仕方ないので戦う事になる。
「えっと、その神?になんか魔法をかけられて、この世界から出れなくなっちまったって事でいいのか?」
「………そうだよ」
白銀君に何故俺がキレていたのか質問されたので答え、俺が言った事がちゃんと白銀君の中で理解できているかを確認してきたので肯定する。
「ソイツ、唯のクソ野郎じゃねえか。最悪すぎんだろそのジジイ」
「本当、最悪だよ。この分だと俺が死んだのって本当はアイツのせいじゃないのか疑うんだけど」
白銀君が同意してくれて非常に嬉しい。色々疑い出したら疑うのが人間のサガだ。ぶっちゃけあのジジイを弁護することなどもう一生ないだろう。
「それはそうと。その彫像どうすんだ?それもソイツが渡したんだろ。安全なのか?」
白銀君に言われてチラッとZの彫像を見る。確かに白銀君のいう通りコレをどうしようかなと考える。コレあのジジイが渡してきたものだからな。被っていたら操られるとかそういうの無いよね?なんとなく指先でツンツン触ってみる。
「そうは言ってもさ、コレがなきゃ俺は確実にこの世界じゃ死ぬ自信あるから使わない訳にもいかないし、べーたーを殲滅する事が出来ないしね。まあ、使うしかないよ」
正直、使うしかないのが現状なので仕方ないと納得する。ジジイはこの世界を救えと言っていた。ひとまずその為に動いていれば特に介入とかはしてこないと思う……多分だけど。
「でも、野上。お前戦いたくないんだろ。いっその事、戦いのない所で潜んでいたらいいんじゃないのか?別に無理に戦う事なんて…」
白銀君が心配してくれている。なんか優しさに涙が出そう。というか泣きそう、色々とあんまりだから。でも泣くのをグッと堪える。
「この世界から出る事は出来ないのは確認したんだ。それに白銀君の話じゃ後2ヶ月後に凄い爆弾が地球上に撒き散らされるんだよね?」
「……ああ、俺の記憶ではそうだった。このまま何もしなければ2ヶ月後の12月24日に行われる予定の筈だ。……まあ、少なくとも前の世界と同じならだけど」
「ちょっと自信なさげじゃない?」
最後の言葉に少し不安になる。出来れば絶対って言って欲しい。
「いや、前の世界じゃお前の存在はいなかったから」
白銀君の言葉に納得する。
「ああ、うん成程。まあ、その爆弾が落ちるのは確実として話を進めると地球はメチャクチャになって脱出した10万人は助かるけど残された10億の人々は大勢死んじゃうんだよね。少なくとも俺はZの姿でいれば確実に生き残れる自信はあるけど」
白銀君が頷いて肯定する。いやな未来だなとちょっと頭を抱える。
「でもまあ、そんなことされたら生きてても俺は平和に生きられないじゃん。それなら爆弾落とされる前にべーたーをぶっ潰しまくれば爆弾落とされる未来は無くなるかもしれないでしょ。逃げる選択肢がないならこの力を使ってべーたーを殲滅したほうが何もしないで引きこもっているよりずっといいと思う」
それにジジイが引きこもっていたら戦わなければ死ぬとかいう呪いかけてくるかもしれないしね。
「そうか……。でも、なんで横浜基地について来るんだ?お前の力があれば割とBETAなんか敵じゃないと思うぞ。ほら1人でBETAの巣ハイヴを吹っ飛ばすとか」
白銀君が少し不思議そうに聞く。いやまあ、その情け無くて単純な話なんだけど。
「理由としては……知らない世界で1人は心細いから」
「……ああ、うん。成程な…気持ちはすっげえ分かる」
白銀君が納得してくれる。多分白銀君も一緒だったんだろうな。前回の世界もたった1人だけで投げ出されたと言っていたし。俺だって色々と心細いんだから1人だけだった彼はもっと心細かったに違いない。
「Zであるうち、俺は無敵なんだろうと思いたいけど……多分ね。ごめんよハッキリ言って自信なくて。俺は今の白銀君みたいになんの訓練もしていないし、どうやっていけば効率よく出来るかがまだわからない。その基地に行けばその方法がわかるかもしれないでしょ。前の世界で白銀君の知り合いの先生が初めて前の世界にきた白銀君の事情を知って協力してくれてその先生がやっているオルタネイティヴ4…だっけ?それが完成すれば多分勝てるならあの時白銀君が言っていた通り勝率が上がるならそれが今1番いい判断だと考えてみたんだけど………大丈夫かな?」
