追記 投稿してから確認したら、評価や感想までいただいていました。本当にありがとうございます。感想は返信はしませんがすべてしっかり読ませていただいています。返信しない分は執筆にあてるので許してください。
前回のあらすじ
古文の授業を受けていたら、異世界に転生しちゃった。しかも親は超怖いドラゴン。私はあんたなんかに懐かないんだから。でも、助けてくれたのは、す、少しだけ嬉しかったわ。
襲ってきたコブラは龍にとっては敵ではなかったようで、龍は視線を私からコブラに向けた途端、一瞬でバラバラにしてしまった。それはもう、こちらが同情してしまうほどに容赦なく。
いやー、強そうだとは思っていたけど、やっぱりこの龍、超強いわー。味方でよかったー。
というか、いつまでも龍って呼ぶのはおかしいよね。お父さん、だよね?流石にお母さんじゃないと思うけど。
あれ、そういえばお母さんはいないのかな。今のところお父さんしか見てないんだけど。母親はすでに死んでるとか?もしくは、異世界パワーで交尾なしでも繁殖できたりするのかな。うーん………、まあそのうちわかるか。
お父さんに目を向けると、コブラにさっそく喰らいついていた。
………猿よりも蛇のほうが美味しそうだな。私も食べていいかな。いいよね。いいはず。
食べちゃえ。
私がコブラを食べる瞬間、視界の端に、あっやばい、という顔をしたお父さんが映ったが、私は関係なく食べてしまった。
そこで私の意識は途絶えた。
***
人は死の間際に走馬灯を見るという。それは今までの自分の生涯を振り返り、生き残る方法を見つけようとするからだという話をどこかで聞いた気がする。その時は人の生存本能というのは往生際が悪いなー、なんて他人事で聞いていた気がするが、まさか自分が見ることになるとは思わなかった。
「ちょっと美咲、早く起きないと学校おくれるわよ」
「もう五分、いや三十分」
そう、あの日もいつも通りのごくありふれた日だったのだ。
前日に徹夜でゲームをして、朝にお母さんに叩き起こされて、私は二度寝をしようとして。
「なんで増えてんのよ。お姉ちゃんはもうとっくに起きてるわよ」
無理やり布団をはがされた私は、仕方なく起きて、リビングに行って、先に朝食を食べていた姉の美麗に憎まれ口を叩かれながらパンをかじって。
「いってきまーす」
走らなければ遅刻確定な時間に家を出て、案の定チャイムが鳴るのと同じくらいの時間にクラスに着いた。
クラスの光景もいつも通りだった。夏目君は男子の中心で威張っている。美麗は他の取り巻きの女子数人とともに若葉さんに嫌がらせをしていて、若葉さんはそれを意にも介さず、何事もないかのように振舞っていて、美麗はそれでさらにイラついている。教室の端では根岸さんが居心地悪そうにしている。私の隣の席では山田君が大島君と笹島君とゲームの話で盛り上がっていて、私に気付くと挨拶をしてくれたので、こちらも返す。
そして、担任の岡崎先生が教室に入ってきて、出欠がとられる。すべてがいつも通りだった。そう、古文の授業の途中まではそのはずだったのに。
***
《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV1」を取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV1」が「毒耐性LV2」になりました》
はっ。今のはまさか走馬灯っていうやつか。ということは、私は死んだのか。ここは天国か?
