別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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女神の戦車(ヴァナ・フレイア)

「おいおい、随分物騒な返答だな」

 

「………ちっ!」

 

 槍の穂先が額に当たろうとする寸前、俺は一切慌てずに柄を片手のみで掴み取って進行を阻止した。攻撃を防がれた事にアレンは舌打ちをしながらも、即座に槍を引きながら後退する。

 

 すぐに距離を取ったのは、恐らく以前に受けた反撃を警戒したのかもしれない。俺がフレイヤに怒鳴りながらも、アイツの槍を掴んだ直後に遠当てで吹っ飛ばしたと言う大変苦い過去(おもいで)がある為に。

 

 アレンが此処へ来て俺を殺そうとしてるのは大体察してる。この前の抗争で俺に一撃で倒された屈辱を晴らしたいだけでなく、昼頃に俺がフレイヤに遠慮無くズケズケ言った事で、我慢の限界を通り越して完全に殺意を抱く事になったんだろう。フレイヤがそれに気付いてるかどうかは分からないが、な。

 

「質問を変えよう。お前が此処に来たのはフレイヤの指示か?」

 

 恐らく彼女の事だからオッタル達に消して手を出さないよう強く念を押してると俺は予想していた。しかしそれに反してアレンが来てるから、自分の予想が外れた結果になっている。

 

 今度はさっきと違って、アレンは攻撃せずに口を開く。

 

「……これから死ぬテメェに知る必要はねぇ」

 

「成程、無断で来たのか。しかも処罰覚悟の上で」

 

「あぁ!?」

 

 答えていないのにも拘わらずに推察する俺に、アレンは途端に声を荒げた。

 

 その直後、あの猫人(キャットピープル)から凄まじい殺気が放たれて重苦しい空気になっている。常人ならば恐怖して動けなくなるほどに、な。

 

「昼間に俺がフレイヤに見せた無礼な振る舞いが気に食わなかったか?」

 

「………………」

 

 今度は無言になったアレンだが、俺はそれを肯定と見なすように問い続ける。

 

「だけどそれだけでお前が無断で来る訳がないから、以前の件も加えて腹に据えかねたか?」

 

「……………黙れ」

 

「まぁそれはそうだ。冒険者でもなければ【恩恵(ファルナ)】すら刻まれてない俺に攻撃を防がれただけでなく、たった一撃で倒されたからな。【フレイヤ・ファミリア】の副団長であれば面目丸潰れどころか、完全な恥晒しもいいところだろう」

 

「黙りやがれ!」

 

 神経を逆なでする俺の言い方で堪忍袋の緒が切れたかのように、アレンの表情は羅刹の如く恐ろしくなっていた。

 

「答えてもいねぇのにベラベラ抜かしやがって!」

 

「でも否定しないのは事実なんだろう?」

 

「~~~~~~!!!」

 

 どうやら図星のようだ。今の自分は神でなくても、アレンの表情(かお)を見るだけで手に取るように分かる。

 

 人間は自身の触れたくないモノに関して凄く敏感になる。特に屈辱な事に関して抉るように言えば、必ず何かしらの反応を示すのがお決まりだ。

 

 アレンだけでなく、この前俺が少しばかり挑発するように言ったベート・ローガも同様に。思わず激昂して突っかかりそうになるも、どうにか耐えて舌打ちだけで済ませたから、今頃は俺に対抗出来る為に強くなろうと必死になってるかもしれない。フィン・ディムナ達が注意するほど無茶な戦いをするほどに、な。

 

 如何でも良いんだが、アレンとベートって何だか似てるような気がする。種族は違えど、相手を平然と見下すところが特に。そこを目の前にいるアレンに言ったらどうなるか反応を見てみたいが、流石に今この場で関係の無い人物を出すのは止めておこう。

 

「もういい! テメェは今すぐ殺す! そして死ね!」

 

「……余計なお世話かもしれないが」

 

