別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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ロキとの話し合い

「何で自分が知っとるんや!?」

 

「名前は明かせませんが、とある筋から聞きましてね……」

 

 即行でロキの神室に案内された直後、凄く恥ずかしそうな表情で問い詰めてくるロキに俺は淡々と答えていた。

 

 どうやらこの神物にとって、『神々の黄昏(ラグナロク)』は若さ故の黒歴史だったようだ。今は全く考えていないらしい。

 

 ついでに『鷹の羽衣』の件は正確な返答をしてくれなかったが、未だに返していない事は分かった。

 

 どっちもやってる事は変わらないなぁと思いながら、俺は言葉巧みに誤魔化した。人間は神に嘘を吐けないのは分かってる。だから敢えて『とある筋』と、ぼかすように答えたのだ。これは決して嘘ではないから。

 

 当然ロキは俺が嘘を言ってない事は見抜いている筈だ。恐らく内心、『ウチの黒歴史をバラしたのは一体誰や!? フレイヤか? もしくはこの小僧が言った異国におる(アホ)がバラしたんか!?』とでも思ってるだろう。

 

 本当なら気付かれないように能力(ちから)を使って心を読んでみたいが、別世界と言えど神相手にやると不味いから止めておいた。俺が人間に転生した聖書の神(わたし)だと知られたら面倒である。

 

 因みに俺を此処に連れて来るのを提案したのはロキのようだ。あと少し待てば団長達が来る予定になっている。

 

「ったく。こっちは自分に礼を言うつもりでミア母ちゃんに無理して頼んだのに、まさかウチの黒歴史を暴露されるとは思わんかったわ!」

 

「あははは……これは大変失礼しました。ではお詫びとして、俺が異国から持ってきたお酒を差し上げましょう」

 

「酒やと?」

 

 非常に興味があるのか、ロキは途端に目の色が変わった。

 

 既にミア母さんが用意した料理や酒はテーブルの上に並べられているが、それとは全く違う酒だ。ロキに見えないよう片手を背中に回して収納用異空間にコッソリ展開し、その中から酒が入った一升瓶を取り出す。

 

 出したのはちょっと値が張る日本酒。俺が住んでいる日本で造られた物だ。今の聖書の神(わたし)は人間で未成年の身である為に飲まないが、遠出する時の接待用として所持している。

 

「何やソレ? ほんまに酒なんか?」

 

「ええ。銘は『神殺し』です」 

 

「おいおい、随分物騒な名前やな。神であるうちを殺す酒か?」

 

 酒の銘を聞いたロキが引き攣った顔になる。

 

 確かに名前を聞けばそうかもしれないが、これは純粋な只の酒だ。本当に神を殺す物じゃない。

 

 これは『鬼殺し』と言う鬼すら酔わす酒に倣って、とあるメーカーが神すら酔わす酒の銘として『神殺し』と名付けた高級日本酒だ。

 

 因みにこの酒で俺がいる世界のオーディンに呑ませた際、物凄く気に入ってベロンベロンに酔っていた。一緒に呑んでいたアザゼルも含めて。

 

「いえいえ。本当にただのお酒ですから、大丈夫ですって。さ、お注ぎしますよ」

 

「お、おう……」

 

 俺の催促にロキは取り敢えずと言った感じで頷き、自前のグラスを手にして差し出す。

 

 キュポッと蓋を開けると、日本酒特有の香り高い匂いが周囲に広がる。

 

「ほわぁ~何かええ匂いやなぁ~。神酒(ソーマ)とは全く違うけど、これはこれでええかも♪」

 

 既に匂いで気に入ったのか、ロキは俺が持ってる日本酒を興味深そうに見ていた。

 

 次にロキのグラスにトクトクと酒を注ぐと、一升瓶の中から湧き水のように透き通った液体が出てくる。

 

 ソーマって……この世界に酒の神ソーマもいるのか。まぁロキやフレイヤと言う別神がいるのだから、いても可笑しくは無いが。

 

 まさかとは思うけど、アレを人間に飲ませていないだろうな? 奴が作る酒は普通の人間が飲んでしまうと、麻薬中毒も同然なアルコール依存症に陥ってしまうんだが……。

 

