別世界の元神がオラリオに来たのは間違ってるだろうか   作:さすらいの旅人

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IF企画 リューセーVS【フレイヤ・ファミリア】 アレン達の意地

「フーッ、フーーッ……! ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 今のオッタルは『手負いの獣』という言葉が相応しい。同時にダンジョン深層にいる『階層主』以上の恐ろしさも感じられる。

 

 彼は隆誠が見せた真の力に気圧され気味になっていた際、突如目の前に現れて不意打ちを食らって一時的に戦闘不能状態に陥っていた。獣の直感と言うべき防衛本能が働いた事もあって、咄嗟に防御態勢になりながらも後ろに跳んだお陰で、何とか致命傷を避ける事に成功している。

 

 だがそれでもダメージは大きく、すぐに立つ事が出来ない状態だった。万が一の為に持っていたエリクサーを使おうとするまでの間、鈍痛によって何度も意識を失いかけていた為に。

 

 そんな中、オッタルは憤っていた。たった一撃で倒されてしまった自身の不甲斐無さに。

 

 フレイヤを封印した小瓶を目の前で飲み込んだのを見たオッタルは、隆誠の腹を掻っ捌いてでも小瓶を取り出そうと考えていた。

 

 しかし、それは実行出来ないと瞬時に悟ってしまう。自分達は知らずに『眠れる獅子』を完全に覚醒(めざめ)させてしまったと考えてしまうほど、隆誠が大地を揺るがすほどの強大な力を見せ付けていたから。

 

 その所為で僅かな恐怖と言う隙を晒してしまい、オッタルは無様にやられてしまう結果になった。それが彼にとって一番許せないのだ。

 

 エリクサーで回復した直後、オッタルは何の躊躇いも無くスキルの一つ、【戦猪招来(ヴァナ・アルガンチュール)】を発動させた。

 

 基本、発展などの全アビリティ能力に超高補正がかかり、身に宿る凶暴性が遺憾なく発揮される。それはある意味、昇華(ランクアップ)と見まがうほどの力を与える強力なスキルだった。

 

 だが強力な反面、欠点(デメリット)も存在する。発動中は常に体力・精神力(マインド)が大幅に減少するため、長時間の発動は出来ない。

 

 隆誠から受けた一撃で絶対的な力の差を教えられたオッタルは、今までの驕りや恥を捨て、一気に勝負を決めようと獣化スキルを使う事にした。全ては敬愛する主神(フレイヤ)を救わなければならない為に。

 

「ほう、まるで別人だな」

 

 隆誠は怒れる獣と化して襲い掛かるオッタルを見ても、全く動じないどころか余裕の笑みを浮かべていた。

 

 振り翳す黒大剣『覇黒(はこう)(つるぎ)』に、隆誠がオーラを纏っている片腕を前に出した途端、激しく激突する金属音が鳴り響く。

 

「グゥゥゥゥ……!」

 

「ふむ……爆発的に力を上昇させているみたいだが、それでもまだ俺には届かないな」

 

 膠着状態になりながらも前進しようとするオッタルに対し、斬撃を受け止めながら冷静に分析する隆誠。

 

 凄まじい一撃だと物語るように、隆誠が立っている地面に大きな亀裂が走っている。しかし、受けた本人は涼しい顔をするだけだった。

 

 だが、それはすぐに一変する事になった。

 

 何か思うところがあったのか、隆誠は途端にオッタルから距離を取るように後退する。

 

「…………チッ」

 

 斬撃を受け止めた片腕を見た隆誠が舌打ちした。先程までアレンの攻撃を難なく防いでいた筈のオーラに罅が入っていたから。尤も、それは修復されたかのように元に戻ったが。

 

 だが、オッタル達は見逃さなかった。

 

 隆誠の纏う(オーラ)は圧倒的とも言える防御力があっても、絶対ではないと即座に理解した。

 

 【フレイヤ・ファミリア】の眷族達はこう考える。気に食わないが、隆誠を倒せるのは団長(オッタル)だけしかいないと。

 

 連携など皆無である彼等だが、主神(フレイヤ)を救う為には何だってやる覚悟はある。

 

