別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか 作:さすらいの旅人
「――と言う訳で」
「……はぁっ」
アレンをフレイヤに引き渡して漸く『豊饒の女主人』へ帰れたが、予想通りミア母さんの一喝を受ける破目になった。余りにも帰りが遅かった所為で夕食が冷めてしまったと。
遅くなった事を謝りながら事情を説明すると、怒っていたミア母さんが途端に表情を変えた。アレン・フローメルに襲撃された事で遅くなってしまった事を聞いた途端、『あの
今回はフレイヤの命令でなくアレンが独断で襲撃した事も話し、それで今度は複雑そうな表情へ変わっていく。こんなにコロコロと表情を変えるミア母さんは初めて見ると思いながらも、アレンを撃退した後に主神の元へ送り返すのに少々時間が掛かったと分かってくれて、これ以上のお咎めは無しで済まされた。
「で、どうやって落とし前を付けたんだい?」
「アレンには俺が持ってるマジックアイテムで女に性転換させて、一週間ばかり教育するようフレイヤに言っておいた」
「そうかい。アレンを女にして……ん? ちょっと待ちな」
質問に答えた俺にミア母さんは頷いていたが、途中から何か違和感があるように待ったを掛けた。
そこから先も詳しく教えると、先程まで向こうの自業自得だと思っていた筈のミア母さんは、今度は何故か気の毒そうな表情になるのであった。それは言うまでもなくアレンに対して、な。
☆
あれから三日。俺は『豊饒の女主人』が営業日でありながらも休んでいた。
勿論無断でなく、ちゃんと事前に言ってある。アレンが襲撃した時に奴の得物を壊したから修理しに行く為の理由を言うと、ミア母さんから『アンタは変な所で律儀だねぇ』と呆れながらも許可してくれた。
因みに俺が休みを取る事を知ったアーニャがギャーギャー騒いでいたが、そこはミア母さんの方で黙らせてくれた。後から知ったのだが、彼女はあのバカ猫の妹だそうだ。それを聞いた際に少しばかり申し訳なく思ったが、どうやら絶縁状態らしく
兄が妹を忌み嫌うなんて、俺やサーゼクスであれば信じられない内容だった。もし俺がアーシア、サーゼクスがリアスと絶縁するなど絶対有り得ない。俺達にとって妹とは守りたい存在だから、アレンがやってる事は正直言って理解に苦しむ。どんな深い事情があるとは言え、妹を捨てるなんて以ての外だと抗議したい。
まぁそんな如何でもいい俺の個人的な事情は横に置いといて、だ。今日の目的となっているアレンの槍を修理するには、やはり鍛冶屋しかない。
鍛冶系で【ヘファイストス・ファミリア】と【ゴブニュ・ファミリア】が一番有名らしい。どちらも鍛冶を司る神だから、第一級冒険者を満足させる武器を作って有名になるのは当然と言えよう。
俺としては槍を修理するにはどちらでも良いのだが、今回は【ヘファイストス・ファミリア】の方へ行く事にした。聞いた話によると、この世界のヘファイストスは女神らしい。
ロキのような二の舞を踏まないよう、今度は前以てどんな容姿をしているのかをミア母さんにちゃんと確認している。右目に眼帯をつけた赤髪で男装の麗神だと。
まだ話を聞いただけだが、俺がいる世界の男神ヘファイストスと違う点がある。足が不自由の筈なのに、此方の女神ヘファイストスは全く問題無い。それとは別に眼帯で覆ってる右目は何かしらのコンプレックスがあるらしく、万が一に話す機会があったとしても極力触れない方が良いとミア母さんが言っていた。
元神の
だが触れたくないと言えば、ヘファイストスとアフロディーテがどう言う関係なのかが凄く気になる。この世界のアフロディーテは間違いなく女神の筈だから、そう考えれば同性の夫婦になってしまうのだが、一体どうなっているのやら。
「やっぱり結構掛かるか」
【ヘファイストス・ファミリア】の
となれば、やはり自分の手で修理するしかない。かと言って
出来るのであれば
「何処かで体験出来る鍛冶工房があれば……ん?」
適当に歩きながら思案してる中、ふと看板を目にした事で足を止める。
『鍛冶に興味がある方はいませんか? もし【ヘファイストス・ファミリア】へ入団するのでしたら、一度でも良いから鍛冶の空気を知る為に体験する事をお薦めします。場所は――』
アレンの槍を修理する前に一度練習したいと思っていた俺としては嬉しい誤算だ。これは是非とも行かなければ……って、締め切りは今日の昼までじゃないか!
急いで目的の鍛冶工房へ向かおうと決めた俺は、場所を確認してすぐに向かうのであった。
この時の俺は全く想像してなかった。体験として作った俺の練習用武器が、とあるハーフドワーフの眼鏡に叶うどころか、大変しつこく勧誘されてしまう事を。
フィン「ラウル、ちょっといいかな?」
ラウル「何すか?」
フィン「ガレスから聞いたんだけど、リューセーから携帯食を渡されたそうだね」
ラウル「……もしかして、団長も食べたいんすか?」
フィン「ん~……正直に言えばそうだね。ガレスが美味しかったって言ってたから」
ラウル「……良いっすけど、その代わりアキ達には黙って欲しいっす。コレ知られたら絶対取られそうになるから」
フィン「それは、棒状のクッキーかい?」
ラウル「リューセー曰く『かろりーめいと』ってお菓子っす。色々な味があって、今回はチョコ味を食べようかと」
フィン「へぇ、チョコか。道理でそんな色をしている訳だ。では早速……あ、美味しい。それに丁度良い甘さだね」
ラウル「そうなんすよ。甘いドライフルーツや塩辛いナッツもあるんすけど、自分としてはコッチが好きっす」
フィン「ふぅん。団長の僕に内緒で、遠征中にこんな美味しい物を食べてたなんて」
ラウル「そ、そんな事言われても……」