UA数1000突破ありがとうございます。皆さんのおかげです。これからもこつこつ頑張っていきたいと思います。
それと投稿に少し間が開いてしまい申し訳ありません。毎日投稿は厳しいかなと思うので、これからは投稿頻度が段々と落ちていくと思います。
前回のあらすじ
アラバ は 親バカドラゴン から モンスターペアレント に 進化 した
時間は少し遡る。
Side蜘蛛
調子に乗って余裕ぶっこいてたら大きな穴から落ちちゃった。てへぺろ。
いや、そんなふざけてる場合じゃないんだよ。
周りでは蜂と蛇が争ってる。正直に言って、狙われればホームのない私なんてひとたまりもない。とはいえ、いまここにホームを作って迎え撃つなんて言うのも論外だ。蛇は単体でも厳しい相手だし、蜂は数が多すぎる。
蛇も蜂も互いに夢中なおかげで、岩の陰にいる私には見向きもしてないけど、いつこっちに気付くかわからない。いまは、兎に角あいつらに見つからないようにしながら、この場を一刻も早くのがれないと。
善は急げだ。さっそく逃げ道を探す。それと同時に、蛇と蜂が動向にも注意する。
しかし、逃げ道を探す私の目に、この殺伐とした空間には場違いな存在が映る。
小型犬ほどの大きさの、トカゲみたいな魔物。“みたい”というのは、その額に小さいが角が生えているからだ。見かけだけだととても弱そうだ。私でも倒せそう。
ふらふらと心ここにあらずといった様子でゆっくりと、蛇と蜂に近づいていく。まるでそこで起こっていることが見えていないかのように。
その魔物っぽくない動きに違和感を感じながら、とりあえず鑑定してみる。
すると鑑定さんが信じられないことを告げてくる。
そのトカゲもどきには、名前がふたつあること。ひとつはサフィという全く知らない名前。
そしてもう一つは、漆原美咲という、どこかで聞いたことのある、そこらの魔物が持っているはずのない名前。
そのサフィとやらは、私が驚いている間にも広間の中央に近づいている。
気付いた時には、私は蜘蛛糸で彼女を自分のいる岩陰まで引き寄せていた。
それが、この先で幾度となく出会うことになる、漆原美咲改め、サフィとの初めての邂逅だった。
そして、後々に私が最も後悔することになる出来事である。
***
時は戻って現在。
いやーこの子まじか。まさか目の前で行われている怪獣たちの戦争に今の今まで気づいてなかったとは。よくいままで生きてこられたね。何回か死にかけてる私が言うことじゃないかもしれないけど。
それにしても、私以外にも転生者はいたんだね。これはクラス全員転生してるのかもしれないな。異世界転生もののラノベでもありがちなやつだよね。
でも、漆原美咲さん、か。前世じゃ学校は一応行ってた程度で、クラスの人の名前なんて半分以上は覚えてないけど、彼女のことは覚えてる。
彼女自身は特別目立つほうではなかったと思う。でも、彼女の姉はカーストのトップみたいな感じで、なにより私によく嫌がらせをしてきた。妹の彼女はたまに姉の嫌がらせについて謝りにきたので、それで覚えていた。
謝られた時には、自分は全く関係ないのに律儀な人だと思った。それと同時に謝るくらいなら止めろよとも思ったけど、コミュ障の私がそんなことを言えるはずもなく。
その人とまさかこんな形で再会することになるとは。
『でも、漆原さんはなんであんなふらふらしてたの?』
前世では話せなかったのに、なぜか今は自然に言葉が出る。相手が見た目は人外の魔物だろうか、それとも心で直接会話してるからだろうか。
『えーと、できれば前世の名前じゃなくて、サフィって呼んでもらってもいいかな?』
そっか、妹ちゃんには今世の名前があるんだよね。でも、彼女も魔物のはずなのに、なんで名前があるんだろ?人間並みの知能がないと名前なんて付けないと思うんだけど。
