無表情軍服ロリ(HUNTER×HUNTERの念持ち)   作:性癖を晒す者

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本当は主の様子がおかしいことに気づいているが、それでも主のために戦う少女。だけど、最期には主に裏切られて死ぬ。

とっても良いと思います。


狂人の足音

 誰かが歌う声が聞こえる。

 太陽は西に傾き、黄昏時と呼ばれる薄暗い空の下、降り積もった雪が夕暮れの光を浴びて白濁色に光出す。

 

 耳を澄ましてみてみれば、若い男の声が家々に反響して聞こえてきた。

 

(そういえば、吟遊詩人が来てるんだっけ)

 

 話だけは知っていたが、別段興味も湧かず、つい先ほどまで完全に頭の中から抜けていた。

 吟遊詩人というと聞こえはいいが、やってることは見せ物芸と大して変わらない。

 どこか遠くの英雄伝を大衆向けに脚色して歌い、貰った金で次の街へと向かう、何が楽しいのか理解できない連中だ。

 

 とはいえ、その内容に関しては一定の評価があると思う。

 子供の頃に聞いた、老いた吟遊詩人の話は今でも覚えている。

 

「『赤い悪魔には気をつけろ。血のように真っ赤な髪を持つ、ギィという奇妙な名前の悪魔には。 国が消えた、人が消えた、全てが廃墟と化した。全部が全部、赤い悪魔の仕業だった。今は氷の城に眠っているが、きっと赤い悪魔は目を覚ます。人間の叫びで目を覚ます。』」

 

 日が差し込む、窓のデッキに座っていた私はほうっ……と白い息を吐く。

 案外、あれから年月が経った今でも覚えているものだと感慨にふける。

 

 とはいえ、詩の内容は半分合っていて、半分外れているが。

 

 日も落ちてきたことだし、そろそろ家に帰るかと席を立ったとき、私は、ふと足を止めた。

 

 窓から見える、噴水の端に誰かが座っている。

 手にはリュートを持って、夕日に顔を向けて。

 見ている私の方が寒くなるような薄い服装をしている彼は、かじかんでいる指を忙しそうに動かしていた。

 

(あの人が吟遊詩人かな……)

 

 どこかで見たことのあるような顔だった。それを言えば、私が子供の頃に。

 どこかで会ったのかな、と、首を傾げようとして、私は目を丸くする。

 

 彼が歌う詩が、反響して私の元にまで届いたからだ。

 

 

「『嗚呼、顔が無い王よ。闇に潜み、闇を殺してきた、闇に生きる王よ。

  栄光なる帝国を、支柱の如く支え続けた貴方は、選ばれし騎士の一人。

  鎖を祓い、楔を抜くのは、名も顔も捨てた影の英雄の御業なりて。』」

 

 

 

「…………そんな、私はたいそれた人間じゃないですよ。ただ―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――ただ、自分に正直に生きてるだけですから♡

 

 

 

 古びた扉を開け、しばし立ちすくんだ私は、心の奥底で閉ざさせていた釜が漏れるように呟いた後。

 やっと庶民にも普及し始めたコーヒーの代金だけを残し、静かにその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女には秘密がある。

 それは、前世の記憶を保有していること。

 

 どこにでもあるような高校に通う、どこにでもいるような女子高校生。

 友達もそこそこいて、それなりに幸せではあった。

 

 簡潔に言えば、それだけが少女の前世だった。

 

 

 目が覚めれば自分は神と名乗る人物と対面していて、願いを叶える代わりに魂を弄らせてくれないかと半ば脅迫じみた“神様のお願い”をされた。

 

 突然のことに迷った少女だったが、『転生するのは、とあるスライムの為(・・・・・・・・・)の世界だ』ということを聞かされると、すぐにその願いを聞き入れ、自分も神に願いを祈る。

 

 少女は昔から秘めていた思いがあった。

 

 恋慕ではない。それとは、少し違う特殊な思い。

 

 

 テレビで観た、とあるアニメがきっかけだった。

 

『もうやめようよ、これ以上戦っても辛くなるだけだよ!』

 

