別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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【フレイヤ・ファミリア】の再会

 【ロキ・ファミリア】の遠征を見送ってから数日が経ち、俺は相も変わらず『豊饒の女主人』の調理場で汗水を流して料理を作っている。

 

 ミア母さんはもう完全に信頼しているのか、自分が調理場にいない時は俺がメイ達を仕切るよう任せていた。頼られるのは嬉しいけど、何れ元の世界に戻らなければいけない俺がいなくなったらどうなるかが心配なのは胸の内に秘めておく。

 

 料理とは別に、朝の手合わせも結構賑やかになっている。相手をするのはリューだけでなく、アーニャやクロエ、更にはルノアも積極的に参加する事となった。

 

 あの三人とは以前にやったけど、今まで違って物凄く躍起になっている。それには勿論理由があった。一度でも勝ったら俺のお風呂セットを使わせて欲しいんだと。

 

 何度も駄目だと言ってるにも拘わらず、ミア母さんを除く女性陣は未だに諦めきれていない。彼女達曰く『自分もミア母さんみたいに綺麗になってみたい!』らしい。その中で一番五月蠅いのがアーニャ、クロエ、ルノアだった。因みにシルも諦めてない一人で、あの三人と違って甘えるように強請っているが完全無視している。

 

 五月蠅いアーニャ達が何が何でも使いたい為、リューとの手合わせの際に混ざるようになった。しかも絶対勝ちたいが為に、俺一人に対してアーニャ達三人と言う勝負形式で。

 

 余りにも理不尽とも言える内容だが、俺は大して気にする事なく了承した。一人ずつ相手するより、三人纏めてやった方が楽しめそうだから。余裕な態度を見せる俺に気に障ったのか、アーニャ達は己の得物を手にして一斉に襲い掛かって来たのは仕方ないと言えよう。連携らしい事を一切やらずに個人主体で戦う為、三人が足の引っ張り合いをする事で俺に隙を突かれて敗北したのは当然の流れである。

 

 聞いた話によると、アーニャ達もリューと同じく『Lv.4』らしい。俺と同じく訳ありで働いているとは言え、少しくらい鍛錬した方が良いと思う。【恩恵(ファルナ)】とやらがあっても腕が鈍っていたら本来の実力を出し切る事は出来ないから、そのままだと俺に一生勝てないぞと指摘(アドバイス)しておいた。それが発破になった訳ではないのだが、三人はリューみたいに時間がある際に鍛錬する姿を見かける事になった。絶対お風呂セットを使ってやると少々怨念染みた呟きが聞こえたが、そこは敢えてスルーしておくのが良いだろう。

 

 調理に鍛錬だけでなく、魔術講座用の教科書(テキスト)やコイネー用の物語(ラノベ)作成等々と色々やる事がありながらも、俺は【ロキ・ファミリア】の無事生還を祈りながら日々を送っているのであった。

 

 

 

 

「イッセー達はどうしてるかなぁ……」

 

 今日は店が休みである為、久しぶりにオラリオ散策をしているが、俺は誰もいない小高い丘と思われる場所にいる。今は椅子に座って風景を眺めながら物思いに耽っていた。

 

 アザゼルが作った平行世界へ転移する装置の暴走に巻き込まれ、この世界に来てから数ヵ月以上経っていた。時間の流れが此方と全く同じであれば、もう俺は完全に行方不明扱いとなってるだろう。まぁイッセーの事だから、今も諦めていないと思うが。

 

 俺も次元の狭間を調べているが、穴は広がっても人が入れる大きさじゃなかった。やはり何年か経たなければ確実に戻る事は出来ない為、暫くこの世界に留まるしかないと言う結論に至る。元の世界へ帰った後、この世界で過ごした分の成長(じかん)を巻き戻す必要はあるが、な。

 

「って、もうこんな時間か……」

 

 考え事に集中していた所為か、近くに設置されてる時計を見て漸く気付いた。自分がどれだけ此処で長居していたのかを。

 

 既に昼食の時間帯だから、どこかの店で食べようと思った俺は椅子から立ちあがり、すぐに移動を開始する。

 