『それなら、サフィちゃんでいいかな?それでなんであんな危険な場所をふらふらしてたの?』
『それなんだけど、実は私、お父さんを探してたんだよね。大きくて私と同じ色の鱗の地龍なんだけど、若葉さん見なかった?』
ほう、地龍か。龍なら名前を付けるくらいの知能があってもうなずけるな。でも、地龍なんているのか。私じゃ絶対に勝てなそうだな。
でも、それだけの知能の高さなら、交渉次第で味方にできないかな。こっちにはその娘がいるわけだし。大穴に落ちた時は大ピンチだったけど、これは不幸中の幸いかもしれない。
その時、私たちの隠れている岩の向こうで爆発音がした。それと同時に背筋にゾワッとする感覚が走り、本能が全力で危険信号を送ってくる。
慌てて覗いた岩の向こう側には、先ほどまで熾烈な戦いを繰り広げていた蛇と蜂の姿はなく、代わりに圧倒的な力そのものがいた。
『地龍アラバ LV31 ステータスの鑑定に失敗しました。』
なんだあれ。
大地を力強く踏みしめる四肢。
さっきの蛇の何倍も硬そうな鱗。
鞭のように長く伸びた尻尾。
すべての存在を畏怖させる大きな角。
まさに威風堂々と言った立ち姿。
それらすべてがその存在の危険性をこちらに強烈に訴えかけてくる。
あれはやばい。
絶対に勝てない。
生物としての次元が違いすぎる。
あれの前じゃどれだけ足掻いても無駄だろう。
なのに、それなのに、その圧倒的危険生物は真っ直ぐこちらに向かってきている。まるでここに私たちがいることに気付いているかのようだ。しかも物凄く怒っているように見えるのは私だけだろうか。
『あ、お父さんだ』
え!?あれが噂のお父さんなの!?
無理無理無理無理。あれと交渉なんて命がいくつあっても足りない。
というか、もしかしてあの龍が怒ってるのって、娘を取られたと勘違いして怒ってるのかな。
もしそうなら、非常にやばい。ターゲットにされたら絶対に逃げきれない。
バゴンッ
ひいっ。
隠れてた岩が尻尾で一撃で破壊された。完全にこちらをロックオンしてるみたいだ。
アラバは私が逃げ出すよりも早く、私を引き裂こうとその鋭い爪を振り下ろしてくる。
が、爪はすんでのところで止まった。サフィちゃんが私を庇ってくれたからだ。
危なかった。
自分の命がなんとかつながったのだと認識する。途端に胸に広がる安堵と、生殺与奪の権利を相手に握られたことによる屈辱。
でも、なにはともあれ助かったのは確か。サフィちゃんに感謝しなければ。
と思ったけど、もとはと言えば死にかけるような事態に陥ったのもこの子のせいだよね。なんというか、ちょっとはた迷惑な子だな。
アラバはしばらく私とサフィちゃんを交互に見つめた後、何かを感じ取ったのか、クルッと振り返った。どうやら私を狙うのはやめてくれたらしい。
「サフィ、*****」
最後にそう言って行ってしまう。名前以外はなにを言ってるか解らなかったけど、この世界の言葉なのかな。それとも龍特有の言語とかかな。まあ、どっちでもいいけど。
『ごめんね若葉さん。危ない目に遭わせちゃって。多分お父さんは私を守ろうとしてくれただけだと思うんだけど、若葉さんにとっては知ったこっちゃないよね。本当に、私のせいでごめんなさい。もう行くね。若葉さんとも一緒にいたいけど、下手したらお父さんに殺されちゃいそうだから、それは無理だよね』
そんな洒落にならないことを言いながら、サフィちゃんはアラバの後を追っていく。さっきのことに呆気にとられていた私は、ろくに返事もできずに、ただそれを見つめているのみだった。
『またね』
その“また”が、最悪なものであるとは、この時は私も彼女も、想像もしなかった。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
つづく 多分