別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
「外から聞こえてましたが、随分と物騒な事をしていますね」
「……………」
道案内されてる途中、とある光景を目にした。眷族同士でありながら、苛烈な殺し合い同然の戦いを繰り広げていると言う光景を。
オッタルは聞いてないのか無視しているのか分からないが、さっきから俺が何度声を掛けても全然反応せず、只管無言で進んでいるだけだった。
部外者である俺に余計な情報を与えたくないのだろう。かと言って、せめて話ぐらいは合わせて欲しいものだ。
「あのぅ、何故フレイヤ様は俺みたいな一般人に、配達依頼の御指名をしたんですか?」
「知らん」
フレイヤ関連の質問に、オッタルは一言だけ答えた。
いや、知らんって。アンタ【フレイヤ・ファミリア】の団長なのに、何も聞いてないのかよ。
オッタルはオラリオ最強冒険者で『頂天』と渾名され、唯一の『Lv.7』で、二つ名は
そんな凄い男が俺に道案内をしてるって、オラリオにいる住民が知れば仰天するだろう。と言うより、それをやらせてるフレイヤもどうかと思うんだが。
この世界にいるフレイヤは一体どんな性格をしてるのやら。少なくとも、自分がいる世界のフレイヤと全く違うと断言出来る。(勝手に運命の相手としている)俺を見て早々に抱き付く行為はしない筈だ。
眷族同士による戦いの光景から一変し、荘厳な建物の奥へ歩き続けてる最中、前方から眷族と思わしき
気のせいだろうか。この男、何だかアーニャに似てるような気が――
「おいオッタル、ソレは何だ?」
ソレって……俺は物じゃないんだが。
「フレイヤ様が連れて来るよう命じられた、ミアの店にいる従業員だ」
「……ああ、そう言えばいたな。
「……………」
見下す発言をする
今も
この世界の人間達は、
目の前にいる口の悪い
まぁ取り敢えず我慢しよう。俺が此処へ来たのは、あくまでフレイヤに会う為。こんな奴等に一々構っていたら、無駄な面倒が増えるだけだ。
傲慢な
「フレイヤ様、配達人を連れて参りました」
大きな扉に向かってオッタルがコンコンッとノックしながら言うと――
『入って』
扉の先からフレイヤと思わしき声が入室許可を出した。
………ん? ちょっと待て、何か物凄い聞き覚えのある声だったぞ。さっきのは将来俺の義妹となる予定の純血悪魔――リアス・グレモリーの声にソックリだったんだが……。
「失礼します」
俺の疑問を余所にオッタルが扉を開けて入室しようとする。それを見た俺はハッとして、すぐに思考を切り替えながら彼の後に付いて行く。
流石は有名な主神の部屋と言うべきか、とても広くありながらも神々しく豪華な作りだ。そして目の前に銀髪の髪と瞳を持ち、途轍もない美貌を持つ女神だからか、扇情的な服装でも上品に感じられる。
豪華な椅子に座っている彼女が、この世界に存在する女神フレイヤか。オッタル同様、俺の知っているフレイヤの容姿とは全く違う。
あれ程の美貌は常人が見れば確実に見惚れるどころか、うっかり魅了されかねないだろう。元神である俺としては、既に見慣れているので何とも感じないが。
フレイヤが俺と目が合った際、少しばかり意外そうに見るも、途端に笑みを浮かべた。その後に視線を外して、オッタルの方へと視線を移す。
「待っていたわ、オッタル」
「はっ」
まるで重大な使命を仰せつかったかのような一礼をするオッタルに、大袈裟過ぎだろうと内心呆れた。
それと、やっぱり俺の聞き間違いじゃなかった。この女神の声、リアスにそっくりだ。上品な喋り方も含めて。
何だかなぁ。失礼ながらも、俺の知ってるフレイヤとリアスがまるで合体したような感じがする。いや容姿は全く別なんだけどね。
そんな下らない事を考えているのを余所に、彼女は俺の方へ声を掛けようとする。
「よく来てくれたわ。貴方がミアの店に最近働き始めた従業員ね」
フレイヤはミア母さんの事をよく知ってるのか、随分と親しげな呼び方をしていた。
「お初にお目に掛かります、女神フレイヤ様。自分は兵藤・隆誠と申します」
「ふぅん……」
相手が相手な為に、取り敢えずは女神サマにご挨拶をしようと、深々に
何だ? 自己紹介しただけなのに、フレイヤが何故か興味深そうに見ているんだが。
「オッタル。彼と二人で話したいから、外してくれないかしら?」
「フレイヤ様、それは……」
外すよう命じるフレイヤに、オッタルが難色を示した。
彼女の側近と言うべき
「大丈夫よ。彼はあくまで、配達人として来ただけの一般人なのだから」
「………………」
「……分かったわ。出入り口前で待機してなさい」
オッタルの訴える視線に負けたのか、フレイヤが妥協するように待機を命じた。
