別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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フレイヤと再会

「他の客の迷惑なんだよ、このアホンダラ共ぉ!」

 

『ぎゃぁぁぁぁあ!!』

 

 朝の時間帯に関わらず、店はミア母さんの怒号で響いていた。客だけでなく、店員の俺達としては嘆息する一方だ。

 

「またリューセー目当ての神様達だったニャ」

 

「もうこれで何度目かニャ」

 

 ウンザリする様に厨房に来て報告するウェイトレスのアーニャとクロエ。

 

 調理中の俺は如何でもいいように聞き流しながら、完成した料理を皿に乗せていく。

 

 連日のようにミア母さんの怒号が響くようになったのは、数日前にあった【ロキ・ファミリア】がウチの店で宴会をしてた時だ。

 

 向こうが宴会中に、【ロキ・ファミリア】団員の金髪少女が酒を飲んで暴走していた際、俺が即座に取り押さえて気絶させた。しかも客達の目の前で。

 

 只の一般客なら大して問題無かったのだが、その相手はオラリオが注目してる冒険者だった。名はアイズ・ヴァレンシュタインで、【剣姫(けんき)】の二つ名を持ち、十代前半でありながらも第一級冒険者の【LV.5】。美少女剣士とも称されて、相当有名らしい。

 

 そんな大物を俺が取り押さえただけでなく、デコピン一発だけで気絶させてしまった為、それを目撃した客達が外に広めてしまった。

 

 噂の真意を確認しようと冒険者と思わしき者達が訪れるも、ミア母さんが『仕事の邪魔だ!』と追い出した。相手が相手だからか、冒険者達はミア母さんに逆らえない為に引き下がる事となる。

 

 これで解決したかと思ったのも束の間、今度は多くの神達が現れる事となる。この世界の神々は相当な娯楽好きみたいで、面白半分で何度も店にちょっかいを掛けに来ていた。

 

 聞けば、この世界にいる下界の人間が神を殺すのは禁忌となっているそうだ。その為に神が嫌がらせな事をしてきても、下界の人間は禁忌を危惧してか、手を上げる行為をやろうとしない。適当にやり過ごすか、黙って耐えるかのどちらかだ。神共はそれを理解してるかのように、ジワジワと追い詰めるようなゲス同然の行為をしている。

 

 けれどミア母さんは例外だった。神相手に平然と手を上げるどころか、情け容赦なく店から摘まみ出しているのだ。

 

「ミア母さんに何度やられても懲りないんだな」

 

「神様は基本そういう性格ですから」

 

 俺の呟きに反応するシルが苦笑しながら返した後、俺が作った料理をトレーに乗せて客の方へ運んでいく。

 

 やっと落ち着いたのか、ミア母さんが厨房に戻って来た。それでも不機嫌そうな表情であるが。

 

「全く。これだから神って奴は……!」

 

「……ゴメンなミア母さん、俺が余計な事をした所為で」

 

 迷惑を掛けてしまってる事に罪悪感を感じた俺が謝るも、向こうはフンっと鼻を鳴らす。

 

「謝る必要なんか無いんだよ。悪いのはアタシの店に無遠慮に来た(バカ)共さ」

 

 神相手にバカと容赦なく罵倒するミア母さんを非常に頼もしいと思ってしまった。

 

「じゃあ俺もミア母さんに倣って、もし神が絡んで来た場合、遠慮なくぶっ飛ばせばいいかな?」

 

「分かってるじゃないか。但し、ちゃんと加減するんだよ」

 

「了解」

 

『………………』

 

 俺とミア母さんの会話に、アーニャ達が何故かドン引きしていた。何だか神をも恐れぬ行為を見てるような感じで。

 

 あ、それはそうと、ある事を思い出した。

 

「ところで、昼以降は半休で良いかな? 久しぶりにオラリオを散策したいんだけど」

 

「ああ、良いよ。今日はそこまで忙しくないからね」

 

『えぇぇぇええええ!?』

 

 俺の半休申請にアッサリと了承するミア母さんに、聞いていたアーニャ達が途端に反応して大声を上げる。

 

 

 

 

 

 

(ったく、本当にしつこかったな)

 

 昼過ぎ。

 

 オラリオの散策をしてる最中、俺だと分かった神共が揃いも揃って俺に詰問してきた。俺がアイズ・ヴァレンシュタインを一撃で気絶させたのは本当なのかと。

 