 桃色の髪をした少女が、目に涙を浮かばせながら言う。

 

『……私の忠誠は、とうの昔に陛下に捧げている。陛下の命令ならば、たとえお前達が相手でも殺してみせる!』

 

『何馬鹿なこと言ってんの!?アンタの皇帝陛下様はね、魔族と手を組んだのよ?人間のアンタではなく、邪悪な魔族と!』

 

『そんなバカなこと、誰が信じるものか―――――――――ッ!』

 

 黄色の髪の少女の言葉に、満身創痍の、傷だらけの灰色の少女は絶叫した。

 

 その叫びを聞いた桃色の少女は、しぼりだすように彼女に伝える。

 

『だって、ブルーは、魔族の力を借りた皇帝に殺されたから』

 

『…………は?』

 

『アッシュを助けるために一人で城に乗り込んで、私達が追いついたときには、もう』

 

『そんな……訳が、ない。だって、陛下は、』

 

『もういいじゃない、アンタが忠誠を捧げたっていう皇帝はどっかにいっちゃったの。だから、もう、やめなよ』

 

『……………いや、いや、いやあああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

 

 

 

 やがて彼女は狂い、縋るように皇帝の元へと戻り……無惨にも、復活を遂げたブルーの攻撃から皇帝を庇って、少女達に囲まれながら死ぬ。

 

 

 その物語を見終えたとき、少女は身体の芯が痺れるような感覚に陥った、

 

 ああ、なんて素晴らしい物語だろうか。

 

 自分も、こんなふうに死んでみたいものだ、と。

 

 少女の心には叶うことのない願いが生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女が願ったのは“HUNTER×HUNTERの念を創る能力”。

 

 神から聞くには、恐らくその世界は『転生したらスライムだった件』の世界。

 二次創作では、大抵主人公であるリムルと良好な関係を持つが、少女が選択したのは主人公と敵対することだった。

 

 

 何故か?夢を現実にするために。

 

 

 

 だから、願ったのは“HUNTER×HUNTERの念を創る能力”なのだ。

 強いが、誓約もあるチートではない能力。いいだろう、そのほうが私としては俄然燃える。

 なんせ私は、最後には無惨に死ぬ運命にあるのだから。

 リムルや魔国連邦(テンペスト)の面々に囲まれ、死ぬ運命が。

 

 

 そんな少女の願いを了承した神は、異物である彼女を、別世界へと送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下を照らす蛍光灯の光を、踏みしめて歩く影がある。

 その影は赤と黒を基調とした軍服を纏い、ブーツの淡泊とした音を鳴らしながら、周りの目も気にせず道の真ん中を堂々と進む。

 不思議なことに、彼女を追う目はあらず誰も気にしたような素振りは見せなかった。

 

 

 “顔の無い王(ロビン・フッド)

 こことは異なる世界で現れた、偉大なる狩人の名を冠したその能力は、その影を完璧なまでに隠しきっている。

 

 

 少女は今年で既に八百を超える年齢になる。

 この世界に来てから全くと言っていいほど姿見が変わらず、細見で引き締まった見た目をしていて、それこそ絶世の美少女と言っても差し支えないぐらいの容姿。

 枯れた花のように乾いた灰色の髪を肩のラインで切り、女の魅力とはかけ離れた安物のピン止めを申し訳程度に付けていた。

 

 

 だが、彼女を見たときに真っ先に目がいくのは、顔を覆い隠すようにつけられた竜の仮面だろう。

 帝国を守護する灼熱竜ヴェルグリンドを模したとされるその仮面は見る者を圧倒する。

 

 

 

 少女は薄暗い廊下を抜け、きらびやかな花の園を通り、ある一室の前までスタスタと進む。

 そして、“顔の無い王(ロビン・フッド)”を解除して二度扉をノックした。

 

「入れ」

 

 中からよく通る男の声がして、少女はゆっくりと扉を開いた。

 

 扉の先は、この世の贅をつくしたかのような豪華絢爛な間であった。

 奥には金色の椅子に座る金髪の男と、その隣には黒髪を短く切った男が控えている。

 