 今いるのは住宅街のエリアだから、店や屋台のある場所から少し離れている。だから手っ取り早く近道しようと、路地裏を利用する事にした。

 

「見つけたぞ」

 

「ん?」

 

 移動している最中、聞き覚えのある声がしたので思わず足を止める。

 

 振り向く先には俺の知ってる人物――【フレイヤ・ファミリア】団長のオッタルがいた。

 

「お久しぶりですね、オッタルさん。お会いしたのはあの時以来ですね」

 

「………………」 

 

 俺が言うあの時とは、【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】が抗争した日の事を指している。オッタルもそれを理解してるように、俺が言葉を発した途端に少々苦々しい表情だ。

 

「聞いた話だと貴方は常にフレイヤ様の護衛をしてるみたいですが、離れて大丈夫なんですか?」

 

「そのフレイヤ様からの命令で、俺は此処に来ている」

 

 フレイヤの傍には必ずと言っていいほどオッタルがいる。そういう話をロキやリヴェリアから聞かされたから思わず訊いてみるも、オッタルは何でもないように言い返してきた。

 

「隆誠・兵藤、フレイヤ様がお前に会いたいと仰せだ。付いてこい」

 

「は?」

 

 いきなりの命令口調に俺は眉を顰めた。

 

 人が昼食を取ろうとしてる店に向かってるのに、それを急に現れては付いてこいと命令されて素直になる奴はいるだろうか。相手が有名な【猛者(おうじゃ)】であれば従わざるを得ないかもしれないが、俺からしたら迷惑極まりない呼び出しだ。

 

 尤も、理由を尋ねたところで『知らん』と答えられるのがオチだ。この男も含めた【フレイヤ・ファミリア】の連中は、(フレイヤ)の命令が絶対である為に。

 

「随分な言い草ですね。俺はまだ了承していないんですが」

 

「フレイヤ様の命令は絶対だ。お前には是が非でも来てもらう」

 

「………………」

 

 オッタルが言った直後、周囲から途轍もない殺気が俺に向けられる。

 

 どうやらコイツ以外にもフレイヤの眷族達がいるようだ。恐らく俺が明確に拒否した瞬間、ソイツ等が一斉に襲い掛かってくるだろう。

 

 別にそうなったところで迎撃すれば問題無いのだが、それはそれで却って不味い事になってしまう。

 

 知っての通り、【フレイヤ・ファミリア】は【ロキ・ファミリア】と並ぶ都市最大派閥。そんな有名なファミリアが、こんな場所で俺と一戦交えたとなればオラリオ中が大騒ぎになる。当然ロキも知れば動くかもしれないが、彼女のファミリアは現在遠征中だから、フィン・ディムナ達が帰還するまで静観するしかないから期待出来ない。

 

 俺としても余り目立つ行為はするなとミア母さんから言われてる他、迷惑を掛ける行為はしたくないと考えてる。多くの神々が店に押し寄せ、彼女が非常に迷惑な表情をしていたのを見て猶更に。

 

 このまま無駄な争いはせず、逃走しようかと一瞬思い浮かべるもすぐに却下した。どうせオッタル達の事だから、地の果てまでも追いかけて来るだろうと思い浮かべたから。

 

「………はぁっ、分かりましたよ。会いに行けばいいんでしょう」

 

 どんなに考えても穏便に済ませる方法は、俺が折れるしかないと言う結論しかなかった。

 

 此方が降参するように了承の返事をすると、周囲の殺気が途端に霧散していく。

 

 お前等、俺がこのまま大人しくなると思うなよ。今はもうフレイヤに対して一切の遠慮が無いんだから、な。




ラウル「リューセーが言ってた『かろりーめいと』って言うのはコレっすね。(もぐもぐ)……丁度良い甘さで、凄く美味いっす!」

アキ「ラウル、休憩中に一体何食べてるの?」

ラウル「ッ! ゴホッ、ゲホッ!」

アキ「ちょっ、大丈夫!?」

ラウル「み、水、水を……!」
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