別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

33 / 56
久々の更新です。


隆誠の不満

 リヴェリアの指導が凄く良かった事もあって、共通語(コイネー)はスラスラ書けるようになった。もう殆どマスターしたも同然である。

 

 これなら授業は終わっても良いが、一応予定は明日までとなってる。中途半端に終わらせるのはいけないし、まだ完全とは言い切れないから予断を許さない。

 

 それが完全に終了すれば、今度は俺が魔術を教える予定だ。生徒役の俺が教師役になり、教師役のリヴェリアが生徒役となる。普通なら考えられない立場逆転であり、絶対にあり得ない光景と言われてもおかしくない。

 

 と言っても、リヴェリアはやる気満々だから大して問題無かった。明後日に予定してる魔術の講義が近づくにつれて、早く教わりたいみたいな感じが見え隠れしていたから。

 

 この世界に住まう人間が、果たしてルーン魔術を使えるかどうかは聖書の神(わたし)でも分からない。けれど俺のいる世界とは違う北欧の神々が存在してるから、使える可能性はゼロだと断言出来ないが。

 

 それでもロキなどの北欧の神々に見せるのは避けた方が良いかもしれない。オーディンから教わった『原初のルーン』なんか見せたら、絶対問い詰められるのが目に見えてる。

 

 この世界にいる神々は、天界から下界へ来る前に『神の力(アルカナム)』を封印されている事で全知零能となっているが、それを無理矢理に使ってしまえばルール違反と見なされて天界送還されてしまうらしい。確証は無いが、オーディンの『原初のルーン』は『神の力(アルカナム)』に該当するかもしれないから、人間の身である俺が使えばロキ達は絶対に疑惑を抱く事になる。

 

 疑惑で思い出して話は変わるが、このところ【ロキ・ファミリア】の団員達が俺に対して何やら懐疑的な目で見られている事がある。と言っても、あくまで一部に過ぎない。時期としては本拠地(ホーム)でヴァレンシュタインが俺に積極的に話しかけてくる頃だ。

 

 特にその中で一番に丸分かりなのが二人だった。共通語(コイネー)授業の初日に変な誤解をしてリヴェリアに怒られた山吹色の髪の女性エルフ、そして灰髪で柄の悪そうな男性狼人(ウェアウルフ)。特に後者の奴が妙に殺気立って、少しばかりおっかないんだが。

 

 あの狼人(ウェアウルフ)を見てると、【フレイヤ・ファミリア】にいる猫人(キャットピープル)のアレン・フローメルを思い出す。奴とは以前に俺が遠当てで気絶させてから一度も会ってないが、以降どうしているのかは全く分からない。今はフレイヤの命令で大人しくしてるのかもしれないが、いずれ密かにリベンジしに来るんじゃないかと思う。まぁそうしたところでボコボコに伸してやるから、俺としては全然構わない。相手が男であるなら猶更に、な。

 

 

 

 

 

 

「ん~~、共通語(コイネー)授業は明日で終わりかぁ~」

 

 お決まりの休憩場所となってる中庭で、長椅子に座ってる俺は両腕を伸ばしながらリラックスしていた。

 

 今日は休憩中に俺と話してくれる面子(主にラウル、ヴァレンシュタイン、ティオナ)はダンジョンへ行っている。何でも次の遠征に備えての資金を集めているようだ。

 

 オラリオで言う遠征とは、【ファミリア】が総出でダンジョン未到達階層へ目指す為の任務。都市最大派閥の探索系【ロキ・ファミリア】は勿論の事、派閥の等級が高い各【ファミリア】もギルドから強制任務(ミッション)として課せられる事があるようだ。

 

 それを行う際、武器や道具(アイテム)の買出しは勿論の事、協力依頼をする【ファミリア】に報酬を提供する必要がある為、冒険者のラウル達がダンジョンへ行って資金調達をするのは当然の流れだ。これを知った俺は、金が必要なのは何処の世界でも共通しているとつくづく思った。

