別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
アレンを連れて転移術を使った隆誠は【フレイヤ・ファミリア】が住まう
自分達の周囲に人間や神の目が無い事を確認した後、すぐに認識阻害を解除して、片手でアレンの襟首を掴んだまま引き摺るように歩いていく。いつもなら門番がいる筈だが、何故かいなかった。例えいたところで今の隆誠は一瞬で黙らせているが。
五月蠅いのがいなくて好都合だと思いながら、隆誠は大きな門の前で立ち止まるも、すぐに片足を上げて――ヤクザキックの如く蹴飛ばした。凄まじい衝撃だったのか、大きな門は轟音を響かせながら開いていく。
開門した事で隆誠は再び歩みを再開し、無断で【フレイヤ・ファミリア】の
「止まれ! ここをフレイヤ様の
一人の眷族が叫んでいる中、隆誠が片手で掴んでるアレンの存在に気付いた。自分達の副団長がズタボロになっている上に意識を失っている事で、隆誠を取り囲んでる他の眷族達も動揺を隠せないでいた。
「フレイヤはいるか?」
「無礼者! 貴様如きがフレイヤ様を――」
敬愛すべきフレイヤを呼び捨てにされた事で激昂する眷族だが、突如頬に何かが掠めた。隆誠が突然指をさした途端に何かが光った事で。
「……………っ!」
いきなりの事で眷族達は言葉を失い、その内の一人は思わず頬を片手で擦る。指には自身の血が付着した瞬間、頬が漸く痛みを認識する事になった。
「悪いけど貴様如きに構ってる暇は無いから、さっさとフレイヤを連れてこい」
『………………』
以前に『豊饒の女主人』の従業員として来た時は低姿勢を見せていた隆誠だが、今は全く異なる横柄な態度だった。精鋭揃いと言われる【フレイヤ・ファミリア】を前に、まるで有象無象のように見ている目である。
そのような振る舞いをすれば、眷族の誰かが激昂すると同時に襲い掛かるだろう。自分が一体誰に喧嘩を売っているのかを分からせようと、彼等は今までそうしてきた。
しかし今回は実行に移そうとする者が誰一人いないどころか、動こうとする気配すら見せていない。
(ど、どうしてだ? その気になれば攻撃出来る、筈なのに……!)
隆誠の真後ろにいる一人の眷族は、向こうが完全に隙だらけだと分かっていながらも、動けないどころか本能的に恐怖していた。本人は必死に否定したいのだが、結局何も出来ないでいる。
だが、それは正しい判断だった。仮に実行したところで、隆誠は即座に迎撃するだろう。先程のキルビームを当ててアレンと同じく意識を失わせるか、もしくは物理的な攻撃で伸してしまうかのどちらかを。加えてもし眷族全員が襲い掛かれば、余計に悲惨な結果となるのは言うまでもない。
「早くしろ。それともこのバカ猫と同様、貴様等も一度痛い目に遭わないと理解出来ないのか?」
『!』
隆誠が殺気を込めながら警告すると、眷族達は金縛りにあったかのように動けないでいた。
このままでは埒が明かないので無視して通ろうと思った隆誠は、アレンを引き摺りながら進もうとするも――
「随分騒がしい音がしたけれど、何があったのかしら?」
突如、聞き覚えのある声がした。
響き渡るように透き通った声の主が分かっているように、先程まで隆誠を取り囲んでいた眷族達は即座に武器を降ろすと同時に跪いた。
彼等の行動を全く気にしてない隆誠は、目的の人物が漸く来たと視線を向けている。
「やれやれ、やっとご登場か」
「隆誠……ッ!」
「!」
二つの大剣を背中に背負うオッタルを連れているフレイヤは隆誠を見るも、意識を失っているアレンを見て目を見開いた。彼女だけでなく、オッタルも同様に。
「……アレンがそうなっているのは、貴方の仕業なのかしら?」
