別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
先ず結論から言わせてもらう。
【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の抗争と言う大事件になる寸前に収束された。
こんな事になったのは俺の予想通り、やはりフレイヤが護衛を付けずに単身で都市を出歩いたのが原因であった。本当に人騒がせな奴だと改めて認識する。
絶対的な忠誠を誓ってる神物がいなくなった事に、【フレイヤ・ファミリア】は団員総出で血相を変えて探し回っていたそうだ。その途中で【ロキ・ファミリア】が目撃し、何かの計画を立てているんじゃないかと勘違いしてしまった。そして遭遇し、誤って衝突してしまい、二大派閥が交戦する事となったようだ。
その抗戦の最中、俺が
何とか謝ってどうにか鎮めたが、一番の元凶であるフレイヤが余計な事を言った所為で再びロキの怒りが再発した。
『ごめんなさい♪』
と可愛く微笑んでテヘペロなんて暴挙を仕出かしたのだ。これでロキが怒らない訳が無い。
それを見た完全にキレたロキは鉄拳を下したのは当然の行動である。これには流石のオッタル達も止めなかった。
一先ずは事無きを得て両派閥とも武器を鞘に収めて退散する……かと思いきや、ここで別の問題が起きた。それは俺だ。
フレイヤの身勝手な言動にキレたとは言え、怒鳴った事により【フレイヤ・ファミリア】の連中から物凄く敵視された。更にはアレンと言う
因みに俺が倒したアレンと言う奴だが、【フレイヤ・ファミリア】の副団長で第一級冒険者の『Lv.6』だそうだ。そんな最高戦力の一人を俺が簡単に倒した事で、ロキ達が警戒するのは仕方ないかもしれない。
自分の大事な眷族を倒された事に、フレイヤが怒ってもおかしくないのだが……何故か分からないが不問となった。その代わり、俺が何処の【ファミリア】に所属してたのか教えて欲しいと言う条件で。
そんな事で不問に付すならと俺はアッサリ教える事にした。何処の【ファミリア】にも所属してない他、神から恩恵を受けていない一般人である事を。
教えた瞬間、フレイヤがポカンとしており、聞き耳を立てていたロキや団員達も突如石みたいに固まった。何故そうなったのかは分からないが、嘘は吐いていない。嘘を見抜く神がいるから、フレイヤとロキは当然見抜いている筈。
妙な空気となるも、フレイヤは周囲にも聞こえる程の大笑いをする事に、誰も指摘しなかった。俺は俺で彼女の奇行に唖然としていたので。
そして――
『ねぇ隆誠、やっぱり私の眷族にならない?』
『待ちぃや色ボケぇ! どさくさに紛れて勧誘すんなゴラァ!』
フレイヤが改めて俺を自身の【ファミリア】に勧誘する事に、ロキが空かさず止めていた。
その後からはフレイヤだけでなく、ロキも同様の行動をする始末。尤も、どちらもキッパリと断らせてもらっている。【ファミリア】や冒険者なんかに一切興味はないと言う理由で。
しかし、どちらも全然諦めようとしないから、俺は迷惑覚悟でこう言った。
『俺を勧誘する前に、先ずは「豊饒の女主人」の女将――ミア母さんから了承を貰って下さい』
『『………』』
ミア母さんの名を出した瞬間、先程までしつこく勧誘していた女神二人は途端に静かになった。ロキは頬を引き攣らせ、フレイヤは……何故か分からないが含んだ笑みを浮かべて。
結局のところ、女神達は俺の勧誘を(一旦)諦めて、自身の眷族達を連れてやっと退散してくれた。気絶してるアレンは他の団員に運ばれていたが。
俺は今回の騒動によって、店に戻る事にした。ミア母さんに報告する為に。とある冒険者の一人がジッと見ていた事に気付かず。
☆
ミア母さんに一連の出来事を報告した。有名な【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤに暴言を吐いた他、勝手にミア母さんの名前を使った事を全て。
