これからものんびりと頑張っていこうと思うので、気長に続きを待っていただけると幸いです。
前回のあらすじ
サフィとアラバの距離が縮まった。物理的に。
朝起きたら知らない天井だった。
なんてね。この台詞、一度言ってみたかったんだよね。実際には仰向けで寝てるわけではないから天井なんて起きた時には映らないし、そもそも自分の部屋の天井なんて碌に覚えてない。
というか、この場所で起きたの、もう初めてじゃないからこの台詞はもう遅いんだけどね。
若葉さんと出会ってから、多分だけど数日たった。ここは日の光が届かないから、時の流れがわからない。
お父さんは基本的に一日中この広いエルロー大迷宮下層を歩き回ってる。なんの目的があるのかはよくわからない。
寝るときになってやっと巣に戻ってくる。といってもお父さんはスキルのせいか寝ていないようだけど。
巣というのは、前の私が生まれたところじゃなくて、もっと広い空洞だ。なぜか猿の死体が大量に転がっていた。もうほとんど食べつくしちゃったけど。
私もお父さんの後ろをずっとついていってる。お父さんに連れてこられてるのもあるし、私自身も離れたくなかった。
あの日に背中に乗せてくれたのはどうやら特別だったらしく、私はずっと自力で歩いてる。まあ、ずっと親におんぶにだっこされてちゃ、文字通り自分の足で歩けなくなっちゃうもんね。
でも、逆に歩く以外は何もしていない。餌はすべてお父さんにもらっているし、襲われても戦うのはお父さんだけだ。今の私は完全にニート。
だけど、出来るようになったこともある。なんと、言葉がわかるようになったのだ。まだ意味不明な単語もあるけど、日常会話くらいなら支障はない、と思う。
でも、まだお父さんに話しかけたことはない。常識的に考えて生後数日の子供が喋るわけはない。龍の世界でもそうなのかは分からないけど、どんなに少なく見積もっても数日は早すぎる。
理由は、転生者であることを隠しておきたいから。嘘をついている罪悪感はあるけど、なんとなく、今はまだこの人にはごく普通の娘として見てほしい。
純粋な、なんの汚れもない、普通の子供。親に助けてもらわないと生きていけないか弱い娘を演じている。
その甲斐あってか、お父さんは私のことを喋れないけれど意味は理解できる程度に認識しているようだ。
それと、鑑定でお父さんの名前とステータスなんかもわかった。どうやら“地龍アラバ”という名前らしい。
私は地“竜”で、お父さんは地“龍”なのは疑問だったけど、どうやら龍は竜の上位種らしい。おそらく私も成長すれば龍になれるのだろう。
ステータスについては、見た印象通りの化け物だった。
数値でわかる能力は全て4000超え。出会った魔物を度々鑑定してるけど、1000を超えるのすらそうそういない。
スキルの方も知らないものがズラーッと並んでいて、まだ異世界システム1年生な私には、よくわからないけど強そう位にしかわからなかった。
それでも、ゲーム感覚で考えると物理と魔法とどちらも優れていて、守りも隙がなく万能で強そうに思える。
まあ、とにかく私とお父さんの実力は月とすっぽんほどの差があるってことだね。追いつくためには、生半可な努力じゃ無理だ。
長い時間を、それこそ人間の寿命とは比べられないほどの年月を掛ければ簡単なんだろうけど、そんなに待ってられない。
私だっていつまでも守られている気はない。独り立ちしてもお父さんが安心できるようにならないと。
その時こそ、私の嘘も打ち明けたい。
強くなるために相当な努力が必要とは言ったけど、勝算はある。
まず、私はお父さんの子供だってこと。親と同じ種族なんだから、同じくらい強くなることだって十分可能なはずだ。
しかも、私には鑑定がある。生き抜くためにも効率的に強くなるためにも情報は不可欠。
鑑定を持っている魔物はお父さんを含めて一切見ていない。つまり私は情報戦において何十歩も何百歩も先を行っていることになる。これは強みだ。
ここ何日か鑑定を使っていて、スキルもいくらか勉強した。種族固有のものや魔法系のもの、感知系のものなど、多種多様のものがある。
その中にはステータスに補正をかけるスキルも存在する。その中でも強力なものが成長に補正をかけるスキルだ。
このスキルを早めに取れば、より早い強化が望めること請け合い。
ということで早速スキルポイントでそのスキルを取得しよう、とはならない。スキルポイントは無限にあるわけではない。八万もあると感覚が狂ってしまうけど、計画性もなく使っていればすぐに終わってしまうだろう。
この先スキルポイントがどのくらい手に入るのか、そもそも増えることがあるのかすらわからない。
この世界はゲームのようではあるけど、れっきとした現実だ。攻略本や攻略サイトもなければ、セーブして巻き戻せるわけでもない。
幸い、鑑定によって現在のスキルポイントで取得できるスキルは分かるから、今は何が必要か考えているところだ。
それに、スキルは熟練度を溜める事でも得られる。熟練度はスキルにまつわる行動をすることでたまる、システム内数値みたいなもの、だと理解している。
例えば、毒にかかると「毒耐性」の熟練度が溜まる。私が持ってる毒耐性も蛇の毒のおかげ、というよりせいで取得したものだ。
このスキルのおかげで毒を持つ蛙みたいな魔物も食べられる。他の魔物の五割り増しでまずいし、ダメージも多少受けるけど。でも、その苦しみを乗りこえたことで、今の私の毒耐性はLV5まで成長した。
スキルごとに必要なスキルポイントは変わってくるし、中には特殊で熟練度の溜め方すらわからないようなものもある以上、熟練度で取れるものにポイントを使いたくない。
そう考えると鑑定もレベルマックスにしないで、途中からは自力でレベル上げすればよかった。
そういえば、自分のステータスを確認していたら、知らないスキルがあった。「並列意思LV1」という、多重人格になるみたいな効果のスキル。
取得した旨のアナウンスを聞いた覚えがないんだよね。寝てる間にでも取ったのかな。
しかも、奇妙なことに私は第二の人格なんて目覚めていない。なんなんだろうか。
《熟練度が一定に達しました。『過食LV1』が『過食LV2』になりました》
考えながら残りの猿をムシャムシャ食べてたら、過食のレベルが上がって思考が中断される。
このスキルはSP(赤)の上限を超えて食べた分をストックできる優れもの。
しかも食べてるだけでレベルが上がってすごい楽。魔法とかスキルなしだと熟練度の稼ぎ方の見当もつかないし。
さて、そろそろ今日の巡回の時間かな。お父さんも食事が済んだみたいだし。
今日はどんな魔物に遭うかなー。美味しい魔物がいいな。魚みたいのは見た目で少し期待させておいて毒持ちだったし、いまのところカマキリが一番マシな味かな。結局まずいけど。
「サフィ、今日は狩りだ」
お父さんが口数少なく最低限の言葉で要件を伝えてくる。
ほう、狩りですか。今までは偶然出会った魔物を狩ってたけど、今日は明確に魔物を狙うわけか。
「ただし、狩りをするのはお前だ、サフィ」
へー、サフィさん大変だね、頑張って。………………ん?それ私じゃん!?
こうして、私の予想外に、ある意味望み通りに、初戦闘の機会がやってきた。
久しぶりの投稿なのにほとんど説明になってしまいすみません。ただこういう話がないと今後の展開がスムーズに進まないので、ご勘弁を。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
つづ………………く