別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの組手

 リヴェリアに事情を説明しに行くも、彼女以外にもフィンとガレス、そしてロキもいた。どうやら猫人(キャットピープル)のオータムから報告を聞いて、急いで駆けつけて来たらしい。

 

 それは当然、俺がベートと手合わせをする事に猛反対する為であった。ヴァレンシュタインと手合わせした時に箝口令を敷いた他、俺にも決して口外しないよう念を押したにも拘わらず、俺が別の第一級冒険者と手合わせするのは以ての外だと。

 

 彼等の努力を水の泡にする行為なのは勿論理解してるが、こうでもしないと【ロキ・ファミリア】の団員達からによる疑惑を解消出来ない旨を説明させてもらった。

 

 以前に俺が【フレイヤ・ファミリア】の幹部を一撃で倒して注目されてるからとは言え、本当に強いのかと疑われている節があるそうだ。単なる酒場の店員が都市最大派閥の本拠地(ホーム)へ毎日来てる事に対して気に食わない者達がいる上に、ヴァレンシュタインと親しげに話しており、普段忙しい筈のリヴェリアから共通語(コイネー)を教わるなんて、普通にあり得ない事なのだとラウルからそれらしき事を聞いた。

 

 共通語(コイネー)の授業が終われば別にそれで構わないが、明後日からには魔術を教える予定となってるから、もう暫く厄介になる以上は色々面倒な事になってしまう。だから此処で疑惑解消しようと、俺がベートと手合わせする訳である。

 

 俺の説明にフィン達は団員達の心情が分からなくもないと言う感じになり、微妙な表情になっていた。【ロキ・ファミリア】の眷族でもなければ、冒険者でもない(一応)一般人の俺があり得ない事をしてると理解してるようだ。

 

「だが、それでもベートと戦うと言うのは……」

 

 リヴェリアだけは断固反対の意思を見せようとするも――

 

「因みに今回の手合わせで、俺が彼に負けたら二度と此処へ来ないと言う約束をしました。そうなればリヴェリアさんに教える予定の魔術講座は無かった事に――」

 

「ならば仕方あるまい。最近のベートの態度は目に余るから、ここで一度灸を据えておく必要があるな。良いなリューセー、絶対に勝て」

 

 俺が負けた時の約束を教えた直後、リヴェリアが意見を180度変えて賛成してくれる事となった。

 

「リヴェリアが珍しく手のひら返した!?」

 

「あはは……。まぁ、僕もその気持ちは分からなくもないよ……」

 

「魔法はこ奴にとって生き甲斐みたいな物じゃからのう」

 

 驚くロキとは別に、苦笑するフィン、そして呆れ顔になってるガレス。

 

 そして今回の手合わせに関しては、【ロキ・ファミリア】副団長のリヴェリアが責任を持つと言う事で決が付くのであった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、先ずは軽く準備運動をしましょうか」

 

「ハッ、抜かしやがれ。準備運動だけで終わらせてやるぜ」

 

 以前にヴァレンシュタインと手合わせした訓練場で、俺とベートは対峙していた。

 

 今回はロキやフィン達だけでなく、他にも【ロキ・ファミリア】団員の多くが見物する為に集まっている。手合わせをすると話してそれほど時間は経ってない筈なのに、ここまで一気に広がっていくとは違う意味で凄い。

 

 まぁ俺としては別に構わない。あの中にヴァレンシュタインさえいなければ、な。一応オーラで探知してみるも、この場にいない事は確認済みだ。本拠地(ホーム)内で起きた話だから、ダンジョン探索真っ最中に知る術など無い。

 

 あの子がいたら絶対面倒な事になる。ベートと戦ったなら次は自分も、ってな感じで再勝負して来るのが容易に想像出来てしまう。それこそ箝口令を敷いたフィン達の苦労が水の泡となる。

 

 単に組手をしたいからと言っても、これでも一応考えているのだ。ヴァレンシュタインは俺にとって少しばかり厄介な人物と認定してるから、こうしてあの子がいない隙を狙う為に行動を起こしたと言う訳である。尤も、明日以降になれば勝負しろとしつこく強請って来るかもしれないが、そこはいつも通り断る予定だ。

