地龍の娘   作:玄米師匠

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 アニメを一気見していた時に思いついて、そのまま勢いで書きました。なので色々とガバガバだと思いますが、あまり難しいことは考えずに読んでいただけると嬉しいです。
それと作者はアニメとネット小説は見ていますが、書籍は読んでいません。


出会い

 

 我の名はアラバ。最強の種族たる龍の一種、気高き地龍である。エルロー大迷宮下層の守護を任されている。

 守護、と言っても基本的にはただ生きているだけである。下層内を歩き回り、獲物を喰らい、寝る。それだけの変わらない日々である。

 

 だが、そんな変わらない日々がある日、突然変わった。

 

 卵を拾ったのである。それも地竜のである。

 普通なら、竜の卵は親に魔力を注がれて孵化する。だから親は孵化するまで卵を手放すことはまずない。

そのはずなのだが、なぜか無防備に卵だけが置かれていた。

 

 今更だが、なぜ我はこの卵を拾ったのだろうか。同族のだからか?それもなくはない気がする。この卵が地竜のだと分かったのは同族のものだからだ。

 だが、それだけではない。地竜は確かに同族だが、我にとっては何の興味もない者どもだ。

 

 なら何故だろうか?考える。ひたすら考える。だが、答えはわからない。いや、たぶん答えなどないのだろう。

 なんとなく、ただなんとなく不思議な縁を感じたからだろう。そう、まるで運命のような。

 

 

 

***

 

 

 

 私の名前は漆原美咲。ごく普通の女子高生。学校で古文の授業を受けていたら、急に激痛におそわれ、気付いたら真っ暗で狭い場所にいた。何を言っているかわからねえと思うが、私も何が起こったのかわからなかった。

 

 とりあえず現状確認しよう。まずはこのせまっ苦しい場所から出たい。さっきから押し開けようとしてるけど、もう少しで壊れそうな気がするんだよね。

 おっ、壊れた。外の光がまぶしい。

 急に明るくなったことで目が眩む。そうしてだんだん目が慣れてきたとき、異常に気付いた。

 

 龍がいた。空想上の生き物のはずの存在が目と鼻の先にいて、こっちを覗き込んでいる。

 怖い。今すぐ逃げ出したい。逃げ出したいのに、体が上手く動かない。それに奴の尻尾が周りを囲んでいて、動けたとしても逃げることは叶わないだろう。

 

 これは夢だろうか。そう、夢に違いない。こんな生き物がいるはずない。そう、思いたいのに。

自分の体にかかる奴の生温かい息と、やけに冷たい地べたと、そして本能的に感じる圧倒的な恐怖が、これはリアルなのだと、紛れもない現実なのだと告げてくる。

 死ぬのだろうか。このまま食べられて?こんなよくわからない状況のまま?

 

「****************」

 

 は?なんだ今の。確実に言葉を喋った気がする。少なくともただの鳴き声やうめき声などではなかった。だけど、全く意味が分からなかった。日本語どころか、自分の知っているどの言語とも似ても似つかない言葉だったと思う。

 でも、なんだろう。まったく意味は分からなかったのに、今の言葉からは温かみのような、こちらを安心させるものを感じた気がする。

 いや、相変わらず怖いけど。

 

 そうやって私があれこれ悩んでいると、龍はおもむろに立ち上がって、どこかに行ってしまった。

 

 え、どういうこと?さっきから理解不能なことが多すぎる。

 でも、これはチャンスだ。いまのうちに逃げよう。

 

 と思ったら、突然わたしの周りの地面が盛り上がって、あっという間にわたしを閉じ込めるような岩のシェルターのようなものが出来上がった。

 

 まじか。これ、さっきの龍がやったんだよね。

 なんだろう、今はお腹すいてないから、とりあえず捕まえておいて後で食べようってことかな。でもそれならわたしを仕留めるはずだろう。

 

 わからない。いまのこの状況のすべてがわからない。ひとつだけわかるのは、わからないことをあれこれ考えても頭がこんがらがるだけだっていうこと。

 

 だから、いまは現状の確認をしよう。

 とりあえず、いまの私自身から。

 

 さっきから気付いてたけど、なんか自分の体がおかしい。妙に視点が低いし、指の数が少ないし、尻尾あるし。

 おもむろに自分の手を見ると、指は前に三本と、その三本と逆向きに指が一本はえていて、指はまるで鳥のようだが、皮膚は青黒い鱗に覆われていて爬虫類のようだ。

 どうやらその鱗は手だけでなく体全体を覆っているようだ。

 もしかして私はトカゲにでもなってしまったのかと思ったが、すぐに違うと分かった

額に一本の角が生えているのだ。そういえば、さっきの龍にも立派な角が生えていた。それと比べるととても小さいが、たしかに角だ。

さっきの龍といえば、その鱗も私の鱗と似ていた気がする。

 

 そのとき、自分のまわりに卵の殻のようなものが落ちているのに気付いた。状況からみて、さっき私が入っていた暗く狭い場所は、この卵の中だったのだろう。

 ん?ということは、わたしはいまさっき、生まれたということか?いや、生まれ直したのかな?だって、私は正真正銘、人間だったはずだし。

 

 そういえば、いまのこの状況になる前、教室で授業を受けていたときの最後に激痛を感じたけど、あれはわたしが何らかの理由で死んだってことだったのかも。それで、わたしは今のトカゲもどきに転生したと。

 そんな小説みたいなことがありえるのだろうか。頭は、理性はありえないって言ってる。でも、さっきの龍に感じた恐怖はリアルだった。頭じゃまだ理解できないけど、心ではとっくにわかってる。これは現実なんだ。

 

 拝啓、お父さん様、お母さん様、娘は情けなくも死んでしまいました。でも私は元気です。

 

 お父さんお母さんと言えば、私の今の親は誰なんだ?

