る事は出来ない。

 

 自分がいる区画だが、一通りもあって治安が問題無さそうな所だ。この都市は治安が悪いと聞いたが、恐らく別の区画では此処とは比べ物にならないほど酷いのかもしれない。

 

(あっ、腹が……)

 

 歩き回り続けた所為か、急に腹が減った。折角だし、貰ったお金で何か買って食べるか。と言っても、あんまり無駄遣いしたくないから、安くて手頃な食べ物を売ってそうな屋台に行ってみるか。

 

 この世界で食べた料理はミア母さんの賄いだけで、屋台とかで食べるのは全く初めてだ。あの人の料理は冒険者向けだからか、若干濃いめであっても結構美味しい。

 

 どんな料理を食べようかと少し楽しみしながら歩き、食べ物を売ってると思わしき屋台を発見した。

 

 

「だからよぉ~! ここは俺達のいる【――ファミリア】の管轄なんだから、ちゃんと金払わないと営業許可が下りねぇんだよ!」

 

「な、なに言ってんだい! ここはアンタ達冒険者じゃなくて、ギルドが管轄してるところじゃないか!」

 

「そんなの知らねぇなぁ~。いいからさっさと払いやがれ! でなけりゃこの店潰すぞ!」

 

 

 だが、何やら言い争いをしていた。

 

 如何にもガラの悪そうな男達が、屋台の店主と思われる中年女性に向かって脅迫同然の言い掛かりをつけていた。

 

 反論してる中年女性の言う通り、この辺りは確かギルドが管理している筈だ。少なくとも、あの連中が此処を管理してるとは到底思えない。

 

 普通に考えたら、男達の言い分に周囲が反論してもおかしくないんだが……全く咎めようとする様子が一切見受けられなかった。と言うより、まるで関わりたくないと見て見ぬふりをしてるような気がする。

 

 ああ、そう言えば会話の中で『ファミリア』や『冒険者』と口にしてたな。それを考えると、あのガラの悪い男共は【ファミリア】の冒険者で、主神から恩恵を授かっている事になる。だから周囲の一般人達は、自分より遥かに強い冒険者に逆らおうとしない訳か。もし手を出せばやられてしまうと分かっている為に。

 

 まさか、こんなにも早くミア母さんが言っていた連中を見るとは。『乱暴で狼藉を平然と働く無法者同然の冒険者』とは、正にアイツ等の事を指している。

 

「全く……」

 

 あんな愚者共はさっさと退場させるべきだと思った俺は、手を出さずにいる一般人達の間を通り抜けていく。

 

「早くしねぇと本当に店を――」

 

「すいません、ジャガ丸くんのソース味一つ下さい」

 

「――あぁ?」

 

 ガラの悪い冒険者共を無視するように、中年女性に屋台で売ってる商品を求めた。

 

「え? あ、あの……」

 

「んだテメェは!?」

 

「勝手に割り込んでんじゃねぇ!」

 

 急な事に呆然とする中年女性に対し、脅迫行為をしていた冒険者共が俺に向かって怒鳴ってくる。

 

「生憎、俺は貴様等みたいな変態露出狂共に用はない。さっさと失せろ」

 

「こ、このっ……!」

 

「何わけの分かんねぇこと言ってやがる!」

 

 侮辱された事で完全にキレた冒険者共が俺に殴りかかろうとするも――突如、奴等の服が破壊されて全裸となった。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」

 

『キャァァァアアアアアアアアア!!!』

 

 全裸となった事に気付いた冒険者共は、完全丸出しになってる股間を咄嗟に両手で隠そうとするも、一般人の女性達が大きな悲鳴をあげていた。

 

 こうなったのは、俺が素早く連中に触れた際、(イッセー)の技――洋服破壊(ドレスブレイク)を発動させたからだ。

 

 イッセーが開発したオリジナル技だが、アイツの兄だからか見ただけで術式を理解した。非常に不本意だったが。

 

 一生使う事はないだろうと思って封印するも、まさかこんな状況で使う事になるとは思いもしなかった。しかも男相手に。

 

 本当なら冒険者共を俺の方で簡単にぶちのめす事は可能なのだが、それだけで全く懲りないだろうと思い、変態のレッテルを貼らせる事にした。

 