 

 それはそうと、俺の目の前にいるベートは既に準備万端だった。恐らく誰かが合図をすれば、即座に攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

 やる気満々の相手に答えようと、俺もすぐに構え始める。

 

「おい、テメエには得物はねぇのか?」

 

「ありますよ。今目の前に見せてるじゃないですか」

 

 剣などの武器も使うけど、一番の得物はやはり格闘(これ)だ。イッセーとの修行でメインにやっているから。

 

 俺が素手で戦う事に、ベートだけでなく、他の団員達からの困惑の様子を見せていた。

 

 端から見れば、第一級冒険者相手に素手で挑むこと自体間違ってると言われてもおかしくない。けどイッセー達からすれば当たり前の光景なので、困惑しないどころか本気で挑もうとする。

 

「ふざけやがって……!」

 

 どうやらベートにはお気に召さなかったようで、戦いの合図を出さないまま即座に仕掛けてきた。

 

 向こうは一気に勝負を付けるつもりなのか、一瞬で俺に接近して拳を顔面目掛けて繰り出そうとする。

 

 俺の片腕は反応するように、向かって来る拳を受け止めず、軌道をずらして捌く。

 

「なっ……ぐっ!」

 

 拳を捌かれた事に驚きの表情となるベートだが、直後に俺の前蹴りを腹部に食らって軽く吹っ飛ぶ。

 

「やろぉ!」

 

 ベートは一撃を受けるも、すぐに体勢を立て直し、再び接近して拳を繰り出す。

 

「がっ!」

 

 だが先程と同様、俺は向かって来る拳を片手で軽く押すように横にずらした直後、体勢を崩した相手の横腹に回し蹴りを食らわせた。

 

 またしても軽く吹っ飛んだベートは体勢を立て直すも、今度は俺の動きを警戒するように足を止めている。

 

 

 

 

 

 

 余りにも予想外過ぎる光景だったのか、ベートが隆誠の攻撃を二度も受けた事に団員達は言葉を失っていた。

 

「ど、どないしたんや。あのベートが二回も直撃(ヘマ)するなんてらしくないで」

 

「確かにベートらしくないな」

 

 ロキとリヴェリアが信じられないと言わんばかりに、思った事を口にしていた。

 

 如何に隆誠が凄いとは言っても、先程見せた蹴りは第一級冒険者のベートでも簡単に避けれる筈だったと確信している。

 

「違うよ、二人とも。彼は返し技(カウンター)を仕掛けたんだ」

 

「どうやらベートはリューセーと最も相性が悪い相手みたいじゃのう」

 

 戦いに関して素人のロキや、魔導士であるリヴェリアと違い、近接戦を得意とするフィンとガレスは僅かな攻防を見て即座に理解した。

 

 隆誠はベートの攻撃を避けたり、真っ向から受け止める訳でもない。自らの体勢は崩さず、ベートの(パンチ)の軌道を変えて反撃したのだ。

 

(クソが! マジでやり辛ぇ野郎だ……!)

 

 何よりそのカウンターを直撃した当の本人が一番に理解している。

 

 一度目は隆誠の実力を探る為に態と加減した状態で拳を繰り出したが、カウンターを喰らった事で即座に考えを改めた。だから二撃目は全力で仕掛けたのだが、またしてもカウンターでやられる結果となってしまう。

 

 だが、それとは別に気付いた点もある。

 

 あの直撃した蹴りはかなりの威力であったが、自分にダメージを与えるほど強いものじゃない。それでも下級冒険者が受ければ悶え苦しんでしまうが、『Lv.5』のベートからすれば軽いジャブ程度に過ぎなかった。

 

 以前に倒した糞猫野郎(アレン・フローメル)を一撃で倒した隆誠なら、もっとかなり強烈な蹴りを繰り出せる筈だとベートは確信している。

 

「テメエ、さっきの蹴りは本気じゃねぇだろう!?」

 