説教確定だと思いながら全て話し終えると、ミア母さんは凄く呆れた表情をしながら嘆息するだけで、一切怒る事はしなかった。それどころか、まるで気の毒そうに見る一方だ。
まぁその後に罰として、『暫くオラリオの散策はしないで、店の仕事に専念しろ』と言われた。散策をするのが楽しみな俺としては非常に残念だった。
『そんなの罰じゃないニャ! やっぱりミア母ちゃんマジでリューセーを贔屓し過ぎにゃ!』
アーニャから納得行かないと抗議するも、結局はミア母さんからの拳骨でノックアウトされた。『贔屓して欲しかったら、リューセー以上に仕事をこなしてみろ!』と言う台詞も一緒に。
まぁそんなこんなで翌日。
何事もなく朝の営業時間を終え、今度は夜に備えての準備を――
「お願いします。どうか私と戦って下さい」
「断る」
していたのだが、予想外の人物から戦いの申し出をされていた。
俺の目の前にいるのは、【ロキ・ファミリア】に所属する【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。昨日にすれ違った金髪の美少女だ。
金髪を見て思わず大事な妹分を連想させる。アーシアの髪が一番綺麗だと思ってるが、それは俺の個人的な贔屓である為、口に出す事は一切しない。
それはそうと、ヴァレンシュタインが何故店の前にいるかについてだ。
俺が営業時間前に厨房で準備していたところ、アーニャから『リューセーにお客さんニャ』と言われて店の出入り口に来たら、ヴァレンシュタインと遭遇したのである。
会って早々『自分と戦え』と言われて、即座に了承する奴なんかいない。しかも店の準備中に。
一応理由を聞いてみたところ、ヴァレンシュタインは神の恩恵を持ってない俺が、何故あそこまで強いのかを知りたいらしい。【フレイヤ・ファミリア】のアレンを一撃で倒した事も含めて。
だから直接戦う事で何か分かるかもしれないと思い、こうして俺に会いに来たと言う訳だ。
生憎、俺は彼女と戦う気なんか一切無い。それどころか大して興味も無かった。
俺がここまで明確に拒否するのは勿論理由がある。改めて彼女を観察して分かったのだ。今は穏やかでも、この子の奥底にある憎悪を感じたのだ。何に対してのかは知らないが、明らかにこれは復讐であると。
その瞬間に俺は思い出した。リアスの眷族である『
祐斗は人間だった頃、教会が密かに行っていた『聖剣計画』の被験者であった。それが原因で聖剣に対して途轍もない憎悪と復讐心を抱いたまま転生悪魔となるも、コカビエルの件で漸く終止符を打つ事が出来た。
今のヴァレンシュタインは嘗ての祐斗にそっくりだった。彼女の奥底にある憎悪と復讐を抱いているが一緒だったから。故に俺は彼女と戦う気にならないのだ。それさえ無ければ話は別だったのだが。
「悪いけど、もう帰ってくれないか? 俺、仕事があるんだよ」
「……どうしても、ダメですか?」
「ダメに決まってるだろ。そもそも君は一人で此処に来てるけど、そちらの主神や団長さん達は知ってるのか?」
「……………」
途端に無言となるヴァレンシュタイン。やはりと言うべきか、この子の独断で来たようだ。
いくら強かろうが、有名な第一級冒険者だろうが、相手の意思を無視したお願いをするのは止めて欲しい。
「だったら今の内に帰ってくれ。無断で来てるのがバレたら――」
「やはりここに来ていたか、アイズ」
俺が言ってる最中、突如第三者がヴァレンシュタインに向かって声を掛けて来た。
声が聞こえた方を見ると、エルフと思わしき緑髪の女性がいる。しかも少々不機嫌そうな表情で。
「リ、リヴェリア……」
ヴァレンシュタインが女性エルフを見た瞬間、段々と顔を青褪めていく。この反応からして、彼女と同じ【ロキ・ファミリア】の団員のようだ。
