別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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共通語(コイネー)の最終試験

 ベートと手合わせをした翌日、俺は何事も無かったかのように『黄昏の館』へ来た。団員達とすれ違う時、随分と委縮してる様子を見受けられたが、取り敢えず疑惑は解消されたから良しとしておく事にした。

 

 本日は共通語(コイネー)の授業最終日であり、リヴェリアより今まで覚えた内容を試す為の筆記試験の真っ最中だ。ある意味卒業試験みたいなもので、これに合格すればマスターしたと言う証明される。

 

 出されてる問題は、俺の世界でやっている国語や英語のテストとちょっと似ている。思わず彼女は教師に向いているんじゃないかと思ってしまう。厳しいけど礼節ある美人女教師であれば、イッセーは喜んで授業を受ける姿を容易に想像してしまう。

 

 まぁそんな事よりも、試験は恐らく余裕で合格出来ると予想していた。リヴェリアから教えられた大事な要点が中心に出ている問題ばかりだから、それを理解してれば簡単に解ける。

 

「出来ました」

 

「もう終わったのか? 時間はまだ残っているから、確認した方が良いと思うが」

 

 問題の答えを全て書き終えた俺は、答案用紙を渡そうとするも、リヴェリアが確認するよう促してきた。

 

 この卒業試験は約一時間の制限時間を設けられているが、俺は半分程度の時間で済ませたから、彼女は少々心配そうに言ったのである。

 

「大丈夫です。既に確認済みですから」

 

「……本当に良いんだな?」

 

 最後の確認をしてくるリヴェリアに、俺は何の迷いも無く首を縦に振った。

 

 彼女は答案用紙を受け取り、「答え合わせをしてくるから、此処で少し待つように」と言って、一旦応接室から出た。

 

「あ~、今日で終わりか~」

 

 試験が終わって結果を待つ事となったので、俺は両腕を上に伸ばして身体をリラックスしていた。

 

 応接室は客人が来ない限り空いている為、今まで共通語(コイネー)を学ぶ為の教室と化している。

 

 だから授業中は本来俺とリヴェリアしかいないのだが、今回はもう一人いる。と言っても邪魔はしないで見守っているだけだが。

 

「……………」

 

「……君はいつまで睨めば気が済むんだよ」

 

 少し離れた椅子に座りながらジト目になっている金髪少女――アイズ・ヴァレンシュタイン。リヴェリアがいなくなって少し経つと、今度は膨れっ面になって俺の近くへ来る。

 

 あの子がそうなってるのには勿論理由がある。言うまでも無いと思うが、昨日に俺がベートと戦ったからだ。

 

 此処の本拠地(ホーム)へ来て早々、まるで待ち構えていたかのように佇んで――

 

『聞きました。ベートさんと戦ったそうですね』

 

 昨日にあった手合わせの情報は耳にしていたようで、今度は自分と戦って欲しいとしつこく催促された。当然、ちゃんと理由を述べて断ったのだが、それでもしつこくてしつこくて……。

 

 他にも昨日ダンジョンへ行っていたティオナにも絡まれたが、今度物語の一部の続きを書いてあげるからと言って引き下がってくれた。今日は店に帰った後、少々多めに書くつもりでいる。

 

 一応ヴァレンシュタインにもジャガ丸くんで大人しくさせたのだが、それだけで満足出来なかったのか、今日はずっと俺の近くにいる。リヴェリアも最初は試験があるからと言う理由で追い出そうとしたが、邪魔はせず大人しくしてると言って今に至る。

 

 他にもベートが意識を取り戻した直後、リヴェリア曰く相当荒れていたそうだ。治療しないといけないのに、それを無視してダンジョンへ向かい、翌日になって未だに戻って来てないとの事だ。

 

 ああ言う奴は暫く放っておいた方が良い。あくまで俺の見立てに過ぎないが、ベートはアレン・フローメルと似たように、他人を平然と見下す性格をしてる。そんな奴が冒険者じゃなく恩恵すらを持っていない俺に負けたら、今まで培ったプライドが砕かれてショックを受けているだろう。