 それどころか自分の【ファミリア】に入団しないかと勧誘もしてくる。何度断っても、向こうは此方の意思など全く関係無く、同じ事を何度も言ってくる始末だ。

 

 下手に出て穏便に済ませようとする俺も流石にウンザリ気味となったから、強制的に黙らせようと決意する。

 

 いきなり暴力行為をするのは不味い為、少しばかり趣向を凝らした行為を実行した。俺に顔を近づけてくる男神二人の頭を掴んだ直後、そのまま無理矢理くっ付けて男神同士のキスと言う行為を。

 

 突然の事に、男同士のキスをさせられてる男神二人は当然抗おうとするも、力は一般人と変わらないから、俺の握力から逃れる事が出来なかった。一分以上続けた結果、耐え切れなくなった男神二人は顔が真っ青の状態のまま気絶し、ピクピクと(ある意味)半死半生状態へと陥る。

 

 因みに俺がやったのは道の真ん中である為、神以外にも一般人達も言うまでもなく目撃していた。大半は男同士のキスを悍ましげに見ていたが、女の中には大変興味深そうに見て興奮してるのもいたのは気にしない事にしている。

 

 そして気絶した男神二人を確認した俺が――

 

『次にキスしたい方はいらっしゃいますか?』

 

 そう言った直後、神達は一斉に逃げ出した。俺に詰問してきたのは男神達ばかりだったので。

 

 やっといなくなったと安心した俺は、倒れてる男神を放って散策を再開し、今に至ると言う訳だ。

 

(ちょっと腹減ったな……)

 

 さっきまでずっと鬱陶しい神に絡まれていた為、少しばかり小腹が空いてしまった。

 

 以前に食べたジャガ丸くんでも食べようと、屋台を探そうとする。

 

 探して数分後、思いのほか見付かった。アレを見ると、以前にガラの悪い冒険者を思い出す。

 

 今日はいないなと思いながら、並んでる客がいないのを見てすぐに向かう。

 

 えっと、前はソース味を食べたから……試しに小豆クリーム味を食べてみるか。

 

「ジャガ丸くんの小豆クリーム味下さい」

 

「はいよ。運が良いねお客さん、丁度最後だったんだ」

 

「? 最後って?」

 

 注文を受けた店員が妙な事を言ってて、俺は思わず首を傾げてしまった。

 

「今日は期間限定のジャガ丸くんを売ってるんだよ。まぁつっても、いつもより大きめサイズのジャガ丸くんだけどよ」

 

「ほほ~う」

 

 成程。それで俺が最後の客だったのか。

 

 知らなかったとは言え、ちょっと得をした気分だ。

 

 そう思いながらお金を払い、店員から出来立て熱々なジャガ丸くんが入った袋を受け取る。確かに大き目で、小豆やクリームもかなりあった。何かこれだけでお昼ご飯になりそうだ。

 

 流石にサイズが大きい為、どこかに座って食べようと思った俺が移動を開始すると、何故か見覚えのある金髪が俺の横を通り過ぎた。

 

(今のは……)

 

 気になった俺が後ろを振り返ると、やはり見覚えのある人物だった。数日前、ウチの店で宴会に参加し、酒を飲んで暴走していた金髪美少女――アイズ・ヴァレンシュタインだ。

 

「あの、期間限定のジャガ丸くん小豆クリーム味を一つ下さい」

 

「あ~悪いね。たった今、売切れちゃったんだよ」

 

「……そう、ですか」

 

 無いと言われた事で、アイズ・ヴァレンシュタインは途端にドンヨリした雰囲気を醸し出していた。

 

 非常に楽しみにしていたのか、相当ショックを受けているようだ。見てるだけで凄く気の毒と思うほどに。

 

 少しばかり罪悪感に苛まれるから、自分が買ったのを渡そうかと考えてしまう。とは言え、いきなり見知らぬ人間から渡されたら彼女も困惑するだろうから、此処は敢えて無視する事にした。

 

 加えて、俺は彼女を気絶させた一件があるから、下手に顔を合わせれば面倒な事になるかもしれない。一般人の俺が『Lv.5』の第一級冒険者を簡単に気絶したから、プライドがかなり傷付いているだろうと。

 