 冒険者とはいえ、大の男が人通りが多い場所で全裸になってると知れ渡れば、一体どうなるか考えて欲しい。住民達から悍ましい目で見られる事になり、同【ファミリア】の同僚や主神から恥晒しと言われる破目になるだろう。

 

 力で行使するよりも、こう言った事の方が地味にキツい。世間の目というのは、それだけ周囲への影響が強いのだから。

 

「うわっ、やっぱり変態露出狂じゃん! 近付くな! アッチ行け!」

 

 犯人である俺は全裸となってる冒険者共に向かって汚物を見るような目をしながら、しっしっと手で払っていた。

 

「ぐっ、クソっ!」

 

「なんか分かんねぇけど、覚えてやがれ!」

 

 分が悪いと理解したみたいで、両手で股間を隠してる冒険者共は捨て台詞を吐いて去って行った。

 

 因みに連中が逃げた方向から女性の悲鳴が上がっているのが聞こえたが、敢えて気にしないでいる。

 

「いや~災難でしたね。あんな変態冒険者達に絡まれるなんて」

 

「え、えっと……」

 

 中年女性に話しかけるも、彼女は状況が全く分からず未だに呆然としてるままだった。

 

「取り敢えずジャガ丸くんのソース味が欲しいんですが」

 

「え? あ、しょ、少々お待ちを……!」

 

 厄介な連中がいなくなった事をやっと認識したみたいで、中年女性は自身が売ってる商品を用意しようとする。

 

 その後にお金を払い、出来立てのジャガ丸くんをハフハフと食べながら屋台を後にした。

 

 食べて分かった。ジャガ丸くんはコロッケに似ている食べ物であると。店に戻ったら試しに作ってみようと思う。

 

 そう思いながら歩いていると――

 

「はぁ~~~~……自分って、本当ついてないっすね」

 

 何やら陰鬱そうな雰囲気を醸し出している冒険者らしき黒髪の男がトボトボと歩いていた。

 

 さっきのガラの悪い冒険者共とは違い、気苦労が耐えなさそうな人間だ。

 

 見た目とは裏腹にかなりの実力者で、前に手合わせしたリューに近いオーラを感じる。けど、余り自信がなさそうにしてるが故か、オーラが脆弱そうに見えてしまう。

 

 どこの【ファミリア】にいるのかは知らないが、ああ言う奴は改めて鍛え直したら必ず大化けするだろう。出来れば俺が鍛えてやりたい位だ。尤も、何の接点が無い為、そんな機会は訪れないが。

 

 話す機会があれば手を差し伸べてやりたいなぁと思いながら、俺と冒険者はすれ違っていく。

 

(ったく、いつまで視てるんだか……)

 

 如何でも良いんだが、約一時間前から俺に無遠慮な視線を向けてくる奴がいた。

 

 最初は気のせいかと思って敢えて無視を続けるも、向こうは全く飽きないように見続けている。

 

 抗議したいところだが、生憎ソイツは俺の近くにいない。遥か遠くから覗き見しているのだ。

 

 歩きながらも視線の原因を探った結果、非常に高い所から見下ろしていると判明してる。俺の後ろにある超高層の塔――バベルの最上階辺りから。

 

 聞いた話によると、あの塔にはオラリオでも有数の【ファミリア】の神々が住み着いてるらしい。視線を向けてるのは即ち、見知らぬ神と言う事になる。

 

 この世界の神々は基本的に自由奔放な性格をしている為、下手に関わると碌な目に遭わないそうだ。聖書の神(わたし)が言える立場ではないが、何処の世界でも傍迷惑な神々がいるものだ。

 

 視線が鬱陶しくなってきた為、俺は少しばかり警告をする事にした。歩いている足を止めて、後ろを振り向いてバベルの最上階辺りを見る。『いい加減にしろ』と口パクをしながら。

 

 因みに俺の行動を見た周囲は何をやっているのかと不審に思っていたが、敢えて気にしない事にしてる。




冒険者「何かさっきの人、自分を見てたような……気のせいっすかね?」


女神「私の視線に気付いていたなんて……。なら今度は直接会ってみようかしら?」
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