別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は凄く短い幕間話です。


疑問が深まるアイズ

(やっぱり……全然分からない)

 

 訓練場で佇んでいる少女――アイズ・ヴァレンシュタインは、手にしてる木刀を見ながら諦めるように嘆息していた。

 

 約二週間前、ある人物と手合わせをして敗北した。それが今も頭から離れず、此処へ来る度に思い出してしまう。

 

 その人物は『豊穣の女主人』にいる男性店員――リューセー。冒険者じゃない一般人なのにも拘らず、彼は『Lv.5』の自分を一撃だけで勝った実力者。

 

 他にもある。危うく【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の抗争開始寸前となっていた際、女神フレイヤを相手に平然と怒鳴っていたのを見た【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】アレン・フローメルの最速と呼べる一撃を簡単に片手で受け止め、その直後に一撃で倒した。隆誠は技を使って倒したのだが、アイズ達からすれば睨んだだけで相手を吹っ飛ばした光景にしか見えなかった。だから今もどうやってアレンを倒したのかは全く分からず仕舞いである。

 

 てっきり最初は自分よりレベルが上の冒険者かと思っていたが、そこで予想外な事実が判明した。彼はどこの【ファミリア】にも所属していないどころか、神の恩恵(ファルナ)も授かっていない正真正銘の一般人であったと。人間(こども)の嘘を見抜ける女神ロキ、そして女神フレイヤの目の前で堂々と言い切ったから一切嘘を吐いていないと認識した瞬間、アイズは隆誠に興味を抱く。アレンを簡単に倒せる実力(ちから)をどうやって得たのかを知りたいが為に。

 

 そしていざ手合わせする前、隆誠は信じられない事をした。自分が愛剣(デスペレート)で使うのに対し、何と向こうは訓練用の木刀で挑もうとしていたのだ。これには審判役のロキ、見物人となってるフィン達ですら正気なのかと疑った程であった。

 

 普段物静かなアイズですらもバカにされてるとムッと眉を顰め、本気を出させる為に木刀を真っ二つにしてやると思いながら攻撃するが、斬れないどころか簡単に防がれてしまった事で状況が一変した。間違いなく木刀の筈なのに当たった瞬間、まるで不壊属性(デュランダル)のような硬い金属音を響かせたのだ。最初は単に自分の聞き間違いだと思って再度攻撃するも、何度も響かせながら自分の攻撃を木刀で防がれた。余りの事に理解が追い付かない状況の中、隆誠が『突き技』と思われる独特の構えをした後に敗北する結果となってしまうも、更に強く関心を抱く事となった。

 

 それから彼は共通語(コイネー)を覚える為に本拠地(ホーム)を訪れてるから、再度手合わせしようと頼むも、まるで此方の考えがお見通しかのように即行で断られてしまう。それでも挫けずにチャレンジするも、自分の大好物であるジャガ丸くんを用意された事で諦めざるを得なくなってしまったが。

 

 隆誠が手合わせの時に使った木刀に何か秘密があるんじゃないかと思って今も調べているが、結局分からず仕舞いでお手上げとなっている。他には仲が良いアマゾネス姉妹(ティオナとティオネ)とダンジョンへ行った際、あの突き技を真似てみたが、威力はあっても自分には中々しっくりこなかったと言う結果になっている。

 

 こればかりは本人に聞かなければ分からないと言う結論に達したアイズは、モヤモヤとしたまま訓練場を後にした。

 

(あ、いた)

 

 アイズは時々中庭にある長椅子に座って休憩する事があった。だから久々に利用しようと訪れるも、そこには既に隆誠が使っていた。

 

 聞いた話によれば、隆誠は共通語(コイネー)の授業を学んでいる最中、休憩時間となった時は訪れているようだ。最初はソレを利用して手合わせのお願いを試みたが、何度言っても断られるのがオチだと分かっていたので諦めていた。加えて、講師役になってるリヴェリアの耳に入ったら絶対怒るとも予想していたので。

 

 彼は長椅子に座っているのだが、隣には別の人物も座っていた。いつも元気で自分や他の団員にも笑顔を見せるアマゾネス――ティオナが。

 

「ねぇリューセー、あの物語の続き書いてー!」

 

「だから言ってるだろう。今はリヴェリアさんから共通語(コイネー)を教わってる最中だから無理だって」

 

「じゃあそれが終わってからで良いからさー!」

 

 腕に引っ付きながらもお願いしているティオナに、彼女に少しばかり辟易してる隆誠。

 

「無理。共通語(コイネー)の授業が終わったら他にやる事があるんでな」

 

「じゃあ、いつ書いてくれるのー!?」

 

「さぁ? ってか、それはそうといい加減に離れてくれないか?」

 

 段々引っ付いてる腕が痛くなっているんだが、と言いながら眉を顰めてる隆誠。しかしティオナは離れようとしなかった。

 

「ちょっとでも良いから書いてよー! アレ読んだ後、あたし気になって夜眠れない日々が続いてるんだからさー!」

 

「そこまでかよ……」

 

 ティオナが大の物語好きと分かった事に、隆誠は少しばかり呆れながらも嘆息していた。

 

「悪いけど今は無理だって。コレあげるからさ」

 

「あ、ジャガ丸くん……」

 

(!)

 

 何処から出したのは不明だが、隆誠はティオナに紙袋に入ってるジャガ丸くんを渡そうとしていた。当然、遠目で眺めているアイズも見えている。

 

「それって、アイズにあげたジャガ丸くん?」

 

「ああ。俺が作った奴で、あの子も大変気に入ってくれてる。丁度余してたからあげるよ」

 

「やったー! これ食べてみたかったんだよねー!」

 

 先程までと違って、ティオナは嬉しそうな表情でジャガ丸くん(ソース味)を受け取った。

 

 そして食べようとするも――

 

「ティオナだけズルい……!」

 

「え、アイズ……?」

 

「おや、今日は此処にいたのか」

 

 いつの間にかアイズが二人の前に姿を現した事で、キョトンとしてるティオナとは別に、隆誠は大して驚く事なく見ていた。

 

 まるで此方に来るのを予想していたように、隆誠はアイズに別のジャガ丸くん(小豆クリーム味)を渡した後、リヴェリアがいる応接室へと戻るのであった。




アーニャ「このところ、リューセーがジャガ丸くんを作ってるような気がするニャ」

クロエ「他にも自分用で昼食用の弁当も作ってるみたいニャ」

ルノア「弁当はともかく、何でジャガ丸くんまで作っているのかな?」

リュー「そう言えば、【剣姫】はジャガ丸くんが大好物だったような……。まさか彼は【剣姫】に……?」

シル「むぅ……」
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