 そんな中、獣化している筈のオッタルは後退した隆誠を追撃せず、黒大剣を両手に持ったまま構えている。

 

「【銀月《ぎん》の慈悲、黄金の原野】」

 

「成程、そうきたか」

 

 相手が自分より強いと認識しているのか不明だが、オッタルは獣化しておきながらも魔法を放つ為の詠唱をしていた。

 

 それを見たアルフリッグ達は驚きながらも、ゆっくり動き出そうとする隆誠の足止めをしようと突撃する。

 

「どこを見ている!」

 

「俺達を無視するな!」

 

「お前の相手はあの脳筋だけじゃないぞ!」

 

「くたばれ!」

 

 本命は自分達だと言わんばかりに、【炎金の四戦士(ブリンガル)】が連携攻撃を繰り出そうとする。

 

「ふ~っ……」

 

 隆誠は何故か軽く息を吹きかけていた。

 

 その直後、隆誠の周囲から強烈な竜巻が発生する。

 

「「「「ぐぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああッ!」」」」

 

 中心にいる隆誠を除き、竜巻の餌食となったアルフリッグ達は空高く舞い上がっていき、そして上空でグルグルと激しく回っている。

 

 突然の光景に竜巻の範囲外だったオッタルは見ながらも詠唱を続けている。

 

「ふ~っ……」

 

 そして隆誠は上を見ながら、再び軽く息を吹きかけた瞬間、竜巻が爆弾のように破裂した。それによって上空で回っていたアルフリッグ達は分散し、彼方此方(あちこち)へ吹っ飛んでいく。

 

 先程まで足止めをすると決意していた彼等だったが、隆誠の近くへ落下して、倒れた状態で地面に激突する。

 

 長男のアルフリッグは起き上がる事が出来ないのか、完全に虫の息状態だった。だが他の弟達も同様に再起不能状態になっている。

 

 隆誠がその気になれば殺す事は簡単だが、敢えてそうしなかった。コイツ等には後ほど屈辱と言えるほどの(ペナルティ)を考えているから。

 

 先程使ったのは、ドラグ・ソボールの極悪人キャラ『フリーズ』の技。残念ながら、これには技名が存在しない。原作には無いアニメオリジナル技であり、襲い掛かって来るナメクジ星人達を迎撃しようと、息を吹きかけて竜巻を発生させて瞬殺していたシーンがある。

 

 ガリバー兄弟の連携攻撃を防ぐのは簡単であっても、全く無駄である事を教えようと竜巻を発生させる技を使う事にした。

 

「大根役者にも程があるぞ」

 

 隆誠は既に見抜いていた。アルフリッグ達がオッタルの魔法(きりふだ)を発動させる為の時間稼ぎをしていた事を。

 

 そう言う事が出来るなら普段からやれよ、と思いながらも隆誠は背後からの斬撃を防いでいる。

 

「ヘグニもそう思わないか?」

 

「かもしれない。だけど隆誠を倒すには、もうこれしかない!」

 

「そうか。如何でも良いけど、今日はいつもの喋り方じゃないな」

 

 ヘグニが残念な中二病(やまい)の持ち主である事を知っている隆誠は、喋り方が異なっている事を思わず指摘した。

 

「【永久(とわ)に滅ぼせ、魔の剣威をもって】!」

 

 隆誠の指摘を敢えて無視したのか、ヘグニは距離がありながらも特殊武装(スペリオルズ)呪剣(カースウェポン)【ヴィクティム・アビス】を振るいながら詠唱をしていた。

 

 彼が持っている武器は、『体力と引き換えに斬撃範囲を拡張する』という効果を持つ第一等級武装。故に距離があっても斬撃を振るえる事が出来るのだが、オーラを身に纏っている隆誠には全く無意味だった。

 

「【バーン・ダイン】!」

 

 だがそれでも、彼は一切攻撃を緩める事無く魔法を放った。

 

 ヘグニが放った魔法【バーン・ダイン】は超短文詠唱の爆炎魔法。射程は超短距離だが、その分効果範囲内の敵を根こそぎ吹き飛ばす程の威力を持つ。

 

 爆炎魔法を直撃した隆誠だが――

 