「でなければ、俺が態々此処へ来る理由はないだろう。そんな分かり切った質問をするほど、お前の
「貴様、フレイヤ様を愚弄するか……!」
隆誠の発言に聞き捨てならなかったのか、フレイヤの後ろにいるオッタルが口を出してきた。普段は出しゃばったりしない彼でも、
威圧と同時に殺気を込めるオッタルに、隆誠は全く気にせず彼女だけに視線を向けている。
「前から思っていたが、お前の眷族達は躾が全然なってないな。少しは礼節を学ばせたらどうだ?」
「……隆誠、貴方本当に遠慮が無くなってるわね」
流石のフレイヤも思わず頬を引き攣りそうになるが、それでも怒りを微塵も出そうとはしなかった。まるで懐かしく感じている。
神はともかく、人間が自分にここまで容赦無く言ってくるのは本当に久しぶりなのだ。彼を見て【フレイヤ・ファミリア】の前団長――ミア・グランドを思い出してしまいそうになる程に。
今の彼女は『豊饒の女主人』で
「まぁそれよりも、だ。一応確認したい。コイツが俺の所に来たのはフレイヤの仕業か?」
「私はそんな指示を一切出していないわ」
「ほぅ……」
未だに意識を失ってる
事実、彼女は決して手を出さないよう釘を刺している。にも拘わらずアレンが無様な姿を晒しているのは、命令無視をしたが故の結果だった。
「ではお前は一切無関係だと、そう言いたいのか?」
「無関係も何も、アレンが勝手な真似をするとは思ってなかったのよ」
「だがその結果がコレだ。どんな言い訳をしようが完全なフレイヤの不行き届きなんだから、
「ならば隆誠は私に、どう責任を取って欲しいのかしら?」
立場が悪いにも拘わらず、フレイヤは未だに余裕の笑みを浮かべている。ハラハラしながら見ているオッタルや他の眷族達を余所に。
「私の
「フレイヤ様!」
いきなりとんでもない事を言い出したフレイヤに、オッタルが再度口を出す。他の眷族達は彼と違って口を出さずとも、すぐに考え直すように視線を向けている。
責任を取るとは言え、眷族でもない人間に平気で身体を差し出そうとする主神に、眷族として黙って見過ごす訳にはいかないのだ。加えて隆誠はアレンを簡単に倒せる実力者であり、女神のフレイヤに一切敬意を見せていないから、もしかすれば平然と傷を負わせるかも行為をするかもしれない。そんな事になれば【フレイヤ・ファミリア】は色々な意味で不味いことになるとオッタルは危惧していた。
「い・や・だ。お前とそんな事するくらいなら、前に別れた元カノの方が断然良い」
『っ!?』
隆誠の発言にオッタル達が驚愕した。
美神と呼ばれるフレイヤを前に大変嫌そうな表情で拒否するなんてあり得ない。
「………………」
オッタル達とは別に、フレイヤは少しばかり放心していた。
明確に拒否したのとは別に、隆誠が恋人とそう言った行為をしたのが余りにも予想外だったから。
フレイヤは前に隆誠の魂の色を見た際、今も不明確な部分はあれど、全く穢れの無い美しくも光輝く色をしている。それを見たフレイヤは未だに誰かと肌を重ね合わせた事を一切していないと判断したのだが、彼が既に経験済みだと知った途端に固まってしまった訳である。
因みに隆誠が言った元カノとは、元ヴァルキリーのロスヴァイセで、性行為をするまでの関係に発展せずに別れている。今は彼女は一誠と恋人関係になっているのだが、時折未練がましいように元カレの隆誠を見ている事を本人は気付いていない。
アイズ「………(ジー)」
アキ「……ねぇラウル、最近アイズが貴方をジッと見てるのは何で?」
ラウル「そんなの自分が聞きたい位っすよ……(まさかアイズさん、俺がリューセーから貰った携帯食を狙ってるんじゃ……?)」
アイズ(あの人は一体どうやってラウルを強くするつもりなんだろう?)