 金髪の男―――――――――“東の帝国”皇帝、ルドラ・ナム・ウル・ナスカは扉が閉まったのを見届ける。

 

 少女は膝を床につけ、「帝国皇帝近衛騎士団(インペリアル・ガーディアン)ひとけた数字(ダブルオーナンバー)、第三位、名無しの騎士。召喚に応じ参上いたしました」と、平伏した。

 

 椅子に座っていたルドラが頷く。

 

「おお、よく来たな我が友よ」

 

「要件は何でございましょうか。と、名無しの騎士は質問します」

 

「そう急ぐな。時間ならたっぷりある。まずはお前の身辺調査から行こうか。男は出来たか?そろそろ身内を固めといたほうが良いんじゃないか?ん?」

 

「……名無しの騎士の時間は塵芥に等しけれど、皇帝陛下の時間は純金の価値を遥かに超えまする。そう、名無しの騎士は口答えます」

 

「……まあいい。世間話はこの話の後でもよかろう」

 

 やれやれ、そんな風に頭を振ったルドラは、意識を変えるように口を開く。

 

「この度はお前に頼みたい事があって呼んだのだ」

 

 そう告げたルドラの顔は、さしも少女が拒否することなど考えていないようであった。

 

 

 頼みたい事。

 それは拒否できるものではないことを知っているだろうに。

 それを敢えて言うとは、流石は私を裏切ることになる(・・・・・・・・・)ルドラ様だ、と、心の中で賛美を送った少女は、わずかに拍をおいた後。

 

 こうゆっくりと尋ねた。

 

「―――――――――命令ならば、どんなことでも遂行いたしますが。と、名無しの騎士は応答します」

 

「ああいや、命令というほどではない。ほんの少し、個人的な頼み事があるだけだ。それと、もっと砕けた口調でよいのだぞ?」

 

  なんせ、我とお前は古くからの友ではないか。

 

 そうつ続けた男に、少女は微かに眉をひそめた。

 

「いえ、形式上は“皇帝”と“その配下”であります。二人きりならばともかく、人の目がある前でそのような物言いは慎むべきかと…。名無しの騎士は恐れながら皇帝陛下に進言いたします」

 

「むぅ。いつまでたっても固い女よな、お前は」

 

「……………お褒め頂き、光栄でございます。ですが、女性に対して固いは辛辣だと胸無しの騎士は忠告いたします」

 

「はははは!やはりお前はそのほうが接しやすいわ」

 

 少女の変貌にひとしきり笑ったルドラは手を叩き、近くに寄るようにと少女を呼ぶ。

 

「お前に頼みたいことはな、いずれ我が帝国が侵略するであろう魔国連邦(テンペスト)を探って来てほしいのだ」

 

「……?」

 

 少女は首を傾げる。

 なんせ、このようなお願いは初めてだったからだ。

 他国を侵略することで巨大化してきた帝国は、当然のことながら武力に関してめっぽう強い。

 なので、大抵の場合は相手が降伏するか軍隊による正面突破で戦争に勝利してきた。

 それなのに、何故敵国の調査をしなければならないのか?

 

 そんな少女の偽装された(・・・・・)心情を読み取ったルドラは、言う。

 

「我が帝国随一の魔法使い、ガドラによる情報ではどうやら彼の魔国には地下迷宮(ダンジョン)というものが存在するらしい。聞けば、一攫千金の宝の山だとか」

 

「それで、地下迷宮(ダンジョン)を攻略してこいと?名無しの騎士は皇帝陛下に不満を覚えます」

 

「いや、余からすればそんなもの投げて捨てるほど余っておる。よが危険視したのは、その地下迷宮(ダンジョン)では異界の兵器を開発している可能性があることだ。これについては、達也(タツヤ)からも調べがついている」

 

「はい。情報員の伝達によると、地下迷宮(ダンジョン)に存在する街にて大規模な兵器開発が行われているとのことです。確証は得られませんでしたが、噂話だと切り捨てるほど眉唾ではありません」

 

 ルドラの横に控えていた、タツヤと呼ばれた男――――――――近藤達也(タツヤ・コンドウ)は、頷く。

 

 “情報に巣食う怪人”

 

