別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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IF企画 リューセーVS【フレイヤ・ファミリア】 オッタル達、大敗する

 オッタルの黒大剣に魔力が帯びているのは魔法を使ったからだった。

 

 その魔法は【ヒルディス・ヴィーニ】。金色の魔力を武器に与えて、威力を強化するだけの単純な魔法。

 

 本来は短文詠唱で済む筈だが、オッタルは敢えて長引かせていた。全ての魔力を黒大剣に注ぎ込む為に。その結果、漆黒に染まっている筈の刀身が、オッタルの魔力によって光り輝く黄金色に染まっている。

 

 まるで神から与えられたかのような穢れが一切無い神聖な剣のようで、冒険者だけでなく、神々ですら魅了されるような美しい色に染まっていた。

 

 それと同時に恐ろしさもある。これ程の強力な魔力を対象に当てれば、死は免れない。現にオッタルはこの魔法で、深層の階層主【ウダイオス】を一撃でガラクタに変えた実績があるのだ。

 

 本来使うべき相手はモンスター、もしくは挑んでくる冒険者なのだが、今回はどちらも当てはまらない。黄金の大剣を振り下ろしてる相手は一般人――とは言い難いが『神の恩恵(ファルナ)』を与えられていない人間(ヒューマン)

 

 普通に考えてあり得ないが、その人間(ヒューマン)は【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者達を蹂躙していた。まるで自分達を雑兵みたいに、涼しい顔をしたままで。

 

 今のオッタルは非常に申し訳ない気持ちだった。『強靭な勇士(エインヘリヤル)』と称してくれた主神(フレイヤ)の顔に泥を塗っていたから。自害しても償われないほどの大失態を犯している自分達の姿をフレイヤが見たら、確実に失望するだろうと考えている程だ。故に決めた。自身の魔法(きりふだ)で必ずヒューマンの隆誠を倒し、封印されたフレイヤを救出した後、【フレイヤ・ファミリア】団長の座から退こうと。

 

 美しき黄金の剣が隆誠の身体をオーラごと斬り裂こうと、

 

「引っ掛かったな」

 

 する瞬間、まるで造作も無いと言わんばかりに、隆誠は受け止めていた。

 

 しかも左手だけで。

 

「ッッ!!??」

 

 オッタルは混乱していた。

 

 先程まで隆誠が纏っているオーラに罅が入った筈なのに、全く効いていなかった。

 

 自身の膂力で攻撃があと少しで届くのであれば、魔力を使った【ヒルディス・ヴィーニ】なら確実に届くと確信したのに、全く異なる展開になっている。

 

 実は隆誠のオーラに罅が入ったのは、単なる演技に過ぎない。勝機(きぼう)の道を作らせると見せかけた罠に、果たしてオッタル達が気付くかどうかを試したのだ。

 

 その結果、オッタルは何の疑いもせずに勝機があると信じ込んでしまった。同時にヘグニ達も最早オッタルに頼るしかないと見事に騙され、(死んではいないが)無駄死にする行為を自らやっている事にも気付かずに。

 

 一体何故だと混迷を極めるオッタルに、隆誠は呆れるこう言った。

 

「こんな簡単に騙されるとは思わなかったぞ」

 

「何、だと……ッ!?」

 

 自分は一体どこで騙されたのだとオッタルが必死に考えようとするも、そうしてる暇はなかった。刀身に纏っている黄金の魔力が急に消え失せてしまったから。

 

 直後、黒大剣を受け止めていない開いた右手から、突如黄金の輝きを放った球体が出現する。

 

 それを目にした瞬間、オッタルは気付いた。どうやったかは知らないが、黒大剣に纏わせた自身の魔力を隆誠が吸収し、それを球体状にしたのだと。

 

「その前にオッタル(おまえ)魔力(コレ)は返しておくぞ」

 

 隆誠がそう言いながら、右手をオッタルに向けて言った瞬間――凄まじく大きな魔力波がオッタルを包み込むように放たれた。

 

「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

 進行していく魔力波の中からオッタルの悲鳴が聞こえた数秒後、巨大な爆発が発生して迷宮都市(オラリオ)全体を響かせた。

 

「普段からアレン達に『脳筋』と蔑まれて気の毒だったが、今回ばかりはその蔑称に相応しい末路だったな、オッタル」

 