 そのとき、私の頭のなかで、点と点がつながった。

 私と似た身体的特徴、私を守るかのように囲っていた尻尾、言葉から感じた温かみ、なぜか私を食べなかったこと、今までの疑問はすべて、ひとつの事実を示していた。

 あの龍こそが、わたしの親なのだ。

 

 というか、こんな真犯人を見つけたみたいな言い方してみたけど、よくよく考えてみたら当たり前のことだよね。卵を持ってるのが親なんて。どうやら転生なんて異常事態のせいで頭が回ってなかったみたいだ。

 あれ、でも親が龍ってことは、私ももしかしなくても龍なのかな。龍と言えばどんなゲームやラノベでも最強格の選ばれし種族。人間じゃないことが少しショックだったけど、龍なら話が違う。

 前世では結構なオタクだったから、アニメやラノベもそれなりに読んでいた。そのなかには今の私と似たような、いわゆる異世界転生ものもあった。そういう話の定番は主人公がチートで無双する展開だ。

 もしや今の私ならそれができるんじゃないのか。しかもあんな強そうな親までいるんだ。これは勝ったな。

 そういえば、あの龍はどこにいったんだろう。

 

 

 

 ***

 

 

 

 数分後、龍が戻ってきた。しかも土産を持って。

 龍は戻ってくると岩のシェルターを崩し、私の前に口にくわえていたでかい猿をおいた。はじめは意味が分からなかったが、どうやら食えということらしい。

 なるほど。子を置いてどこに行ったのかと思ったら、餌をとってきてくれていたのか。ありがたい。ちょうどお腹がすいていた。

 

 でも猿か。いや、別にいいけどね。この龍は知能はあるようだけど、やはり野生の生き物だ。獲物を選り好みなんてしないだろう。でも、もうすこし良いものはなかったんだろうか。前世は日本で平均的な暮らしをしていたから、猿という食べたことのない、かつ未調理のものを食べるのには抵抗感がある。

しかし、背に腹はかえられない

 

 それじゃあ、いただきまーす。

 途端、口いっぱいに血の味と苦みがひろがり、獣の臭いが鼻を突き抜ける。

 うん、まずい。思わず吐き出しそうになるけど、何とか耐える。たとえ龍になったとしても私は乙女。吐き出すのはだめだ。

 

 なんとかまずさに耐えながらも完食したあと、改めて私の親である龍を見た。

 私の何十倍もある大きな体は青黒い鱗に覆われており、四本の脚で堂々と立っている。前足の付け根のあたりからは血のように赤い結晶のようなものが生えていて、強者の風格をより際立たせている。蛇のように長い尾は岩をも砕けそうなほどだ。そして、その額からは一本の鱗と同じ色の角が真っ直ぐに、後頭部からは二本の赤黒い角が少し反って、それぞれ生えており、他者を威圧している。

 自分の親とわかっても、やはりその圧倒的な強者のオーラには恐怖してしまう。というか、子どもの前なんだからもう少し威圧感を弱めてもらえないだろうか。そんなんじゃ懐かないぞ。

 

 そのとき、急に背筋が凍り、心の警報がビービーとうるさく鳴って、振り返る。そこには、龍と同じくらいの大きさの紫のコブラが、獲物を見る目でこっちを真っ直ぐに見据えていた。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル『危険感知LV1』を取得しました。》

 

 コブラが口を開けて一直線にこちらに向かってくる。その口には鋭い牙が生えており、嚙まれれば私などひとたまりもないだろう。

 喰われる。死ぬ。思わず目をつぶって痛みに備える。

 

 しかしいつまでたっても痛みはやってこない。おかしいと思って、ゆっくりと目を開けると、そこには龍がいた。龍がわたしを庇ってコブラに噛まれていた。コブラは龍の首筋に力強く嚙みついており、血がしたたっていた。

 

 心配してとっさに龍の顔を見るが、そんな心配は一瞬で吹っ飛んだ。龍は真っ直ぐに私を見ていた。その顔には苦しげな色は全くなく、わたしを気遣うようですらあった。

 その顔を見た瞬間、私は理解した。この、目の前の絶対的な覇気を放つ恐ろしい龍こそが、

私の最高にかっこいい親なのだと。

 そして、私はその龍の娘なのだと、心の底から理解した。

 





 アラバと主人公の見た目が似ているのはアラバが孵化のために魔力を注ぎまくったからです。
 わざわざ毒耐性のない娘のために毒のない猿を捕まえてきたのに文句を言われるアラバ君、かわいそう。

 つづくかも
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