「成程、そういう事か。確かにお前はこの世界について右も左も分からないんだったな。だとしたらまだ、知っている人…夕呼先生のいる横浜基地の方がいいか。下手に別の所に行くよりも全然いいだろうし、多分先生はお前の持っている力に興味津々になると思うしな」
白銀君が納得する。まだ知っている人(正確に言えば白銀君が知っているだけでまだその人はこちらの事を知らないだろうけど)がいるだけまだ今の状況じゃ1番ベストだろう。
「だとしたら、お互い協力関係って事でいいか?」
「そうだね、まあ現状そうするしかないし」
白銀君が手を出してくる。俺もそれに答え手を握る。
「世界を救おう、オルタネイティヴ5を発動させない為にな」
「……まあ、うんやるだけ頑張ろ」
白銀君の言葉を聞いてそう返答する……が、ごめん白銀君。言葉には出さないけど正直俺は世界とかはどうでもいい。結局のところ俺は俺の事しか面倒を見れないだろう、でもまあ…その後押しくらいは出来るだろうと思う。
そして俺達は横浜基地に向け、歩き出したのだった。
「なあ、少し気になっていたんだけどさ野上」
「何が?」
「いや、お前なんでBETAの事をべーたーなんて伸ばしてんの?わざとやってんのか?」
「アレ?何か間違えてた…のかな?」
「べーたーじゃなくてBETAな、呼び方」
「そうなんだ、初めて知った。"ヴェイダー"ね」
「いや、発音おかしいから」
「しかしまあ、もう真っ暗だな。以前はまだ明るいうちに基地に着いたのに」
「10月だと日が沈むのも早くなってくる頃だからね。それに俺達、外国にもいたし」
「それな」
白銀君と坂道を上がりながらそれとなく会話しつつ進む。歩いて行くとでかい建物が見えてきた。大きい施設だな、しかも、警戒厳重そうだ、何せ銃持った人いるし……帰りたくなってきた。
「白銀君、やっぱ明日に出直した方がよかったんじゃないかな?」
「いや、1日でも時間が惜しい。それに前と違ってここに着くのにも時間がかかっちまったからな、今回は多少強引にでも行くぞ」
白銀君がずいっと歩いて行くので俺も着いて行き、基地の目の前まで進んでいく。入口近くにいる警備兵らしきおじさん達がこちらに気づいてにこやかに、そしてさりげなく銃の安全装置らしきものを解除したのに気づく。
「野上は後ろにいろ、ちょっと行ってくる」
白銀君がそう言って警備兵に近づき警備兵に白銀君が話しかける。初めはにこやかに話しかけていた警備兵だが何処かに連絡を入れた後、段々と表情が警戒に変わっていき白銀君に銃を向けた。
「ちょっと、白銀!!大丈夫!?」
声をかけてしまう。そうしたら2人いた警備兵のうち1人がこちらに近寄ってきて俺に銃を向けてくる。こんな、シチュエーション、アニメとか漫画とか映画だけかと思っていたんですけど!!
「貴様!!大人しくしろ、動くな!!」
「はい!!分かりました!!動きません!!」
とりあえず、両手を上げる。
「っ貴様!!その両手に持っている鈍器を下ろせ!!」
ん?あっ、彫像ごと持ち上げていた…動いていいの?
「……動いていいですか?」
「ゆっくりと下ろせ、そして両腕を頭の後ろにかけて腹這いになれ!!」
「はーい」
彫像を大人しく下ろす。大人しくしていた方が撃たれないだろうしね。そう思って下ろした後、頭の後ろに両手を乗せようとしたら……。
「ぐおっ!!」
痛みにうめく声が聞こえたので俺と俺の相手をしている警備兵の人も顔だけそちらの方向に向ける。そしたら白銀君がもう1人の警備兵の人を押し倒していた。何やってんの!と思いつつ流れるような白銀君の動きは普通に凄いと思う。
「抵抗をするな!!お前はさっさと腹這いになれ!!」
片手で白銀君の方に銃を向け、残った片手で俺の頭をむんずと掴み地面に押し付ける。いだだだ。他にも色々と警備兵が集まってきて白銀君を囲む。ヤバくない?
