別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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鍛冶体験?

「此処って……本当に鍛冶体験なのか……?」

 

 目的地である会場と思われる鍛冶工房に辿り着くと、自分と違って明らかに入団する気満々の鍛冶師らしき服装をしてる者達ばかりだった。俺みたいにラフな格好で参加しようとする人が全く見当たらない。

 

 【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶師系ファミリアの中で世界クラスの高級ブランドを誇っており、冒険者の間で最も信頼が厚いから、こんなに参加者が多いのは当然の流れなのだろう。その証拠に参加者の対応をしてる受付者は、指定先の場所へ行くよう淡々と応対している。もう完全に慣れていると言わんばかりの感じだ。

 

 だけど、入団したところで必ずしも成就する訳ではない。自分が考えていたよりレベルが高過ぎて付いて行けない、作品を作っても思うように売れない等々、途中で挫折する者は必ずいる。有名な所ほど、その成否がはっきりと出てしまうのが特徴の一つだ。尤も、それはあくまで俺の個人的な考えに過ぎないが、な。

 

 単なる練習目的で来たとは言え、入団する気満々の鍛冶師達を見ると少々気まずい。だけど絶対参加すると決めた以上、途中で諦めては聖書の神(わたし)の沽券に関わるから、周囲の雰囲気に飲まれず行くとしよう。

 

「あのー、鍛冶体験出来る場所は此処ですか?」

 

「え? ……ああ、はい。そうですよ」

 

 受付らしき人に確認するも、その人は突然何を言ってるのかと疑問視されたが、すぐに気を取り直すかのように肯定した。

 

 何だかまるで俺みたいな素人は完全に予定外だと言わんばかりの反応だった。だけどすぐに肯定したから決して間違っていない筈なんだが……どういう事だ?

 

「見たところ鍛冶道具は一切お持ちではありませんが、未経験者ですか?」

 

「はい。看板を見て、是非とも一度やってみたいと思いまして」

 

 一応知識と経験はあるが、この世界の鍛冶については全く分からないから未経験者だと言う事にした。別に嘘は吐いていない。

 

「なら道具一式は後ほど此方でご用意します。そろそろ説明が始まりますのでお入りください」

 

 受付の誘導により、俺は会場の中へ入っていく。

 

 道具を持っている鍛冶師達が入念に手入れをしている中、自分だけかなり場違いな気がすると思いながらも待っている中――

 

 

「おいアイツ、道具持ってないぞ」

 

「ホントだ。もしかして、此処がどう言うところかを知らないで来たんじゃ……」

 

「まぁどうせすぐに帰るだろうさ」

 

 

 参加者達が此方を見て気になる発言をしていた。

 

 俺は単に鍛冶体験する為に来ただけなんだが、何かおかしい気がする。もしかして俺、来る場所間違えたりする?

 

 確認をしようと参加者の一人に訊ねてみようとするも――

 

「ではこれより、本日のお題となっている『短刀』について説明します」

 

 【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師と思われる司会者が来た事で出来ず仕舞いとなってしまった。

 

 

 

 

(やはり今年の参加者はいつも以上に多いな)

 

 隆誠を含めた参加者達に説明している司会者は周囲を見渡しながら説明していた。

 

 実はこの会場、鍛冶体験するとは別に【ヘファイストス・ファミリア】の入団試験も兼ねている。

 

 鍛冶師が【ヘファイストス・ファミリア】へ入団を希望する際、鍛冶神である女神ヘファイストスが人間の力だけで打った最高峰の武具を見せて、入団するかどうか決めさせる儀式がある。本来ならばそうする予定だのだが、最近の鍛冶師は入団してもすぐに辞めてしまう者が続出してる事もあって、今年は(ふるい)()ける意味合いも兼ねて試験をやる事にした。主神のヘファイストスは入団する人間(こども)には面と向かい合って話したい為に難色を示すも、眷族達から今後の経営には必要な事だと言われてしまって渋々承諾している。

 

 一通りの説明を終えた司会者は、参加者達に指定先の工房へ向かうよう指示を出す。

 

(確か今回の参加者の中に未経験者がいるそうだが……ああ、彼か)

 

 説明を聞き終えた参加者達の中に、一人だけ戸惑いの様子を見せている青年――隆誠がいる。受付より全くの未経験者が参加していると聞いており、鍛冶師らしくない服装をしてすぐに見つける事が出来たから。

 

 取り敢えず自分が対応しようと彼の元へ向かおうと思った矢先、思わぬ人物が声を掛けようとしていた。

 

「お主、受付から聞いたが全くの未経験者らしいな」

 

(何で貴女がいるんですか!?)

