別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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IF企画 違うルートの【フレイヤ・ファミリア】解体

 翌日、【フレイヤ・ファミリア】が解体されたと言う情報がオラリオ中に周知された。

 

 これを知ったギルド、と言うよりギルド長のロイマン・マルディールはすぐに確認をしようと部下達に命じるも、それは事実だったと判明される。【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤが行方不明になっていたから。

 

 しかし、それだけでは済まない程の事実もあった。

 

 【猛者(おうじゃ)】オッタル、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】アレン・フローメル、【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】ヘディン・セルランド、【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】ヘグニ・ラグナール、【炎金の四戦士(ブリンガル)】ガリバー兄弟。計八名の第一級冒険者も忽然とオラリオから姿を消していたのだ。

 

 オラリオの住民達を敵に回してしまった責任から逃れようとフレイヤが一部の眷族達を連れて逃亡、と言う推測を立てるギルド職員がいたが、それをロイマンが否定した。あの美神が自分勝手な性格であっても、そんな恥知らずな真似をするほど狭量な神物ではないと。とは言え、現に彼女達が行方知れずになっているのは事実だった。

 

 他にも『戦いの野(フォールクヴァング)』に主神と最強の第一級冒険者達がいなくなったと分かった途端、包囲していた各【ファミリア】の主神や冒険者達は突入しようとしていた。残っていたフレイヤの眷族達は死守しようとするも、それはもう叶わなかった。

 

 フレイヤに怒りをぶつけようとしていた彼等だったが、そこは【ロキ・ファミリア】の方で何とか収まる結果になった。ロキやフィン達も各ファミリアと同様にフレイヤの所業に憤っている為、その賠償をさせようと、【フレイヤ・ファミリア】の莫大な資産を没収すると言う形で。

 

 各【ファミリア】は怒りの対象がいない事に不満を示すも、賠償してくれるならと矛を収めてくれた。尤も、あの恐ろしい女神やオッタル達と戦うよりは遥かに良いと言うのが一番の本音である。

 

 これで解決と思いきや、またしても問題が起こっていたらしい。親衛隊を気取る男神達の『共鳴者(シンパ)』や、フレイヤを崇拝する子供達『信者』が異を唱えていたのだ。その直後、とある酒場の男性店員が現れた事により、一瞬で鎮圧されてしまったが。

 

 酒場の男性店員と聞いたロイマンは、でっぷりした身体を揺らしながら動き出した。今回【フレイヤ・ファミリア】を解体させた真犯人が兵藤・隆誠だと、自身の直感が働いた為に。

 

 

 

 

 

 

「フィン、力付くでも構わんから兵藤・隆誠を何としてでも捕縛しろ! これはギルドからの強制任務(ミッション)だ!」

 

「いきなりな要求だね」

 

 場所はとある裏路地の喫茶店。その店内でフィンはギルド長ロイマン・マルディールと二人で話していた。

 

 ギルド長が職員を通じて【フレイヤ・ファミリア】の件について話したいと要請があった為、こういう時は行動が早いなと少々呆れながらもフィンは応じる事にした。

 

 予想通りと言うべきか、ロイマンはギルドの権限を使って隆誠の捕縛を命じた。行方不明になったフレイヤとオッタル達の居場所を吐かせる目的で。

 

「冒険者でない一般人の彼を捕縛だなんて、ギルド長の君ともあろう者が横暴が過ぎるんじゃないかな。それにどうして態々僕達が出張ってまでやらないといけないんだい?」

 

(しら)ばくれるな!」

 

 非人道的な命令を出す事にフィンが嘆くも、ロイマンはそれに付き合う気など毛頭無かった。

 

「【ロキ・ファミリア(おまえたち)】が中心になって【フレイヤ・ファミリア】を解体する際、兵藤隆誠(あのヒューマン)も一緒だったと言う報告も聞いたぞ!」

 

「おや、耳が早いね。だったらロイマンが直接会って彼と交渉すれば良いじゃないか」

 

「それが出来れば態々強制任務(ミッション)など出さん!」

 

 ロイマンは隆誠について知っている。それは悪い意味で。

 

 隆誠は酒場の男性店員でありながらも、『神の恩恵(ファルナ)』を授かっていないのにも拘わらずに第一級冒険者達を一蹴する実力がある。それどころか神ですら手を上げる行為を平然と行っている始末で、色々な意味でオラリオの有名人となっていた。

