別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
ミア母さんが可憐な姿になった事で、朝夜の営業に関係無く客の出入りが激しくて忙しい日々が続いていた。連日に続き男から愛の告白、女(と女神も含めて)から綺麗になった原因の追究が。我等の母親の対応方法は言うまでもなく拳と怒号によって、相手側を強制的に黙らせているのがお決まりのパターンだ。
まぁそれでも流石に少々懲りたみたいで、今まで頻繁に訪れていた『豊穣の女主人』の客足が段々と減少し始めていた。主に(ミア母さんからすれば)鬱陶しい客が大人しくなった事で、俺達も非常に安堵している。
とは言え、それでも油断は出来ない。人間の客はともかく、神連中は簡単に諦めようとしない。今は大人しくしてても、時間が経てば、まるで忘れたかのように来る。この世界の神々は娯楽目的に下界へ降臨したから、そう簡単に引き下がらない愉快神が殆どだとミア母さんが言っていた。
世界が違えど、人間に多大な迷惑を掛けてる事に関しては共通してると
それとは全く別の話になるが、【ロキ・ファミリア】が遠征の準備を終えたらしい。
聞いた話によると、遠征開始前に
あそこの眷族とは色々顔馴染みになっただけでなく、
(ほう、中々な光景だ)
豊穣の女主人の(男用)制服を身に纏ったまま、俺は
冒険者と思われる者達がダンジョンへ向かっていく中、すぐに向かおうとしない一行がいる。
装備品と物資を積んだ大型の荷車を何台も伴い、『バベル』と呼ばれる塔の北門正面から距離を置いた位置で待機してるのは【ロキ・ファミリア】一行だ。道化師と思われるエンブレムが刻まれた団旗を見た他所の冒険者達は、その一行を見た途端に様々な反応を示している。
「ん?
既に待機して周囲を見渡していたリヴェリアが視界に入った途端、すぐ俺の方へ近付きながら声を掛けてきた。
他所の目(特にエルフ達)を意識したのか、
「どうしたのだ。確かあの店は既に営業時間の筈ではなかったか?」
「今日【ロキ・ファミリア】が遠征に行くと聞いたので、お見送りしにいこうと」
勿論ミア母さんの許可は貰ってますと付け加えて言った後、リヴェリアはすぐに納得の顔をする。
「しかしまぁ凄い人数ですねぇ~。こんなに多いと移動するだけでも大変だから、もしかして部隊を分けて行くんですか?」
「その通りだ。もし一気に移動すれば、私達以外の冒険者達に迷惑を掛けてしまうからな」
正解と頷いた彼女は軽く補足してくれた。
ダンジョンは広大な迷路状の構造になってて、進む道が狭い場所がいくつもある。それで【ロキ・ファミリア】が移動する際に他の冒険者と遭遇してしまえば衝突、とまでいかないが途中で止まってしまう恐れがある。
そう言った無駄な事を回避する為に、部隊を分けて移動するそうだ。けれど分けた部隊が中継地点で合流した直後、一気に移動するとか。
「ところで、私が遠征から戻ってきた後なんだが……」
「それは終わってからにしましょう」
今後の予定を話しておきながら、もしも遠征で何かしらのトラブルが発生して命を落とすと言う不幸な出来事が起きてしまう可能性がある。
だから生きて戻ってきた後に話し合おうと俺が言った事で、リヴェリアは少々不満そうな表情になりながらも承諾してくれた。
これ以上話していたら他のエルフ達が五月蠅くなりそうだと思い、『遠征頑張って下さい』と言って彼女から離れる。
「あ、リューセー!」
すると、顔馴染みとなった褐色肌の女性が俺の名前を呼びながら近づいてきた。
「見送りに来てくれたんだ! でもリヴェリアだけ!? あたしには!?」
「君には必要なさそうだと思ってな」
「えぇ~!」
ティオナは騒ぐも、俺はすぐに冗談だと訂正した。
「戻ってきたら、君が読みたがってる物語の続きを用意するよ。一冊丸々分を、な」
「ほんとに! 絶対約束だからね!」
今まで数ページ分しか渡せなかったが、遠征の期間を考えれば一冊分の内容まで書く余裕がある。一切の面倒事が起きなければの話だが、な。
