地龍の娘   作:玄米師匠

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前回のあらすじ
鑑定はやはり神スキル。私は最初からその力を見抜いていたよ。ほんとだよ。
でもやっぱりお父さんがいないのは寂しいよー。うわーん。


疑念

 

Sideアラバ

 

 殺す。殺す。殺す。できるだけ原型をとどめたまま、それでいて確実に、群がってくる人型の魔物を、一匹残らず殲滅する。

 この種の魔物は、一匹殺せばその個体の群れすべてが勝手に自分からやってきてくれるため楽でいい。まあ、普段なら面倒であるため我も手を出さないが、今は大量の食糧が欲しいため都合がいい。

 

 いつもはブレスや大規模な魔法で一掃してしまうが、いまは食べることが目的だ。できるだけ、爪や尻尾、小規模な魔法で仕留める。

 右から飛び掛かってくる個体を右前足の爪で引き裂き、その隙に背中に飛び乗ろうとしてきた個体を尻尾で叩き落とす。全方位から一斉に攻めかかられれば、大地魔法で地面から岩の棘を生やして一気に串刺しにする。

 

 そんなことを繰り返していくと、みるみる数が減ってきた。はじめは視界を埋め尽くすほどの数がいたが、いまはもう数えられるほどしかいない。

 そんな数になっても、怯えたり逃げたりしないどころか、むしろより積極的に襲い掛かってくる。ここまでくると、むしろ哀れに思えてくるな。

 

 しかし、攻撃の手は緩めない。最後の一匹まで気は抜かない。こいつらと我の力は隔絶しているが、だからと言って一瞬の油断が命取りにならないとも限らないのだ。

 最後の一匹を爪で仕留める。もう増援もないようだ。まわりを見れば、死体の山ができており、まさに死屍累々といったところだ。

 

 さて、どうするか。今いる場所はこの下層のなかでは中規模程度の空洞。いまサフィがいる場所は安全を考えてあまり魔物のいない小さな空洞だが、そこまでこの量の死体を持っていくことは不可能。持って行けたとしても、あの小空洞ではこの量は入らない。

 

 いっそ、巣を移すか。この空洞はそれなりに魔物が通るが、通路を塞ぐなりすればその数も減るだろう。

 

 そうと決まれば、早くサフィのところに戻らねば。いまは我とこの人型の魔物の厄介さから魔物が近くにはいないようだが、そのうち戻ってくるだろう。そのとき死体だけが残っていたら、せっかく仕留めた肉が横取りされてしまうだろう。

 なにより、サフィをいつまでも独りにしておくのは心配だ。それに、先ほどから妙な胸騒ぎがする。一刻も早く戻らねば。

 

 

 

***

 

 

 

 巣に戻ると、そこはもぬけの殻だった。作っておいた岩の壁は壊され、サフィの姿はどこにも見当たらない。

 胸騒ぎが当たってしまった。それも最悪の形で。

 

「サフィ!どこにいる。サフィィ!サフィィイイイ!」

 

 叫びに対する返答は、空しく反響する我の声のみ。

狩りに時間をかけすぎた。己に対する怒りに、思わず力を爆発させてしまい、小空洞が一回り大きくなる。

 

 落ち着け。今するべきは己を責めることではない。サフィを探すことだ。

 まず、ここで何があったのか。

 他の魔物に襲われたという推測が浮かぶが、その可能性は低いだろうとすぐに考え直す。自分で吹っ飛ばしてしまったためすでに先ほどの痕跡は残っていないが、血の痕はなかった。大抵の魔物は仕留めた獲物はその場で捕食する。巣に持ち帰るとしても、生かしたまま何てことはまずない。それに、岩の壁は内側から壊されていた。

 

 サフィは自分から外に出たのだ。だが、何のために?なにかしらの危険を感じて逃げたのか?それとも、親がいないことに不安を感じて我を探しにいってしまったのか?