 

 まぁそれでも、立ち直れないほどのショックは受けていない筈だ。ダンジョンに行ったと言う事は、恐らくそこで心の整理をすると言う意味合いで、モンスターと戦っているかもしれない。とは言え、それはあくまで俺の想像に過ぎないが。

 

「今日で授業は終わりみたいですけど、明日からどうするんですか?」

 

共通語(コイネー)とは別の用事があるから、もう暫く此処で厄介になる予定だ。先に言っとくけど、君と手合わせはしないから」

 

「……ベートさんと戦う暇はあったのに」

 

 手合わせしないと前以て言うも、完全に拗ねてしまったヴァレンシュタインはそう言い返しながらそっぽを向く。

 

 確かこの子の年齢は14歳みたいだが、かなり幼く見えてしまう。俺のいる世界では中学生だから充分に子供だが、小学生並みに思えてしまうのは気のせいだろうか。

 

「いや、あれはなぁ……」

 

「……………」

 

「………あ~、分かった分かった。今日は試験が終われば早めに帰る予定だから、その後に君と手合わせする。これで良いか?」

 

「本当ですか?」

 

 手合わせをすると知った途端、そっぽを向いていた筈のヴァレンシュタインが反応して、俺の方を見ながら確認して来る。

 

「ああ。だけど流石に本拠地(ホーム)内でやるのは不味い。周囲の目も無く戦える場所とかあるか?」

 

「あります!」

 

「うおっ……!?」

 

 突然顔を近づけて来るから、俺は思わずギョッとしてしまう。

 

 下手すればキス出来そうなほどの至近距離だ。状況からしてヴァレンシュタインが俺にキスを迫ってる光景かもしれない。

 

 もしこんなところを誰かに見られてしまったら――

 

「待たせたな。何度も確認したが、満点で……アイズ、一体何をしている!?」

 

 試験の答え合わせを終えたリヴェリアが誤解してしまうのは言うまでも無かった。

 

 ついでに、約束した筈のヴァレンシュタインの手合わせだが、母親代わりであるリヴェリアのお説教で無しとなってしまった事も補足しておく。

 

 

 

 

 

 

 ヴァレンシュタインに本格的な説教を行う前、リヴェリアより試験は合格だと言い渡された。文句の付けようが無いほど満点であり、共通語(コイネー)は完全に習得しているとの事だ。

 

 本来は二ヵ月近く掛かる筈が、僅か二週間で習得するとは思っていなかったようだ。その事で疑問視されるも、魔術を教わる予定が早まったから、リヴェリアは敢えて触れず、共通語(コイネー)の授業を完全に終わらせた。

 

「なぁシル、最近俺の部屋に来る回数多くなってないか?」

 

「リューセーさんが書いてる魔術の説明書がどうしても気になりまして」

 

 そして戻って早々、俺はティオナの約束を守ろうと自室で物語の続きを書いていた。休憩を挟みながら、夜の営業時間が始まる前までやるつもりでいる。

 

 そんな中、俺の帰宅を知ったシルが突然やって来て、既に作成済みの魔術書を見ている。

 

「前から気になってるんですけど、魔術って魔法と違うんですか?」

 

「簡単に言えば、魔術は自身の魔力を利用する知識と技術の集大成みたいなものだ。対して魔法は神や精霊などの力を利用して様々な現象を引き起こす」

 

「えっと、つまり……」

 

「要するにだな――」

 

 魔導士のリヴェリアと違い、全くのド素人であるシルに何故か魔法と魔術の違いを噛み砕いて説明する事となった。

 

 けど、案外やって良かったかもしれない。明日に行われる魔術講座を行う予行練習な感じがしたので。




漸く共通語(コイネー)習得まで行きました。

次回からリューセーの魔術講座となります。と言っても、そこまで詳しく書けませんが。
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