「温い炎だ」

 

「がはっ!」

 

 全然効いてないと言わんばかりにヘグニの懐まで接近し、そのまま強烈なボディーブローを食らわせた。

 

 オッタルの時と違って吹っ飛ばなかったが、抉るように拳を捻っていることで、ヘグニは余りの激痛に意識を失い、うつ伏せに倒れてしまう。

 

「さて、あとはオッタルだけ……ん?」

 

「【永伐せよ、不滅の雷将】」

 

「【回れ銀輪(ぎんりん)、この首落ちるその日まで――」

 

 アルフリッグ達とヘグニを片付けた隆誠がオッタルに狙いを定めようとするも、何かに気付いたかのように違う方へ振り向く。

 

 そこには倒した筈のヘディンとアレンがいつの間にか立ち上がっており、どちらも構えながら詠唱をしていた。

 

 隆誠が手加減したとは言え完全に意識を失っていた二人だが、オッタルの咆哮を耳にした事で目が覚めていたのだ。

 

「【ヴァリアン・ヒルド】!」

 

 ヘディンの超短文詠唱の雷魔法【ヴァリアン・ヒルド】は、階層主の上半身すら呑み込むほどの特大の雷の砲撃。オッタル達ですら回避行動を余儀なくされる程の威力であり、第一級冒険者の肉体すら塵も残さず焼き尽くせる。

 

 いくら隆誠でも全身にオーラを纏ったところで徒では済まない筈だが――

 

「天雷よ、鳴り響け」

 

「ガァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 全く効いてないどころか、お返しと言わんばかりに姫島朱乃が好む雷魔法『天雷』を放った。

 

 隆誠と同じく雷魔法を直撃したヘディンは、らしくない悲鳴を上げていた。彼としては自身と似た魔法を受けるとは思っていなかったのだろう。

 

「【グラリネーゼ・フローメル】!」

 

 再びヘディンが倒れた直後、今度は詠唱を終えたアレンの魔法が迫り来ようとしていた。

 

 『Lv.7』にランクアップした事で、以前に隆誠と戦った時よりも『敏捷(スピード)』が上がっている為、獣化したオッタルでも完全防御しなければならない。

 

 あの時とは全く違う事を証明する為に突進するアレンに――

 

「下らん!」

 

「ガッ!」

 

 隆誠は銀の長槍の穂先を簡単に躱したどころか、一瞬で蹴り上げた。

 

 アレンは上空へ吹っ飛ばされるも、一瞬で追いついた隆誠が彼の背後に現れる。

 

「はぁっ!」

 

「~~~~~~~~~~~~~ッッ!」

 

 背中目掛けて肘打ちをした直後、声にならない悲鳴を上げるアレンはそのまま急速に地面へ落下し、そして激突した。

 

「無駄な努力だったな、アレン」

 

 地面に着地しながら無慈悲な言葉をかける隆誠。

 

 普段の彼であれば必死に努力して挑む相手に敬意を表するが、人を平然と罵倒する相手には容赦しない。益してや今回は【フレイヤ・ファミリア】に力の差を教えようと、一切の情けを掛けずに蹂躙している。

 

「ぐ……クソ、が……!」

 

「呆れた奴だ。まだ意識があるとは」

 

 隆誠の肘打ちを受けて骨に大きなダメージを受けて動けない筈のアレンだが、槍を拾う為に手を伸ばそうとしている。

 

 だが、それは束の間に過ぎない。槍を手にした瞬間、限界が訪れたかのように意識を失ってしまったから。

 

「おっと、少し遊び過ぎたか」

 

 隆誠は肝心な事を忘れていたと言わんばかりに、今まで目を離していた対象の方へと向けた。

 

 アレン達に意識を向けていた所為で、オッタルは詠唱を終えているどころか、両手に持っている黒大剣から凄まじい黄金の魔力が帯びている。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

 

 機は熟したのか、オッタルは咆哮を上げながら隆誠に向かって突進する。黄金の魔力を帯びた大剣を構えたまま。

 

 オラリオの【頂天】と称される最強の一撃が、隆誠に振り翳そうとしていた。




次で終わりにしたいです。

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