 激昂して構えるアレンとは別に、思うところがある俺は嘆息しながら忠告をしようとする。

 

「平然と『殺す』なんて簡単に言わない方が良い。それは覚悟を決める時に使う言葉だ」

 

 この世界の人間、と言うよりオラリオの冒険者は非常に好き勝手な振る舞いをしている。

 

 以前オラリオを散策している時、自分達は冒険者(きょうしゃ)だからと一般人(じゃくしゃ)相手に脅迫行為を行っていた事があった。その時は俺が成敗して事無きを得たとは言え、あんなのは氷山の一角に過ぎないだろう。

 

 あの時は低レベルな冒険者だったが、【フレイヤ・ファミリア】の連中はソイツ等と全く違う。まるで生殺与奪の権利を持っているかのような振る舞いをするから、兵藤隆誠(おれ)聖書の神(わたし)から見て非常に不愉快だった。特に強者だから何をしても許されると言う自分勝手な行為をする人間とかが。

 

 目の前にいるアレンも【Lv.6】と言う第一級冒険者だから、その絶対的な強さを持つ故に平然と俺を殺すと言っているのだ。不意を突かれたあの時と違って、今度は一切油断する事無く全力で殺そうとするのが分かる。

 

 だが――

 

「あと他に……そうやって自分を強者みたいに振舞わない方が良い。余りにも滑稽過ぎて弱者にしか見えないぞ」

 

「―――轢き殺してやる!!」

 

 未だに自分を殺せると思い上がってる大馬鹿者(アレン・フローメル)に、力の差を教えてやろうと相手をする事にした。

 

 俺の最後の挑発が引き金となったようで、アレンは先程とは違って最大速度で俺に迫ろうとする。

 

(あ、そうだ)

 

 アレンの猛攻撃を躱しながら、俺はある事を思い付いた。ただ普通に負かすだけでなく、精神的にも大ダメージを与える方法を。

 

 

 

 

 

 

「アレンはまだ見つからないの?」

 

「申し訳ありません」

 

 場所は変わって【フレイヤ・ファミリア】の本拠地(ホーム)戦いの野(フォールクヴァング)』。

 

 神室にいるフレイヤからの問いに、入ってきたオッタルは大変不甲斐無さそうに頭を下げていた。

 

 アレンがいないのに気付いたのは約一時間ほど前だった。団長のオッタルとは別に、普段から副団長としてフレイヤの居城を守る為に本拠地(ホーム)に待機してる。

 

 ダンジョン探索であれば必ず誰かに伝え、何らかの密命で動くのであればフレイヤが知っているはず。だけど今回はどちらも該当せず、今の時間帯でも本拠地(ホーム)にいない事に周囲が漸く気付き、すぐに捜し出すよう命じて今に至る。

 

 捜すと言っても必要最低限でしかなく、第一級冒険者の幹部達しか動いていない。彼等でなければアレンの独断行動を止める事が出来ないのだ。自分勝手な猫人(キャットピープル)を捜す事にアルフリッグ達は内心嫌だったが、フレイヤから直々に命じられた為にやるしかなかった。

 

(もしかしたら、隆誠に会いに行ったかもしれないわね)

 

 オッタルの報告を聞いたフレイヤは、確証は無くとも予想していた。アレンが勝手に動いた理由は隆誠の元へ向かったのではないかと察している。

 

 以前あった【ロキ・ファミリア】との抗争時に自分(フレイヤ)が隆誠に怒鳴られている際、それを見たアレンが激昂しながら攻撃するも防がれた挙句、一撃で倒されると言う予想外な展開が起きた。その後に目覚めたアレンはプライドが傷付いたかのように荒れた挙句、鬱憤を晴らすようにダンジョンに足を運んでいる始末。それが何日か続いた事で漸く落ち着くも、完全に解消せずに燻ぶったままだが。そして今日の昼頃に隆誠と本拠地(ホーム)で再会した事であの時の出来事を思い出しながらも必死に堪えるも、不敬とも呼べる遠慮無い態度を取ったのが引き金になったのだろうと、フレイヤはそう考えていた。

