別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
サブタイトルで気付いた方はいるかもしれませんが。
ラウルと会合してから、それなりに打ち解ける仲となっていった。会話を重ねる事に分かったのだが、彼は【ロキ・ファミリア】の二軍でありながらも、周囲から信頼されているようだ。色々と気苦労が絶えない中間管理職、と言う印象が見受けられたのは俺の心の内に秘めておくとする。
俺達が親しげに話したのを機になったのか、他の団員からも声を掛ける事が多くなった。
主に多いのはアーニャとクロエと同じ女性
彼女と一通り話した後、思わずある事を訊いた。
どうやらオータムはそれが嫌いらしく、自ら矯正して標準的な口調になったようだ。こう言う真面目な所は、ウチの店にいるアーニャとクロエも見習って欲しいと心底願う。
まぁそれはそうと、肝心の
『ルーン魔術……。初めて聞くが、私の好奇心を刺激して止まないな。ならば一刻も早く
リヴェリアが物凄くやる気に満ち溢れ、そりゃもう熱心に教えてくれました。午前授業の筈が午後に突入しかけるも、フィンや他の団員が止める事もあった程に。
「う~ん、一応書いてみたが……」
もう既に自身の休憩場所となってる中庭にいる俺は、物の試しとして用紙に文章を書いてみた。以前に自分が読んだファンタジー小説の序盤だけだが。
因みに今日ラウルはいなかった。オータムや他の団員達と一緒にダンジョン探索してるみたいで、夕方に戻る予定だそうだ。休憩の話し相手になって欲しかったが、向こうは冒険者なので、ダンジョンに行く必要の無い俺とは事情が全く異なる。
ダンジョンと言えばヴァレンシュタインも同様、このホームにいない。ここ最近、何でも独特の構えをした突き技でモンスターを倒しているとの目撃情報があったとか。
それを聞いた俺は物凄く心当たりがあった。恐らくあの子は、俺が手合わせで使った突き技――『牙撃』を真似ている。俺と相手をしてくれないから、独自に学んでいるのだろう。
普通なら勝手に真似するのは憤慨するかもしれないが、俺としては別に気にしてないどころか、寧ろ構わないと思っている。『牙撃』は元々創作キャラの技であり、俺が勝手に真似ているので、ヴァレンシュタインに文句を言う筋合いなど一切無い。
「後で彼女に見せてみるか」
「何を見せるの?」
自身の独り言に反応したと思われる第三者の声がした為、俺は一旦書くのを止めた。振り返る先には、アマゾネスと思わしき褐色肌の黒髪少女がいる。
この世界のアマゾネスはエルフと異なり、かなり開放的で肌を露出している。あくまで必要最低限の部分を隠している為、スタイルが丸分かりだった。因みに目の前にいる少女は、(失礼なのを分かった上で)塔城小猫やソーナ・シトリー並みに胸が小さい。間違ってもそんな失礼な事は口にする気は毛頭無いと断言しておく。
「えっと、君は?」
「あ、ゴメンね。あたし、『ティオナ・ヒリュテ』。アイズと同じ冒険者。ティオナで良いよ」
屈託のない笑みを浮かべたまま、アマゾネスの少女――ティオナ・ヒリュテ(以降はティオナ)は自己紹介をした。
「どうも。ご存知でしょうが、『隆誠・兵藤』です。俺もリューセーで良いですよ、ティオナさん」
「うん。よろしくね、リューセー。それとあたしの事はティオナで良いし、そんなかたっ苦しい喋り方しなくていいよ」
お互いに自己紹介を終えると、凄く親しげに自分の名前を呼んでくるティオナは、俺の隣に座ろうとする。
初対面だと言うのに、随分とフレンドリーな子だ。普通なら一定の距離で話し、それを重ねる事で親しくなるのだが、この子の場合はそれを無視して積極的に話しかけている。
普通なら疑問を抱くかもしれないが、そんな気は一切起きない。一切悪意が感じない純真な笑みを浮かべてるティオナを見て、アーシアと似たような感じがするから。
「ところで、俺に何か用かい?」
改めて用件を尋ねると、ティオナは俺が手にしてる用紙を指した。
「リューセーが書いてるその紙がちょっと気になってね。もしかしてリヴェリアからの宿題?」
俺が此処に来てる理由は【ロキ・ファミリア】の団員達は既に周知されてるから、それは当然ティオナも知っている。
彼女からの問いに、俺はこう答えた。
「いいや、単なる自主練習だよ。以前読んだ物語を参考に、文の練習用として書いてるんだ」
「え? それ、もしかして英雄譚なの?」
物語に興味があるのか、隣に座っているティオナは近付きながら俺が手にしてる用紙へ視線を移す。
英雄譚と言っても、俺のいる元の世界で読んだ
「まぁ、似たようなモノだな。気になるなら読んでみるかい?」
あくまで
受け取ったティオナは、興味深そうに読もうとする。
数秒後、急に表情が固まったかと思いきや、まるで魅入るかのように集中していく。
俺の書いた
(あ、不味い!)