 

 聖書の神(わたし)もイッセーと修行の旅をする際、資金は大事な物だと身に染みている。テントやコテージを使った野宿をするのは別として、街へ行って何かをするには金が必要だと理解したのだ。その時は旅で調達した原石を聖書の神(わたし)なりに加工し、装飾品(アクセサリー)となったソレを宝石店で高値で売れた事があるのは思い出の一つであった。

 

 俺もある意味遠征をしている身だから、資金(ヴァリス)を調達した方が良いかもしれない。今は『豊穣の女主人』で世話になってるとは言っても、何か遭って一人になった時の事を考えれば猶更必要だ。その時は収納用異空間にある加工済みの宝石を売っておくことを考慮しておくとしよう。捨て値で買い叩かれない為に、正当な値段で売るよう交渉しなければならないが。

 

 まぁ【ロキ・ファミリア】の事情や俺の金策は置いといて、だ。今の俺にはちょっとした問題があって困っていた。それは――

 

(まともに組み手が出来る相手がいねぇ~~!) 

 

 最近、自分の身体が鈍り気味だった。

 

 普段(イッセー)の修行相手をするのが日課になっているのだが、この世界へ来てからソレが無い為にモヤモヤしてる状態だった。

 

 そのモヤモヤを解消する為に早朝はリューと相手をしている。ここ最近参加し始めたクロエやアーニャ、更にはルノアも含めて。

 

 三人が加わったのは、連敗状態が続いてるリューを見て何か思う所があったのか、俺に挑むようになったのだ。尤も、アーニャの場合は最初に出会った時と同様に一撃で終わらせている。戦い方が物凄く単純で分かり易いが為に。

 

 相手をするのは別に構わないが、こうもずっと異性の相手をしてると少しばかり気が引けてしまう。もしイッセーが知れば――

 

『何だよその贅沢な悩みは!? ただでさえ美少女が沢山いる店に住んでおいて、毎日鍛錬の相手してくれるなんて凄く羨ましいじゃねぇか! 今すぐに俺と代わりやがれ!』

 

 などと言う嫉妬染みた叫びをしてくるだろう。それをリアス達の前で言えばお仕置きされるオチとなるが。

 

 ともかく、俺としてはいい加減に同性と組み手をしたい。この世界で相手をした同性は、一撃で倒したアレン・フローメルだけ。何だか虚しく感じるのは俺の気のせいだろうか。

 

 出来れば以前から目を付けていたラウルを鍛えて強くさせたいが、リヴェリアにルーン魔術を一通り教えるまでは無理だった。だからそれまで、もう暫く我慢するしかない。これは言うまでもないが、俺と手合わせしたがってるヴァレンシュタインは論外だと補足しておく。

 

 聞いた話によると、彼女は【ロキ・ファミリア】のアイドル的存在のようだ。一年前に13歳で第一級冒険者(Lv.5)にランクアップした事が拍車となり、オラリオ中からも人気がある美少女剣士だとか。

 

 そんな人気者(アイドル)のヴァレンシュタインが、冒険者とは一切関係無い酒場の店員に何故か積極的に話しかけてる事もあって、此処にいる団員達の一部が気に食わないようだ。もうついでに、俺が本当にアレン・フローメルを一撃で倒したのかと疑惑の念を抱いているとか。

 

 まぁ、どちらにしても至極如何でもいい事だった。自分から証明しようと彼等の疑惑を拭い去ろうとしたところで詮無い事だ。

 

「おい」

 

 もし俺の事が気に食わない奴が喧嘩を売って来るなら話は別で……ん? 誰かが俺に声を掛けて来たようだ。どうやら深く考え事をしていた所為で接近に気付かなかったか。

 