 答えはわからない。だが、まだサフィが生きている可能性は十分にある。ならば、それを信じて探すのみだ。

 

 今行くぞ、サフィ。

 

 

 

***

 

 

 

Sideサフィ

 

 もうどれだけ走っただろう。夢中で走ってきたから、自分がどんな道を通ってきたのかもわからない。今から戻るのも、まず無理だろう。

 この体で動くのは初めてなのによくスムーズに走れるなだとか、ここまで他の魔物に襲われないなんてラッキーだななんて、まるで他人事のようなことを思う。

 

 いまだにお父さんの影も形も見えない。たぶん道を間違えたのだろう。

 そもそも、お父さんに会いたいなら、あのままあそこで待っていればよかったのに。私は、何のためにこんなに苦しい思いして走ってるのだろか。

 

【私は、本当にお父さんに会いたかったの?】

 

 なんだその問いは。そんなの、そうに決まってるだろ。

 唐突に浮かんだ疑問をすぐに却下する。でも、一度浮かんだ疑念はなかなか消えず、私に語り掛けてくる。

 

【あんな怪物に会うためにこんなに走ってるのか?】

 

 五月蠅い。黙れ。子が親に会いたいと思って何が悪い。

 

【お前は本当にあれを父親だと思っているのか?こんなよくわからない状況で、言葉も通じない、人ですらない相手を?】

 

 でも、お父さんは私と同じ竜だ。鱗とか角だって似てる。私の卵を温めてたみたいだし。

 

【お前を育てて、都合のいい戦力として利用するつもりなだけかもしれないだろ】

 

 …………お父さんはそんなことはしない。

 

【なぜそんなことがわかる?それに、見た目が似ているのだって、ただ種族的に似ているだけかもしれない。もしかしたら血のつながりなんてないのかもしれない】

 

 っ、そんなこと言ったら、前世のお父さんとかお母さんとか、美麗だって私と血はつながってなかった。

 

【じゃあ、お前は前世の家族を、心の奥底から家族だと思っていたのか?】

 

 ………………………。

 

【ほら、なにも言えないだろう。結局のところ、お前は血のつながりだとかなんだ言ってごまかしているが、実際は】

 

 その瞬間、唐突に現実に引き戻される。どうやら、何者かに急に引っ張られたらしい。

 ついに私のラッキーも終わりか。最後に私を食べる奴の顔くらいは見ておこう。そう思って顔をあげると、そこには

 

 白い蜘蛛がいた。

 

 

 

***

 

 

 

 な、なんだこの蜘蛛。さっきからよくわかんない動きをしてるし、小さいけど鳴き声みたいなものを言っている。でもなぜかこちらを攻撃しようとしない。

 奇妙だ。さっき私を引っ張った蜘蛛糸もすぐに解いちゃったし。とりあえず、鑑定。

 

 鑑定によって頭に相手の情報が入ってくる。どうやら、この蜘蛛はスモールタラテクトというらしい。でも、私にとってそんなことはどうでもよかった。なぜなら、もっと注目すべきものがあったから。

 スキルの欄にある「n%I=W」の文字。あの意味不明のスキルを持っている。私と同じように。しかも、私と同じように鑑定のスキルも持っている。

 これはひょっとして。

 どうにかこの蜘蛛さんと意思疎通したい。なにか、念話的なものはないのか。

 

《現在所持スキルポイントは79000です。

 スキル「念話」をスキルポイントを100使用して取得可能です。

 取得しますか?》

 

 取得する。

 

《「念話」を取得しました。残りスキルポイント78900です》

 

 さっそく念話を使用する。相手はもちろん目の前の蜘蛛さん。

 

『もしもーし、聞こえますかー』

 

『えっ、なにこれ!頭の中に直接、声が聞こえてくる!』

 

 どうやら、念話は正常に作動しているらしい。

 

『聞こえてるみたいだね。しかもその日本語。やっぱりあなた、転生者でしょ?』

 

『えーと、目の前の地竜さんが語り掛けてきてるんだよね?やっぱりってことは、あなたも?』

 

『そーだよ。前世の名前は漆原美咲。今は地竜になってサフィって名前だけど。あなたは?』

 

『わたしは若葉姫色。危ないところ歩いてる魔物がいると思ったら、鑑定で漆原美咲って名前が見えたから、咄嗟に助けたんだけど』

 

 若葉さんか。微妙に気まずいな。なんといっても、姉が嫌がらせをしていた相手だ。私自身はほとんど関わりはなかったけど、関係がないというのは無責任な気がする。

 いや、それより、危ないところ?助けた?なんのことだろう。

 

 若葉さんの言葉に疑問を感じて、あたりを見渡す。

 広がっていた景色は、天井も見えないような大きな縦穴、そして人など簡単に丸のみにしそうな大きな蛇と人ほどの大きさの蜂の大群との、怪獣大決戦とでも言わんばかりの激しい争いだった。

 

 





オリジナルではないキャラの台詞を考えるのって想像以上に難しいんですね。他の作者さんを改めて尊敬しました。


ここまで読んでくださりありがとうございました。


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