「だから準備運動をしましょうって言ったじゃないですか」

 

「何、だと……」

 

 隆誠の台詞にベートだけでなく、ロキやフィン達、更には他の団員達も絶句する。

 

 下級冒険者の団員達からすれば余りにも速く、本気でやっているように思っていた。第一級冒険者であるフィンやガレスですら、あれ程の見事なカウンターは相当な集中力を使わなければ、容易に使う事は出来ないと踏んでいる。

 

 だと言うのに、隆誠は一切本気を出さず、単なる準備運動で先程の速い攻防を繰り広げていたのだ。

 

「~~~~~~!!」

 

 絶句していたベートは数秒後、沸点を超えたかのようにブチ切れた。完全に弄ばれていると理解したが為に。

 

「さっさと本気を出しやがれ! 俺にぶち殺されたくなかったらな!」

 

「……じゃあ少しだけ見せましょうか」

 

 相手の要望に応えようとする隆誠は、再び構えた直後に突進し、そして消えた。

 

「え、あれ?」

 

「い、一体何処に?」

 

「リュ、リューセー、どこ行ったん?」

 

 見物してる団員達とロキは余りの速さに目で追いきれなかった。

 

 だが、第一級冒険者達だけは何とか辛うじて捉えている。今の隆誠はいつの間にかベートの背後を取って姿を現していた。

 

「いつまでも俺を、舐めんじゃねー!」

 

 既に把握していたベートは即座に仕掛けようと、一切油断の無い高速の右回し蹴りをした。向こうが瞬間的な移動に集中していた為、返し技(カウンター)の構えを見せていないと分かっていたから。

 

 『Lv.5』の蹴りは、恩恵を持っていない人間が受ければ即死が確実な凶器も同然。如何に隆誠と言えどもタダでは済まない筈だ。

 

 そう確信しながらもベートの回し蹴りが当たる―――かと思いきや防がれていた。隆誠の右の人差し指だけで。

 

「嘘、だろ……?」

 

「中々思いきりの良い蹴りですね。お陰で指がちょっと痺れちゃいましたよ」

 

 即座に交代して距離を取るベートに、隆誠は受けた人差し指を擦りながら称賛していた。

 

 これには流石のフィン達も言葉を失っており、改めて彼の出鱈目な強さを再認識する。

 

「じゃあ今度は俺がお見せしましょう。狼の牙ってヤツを」

 

『!』

 

 実力差に相当な開きがあると理解してる中、隆誠が聞き捨てならない言葉を耳にした。狼人(ウェアウルフ)である自分に向かって、『狼の牙』を見せると言ったのだから。

 

「ふざけ……っ!」

 

 ベートが口を開こうとするも、隆誠が構えながら腰を落とした低姿勢を見た瞬間に止まった。

 

 何故か分からないが、目の前にいるヒューマンが野生の狼と思わせるほどのイメージを見せ付けられている。

 

 そして――

 

()(ろう)(ふう)(ふう)(けん)!」

 

「ぐがっ!」

 

 隆誠が技名と思わしき名称を口にした直後、一瞬で間合いを詰め、狼の牙に見立てた拳を高速で何度も繰り出す。

 

 余りの速さにベートは防ぎきれず、ただ只管受ける一方であった。

 

「はいやぁ!」

 

「ごふっ!」

 

 止めの一撃である両手を使って掌底を腹部に当てると、ベートは勢いよく吹っ飛んで壁に激突する。

 

『………………………』

 

 完全に言葉を失っているロキ達は倒れてるベートを見るも、気絶しているのか、起き上がろうとする様子を見受けられない。

 

「やばっ、ちょっとやり過ぎた……!」

 

 相手が意識を失ってると分かった隆誠は、加減し損ねたと反省する。

 

 結果は言うまでも無くベートの大敗となり、【ロキ・ファミリア】の団員達は隆誠に対する疑問が解消したどころか、途轍もなく恐ろしい人物だと認識する事となった。




組手と言うより、ベート苛めの展開になってしまいました。
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