別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
授業を学んでいる間、【ロキ・ファミリア】の内情と言うほどじゃないが、世間話をする事で色々分かった。特にアイズ・ヴァレンシュタインの事とか。
あくまで表面的な情報だが、どうやら七歳の頃から冒険者になったらしい。今は十四歳だから、逆算すると七年前になる。もし俺のいる世界だったら、色々問題視されるどころか法律に引っ掛かってもおかしくないだろう。いくら別世界だからと言っても、せめて年齢制限をするべきだとギルドにツッコミたいが、余所者の異分子である
まぁそれより、ヴァレンシュタインは深い事情があるが故に冒険者となり、度重なる戦いを乗り越えて『Lv.5』に至ったようだ。そして今も強くなろうと腕を磨き続けており、時間が許す限りダンジョンに足を運んでいるらしい。これにはリヴェリアも頭を悩ませていると、少しばかり愚痴りながら語っていた。当時は強くなる事しか興味が無くて感情が乏しくも、【ロキ・ファミリア】に新たな女性団員が加わった事で笑顔が自然に出るようになったと。
そんな中、あの子は別の興味を抱く事となった。冒険者でもなければ
因みに俺がリヴェリアの授業を受ける直前、必ずと言っていいほど手合わせしろとヴァレンシュタインはしつこく言ってくるが、何度も断り続けた事で少しばかり諦めてくれた。今は他の女性団員達とダンジョンに行っているようだ。授業に集中出来る俺としては非常に有難い。
「此処は良い所だなぁ……」
場所は中庭。俺は長椅子に座って周囲を見渡していた。
今日は授業に集中し過ぎてしまった為、少しばかり長めの休憩をしようとリヴェリアから言われた。
どうやら俺は過去にリヴェリアから授業を受けた者の中で、最も意欲的に取り組む真面目な生徒のようだ。質問された事にはちゃんと答え、分からない事を聞いた後にメモを取る姿勢を見て、ついつい長引かせてしまったらしい。
思わず『他の団員達は俺と違うんですか?』と訊いてみるも、彼女は少し言い難そうな表情となるも一言で教えてくれた。『冒険者の大半は勉学を好まない』と。
それを聞いてすぐに理解した。何処の世界でも勉強が嫌いな人間が沢山いると言うことに。恐らくヴァレンシュタインもその一人だろう。
まぁ俺がそんな事を気にする必要は無いし、ああだこうだと口出しする事じゃない。そこは人それぞれなのだから。
因みに俺がいる中庭だが、ちゃんと許可を貰っている。時々此処を通っている団員達は必ずと言っていいほど視線を向けるも、俺がリヴェリアに
「はぁぁぁぁ……」
「ん?」
すると、見覚えのある黒髪の男が中庭を歩いていた。しかも凄くどんよりした様子で顔が俯いて、話しかけるのを躊躇ってしまう。
以前会った時とは比べ物にならない程の落ち込みようだった。一体何が遭ったのかと気になるほどだ。
此方に全く気付いていないのか、彼は長椅子に座っている俺の隣に座ろうとする。
「自分、何であんなバカな事しちゃったんすかねぇ~……」
「一体何を仕出かしたんですか?」
独り言を呟き始める黒髪の男に俺が思わず問いかけるも、向こうは気にしてないかのように答えてくれた。
「この前、魔石の換金をちょろまかしたのがバレて、団長に怒られたんっすよ」
「だとしても落ち込み過ぎでしょう。そんなに厳しく怒られたんですか?」
「違うっす。他の団員達にもバレちゃって、エルフの団員達から白い目で見られて……」
「あぁ、確かにエルフってそう言うのを嫌いますからねぇ……」
エルフと言う種族は色々な意味で潔癖だ。俺と一緒に働いているリューも少しばかり面倒な性格をしてるが、慣れればどうって事は無い。
しかし、【ロキ・ファミリア】には多くのエルフ達がいる。どこまで知ったのかは分からないけど、彼の様子からして相当キツかったのが分かった。
確かに不正をやってはいけないのは分かるけど、お金をちょろまかした程度で、人を追い詰めるほどに軽蔑の眼差しを送らなくても良いだろうに。まぁ金額次第でそうせざるを得ないかもしれないが。
「因みにちょろまかした理由は?」