 そう言われるほど冷徹な近藤は、帝国の情報局のリーダー、そして帝国皇帝近衛騎士団(インペリアル・ガーディアン)の第一位であるため、全ての情報を招集することが出来るし、こうやって皇帝の御前に立つこともできる男だ。

 

 近藤は、そういった複数の情報を照らし合わせた結果、これが幻想にまかれた話ではないだろうと判断した。

 

 

「ですので、ガドラ師とその配下である異世界人三人が調査することになった手筈ですが……正直に言って、その異世界人共はともかくガドラ師は信用出来ない。最近は混成軍団の軍団長についた神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)とも親密ですし、それ以外にも疑う情報が多すぎる」

 

「とのことだ」

 

「なるほど。それは、そうですね。あのガドラ師が裏切るとは信じられませんが、タツヤ殿が言うのでしたらそうなのでしょう。と、名無しの騎士は納得します」

 

 近藤からの報告にルドラが何故か誇るような顔をし、少女は少し目を見開いた後、そう答えた。

 

「まあ、とりあえずお前は魔国連邦(テンペスト)に行って地下迷宮(ダンジョン)を調べてこいというわけだ」

 

「お願いなので、名無しの騎士に拒否権があるはずでは?そう名無しの騎士はツッコミます」

 

「調べてくれないのか?」

 

「調べますけど」

 

 きょとんとする少女に、近藤がはぁと年季の入った大きなため息をつく。

 

「……相変わらずお前はキャラが掴めんな」

 

「それは失礼にも程があるんじゃないですかね。と、名無しの騎士と同じく独身のタツヤ殿に返します」

 

「潰すぞ」

 

「かかってこーい」

 

 

 ばっちこーい、と、少女は腕を回し、近藤は額をピクピクさせて銃を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、ちょっとした茶番を挟んだ後。

 

 

 

 この場がお開きとなる去り際。

 

 

「ああ、そういえば。我が皇帝」

 

 

 豪華な扉を開け、しばし立ちすくんだ少女は、今さっき思い出したように言う。

 

 

「名無しの騎士の―――――私の、念願の願いもとうとう最終段階(ラストスパート)に入りましたよ」

 

 

「……ほほう、それは楽しみだ」

 

 

「ふふふ。皇帝には特等席を用意しておりますので、楽しみにしていてくださいね―――――

 

 

 

 

 

 なんせ、私が何百年も計画していたとっておきの喜劇(ショー)なのですから。

 

 

 

 心の内が漏れるようにルドラにそう告げた少女は、颯爽とその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………あはっ♡」

 

 帝国は気づかない。

 

「ひゃはははははは!!ふひっ、いひひひひひひひひ!!!」

 

 彼女が育ててきた、禁断の果実に。

 

「も、もうすぐだぁ……♡あと少しで、私は死ねるんだ………♡」

 

 それは着実と、水粒が岩を削る程にゆっくりとだが、帝国の背後に迫って来ていた。

 

 

 

 

 

 彼女が死ぬまで、あとわずか。

 

 

 

 

 

 

 

 




 少女/名無しの騎士

 前世は女子高校生、今世は帝国皇帝近衛騎士団(インペリアル・ガーディアン)の第三位。子どもの頃に見た、破滅願望にも似た『信じていた主に裏切られ、絶望の果てに死ぬ』という願いを持っている。

顔の無い王(ロビン・フッド)
 匂い、姿、音、全てを消し去り身を隠すことが出来る能力。身を隠すだけで、実体はある。

 制約
 自分の素顔を見た者にはこの能力は利かない。
 顔を隠している状態でなければこの能力は発動されない。

 誓約
 発動中、自分は呼吸をすることができない。
 これを破った場合、肺が壊死する。


 ルドラ・ナム・ウル・ナスカ

 東の帝国の皇帝。何千年も前の“勇者”の成れの果てであり、魔王ギィとのゲームを行っている。


 近藤達也

 帝国の情報局のトップ。日本海海戦で敵艦に特攻し、死ぬ間際この世界に飛ばされた男。その際に助けてもらった皇帝に忠誠を誓っている。



 
 
 
 
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