ふと、時計を見たら休憩時間が終わりそうだった。ラウルの時みたいに遅れたら、またリヴェリアが此処に来て怒られてしまう。
「悪い、ティオナ。俺は授業に行くから、後で(
「うん」
立ち上がりながらそう言う俺だが、ティオナは空返事をしながらも用紙に書いてる文章を読み続けていた。
数枚書いただけなので、恐らく数分もしない内に読み終わる筈だ。俺が書いた部分はまだプロローグの途中に過ぎないから。
そう思いながら中庭から去り、リヴェリアが待っているであろう応接室へと向かう。
「ほう。休憩時間に文を書く練習をしていたのか」
応接室に戻って授業を再開している中、俺が休憩時間中にやっていた事を教えると、リヴェリアは感心するように言っていた。
「本当はリヴェリアさんに見せるつもりだったんですがね」
「その言い方だと、誰かが代わりに読んでいるのか?」
「ええ。其方の団員であるティオナが物語好きみたいで、熱心に読んでましてね」
会って早々仲良くなった他、俺の書いた文章について簡単に話した。それを聞いた後、リヴェリアが途端に苦笑する。
「ティオナはそう言うのに目が無いからな。一応私も興味あるのだが、どう言った物語なんだ?」
「俺の
この世界ではライトノベルと言う単語は知らないだろうから、言い方を変えて冒険譚にしておいた。
内容としてはこうだ。『平和な世界で暮らしていた青年が突然の事故で死亡するが、見知らぬ世界で前世の記憶を持ったまま転生して冒険者となり、仲間と共に困難を乗り越えて強大な力を持った魔王を倒す』、と言う異世界転生の物語。
そのラノベを初めて見た
「それは興味深いな。良ければ私も読んでみたいものだ」
物語の内容を端的に教えていると、リヴェリアも意外と乗り気で読みたそうにしている。
「リヴェリアさんが望むなら書きますけど、ルーン魔術を教える時間が延期になってしまっても良いのですか?」
「そ、それは困る!」
途端に焦ったような表情になるリヴェリア。
やはり彼女としては冒険譚よりも、ルーン魔術の方を優先したいようだ。尤も、覚えられるかどうかは保証しないが、な。
「さあ、此処から無駄話は無しだ。続けるぞ」
「了解です」
本来の目的を思い出したかのように、リヴェリアは授業を再開しようとする。
既に基礎が出来る為、今回は応用と復習を中心にした内容だった。
いつも通りノートに必要な個所をメモしている最中――
「リューセー!」
すると、誰かが応接室に入って俺の名前を大声で呼んだ。
その声はついさっきまで話していたアマゾネスの少女――ティオナだった。彼女は俺を見付けて早々、凄い勢いで俺に接近する。
「ど、どうしたティオナ?」
「ティオナ、今は取り込み中なんだが……」
戸惑う俺と咎めるように言ってくるリヴェリアだが、当の本人は全く気にしてないようにこう言ってきた。
「ねぇねぇリューセー、コレの続き書いて!」
「え?」
ティオナは俺が渡した数枚の用紙を見せながら、物語の続きを書くよう催促してきた。
「まだ序盤だけど、読んでてすっごく面白いの! あたし、この後の展開が気になるから書いて欲しい!」
「ゴメン。今日は無理」
「ええ~、そんなぁ~! ねぇお願いリューセー、今すぐ書いて! このままだとあたし、気になって夜眠れなくなっちゃうよ~!」
無理だと断るも、ティオナは途端に我儘な子供みたいに強請ってきた。
書いてあげたいのは山々だが、ソレとは別に早く退散した方が良い。でないと、俺の目の前にいるリヴェリアが怒る寸前になっているから。
「ティオナ、この私を無視するとは随分良い度胸をしているじゃないか」
「え?」
声が大きくない筈なのに、ティオナは途端に固まった。同時に声の主を見ながら。
その直後、授業を邪魔されたリヴェリアからの雷が落ちたのは言うまでも無い。
シル「どうしたの、リュー?」
リュー「いえ、彼がリヴェリア様に無礼を働いていないか少々気になりまして……」
アーニャ「それ毎回やってるニャ」
クロエ「そしてリューセーが帰って来る度に訊いてるニャ」
ルノア「同じ事を何度も訊かれるリューセーからしたら堪ったもんじゃないわね」