「歓楽街にいる娼館の女性に……って、そこまで聞かないで欲しいっす! ん?」
俺の問いに俯きながら答えていた黒髪の男は、途中で顔を上げてツッコミを入れてきた。そして、俺の顔を見てやっと気付く。
「た、確か『豊穣の女主人』にいる男性店員っすよね?」
「はい。聞いてると思いますが、今日もリヴェリアさんに
今は休憩中で此処にいますと付け加えた後、彼は恐る恐ると俺に訊ねてくる。
「も、もしかしてさっきの話、全部聞いたっすか?」
「貴方の隣に座っている俺以外に誰かいますか?」
俺が逆に問い返した瞬間――
「………………………………………………もう自分、マジで死にたくなってきたっす……」
彼は今まで以上に凄い落ち込みを見せるどころか、自殺したいほどの精神状態に陥っていた。
「はいはい、死のうとするのは止めて下さいね」
赤の他人に自分の気持ちを暴露した事で大恥を晒した彼の気持ちを理解しながらも、取り合えず全力でフォローする事にした。
以前から話す機会を狙っていたと言うのに、こんな事で今後の付き合いを途絶えさせる訳にはいかない。
「ご存知でしょうが、俺は『隆誠・兵藤』です。リューセーと呼んで下さい」
「自分は『ラウル・ノールド』っす」
漸く正常に戻った黒髪の男――ラウル・ノールド(以降はラウル)は自己紹介をしてくれた。
「つかぬ事を聞きますが、ノールドさんはおいくつですか?」
「自分もラウルで良いっすよ。今年で十九っす」
「ほほう、俺と同い年でしたか」
転生したとは言え、まさか興味を抱いた人間が自分と同い年だったとは。
「だったらいっそタメ口で良いかな?」
「勿論っすよ。あ、でも自分は元からこう言う話し方なので気にしないで欲しいっす」
「そうか」
話し方は明らかに後輩口調なんだが……まぁ敢えて触れないでおくとしよう。
その後に段々親しくなって会話している中、さり気無く
突出した部分が無いどころか、殆どが地味に等しいオーラだった。失礼な例えだが、どこにでもいそうなモブキャラがちょっと強いみたいな感じだ。実力が突出してるヴァレンシュタインと戦えば、簡単に負かされてしまうだろう。
端から見れば取るに足らない地味キャラだと思われるだろうが、俺は全くそう思っていない。寧ろ、こんな素晴らしい原石を放っておくのが勿体ないと高評価を下す程だ。
今のラウルは結構卑屈な部分が表に出し過ぎる余り、その所為で自分に自信を持つ事が出来ない状態になっている。
それとは別に、彼の身体能力は非常に素晴らしい。人間だった頃のイッセー以上に、身体の基礎が充分過ぎる程に出来上がっているのだ。後は誰かが技を教えれば、大化けするほどの理想的な冒険者になるだろう。
聞いた話によると、冒険者は自己流で腕を磨き、そして自ら技を覚えるのが常識となっており、誰かが師となって技を教えると言う事はしない。それでも戦いの基礎くらいは教えてもらえるようだが。
自分の技は自分で編み出さなければならないとは、この世界は色々厳しいモノだと思う。技を誰かに継承させれば、それは更に進化して強くなる事だって出来るのだが、この世界の住人ではない
だがしかし、今のラウルを放置する事が出来なかった。それどころか、鍛えて強くさせたいと思っている。
なので、ラウルを自分が鍛えたらどこまで強くなるのかと思わず考えてしまう。リヴェリアや団長のフィン達が鍛えないのなら、代わりに俺が指南したい。と言うかさせて欲しい。こんな原石を鍛えないなんて余りにも勿体なさ過ぎるから。
………あ、そうだ。【ロキ・ファミリア】の借りをそれで清算するのもアリかもしれない。フィン達が認めてくれればの話だが、な。
「リューセー、休憩時間はもうとっくに過ぎているぞ」
「あっ……」
ラウルと話ながら内心で計画を立てている中、ちょっと怒った表情になってるリヴェリアが中庭にやってきた。
不味い。夢中になってる余り、授業の事をすっかり忘れてた。
あ、そう言えばリヴェリアには
ティオナ「ねぇアイズ、さっきからモンスターを倒す時に突き技ばかり使ってない?」
ティオネ「にしても随分独特な構えね。もしかして団長に教えてもらったの?」
アイズ「……フィンじゃない」