近くで警護したい彼としては若干の不服があるも、取り敢えずはと言った感じで部屋から出ようとする。
「あの方に妙な真似をすれば、貴様の命は無いと思え」
「……はい」
退室する寸前、オッタルが俺にそう警告してきた。
妙な真似って何だよ。思いっきり突っ込みたい衝動に駆られながらも頷くと、彼はフレイヤに一礼した後に退室する。尤も、部屋の前に立っており、何かあれば即座に駆け付けるだろうが。
さて、それはそうとだ。オッタルが待機してるとは言え、この部屋には俺とフレイヤの二人っきりとなった。これがフレイヤ目当ての男だったら、確実に良からぬ事を考えるかもしれない。
「それじゃあ早速頼んだ料理を、そこのテーブルに置いて」
「かしこまりました」
フレイヤに命じられた俺は了承の返事をした後、豪華そうなテーブルの上に、風呂敷に包まれている料理を並べようと開けた。
その中にはメインの料理と、果実酒が入っていた。料理はともかく、酒の方はミア母さんが好んでる貴重なやつだ。相手が女神だからか、随分奮発したものだ。
「如何でしょうか?」
「良いわ」
フレイヤはそう答えながら座っていた椅子から立ち上がり、ツカツカと此方へ近づいてきた。
テーブルの近くにある椅子に座るかと思いきや、彼女はそのまま俺に近付き、魅了するような笑みを浮かべながら、片手で俺の頬に触れてくる。
「……何の真似ですか、フレイヤ様?」
「うふふ。私にこうされても全く動じていないなんて、やはり貴方は只の人間じゃなさそうね」
彼女の台詞に俺は思わず眉を顰めた。
まさかこの女神、初めから俺を此処へ誘き出す為に配達依頼をしたのか。
「ねぇ、この場で私の
「それは勿論、お断りさせて頂きます」
同姓同名の女神とは言え、会ったばかりの奴の言いなりになる気など毛頭無い為、俺は彼女の手を軽く振り払った。
それに加えて――
「今更気付いたのですが、高い
「…………」
休日の時に感じた視線とは別に、発生源と思われるオーラが目の前にいる奴と同一の物だった。
やはりコイツは俺の知ってるフレイヤとは全く別神だ。しかも俺が個人的に全く好かない部類でもある。
「もしそうであるなら、あんな事をした理由を是非とも伺いたいのですが」
「……ふ、ふふふ、あはははははははははは!」
すると、先程まで唖然とした表情のフレイヤが急に笑い出した。
「何が可笑しいんですか?」
まるで気でも狂ったかのような笑いな為、俺は内心危なげない奴だと思いながらも尋ねる。
「貴方は私の眷族でもなければ、恩恵すら持ってない
「あの、出来れば大笑いするのは止めてもらえません? でないと――」
俺がそう注意しようとするも、突如扉が開く音がする。
「フレイヤ様!」
予想通りと言うべきか、彼女の笑い声を聞いたオッタルが、何事かと鬼気迫るような表情をしていた。
「その方に一体何してやがる!?」
オッタルの他に、さっき会った
何故そうなっているのかを簡単に言うと、俺とフレイヤの距離がかなり近い。俺がフレイヤに何かしてると誤解されそうな位置である為、向こうがああして怒っているのである。
「あらあら、折角良いところだったのに」
「さっきのやり取りが、どこが良いところなんですか?」
二人の登場にフレイヤが少々気分を害するように言った為、思わず突っ込みを入れながら彼女から離れる俺。
それを見た
「アレン、止せ! フレイヤ様の神室だぞ!」
「先ずはこの不届き野郎を追い出すのが先だろうがぁ!」
完全に誤解しているみたいで、
だが――
「悪いけど、俺はそこまで甘んじるほどのお人好しじゃない」
「なっ!」
『!?』
ガシッと相手の腕を掴んで動きを止める俺に、
男は掴まれている俺の手から逃れようと抵抗するも、全く動けないでいる。
「貴様……!」
「心配しなくても、今すぐ出て行くから大人しくしてろ」
そう言いながら俺は手を放し、フレイヤに向かってこう言った。
「それではフレイヤ様。俺の仕事は終わりましたので、そろそろ店に戻らせて頂きます」
「え、あ……」
唖然としていたフレイヤが何た言いたげな表情だが、俺は気にせず一礼して部屋から出た。
そして
一方、『豊饒の女主人』では――
「リューセー、早く帰ってきてぇぇぇぇぇ!!」
『死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!』
「何べん言わすんだい! 口を動かす前に手を動かしな、馬鹿娘共!」
『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』
今も大変忙しいメイを中心とした料理人達が隆誠の帰りを心底待ち望むも、ミアがそれをぶった切る様な怒号を発していた。
以上、フレイヤとの出会いでした。
感想お待ちしています。