別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
フレイヤ達と別れて『
本当ならどこかの店で昼食を取る予定だったが、フレイヤが用意してくれたので必要無くなった。タダ飯同然だが、一応俺の方でお礼代わりに牡丹肉のレシピをヘイズに教えたので、それなりの対価は支払っている。
今まで人が通る商店街や住宅街を見て回ったから、今度はちょっとばかり違う方へ目を向けてみる事にした。今後の修行に最適と思われる人気の無さそうな場所へ。
(これはまた……この地区は完全に放置状態だな)
先程まで多くの人が賑わっていた所にいたが、いざ進行方向を変えて廃墟がある所に辿り着くと一気に風景が変わった。今は自分以外の人間は誰一人もいない。
見ただけで一切の手入れをせず放置しているのが一目瞭然だった。『世界の中心』と称され、最も栄えある都市と呼ばれているのだから、ある程度の整備くらいするべきだと思う。使わない建物を解体してだだっ広い整地にするとか、もしくは多くある建物を新たな住宅街として再開発するとか色々やりようがあるだろうに。
簡単に考えてみたけど、俺の視界に映ってる建物は殆ど崩れている上に相当な数がある。解体や再利用をするにしても、相当な時間と金を要してしまう容易に想像出来た。恐らく都市運営をしてる『ギルド』もソレを理解してるから、敢えて放置してる可能性が非常に高い。
俺ならあっと言う間に掃除する事は可能だが、それは絶対にやってはいけない。この地区の周囲が騒ぐだけでは済まされず、ギルド辺りも絶対何か言ってくる。
あくまで予想に過ぎないけど、今まで手を出さなかったギルドが急にしゃしゃり出て、正式に管理するとか言って利用するかもしれない。片付けの手間が省けたと内心嘲笑いながら、な。オラリオを取り仕切ってるギルド長はミア母さん曰く、『非常に有能でも性格は最悪な強欲エルフ』らしい。そんな俗物な権力者に口出しされたら堪ったものじゃないから、この地区の掃除はやらない方が良い。
まぁ掃除はやらないと言ったが、どこか利用出来そうな建物の一つくらいは確保しておきたい。無断でやってはいけないと分かっても、元の世界に戻るのにかなりの時間を要する事になるから、何か遭った時の秘密基地……じゃなくて隠れ家を作っておきたい。『豊饒の女主人』で世話になってるが、あそこは基本女性だけしかいないから、男一人だけの空間がどうしても欲しいのだ。
(あ、そう言えば)
俺はふと思い出した。自身の収納用異空間に収めてるコテージの存在を。
久しぶりに出そうと考えるも、それを出すスペースが無かった。殆どが崩れた建物で埋め尽くされてる上に、歩いてる道も狭い。広い場所を探そうにも、その辺りは人目もあるから避けたい。
コテージを問題無く出す方法は、どう考えても一つしかなかった。
「仕方ない、か」
そう言った俺は、一つの崩れた建物を消す事にした。『終末の光』を使って消滅させたので、まるで最初から何も無かったかのように。
本当なら光弾を使って吹っ飛ばしたいのだが、爆発音や建物が崩れる音が発生してしまう。それを回避する為、
その結果、目の前には更地となった広い空き地と様変わりしてる。後で瓦礫を利用して誤魔化す予定だが、な。
人目が無いとは言え、これから出すコテージは色々不味いから、念を押して結界を張っておく必要があった。外から見ても周囲の風景と全く変わらない視覚阻害用の結界を。
「……よし」
結界を張りながらも周囲に誰一人いない事を確認した俺は、収納用異空間からコテージを引っ張り出す。
出てきたのは洋風な木造の小型一軒家。俺とイッセーが長期休みを利用して、修行の旅と言う遠出で野宿する際に必ず利用している。これ以外にもテントもあるが、今回は此方を出させてもらう。
久しぶりに見るコテージに懐かしそうな気分になるも、一先ず中に入った後――
「ああ~、やっぱりこっちが落ち着く~」
この世界には存在しない物がある事で、思わず元の世界に帰ってきたかのようにリラックスしていた。
現代っ子として転生した俺としては、この世界で過ごすのは退屈だ。電化製品は一切無いし、自分にとって一番楽しみな娯楽が余りにも無さ過ぎる。自分と違って根っから現代っ子であるイッセーだったら、自分以上に苦痛を味わう事になるだろう。
野宿用のコテージでも元の世界産の物が色々あるので、時間を潰すには最適な空間でもある。特にゲームや漫画やラノベ等の娯楽品などが、な。
折角出したから、少しの時間だけ利用しようと決めた俺は、久しぶりに漫画の『ドラグ・ソボール』を読む事にした。ティオナに読ませているラノベもあるから、それは後で持ち帰るとしよう。
コテージにあるベッドで横になりながら、以前から愛読していた漫画を再び目にするのであった。
非常に如何でもいい事だが、『ドラグ・ソボール』を収納してる本棚に何故か見慣れない数冊の本が混ざっていた事に気付く。よく見るとソレは前にイッセーが密かに勝った巨乳美女専門のエロ本で、簡単に手に入らない限定プレミアシリーズ。ドスケベな男であれば興奮すること間違い無しの内容だろう。
思わず即刻処分しようと考えるも、流石にそれは不味いから、元の世界に戻った際にリアスに渡しておくとしよう。イッセーの目の前で即行処分した後、説教されるだろうと思いながら。
☆
「やばいやばい、早く急いで帰らないと……!」
夕方まで時間を潰そうと予定していたが、『ドラグ・ソボール』を全巻ぶっ続けで読了した事で、今はもう既に夜の時間帯になっていた。
気付いた俺はすぐにコテージから出て収納用異空間に戻し、更地を瓦礫で誤魔化し、視覚阻害用の結界も解いた。後は急いで『豊饒の女主人』に戻るだけだ。
本当なら転移術や飛翔術を使って戻りたいけど、それは色々不味いから一般市民らしく走って帰るしかない。
そう考えながら足を動かして移動を開始するも――
「ッ!」
殺気らしきモノを感じ取った俺はすぐに止めた。
夜の闇によって閉ざされる周囲には誰一人おらず、星空と月の光のおかげで見えている。因みに廃墟となってるこの場所には魔石灯は無く、あったとしても壊れて使えない。
だけど俺は既に対象の存在を捉えているから、そこにいるであろう崩れた建物と建物の細い
「出てこい。いるのは分かってる」
俺の声に反応したかのように、殺気を放っている張本人が、影を払って歩み出てきた。
「やはりお前だったか」
「…………………」
現れたのは見覚えのある
その時に会った時と違って見慣れない衣装を身に纏っていた。
闇に溶かしたような暗色の防具、暗色の短衣、そして暗色のバイザー。まるで暗殺者のような衣装で、思わずそう気取ってるのかと思ってしまいそうになる。
衣装だけでなく武器も手にしている。右手にはニメートルを超す銀の長槍が。
「そんな格好して、俺に一体何の用だ?」
「――死ね」
アレンは問いに答える事無く一言述べた直後、奴の槍が秒を待たず撃ち出されようとする。
アキ「ちょっとラウル、貴方休憩の時にコソコソ食べてるわね」
ラウル「え!? あ、いや、別に大した物じゃ……」
アキ「何よ。教えてくれないの?」
ラウル「えっと、リューセーがくれた携帯食を食べてて……」
アキ「リューセーの? そう言えば遠征前に何か受け取ってたわね。どんなの貰ったの?」
ラウル「(どうしよう。教えたら絶対取られそうな気が……特に『かろりーめいと』とドライフルーツが)」