「昨日、ロキやフィンから言われた筈だ。『豊饒の女主人』に行って彼に会わないように、とな」
「え、えっと……」
明らかに怒ってます、みたいな言い方をしてる事でヴァレンシュタインはしどろもどろになっていた。
種族は違えど、まるで母親に叱られてる子供の光景だ。見てて微笑ましく思ってしまう。
そう言えばエルフで思い出した。この世界のエルフは他の種族より魔法が遥かに優れているらしい。
視たところ、このリヴェリアと言う女性エルフから、相当な魔力量を感じ取れる。今気付いたが、彼女はそこらのエルフとは違って魔力の質が異なっている。もしかすればエルフの上位種かもしれない。そう考えると強力な魔法を使う事が出来る筈だ。
俺はこの世界の魔法を未だに見た事が無い。なので多少の興味がある。俺がいる世界の魔術と比較をしてみたいと思っているほどに。
そう考えてると、女性エルフはヴァレンシュタインに有無を言わせず帰らせようとしていた。
「仕事中にすまなかったな。この子は君みたいな強い相手を見つけると、気になってしまうのだ。【ロキ・ファミリア】を代表し、この場で謝罪する」
「いえいえ、その子を帰してくれるのでしたら、此方としては非常に助かります」
ヴァレンシュタインを引き取りに来てくれたなら謝罪の必要は無い。が、先に向こうが謝罪してしまった為、受け取らざるを得なかった。
俺の返答を聞いた女性エルフが用件を終えると、彼女を連れて帰ろうとする。
「では行くぞ、アイズ。
「うう……」
相手が相手だからか、ヴァレンシュタインは逆らう事が出来ずに渋々と付いて行こうとする。
っと、向こうが帰る前にちょっと訊いておかないと。
「あ、ちょっと待って下さい。リヴェリアさん、に訊きたい事がありまして」
「私に?」
俺が声を掛けると、女性エルフ――リヴェリアは足を止めて俺の方へと振り向いた。
エルフは大して親交のない相手から名前で呼ばれると嫌悪感を抱くのもいるが、どうやら目の前の彼女はそう言った事は無さそうだ。
内心安堵しながらも、俺はある事を尋ねようとする。
「失礼ながら、貴女は見た感じ魔導士のようですが、『魔術』と言う物はご存知でしょうか?」
「魔術、だと? 魔法とは違うのか?」
あ、食い付いた。てっきり『悪いが知らない』と興味無く答えた後、ヴァレンシュタインを
「まぁ簡単に言うと――」
「リューセー! いつまで油を売ってんだい!?」
俺が教えようとするも、店の中からミア母さんの怒鳴り声がした。
くそっ、時間切れか。このまま魔術について簡単に説明した後、リヴェリアに
まぁ良い。機会はいくらでもあるから、今回はここまでにしよう。非常に興味深い表情になってるリヴェリアには申し訳ないが。
「すいません。ミア母さんからの呼び出しを喰らったので、これにて失礼します」
「ま、待ってくれ! せめて軽い説明だけでも――!」
引き留めようとするリヴェリアを無視する様に、俺は店の中に入るのであった。
フレイヤ「そう言えばオッタル、アレンはどうしたのかしら?」
オッタル「恐らくダンジョンへ向かったと思われます。昨日に私が一通り説明した際、相当荒れておりましたので」
フレイヤ「あらあら……。まぁ確かに、恩恵を持ってない隆誠に負けたのだから、そうなるのは仕方ないかもしれないわね」
オッタル「アレンに用があるのでしたら、すぐに連れてきますが」
フレイヤ「いいえ。今は放っておくわ。アレンには暫く時間が必要みたいだから」
オッタル「かしこまりました」
アイズ「知りたい、あの人の事を。恩恵もないのに、どうしてあんなに強いの?」
リヴェリア「彼が言った魔術とは何なのだ? 全く聞いた事もない。出来ればもう一度会って聞きたいのだが、ミアが黙ってないだろうし……。ああ、未知の知識を持つ者がいると言うのに……!」