言質は受け取ったと言わんばかりに何度も念を押してくるティオナに、俺は苦笑しながらも頷いていた。
他の知り合いに声を掛けに行こうとする際、彼女は俺の腕に引っ付いていたが、姉のティオネによってどうにか引き剥がしてくれている。
今も集合確認をしてるラウルに声を掛けようと……する前、別の人物の方へ向かう事にした。
「お久しぶりですね、ベート・ローガさん」
「…………」
俺が視界に入った途端、
「あの勝負以降から今まで何をされていたんですか?」
「……テメェには関係ねぇ事だ。とっとと失せろ」
会話に興じる気が一切無いのか、一言だけ答えた後にそっぽを向いている。
相変わらず上から目線な態度だから、少しばかりカチンと来た俺は言い返そうとした。
「そうですか。なら今回の遠征で、あの時以上に強くなって下さいね」
「ッ! ………………チッ」
てっきり激昂して俺の胸倉を掴んでくると思っていたが、ベートは大変忌々しそうにしながら舌打ちだけしていた。
ちょっと試したとはいえ少しばかり挑発が過ぎたと内心反省する他、少しばかり驚いている。
人を平気で見下す奴は軽く言い返されるだけですぐに反応するのだが、この
意外な一面を見せるベートの姿勢にちょっとばかり興味を抱くも、これ以上話しかけたところで無視されると分かっていたので、俺は彼から離れる事にした。
「よっ、ラウル」
「リューセー、見ててハラハラしたっすよ」
ラウルに声を掛けると、彼は肝を冷やしたかのように言い返してきた。
どうやら先程の会話を聞いていたみたいで、俺の挑発でベートが激昂すると思っていたらしい。
「ただでさえベートさんの機嫌が悪いのに、あんな言い方しないで欲しいっす」
「悪い悪い。まぁそんな事より」
俺が全く如何でもいいように話題を変えようとすると、今まで手に持っていた袋を手渡そうとする。
「何すかソレは?」
「俺からの差し入れだ。主に携帯食が入ってる」
遠征は普通の探索と違ってダンジョンにいる期間が長いから、いざと言う時の保存食を作っておいた。主に栄養価の高いカロリーメイト(プレーン味、チョコ味、フルーツ味等々)、砂糖漬けのドライフルーツ、塩味のナッツ等々、全て俺の手作りだ。勿論ミア母さんから作る許可を貰った上で、な。
カロリーメイトはこの世界に存在しない食べ物みたいで、クッキーみたいなお菓子と教えてある。不思議な名称だとラウルが言ってたが、そこは気にしないでおく。
「言っとくけど、余り周囲に見せず食べた方が良い。特に甘い物を好む女性陣とかには、な」
「………そうっすね」
俺からの注意にラウルは少々考えた後に肝に銘じるように頷いた。
携帯食が入ってる袋を受けとるラウルを見て、俺はこう言う。
「必ず生きて戻って来いよ。ウチの店に来た時にサービスするからさ」
「勿論そのつもりっす。因みにどんなサービスっすか?」
「そうだな。じゃあ『豊饒の女主人』のメニューにはない俺オリジナルの料理を披露するか、もしくは……俺なりに考えたラウルを強くする為の特訓メニューを用意する、とかはどうかな?」
「……え?」
後半あたりから少し勿体ぶったような言い方をした事で、ラウルが途端にキョトンとした表情になった。
直後、詳しい話をしようとするが――
「――全員集合!」
【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナからの声によって終わる事になってしまった。
会話はここまでだと分かった俺はラウルに頑張れよと言った後、すぐに離れて見守ろうとする。
因みにアイズはいつの間にか来てたみたいだが、何故か分からないけど俺の方をジッと見ていたのは気にしないでおく。
アイズ(あの人、ラウルを強くするって言った。これは絶対に聞かないと……!)
フィン「全員集合!」
アイズ(え? フィン、私あの人に聞きたい事が……)
ティオネ「ちょっとアイズ、団長が呼んでるから早く行くわよ」
アイズ「えっ、待ってティオネ……」
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