 

 黒髪と褐色の肌、左目の眼帯が特徴的な長身の女性が隆誠に話しかけるのを見た司会者が驚いていた。

 

 彼女こそが【ヘファイストス・ファミリア】の団長――椿・コルブランド。二つ名は【単眼の巨師(キュクロプス)】。

 

 オラリオ最高の鍛冶師である最上級鍛冶師(マスター・スミス)の称号を冠する人物で、冒険者としても一流の実力者でもある。そんな彼女が何故この会場に来てるのかが余りにも予想外だったから、司会者はこうして驚いているのだった。

 

「ええ、そうですが」

 

「何なら手前が教えてやろう」

 

「本当ですか? それは助かります」

 

(いやいやダメですから~~!!)

 

 簡単に教えようとする椿の軽率な発言を聞いた司会者がすぐに止めようとするも、彼女は此方に気付いたのか視線を向けた。『余計な事は言わなくて良い』と言う感じで。

 

 相手が団長だからか、指示を出された事に阻止する事が出来ず、黙っているしかなかった。

 

「ところで、貴女のお名前は?」

 

「おお、そう言えば名乗ってなかったな。手前は椿で、【ヘファイストス・ファミリア】のしがない鍛冶師(スミス)だ」

 

「椿さん、ですか。俺は隆誠と申します」

 

(え!? あの参加者、団長の事を知らないのか!)

 

 いくら未経験者だからと言っても、オラリオに住まう者であれば【ヘファイストス・ファミリア】の団長の名前は必ず知っている筈。だと言うのに、あの青年は全く知らないから司会者は逆に驚いていた。

 

「隆誠、か。やはりお主、極東の生まれか?」

 

「……ええ、そうなんです。って事は椿さんも?」

 

「うむ。お主が極東出身と思わしき顔立ちだったから、もしやと思って声を掛けてみたのだ」

 

(ああ、成程……)

 

 彼に声を掛けた理由に内心納得した。彼女も極東出身者だから、遠い国から来た同胞と思わしき者に声を掛けるのは当然かもしれないと。

 

 やがて意気投合するように話が弾んでいく中、椿は目的を思い出したかのように司会者の方へ再度視線を向ける。

 

「この者は手前が見るから、後は任せたぞ」

 

「わ、分かりました……」

 

 団長の命令に逆らえないのか、司会者は仕方ないと言わんばかりに頷いた。

 

「行くぞ、隆誠。未経験者のお主はこっちだ」

 

「え? でもそっちは違う工房じゃ……」

 

「お主のような者がいれば、参加者達が集中出来んからのう」

 

 確かに椿の言う通り、これから試験に臨む鍛冶師達の中に未経験者(ぶがいしゃ)がいたら気が散って邪魔になるかもしれない。司会者もそれを少しばかり危惧して、別の鍛冶師を呼んで違う工房に案内して教えるつもりだった。それがまさか【ヘファイストス・ファミリア】の団長自らやる事になったのは全く想定外であったが。

 

 案内されようとしている隆誠は未だに入団試験だと全く気付いておらず、言われるがまま彼女に付いて行ってる。

 

 椿だけでなく、司会者は後ほど驚愕する。隆誠が練習用として作った筈の短刀は、最上級鍛冶師(マスター・スミス)以上どころか、ヘファイストスに匹敵しうる逸品だと知る事に。




ティオナ「あ~、早く続き読みたいなぁ~」

ティオネ「アンタ、もうすっかりハマっちゃってるのね。リューセーって言う従業員の書いた物語に」

ティオナ「だってホントに面白いんだもん! 今まで見た英雄譚とは全く内容が違うだけじゃなくて、敵側の感情とかよく分かるし!」

ティオネ「敵側って、普通は英雄側の視点だけじゃないの?」

ティオナ「そうなんだけど、敵側にも色々な事情があって、それで悪人になる理由に納得出来るところもあるんだよ!」

ティオネ「随分変わった英雄譚なのね。まぁ私には興味無いから如何でも――」

ティオナ「そう言えば、この前フィンにも見せたけど面白いって言ってたよ」

ティオネ「そう言う事は早く言いなさい! 遠征から戻ったら、すぐにでも団長に読ませるようあの男に至急書かせないと!」

ティオナ(やばっ、余計なこと言っちゃったかも……)
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