 

 こんな非常識な男をギルドとしては見過ごせないのだが、務めている酒場『豊饒の女主人』の所為で思うように手が出せなかった。あの店は【フレイヤ・ファミリア】の元団長ミア・グランドがいるだけでなく、下手に手を出せばフレイヤも当然黙っていない。故にロイマンは今まで静観せざるを得なかった。問題が起きた場合、自分ではないギルド職員に対応させていたが。

 

「私が直接言ったところで、奴が素直に応じると本気で思っているのか!?」

 

「無視されるのがオチだね」

 

 もしも今回の首謀者がフィン達【ロキ・ファミリア】であったら、ロイマンは取引をする為の交渉をしていただろう。

 

 だが、隆誠であれば全く別だった。彼は冒険者でもなければ、【ファミリア】にも属してない人間(ヒューマン)。そんな相手にギルドの権威を突き付けたところで何の意味も無い。故にロイマンは苦肉の策として、【ロキ・ファミリア】に頼らざるを得なかった。

 

「寧ろあれだけの事をやった神フレイヤを、ロイマンが擁護する時点で理解に苦しむだろう」

 

「理解に苦しむのはコッチだ! あの小僧は【フレイヤ・ファミリア】が『黒龍』討伐に必要不可欠な存在だという事を全く理解しとらん!」

 

 ロイマンは三大冒険者依頼(クエスト)の達成を今でも夢見ている。その為に必要な戦力として【ロキ・ファミリア】、並びに【フレイヤ・ファミリア】に期待していた。

 

 しかし、肝心の二大派閥はいがみ合うばかりで手を取り合おうとすらしない始末。それはまだまだ先だと思い知らされる破目になるのが現状だった。

 

 そんな中、隆誠は【フレイヤ・ファミリア】を解体すると言う暴挙を犯した。黒龍討伐を夢見るロイマンからすれば、決して許されない愚行だと心の底から激昂する程だ。

 

「だからフィン、お前達には力付くでも奴を――」

 

「ロイマン、この際だから言っておきたい事がある」

 

 突如、フィンが遮るかのように言ってきた。

 

「リューセーと結託したのは認めよう。と言っても、僕達が手を貸したのは主に後始末に過ぎない」

 

「何だと?」

 

「だけどその前に、オッタルを含めた【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者は、リューセーに傷一つ付けられないまま全員倒された」

 

「!?」

 

 フィンから告げられる信じられない内容に、ロイマンは目を見開きながら腰を浮かせた。

 

「何を馬鹿な事を!」

 

 断じてあり得ないと否定するロイマン。

 

 隆誠が第一級冒険者を一蹴出来るのは勿論知っているが、【フレイヤ・ファミリア】の精鋭達をたった一人で倒したなど到底信じられなかった。特にオッタルは現都市最強の冒険者であり、オラリオが誇る最強戦力の一人でもある。ロイマンが否定したがるのは無理もない。

 

「事実だ。それでも信じられないなら、神ウラノスの前で同じ返答をしても良い」

 

 神であればロキもいるが、生憎彼女は隆誠に味方している為に確認の仕様も無かった。

 

 ギルドの主神であり『都市の創設神』の名前を出したと言う事は、フィンが本当に嘘を言っていないと言う事になる。

 

「……先日『Lv.7』にランクアップしたお前達三人でも無理なのか?」

 

 【ロキ・ファミリア】の三首領のフィン、リヴェリア、ガレスは先日あったクノッソス進攻の件で『Lv.7』にランクアップしている。彼等と『Lv.6』の幹部達がいれば、如何に隆誠が強くても勝てないだろうと確信したロイマンは強制任務(ミッション)を企てていた。

 

「ああ、無理だ。何しろ本気になったリューセーは自分の実力を『Lv.20』以上だと言い切った後、オッタル達を相手に余裕で倒していたからね」

 

「そ、そんな……馬鹿な……!」

 

 これも嘘だと真っ向から否定したいロイマンだったが、先程と同じくフィンは一切嘘を言っていない。

 

 冒険者でない筈の隆誠が余りにも馬鹿げた力を持っている事に、ずっと息巻いていたギルド長は急に力が抜けたようにポスンと椅子に座るのであった。

 

 

 