 俺が酒を注ぎながら考えてると、ロキのグラスには一定量の酒が入っていた。

 

「おお~。ええ匂いなのに、酒とは思えんほど澄みきっとるなぁ~」

 

「ではお飲みください」

 

 大変興味深そうに眺めるロキは見た目と匂いを一通り楽しんだのか、手にしてるグラスを自身の口まで運び、グイッと一気に飲み干そうとする。

 

 ゴクゴクと水みたいに飲んでる事に、出来れば味わって欲しいと思いながら見てる中――

 

「ぷはぁ~~。何やこの酒はぁ~。初めて飲んだけどメッチャ美味いやないかぁ~。『神殺し』、恐るべしや!」

 

「気に入って頂けて何よりです」

 

 思った以上に高評価みたいで、ロキは大変ご機嫌な表情となっていた。

 

「リューセー、もう一杯頼むわ」

 

「まぁまぁ、そう焦らずに」

 

 出来れば今の内に話を済ませてから、後でゆっくり飲んで欲しかった。

 

 それにロキが飲んでる『神殺し』は日本酒の中でも結構値が張る高級日本酒だから、目の前で水みたいにガブガブ飲むのは御免被りたい。

 

「神ロキが酒で酔う前に、早く話を済ませた方が宜しいかと」

 

「おお、せやったなぁ」

 

 思い出したのか、差し出した空のグラスを一旦引っ込めたロキは先程までの酔って良そうな表情から一変する。

 

「この前はホンマに助かったわ。自分がいてくれなかったら、色々と危なかったからなぁ~」

 

「自分はオラリオに来たばかりで、そんなに実感は湧きませんがね」

 

「ああ。確か自分、遠い異国からやってきたってミア母ちゃんが言っとったなぁ」

 

 そう言いながら談笑に移った。その裏には自分に関しての情報収集も兼ねてる事に気付くも、俺は敢えて知らないフリをしながら接待をする。

 

 流石はトリックスターと称すべきだ。今は一見普通な会話をしてるが、所々には俺について探ろうと言う話の持って行き方をしていた。世界や性別は違えど、相手を巧みに誘導する話術は見事である。

 

 ロキが正確に知りたいのは、俺がいる遠い異国についてだった。と言っても、そこはぶっちゃけ俺がいる世界の事だから、流石にソレについて教える訳にはいかなかった。俺が別世界からやって来たなんて言えば、ロキは絶対に良からぬ事を考えるだろう。悪神ロキであれば猶更に、な。

 

 向こうからの質問には、一応答えていた。この世界の神は人間の嘘を見抜く事が出来るとフレイヤが教えてくれたから、ならば嘘を言わないようにすれば良い。質問には答えながらも、肝心な所を暈して話せば嘘だと判明しないから。

 

 当然ロキも気付いている筈。表面上はおちゃらけても、内心は俺の事を『食えない奴や』と思っているかもしれない。

 

 そしてこれ以上の情報収集は無理だと判断したのか、途端に話題を切り替えようとしてくる。

 

「なぁリューセー、何か欲しいもんとかあるか?」

 

「欲しい物、ですか?」

 

「せや。自分が思うとるほど、この前のアレ――特にフレイヤんとこの抗争は【ロキ・ファミリア(うちら)】にとってデッカイ借りなんや。だから今の内に返しとこうと、自分を此処へ呼んだんや」

 

「ふむ……」

 

 確かに考えてみれば、有名派閥が抗争を起こしたら最後、オラリオ中が大騒動になっていた。そこを俺が止めたので、ロキからすれば感謝と同時に大きな借りが出来た事になる。

 

 そんな大きな借りを放置しておけば、【ロキ・ファミリア】に対する強請りネタとして使われるかもしれない。それを危惧したロキは今の内に清算したい為、ミア母さんに無理言って俺に配達依頼の指名をしたのだろう。

 

 別世界から来た俺からすれば如何でもいいと思ってる上に、強請ろうだなんて思ってもいない。けれど向こうにとっては、そんな大きな借りをずっと背負いたくないから、此処でさっさと手放したいと言ったところか。

 

 まぁ、向こうが態々望みを叶えてくれるなら非常に好都合な展開だった。此方としては【ロキ・ファミリア】に接触する機会を望んでいたのだから。

 