「************」
違った。顔を上げるとそこには相変わらず怖い顔をした龍のお父さんがいた。そして相変わらず意味の分からない言葉をしゃべっている。
でも、なんとなくこちらを気遣っているのがわかる。
よく見ると自分の体がほのかに緑色に光っていた。さっき地面を自在に動かしてたし、これもなんかの魔法なのかな。状況的に考えて、回復魔法とか。
もしそうなら、私はお父さんのおかげで死の淵から舞い戻ることができたのかな。
そういえば、さっき熟練度とかスキルとか毒耐性とか聞こえたけど、この世界はもしかしてステータスとかスキルとか熟練度的なものがある感じなのかな。もしそうなら、少しだけ面白そうだな。いや、リアルでゲーム感覚は危ないとは思ってんだけどさ。
それにしても毒耐性か。それって逆に言えば、わたしが毒を受けたってことだよね。あのコブラは毒があったのか。だからお父さんは私が食べたときにあんな顔をしてたわけね。
というか私、短時間で二回死にかけて、二回ともお父さんに救われてるんだけど。しかも、うち一回は自爆って。間抜けにもほどがあるでしょ。
でも、この世界はそういう世界ってことなんだ。ちょっと間違えれば簡単に死んじゃうような世界。あんなに強そうだったコブラだって、あっけなく死んでしまった。もしかしたら、敵なんていなさそうなお父さんだって、そのうち死んじゃうかもしれない。
胸がチクッと痛む。そんなのは嫌だ。そうだ、お父さんにはもう二回も命を救われた。ならばその恩を返すためにも、強くならないと。
都合よくこの世界にはゲームみたいなシステムがあるみたいだし、ガンガン鍛えて、お父さんを超えてやる。
***
Sideアラバ
馬鹿な細長い魔物が突然、愚かにも我が娘を襲ってきた。咄嗟に我が代わりに攻撃を受けることで事なきを得たが、もし間に合っていなかったらと思うとゾッとする。それと同時に、こんな身の程を弁えない行動をした奴に怒りが湧く。
ちらっと娘を見ると、怯えと驚きの混じった表情をしていた。無理もないだろう。まだ生まれたばかりなのに、早くも命の危機に晒されたのだから。だだ、ケガはないようだ。それだけは良かった。
さて、まずは馬鹿を早急に殺そう。牙と爪を使い、魔物をズタズタに引き裂く。原型すら残さずに殺す。奴の血が飛び散って我の体を汚す。まったく、とことん不愉快な奴だ。
しかもこの魔物は毒を持っているから、娘に食べさせるわけにもいかない。少し腹も減っていたし、こいつは我が食べておこう。
そう思って、いつものように魔物の肉を貪って、娘から目を離した我が阿保だった。気付いた時には、娘は毒のある肉を食べる瞬間だった。
毒耐性のない娘はひとくち口に入れた瞬間、予想通り毒のせいで倒れてしまった。
ど、どうする。まだ幼い娘では、このままだと確実に死んでしまう。どうにかして、娘の体力を回復させなければ。そうだ、治療魔法があれば。
《現在所持スキルポイントは41100です。
スキル「治療魔法LV1」をスキルポイントを100使用して取得可能です。
取得しますか?》
もちろん取得する。
《「治療魔法LV1」を取得しました。残りスキルポイント41000です》
そのままスキルポイントを追加で900使って、治療魔法をLV10まで上昇させ、すぐさま娘に全力で治療魔法をかける。
娘の心臓を確認すると、まだ動いていた。なんとか娘の命はつながったようだ。おもわず胸を撫でおろす。
摂食でかかった程度の毒なら、治療魔法をかけ続けていれば毒耐性のない娘でも大丈夫だろう。これで一安心だ。
一段落して落ち着いたところで、自分が娘の危機に対して相当あせっていたことに気付く。その前の魔物に襲われた時には、余裕をなくすほどに怒っていた。
どうやら、我はこの血のつながらない娘をいつの間にか大切な存在とみなしていたらしい。
なぜだろうか。いや、それは愚問か。そんなもの、決まっている。
我が、この小さく貧弱な竜の親だからだ。
おそらく、この子が卵から孵った瞬間、その愛おしい顔を見た瞬間から、我はこの娘の親となったのだ。
そういえば、まだ娘に名前を付けていなかった。
普通、我らが名前を授かるのは竜から龍となってからだが、この子の場合はいいだろう。この子は必ず龍となる。どうせもらうのだから、すこし早くあげても問題はない。
そうだな、この子の宝石のように澄んだ青い瞳にちなんだものにしよう。
毒が解けたのか、安らかな顔で眠る娘を、思いついた名前を心の中で復唱しながら見つめる。
早く、その目を開けておくれ、我が娘、サフィ。
私の好きだった気高い武士のようなアラバが、いつの間にかただの親バカドラゴンになってしまった。でも、私が悪いんじゃありません。私の腕が悪いんです。すみませんでした。
読んでいただきありがとうございました。
つづけ