 取り敢えず、アイズ・ヴァレンシュタインが未だ此方に気付いてない隙に、さっさと退散する事にした。

 

 

 

「よし、食べるか」

 

 アイズ・ヴァレンシュタインに気付かれる事なく退散した俺は、広場を見付けてベンチに座っていた。

 

 ジャガ丸くん小豆クリーム味が入った袋を取り出し、カプッと食べ始める。

 

 味の方は……美味しいと言えば美味しい。但し、総菜として食べるなら余り美味しくないが。

 

 ま、スイーツ感覚で食べれば結構いける味だ。小豆やクリームの甘さで、ジャガ丸くんの味がマイルドになっている。

 

 確かアイズ・ヴァレンシュタインは小豆クリーム味を買おうとしていたな。もしかしたら彼女はこれが好きなのかもしれない。そう考えると、またしても罪悪感に苛まれてしまう。

 

 会う機会があれば、これと似たような料理を作ってみるかと考え、ジャガ丸くんを食べ終える。

 

 本当は飲み物が欲しいけど、生憎今は持っていないから、後でどこかの喫茶店で紅茶を飲む事にした。

 

「ふぅ、食った食った……」

 

 大きかっただけに、結構腹が膨れた。これなら夕飯まで何も食べる必要はなさそうだ。

 

「さてと、喉が渇いたからお茶でも――」

 

「良かったら、私と一緒にどうかしら?」

 

「――は?」

 

 俺が独り言を口にしてる途中、誰かが俺に誘いの声を掛けて来た。

 

 聞き覚えのある声だと思いながら振り向いたら、先日に配達依頼をしてきた【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤだった。

 

 以前に会った時とは違い、肌が人目に晒さないよう、長い紺色のローブを羽織っている。

 

「久しぶりね、隆誠。この前は配達をしてくれてありがとう」

 

「……その節はどうも」

 

 気軽に挨拶をしてくるフレイヤに、俺は訝りながらも返した。

 

「何故こんな所に? 有名な派閥の主神が、護衛を付けずに歩くのは危険じゃないですか?」

 

「一人で出かけたい気分だったのよ。その途中で貴方を見付けたから、声を掛けたのよ」

 

「そうですか」

 

 今頃眷族のオッタル達はフレイヤがいない事に大騒ぎしながら捜索してるだろう。

 

 アイツ等はフレイヤに異常と言えるほど神聖視してるから、どんな事をしているのか手に取る様に分かる。

 

 なので、ここでもし俺がフレイヤと一緒にいるのを目撃したら面倒な事になるのは確実だ。あのアレンとか言う猫人(キャットピープル)の男が、また変な誤解をして襲い掛かって来るのが容易に想像出来る。

 

「では俺はこれにて失礼します」

 

「ちょっと。私を残して行くなんて失礼じゃない?」

 

 俺がベンチから立ち上がって去ろうとするも、フレイヤが即座に腕を掴んできた。

 

「貴女と一緒にいると碌な目に遭いませんからね。って言うか放して下さい」

 

 その気になれば簡単に振り払う事は可能だが、下手にやると彼女に傷が付く恐れがある。後から知ったオッタル達が、フレイヤを傷付けた俺を罰しようと総攻撃を仕掛けて来るかもしれないから。

 

「そんなこと言わないで、一緒にお茶を飲みに行きましょう。ねぇ?」

 

「………………」

 

 相手が有名な派閥の主神な為、無下に断る事が出来なかった。

 

 もし俺の知ってるフレイヤなら遠慮なく言ってるが、目の前にいるコイツは全くの別神。故に勝手が違う。

 

 結局断る事が出来なかった俺は仕方なく、本当に仕方なくフレイヤとお茶をする事となった。オッタル達が来た場合は責任持って対応するようにとの条件付きで。

 

「………やっぱり、私を相手に全く動じてないわね。非常に興味深いわ」

 

「何か仰いましたか?」

 

「何でもないわ」




オッタル「フレイヤ様は何処に!?」

アレン「あの方に触れようとするクソ野郎がいたら殺す!」


市民「な、何だ何だ!? 【フレイヤ・ファミリア】だぞ!」

アイズ「あれは……『猛者(おうじゃ)』と『女神の戦車(ヴァナ・フレイア)』? ロキやフィンに報告した方が良いかな?」
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