 爆発が晴れた先には、全ての魔力を使い切り、完全に意識を失って倒れている【猛者(おうじゃ)】の姿があった。

 

 オッタルを含めた【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者たち全てが、冒険者ではない人間(ヒューマン)の兵藤隆誠に大敗を喫する。

 

 

 

 

 隆誠とオッタル達から少し離れた場所から、【ロキ・ファミリア】の面々は開いた口が塞がらない状態だった。

 

「……フィンが予想しとったとは言え、まさかこれ程までとはなぁ……」

 

 オラリオ最強と呼ばれた猪人(ボアズ)、【猛者(おうじゃ)】オッタル。

 

 都市最速の猫人(キャットピープル)、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】アレン・フローメル。

 

 白妖精(ホワイトエルフ)、【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】ヘディン・セルランド。

 

 ダークエルフ、【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】ヘグニ・ラグナール。

 

 小人族(パルゥム)の四つ子、【炎金の四戦士(ブリンガル)】ガリバー兄弟。

 

 【フレイヤ・ファミリア】が誇る最強戦力を、隆誠がたった一人で全て倒した。

 

 余りの光景にオッタル達が弱過ぎるのではないかと錯覚するも、それは断じてあり得ない。ただ単に隆誠が強過ぎたのだ。

 

 離れて見ていたとは言え、ロキを除くフィン達は向こうの会話をバッチリ聞いていた。その際に隆誠が自ら「『Lv.20』以上は確実だ」と。

 

 余りにも桁外れなレベルを聞いた彼等は疑ってしまいそうになるも、それが事実だと理解させられた。現にオッタルを一撃で吹っ飛ばした後、『Lv.7』になったアレンの全力を受けても全然効いてなかったのだ。

 

 其処から先は隆誠の蹂躙が始まり、そして最後に目覚めたオッタルを簡単に倒したと言う呆気無い結末となり、フィン達は最早何を言って良いのか分からない状態になっている。

 

「凄い……」

 

 フィン達とは別に、アイズは圧倒的な力を見せた隆誠を凝視している。

 

 今まで手合わせをしてくれた際、あそこまで本気でやってくれなかった。それが今は本気になって、嘗て訓練の相手をしてくれたオッタルを簡単に倒した事で複雑な気持ちになっている。

 

 だけど、アイズはすぐに切り替えた。自分もラウルと同じく弟子になりたいと本気で考え始めている程だ。

 

「……クソがッ!」

 

 同時にベートは思いっきり歯を食い縛っていた。余りにも差があり過ぎると理解した為に。

 

 今まで『本気でやりやがれ!』と何度挑発するも、いつも隆誠から『絶対死ぬから止めとけ』とあしらわれる日々だった。

 

 あの返答は面倒だからやりたくないだけだと思っていたベートだったが、先程までの光景を見て漸く理解した。隆誠が本気でやれば自分を簡単に殺す事が出来るのだと。

 

 『Lv.6』のベートに対して、隆誠は『Lv.20』以上。余りにも実力差があり過ぎて、自分は道化を通り越した惨めなザコだと思い知らされるのであった。

 

 フィンやガレス、ティオナやティオネも色々複雑な心境となっている中、隆誠は意識を失って倒れてるオッタル達を収集していた。

 

 直後、隆誠が光弾らしきモノを放った。倒れてるオッタル達に直撃して少し経つと、ボロボロだった姿から一変し、戦う前の無傷な姿になっている。

 

「おいおいフィン、一瞬でオッタル達が回復しおったぞ。アレも魔術と呼ばれるモノなのか?」

 

「さぁ、そこはリヴェリアに聞かないと分からないな」

 

「だとしても、アミッドたんが見たら確実に勧誘しそうやわ」

 

 この場にいないリヴェリアとは別に、ロキは【戦場の聖女(デア・セイント)】のアミッド・テアサナーレが隆誠を勧誘する光景を思い浮かべていた。

 

 オッタル達が未だに意識を失っているとは別に、完治したのを確認した隆誠は次の行動に移る。

 

 懐から見慣れないマジックアイテムを取り出して、オッタル達に向けて撃った。

 

 その後、フィン達は信じられない光景を目にしてしまう。

 

「な、な、な、何やアレはァァァァァァァァァ!!??」

 

 隆誠がマジックアイテムらしきモノを使って、大きな変化をするオッタル達にどでかい叫び声を上げるロキだった。




次回でIF企画が終了になります。

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