 明らかに男の声だと思いながら視線を向けると、灰色寄りの髪をした狼人(ウェアウルフ)だった。以前の抗争でアレン・フローメルと交戦していた他、俺がヴァレンシュタインと話してる時に少々遠くから睨んでいた男だ。

 

「俺に何か御用ですか、獣人さん」

 

 ヴァレンシュタインやティオナに匹敵するオーラだから、恐らく彼も第一級冒険者かもしれないが、残念な事に俺は名前を知らない……と言うのは冗談だ。ラウルから第一級冒険者の名前と特徴は聞いている。

 

 俺の目の前にいる獣人はベート・ローガ。彼女達と同じく『Lv.5』で、【ロキ・ファミリア】主力メンバーの一人。アレン・フローメルと同じく派閥内で最速を誇るとか。

 

「テメエは何時まで此処にいるつもりなんだ?」

 

「えっと……明日で共通語(コイネー)の授業は終わりですが、その後には別の用事がある為、もう暫くご厄介になる予定です」

 

 素直に答えた筈なのだが、何故か向こうはお気に召さないみたいで、急に俺の胸倉を掴み、顔を寄せてギロリと睨む。

 

「あの糞猫を倒した位で調子乗ってんじゃねーぞ」

 

「? 別に調子に乗ってはいませんが」

 

 糞猫とはアレン・フローメルの事だとすぐに分かった。

 

 随分と口が悪いなぁ。こうやって平然と暴言を吐く所は彼曰くの糞猫とよく似ている。もしかしたら二人は似た者同士かもしれない。

 

「此処はテメエみてーな部外者が来る所じゃねーんだ。用が済んだらさっさと失せろ」

 

「それは無理な相談ですね。俺は其方の主神様と副団長さんから許可を頂いているんです。文句を仰りたいなら、そのお二方にして頂けませんか?」

 

「………チッ!」

 

 ロキとリヴェリアの名前を出すと、ベートは舌打ちをしながら手を放した。

 

 流石に上司には逆らえないと言ったところか。主神か副団長のどちらなのかは分からないが。

 

 こう言う喧嘩腰な奴は説得するより、武力で分からせた方が手っ取り早い。コイツの実力は知らないけどアレン・フローメルと同程度なら、本気を出せば一瞬で終わるだろう。

 

 ……あ、待てよ。もしかしたら……。

 

「そうだ。じゃあ、こうしましょう」

 

「ああ?」

 

 胸倉を掴まれた事でシワになった部分を直しながら言う俺に、ベートは怪訝な表情になっていく。

 

「貴方が俺と戦って勝利したら、俺は二度と此処へは訪れません。と言えば勝負を受けてくれますか?」

 

「……………」

 

 まるで予想外の提案だったかのように、ベートは途端に無言となった。まるで呆れるような感じで。

 

「ハッ! (くっだ)らねー。誰がやるかよ」

 

 直後、ベートは鼻で笑った後にそう言いながら何処かへ行こうとする。

 

 流石にこんな程度で乗る訳が無いと分かっていた俺は――

 

「まぁそれが無難でしょう。アレン・フローメルより弱い貴方程度が挑んだところで、どうせ無様に負けるのがオチでしょうから」

 

「……テメェ、今何つった?」

 

 安い挑発を仕掛けてみると、向こうは物の見事に引っ掛かってくれた。

 

 さてさて、我ながら短絡的な手段だけど、久しぶりに同性相手の組み手を楽しませてもらおうか。

 

 まぁやるにしても、リヴェリアに話してからだけど、な。




フィン「ん? 何やら外が騒がしくないかい?」

ガレス「みたいじゃのう」

ロキ「もしかしたら、ベートの奴がリューセーに絡んで勝負挑んでたりしてな」

リヴェリア「あのリューセーがそんな簡単に受けたりしない筈だ」


アキ「た、大変です! 何故か分かりませんが、リューセーがベートと戦おうとしてます!」


三人+一柱『………はぁ!?』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。