 

 隆誠が『豊饒の女主人』に戻っているのであれば、アルフリッグ達とは別の眷族から報告が入ってもおかしくない。しかしそれが無いと言う事は、どこか別の場所でアレンと交戦している可能性が高い。『Lv.6』でオラリオ最速と呼ばれる副団長(アレン)の実力を決して疑っている訳ではないが、彼が相手となれば分が悪いだろう。本気でなかったとは言え、何の苦もなく撃退した隆誠と相手をすれば無事では済まない筈だと。

 

「余り派手に動きたくないのだけど……」

 

 自身の【ファミリア】は周囲から恐れられている事を自覚してるフレイヤだが、これ以上無駄に時間を掛ける訳にはいかないと決意する。【ロキ・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】が気付く前に早く終わらせようと、捜索する人員を増やすしかないと。

 

「オッタル、貴方も含めて他の子達にも――」

 

 フレイヤがそう言ってる最中、突如外から轟音が鳴り響いた。

 

「今の音は……?」

 

「すぐに確認してきます」

 

 聞こえたのは本拠地(ホーム)の門からだったので、誰かが愚かにも無断侵入したのだろうとオッタルは動き出した。

 

「待ちなさい、私も行くわ」

 

「ですが……」

 

 フレイヤが同行する事にオッタルは難色を示す。絶対に守り切れるとは言え、愚かにも女神の庭を土足で踏み入れる愚者の前に姿を現わすのは危険なのだ。

 

「こんな時間から私達に挨拶をしてくる人間(こども)が折角来たのよ。せめて顔ぐらい見たいわ」

 

「……畏まりました。ですが私の傍から決して離れないで下さい」

 

 既に知っての通り、【フレイヤ・ファミリア】は【ロキ・ファミリア】と並ぶ都市最大派閥でオラリオ最強戦力になっている。そんな派閥に喧嘩を売る人間は今のオラリオに存在しないから、フレイヤが興味を抱くのは当然だった。

 

 オッタルはフレイヤの心情を理解するも、それでも来て欲しくないのが本音だった。けれど今の彼女に何を言っても無駄だと悟ったのか、自分の近くにいるよう念を押すしかないのであった。

 

 出掛ける時の外套を身に纏ったフレイヤは、二つの大剣を背中に背負うオッタルを連れて行く。

 

 建物を出て庭へ向かうと、そこにはオッタル以外の眷族達が侵入者と思わしき者を取り囲んで武器を構えていた。しかし、少しばかり様子がおかしい。

 

「随分騒がしい音がしたけれど、何があったのかしら?」

 

『!?』

 

 響き渡るように透き通ったフレイヤの声が耳に入ったのか、眷族達は即座に武器を降ろすと同時に跪いた。

 

 それによって侵入者の顔が見えたから――

 

「やれやれ、やっとご登場か」

 

「隆誠……ッ!」

 

 一体どんな人物かと思えば、昼頃に会った隆誠だった。思わず疑問を抱く彼女だったが、彼が片手で引き摺るように持っている全身ズタボロ状態のアレンを見た事で一変する。




ベート「おらぁぁぁぁぁ!!」

ティオナ「ちょっとベート! 勝手に倒さないでよ!」

ティオネ「団長の指示を無視してんじゃねぇぞゴラァ!」

ベート「うるせぇバカゾネス共!」


ラウル「ベートさん、荒れてるっすねぇ」

アキ「全く。あんな事されたら迷惑にも程があるわ」

ラウル「あの人を止められるのは団長達だけだから、そろそろ止めて欲しいっす」

アキ「それよりラウル、何かこのところいつもと違って動きが良くなってる気がするわね」

ラウル「え? そうっすか?……(そう言えばリューセーからの携帯食を食べてから、いつもより身体の調子が良い気が……)」
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