 

 

 

 【フレイヤ・ファミリア】の件が片付いた俺――兵藤隆誠は港街(メレン)に戻っていた。未だそこで期間限定の代理店主をしている為に。

 

 店に戻って早々、留守を任せていたアルテミスからの抱擁を受ける事になった。しかも凄く心配したと涙目になりながら、な。まぁそこは一緒にいたニョルズが一緒に宥めてくれて、どうにか事無きを得ている。

 

 そして数日後、夜の営業時間となった『豊饒の女主人 メレン店』には新たなウェイトレス達が頑張っている。

 

アレンちゃん(・・・・・・)、これ出来たから運んでくれ」

 

「分かりましたニャ~!」

 

 クロエとは違う黒髪猫人(キャットピープル)のウェイトレスは、人懐っこい笑顔をしながら作った料理を客の所へ運んでいく。

 

「店主。海鮮お好み焼き、たこ焼き、エール二つお願いします」

 

「了解、ヘディンちゃん(・・・・・・・)

 

 透き通るような白い肌に、金の長髪と珊瑚色の瞳を持った美しい白妖精(ホワイトエルフ)のウェイトレスからオーダーが入ったので、俺はすぐに調理に取り掛かろうとする。

 

「おっといかん。ヘグニちゃん(・・・・・・)、悪いけど海鮮類の材料が無くなりそうだから買出しを頼む」

 

「分かりました、すぐに買ってきます」

 

 褐色の肌に、薄紫にも見える銀の髪と若葉色の瞳をした可愛いダーク・エルフのウェイトレスに緊急の買出しを命じた。

 

「お? どうした、アルフリッグちゃん(・・・・・・・・・)達」

 

「店主、注文追加です」

 

「あちらのお客様よりシーフードパスタ一つ」

 

「向こうのお客様からエビフライ一つ」

 

「カウンターのお客様からイカリングフライを」

 

 全く同じ容姿をした小人族(パルゥム)の四つ子姉妹のウェイトレス達から追加注文が入った。

 

「分かった。オッタルちゃん(・・・・・・・)、追加の方を頼む」

 

「……畏まりました」

 

 厨房には錆色の髪と瞳をしており、頭部からは猪の耳が生えている幼児体型な猪人(ボアズ)のロリ少女が調理を始めようとしていた。

 

 ウェイトレス達の名前に大変聞き覚えがあるかもしれないが、コイツ等は先日俺に負けた【フレイヤ・ファミリア】のオッタル達。以前に使った性転換ビーム銃で、全員男から女にしている。

 

 オッタル達が女になったのを目撃した【ロキ・ファミリア】は言わずとも吃驚しており、その中でロキが一番興奮していた。それどころか『その魔道具(マジックアイテム)をうちに貸してぇ~!』とか言われたが、そこは丁重に断らせてもらったが。

 

 アレンの時と違って、今回は記憶の方も改竄させてもらった。コイツ等には是非とも、フレイヤの『魅了』でオラリオの住民や神達と同じく記憶を改竄された気持ちを味わってもらう為に、な。

 

 再び使った性転換ビーム中で女にした際、アレン以外の全員が見目麗しい女性に変化していた。特にオッタルなんか、本当に塔城小猫の逆バージョンに大変身して驚いた程だ。フレイヤが見たら確実に興奮すると断言出来る。

 

 因みに港街(メレン)での期間営業が終わるまで固定させているが、オッタル達が男に戻った瞬間、女として可愛く振舞っていた時の記憶が一気にフラッシュバックされる仕組みになっている。強靭な精神を持っていると前にフレイヤが言っていたけど、元に戻ったら果たしてどうなる事やら。

 

 後の展開が非常に楽しみだと思いながらも、俺は女になってるオッタル達に指示しながら仕事に励むのであった。

 

 

 

 

 

 

 あ、そうそう。小瓶に封印されたフレイヤだが、既に俺の腹の中にいなく、とある神物に預けていると補足しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、私が預かる事になるとは」

 

「ウラノス、神フレイヤを今後どうするつもりでいる?」

 

「どうするも何も、オラリオに余程の事態が起きない限り封印を解く気は無い」




内容がいまいちかもしれませんが、これでIF企画は終わりになります。

2話程度で終わる筈が、思った以上に長引いてしまいました。

感想お待ちしています。

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