「それって物でなく、お願いとかも可能ですか?」

 

「ええで。先に言うておくけど、自分のお願いは内容次第によって断るからな」

 

 事前に無理難題なお願いは無理だとロキは言った。

 

 それは尤もだと頷きながら、俺は彼女に自分が求めるお願いを求める。

 

「けど、その前に――」

 

「んあ? いきなり立ち上がってどうしたん?」

 

 急に立ち上がった事でロキが不思議がるも、俺は気にせず扉の前まで移動する。

 

 把手(とって)を掴み、勢いよくバッと扉を開けた瞬間――

 

「あ……」

 

「って、アイズ!」

 

 明らかに聞き耳を立てていたような仕草をしてるアイズ・ヴァレンシュタインを発見した事により、ロキは今気付いたかのように驚きの声を上げた。

 

「いつからおったんや!?」

 

「え、えっと……」

 

「神ロキが俺を此処へ案内してた時からいましたよ」

 

 正確にはヴァレンシュタインが本拠地(ホーム)に訪れた俺を発見後、即座に後をつけていた。

 

 害する事は無いだろうと思いながら敢えて放置していたのだが、まさかずっと会話を盗み聞きしていたとは……それだけ俺の事を知りたいのだろう。アレンを一撃で倒した実力を持っている俺の強さを。

 

 盗み聞きしていた彼女にロキは嘆息しながらも、仕方ないと言った感じで中へ招き入れる事にした。

 

「ったくもう。こらアイズたん、盗み聞きなんて感心せぇへんで~」

 

「……すみません」

 

 主神(おや)らしく窘めるロキに、シュンとした表情になっていくヴァレンシュタインは素直に謝る。

 

「すまんなぁ、リューセー。悪いんやけど、ここは主神であるうちの顔に免じて、アイズたんのやった事は許してくれんか?」

 

「怒ってはいませんから、お気になさらず」

 

「そら助かるわ」

 

 何でもないように言い放つ俺の発言にロキは安堵した。

 

「そう言えば、神ロキはご存知ですか? この子が前にうちの店に来て、『自分と戦って欲しい』と懇願された事を」

 

「ああ、リヴェリアから聞いとるで。あん時も自分が仕事中ホンマにすまんかったわ」

 

「………………」

 

 やはりロキは知っていたようだ。

 

 俺が以前の件を引っ張り出した事で、ヴァレンシュタインはとても居心地が悪そうに小さくなっていく。あくまでそう言う風に見えるだけだ。

 

「度々すまんなぁ~。アイズたんは自分みたいな強い相手を見ると、すぐに手合わせしたくなっちゃうんや」

 

 ヴァレンシュタインは空孫悟みたいなヤサイ人かよ、と言うツッコミをしたい衝動に抑えられるも何とか抑える事に成功した。

 

 ロキの言ってる事が嘘か本当か分からないが、そう考えると彼女は隙を見て俺に会って早々『戦って欲しい』と言う可能性がありそうだ。

 

 ………仕方ない。本当はやる気ないけど、今後の事を考えて今の内に済ませておくとしよう。

 

「神ロキ。俺のお願いとは全く別な話なんですが……」

 

「構わんで、言うてみぃ」

 

 興味深そうな表情になるロキだったが――

 

「また店に来られたら面倒なので、彼女――アイズ・ヴァレンシュタインとの手合わせをしても良いですか?」

 

「「!」」

 

 俺が言った事で今度は目を見開くのであった。

 

 それは勿論、近くにいたヴァレンシュタインも同様に。




レフィーヤ「アイズさん、さっきからロキの部屋の前で何をしてるんでしょうか?」

ティオネ「そう言えば、『豊饒の女主人』にいる男店員が来てたわね」

ティオナ「あ、それって前にアイズを一撃で倒した人だよね!?」

レフィーヤ「なっ!? 何を言ってるんですかティオナさん! アイズさんが負けるなんてあり得ません!」

ティオネ「そう言えばレフィーヤは宴会には参加してなかったわね」

ティオナ「ホントだよ~。酔っていたアイズにデコピン一発だけで――」


リヴェリア「お前達、そこで何をしている?」
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