「司令部、不審人物2名が正門に現れました。現在1名を拘束…」
「白銀君、どうするの!?"マスク"した方がいい?」
「黙ってろ!」
俺の近くの警備兵のおじさんが怒鳴る。
「まだいい!!」
白銀君が俺の問いに答える。なんか色々と殺気だってるし。どうしようかな?
「マスクって何だ?貴様、何か隠しているのか?」
警備兵のおじさんが俺のボディチェックをしてくる。くすぐったい……パンッ!!と発砲音が聞こえる。えっ白銀君撃たれたの!?見ると足元が撃たれたみたい。一応、最悪Zになった方がいいかな?
「こんな、こんな事をしているから人類はBETAに負けるんだ…」
白銀君が声を震わせ、何事だと全員が白銀君を見る。俺もその様子をじっと見る。白銀君が言葉を続けた。
「俺達が武器を向ける相手はBETAだろ!!人間同士で争っている場合じゃないのはアンタ達だって分かっている筈だ、みんなこの世界を救いたいって、思っている筈だろ!!奪われた物を取り返したいって、思っているんじゃないのかよ!!」
白銀君の叫びが木霊する。僅かであるが警備兵の人達がたじろいだのがわかった。俺はこんな状況だが心のこもった叫びが心に響くってこういう事なのかと考える。そうしていると誰か近づいてきた。
「騒がしいわね、何が負けるって?」
紫色の髪、吊り目で巨乳の美人な白衣を着た女の人が、近づいてくる。その人を見て白銀君が、「夕呼先生!」と言う。ああ、あの人が白銀君の言っていた知り合いの先生か…。その先生と白銀君が会話を始め、そして話が終わったらしい。こっちに来いと白銀君を招き寄せる。…無事、最初の問題は解決…でいいのかな?
そうしたら白銀君と知り合いの先生が俺のいるコッチを向いてくる。
「あっちで倒れているのはどうするの?」
「アイツもお願いします、先生」
知り合いの先生が合図をすると銃がどけられたので立ち上がりお腹についた土を払い彫像を拾い上げようとすると触れてちょっと持ち上げた所でストップがかかる。どうやら武器になりそうな物は持っていっちゃ駄目らしい。
「それは駄目だ置いていけ」
「えっ。でも……」
白銀君を見る。白銀君も今は仕方ないから渡せと言ってくるので警備兵の人に渡す。なんとなく、その際メチャクチャ重くと考えてから警備兵の人に渡すと…。
「うおっ!!何だコレ!?」
ズシンと地味に響く音を出して、彫像を地面に落とす。警備兵のおじさんが持ち上げようと四苦八苦する。
「お前、何やってるんだ?」
「いや、その…コイツがメチャクチャ…重いっ!」
「はあ?何をやっているん……ふんっ!……な、ん、だコレは!?」
近づいてきた別の警備兵の人も少し顔を赤くして持ち上げようとする。
「持ちます?」
俺がちょっと押し退ける形で彫像を再び軽く軽くと考え持ち上げる。そうするとマジで?といった顔を向けてくる警備兵のおじさん2人。すみません別に悪気は…少しあったけどあんまりなかったんです、ハイ。そう思って2人に渡そうとすると少し後退りされたので、仕方ないので少し離れた所に立っている警備兵の人に今度は何も考えずに渡す。渡された警備兵の人はギョッとした様子だったけど、何も考えずに私ので彫像は軽いままだったので、少しキョトンとした後あの2人にこんなのが重かったのか?と言った顔を向け、その2人はお前平気なの!?と言った顔を彫像を持った警備兵の人に向けたのを一瞥した後白銀君と先生のいる所に近寄る。
「…お前、何やってんの?」
「なんとなくやっちまったの」
白銀君の呆れた顔を拝借した後、俺達は横浜基地に入れることになるのだった。