大丈夫、俺強いから   作:パンの袋を閉じるアレ

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前のがあまりに駄作だったので思い切ってリメイクしました。喜んでくれたら嬉しいゾ~


天才とバカは紙一重

 

『──もう大丈夫! 私が来たッ!!』

 

 

 この言葉を聞いて人々が思い浮かべるのは生ける伝説、オールマイトだろう。ヒーローとはまさしく彼のためにあるような言葉だ。

 

 凶悪なヴィラン退治。災害現場での救助活動。犯罪への抑止力etc……。彼の活躍を語るには終わりがないといったほどの功績の数々。

 

 中でも有名なのは、日本を襲った未曾有の大災害で誰より多く市民を救った功績、通称"1000人救助"は多くの反響を呼び、彼のようなヒーローになりたいと全国の子供達の心を掴んだことだろう。

 

 

 そしてその映像に影響を受けた男がまた一人いた。

 

 

 

 

 これはそんなクズ(・・)のお話である。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「というわけで雄英高校入試日だねかっちゃん! お互い頑張ろう!」

 

「があああぁぁ! 肩組むんじゃねぇ気色悪いわクソ! っつーか何でテメェがここにいるんだ、あぁん!?」

 

「えー? そりゃあ俺もここ(雄英)を受けるからに決まってるっしょ。爆豪勝己と御手洗暦(みたらい こよみ)と言やあ折寺中の仲良しコンビで通ってるしね」

 

「テメェとコンビ組んだ憶えなんてねぇよ! あと仲良くもねぇ!」

 

「かっちゃんって呼んでるのに?」

 

「テメェが勝手に呼んでるだけだろうが! いいから離れろ!」

 

 

 個性を使わなくとも鋭い蹴りが俺の胴体目掛けて襲いかかってくる──! ……なんてことはなく、俺はスレスレで避けた後にわざとらしく吹っ飛ばされた演技をした。

 

 

「あぁん……!」

 

「その女声を止めろ気味悪ぃ!」

 

「ひどい! かっちゃんの浮気者! 毎日あんなにランデブーした仲なのに! 私とは遊びだったって言うの!?」

 

「テメェが一方的に絡んできただけだろ! このみたらし団子野郎ッ!」

 

 

 なんやかんやで俺の好物憶えてくれてるかっちゃんマジ天使! 

 今度七味唐辛子の詰め合わせとか送ってあげよう。辛いもの好きだったもんね。

 

 ──おや? あそこにいるのは……なんだ。我が友、でっちー(緑谷出久)じゃないか! しかし、なんでここに──はっ! そうか彼も雄英を受験する気なんだな? そうと決まれば一緒に登校だ。

 

 

「おーいでっちー!」

 

「あ、御手洗君! ……と、か、かっちゃんも……お、おはよう……」

 

「ちっ! 俺の前に立つんじゃねぇよクソナード!」

 

「ご、ごめん……」

 

 

 君達ホントに幼馴染み? あー、俺と仲良くしてるから嫉妬してるわけね。かっちゃんったらカァイイ!!

 

 

「あれ? そういえばでっちーって無個性じゃなかったっけ?」

 

「え? じ、じじじ実は最近こ、個性がはははは発現したんだよね! だ、だから受けようかなって……」

 

「おおそうか! ついにでっちーも個性持ちか! いやー、毎日かっちゃんと『頑張れ♡頑張れ♡』って応援した甲斐があったな」

 

「捏造すんじゃねぇよ! つーか、こいつが個性持ちだと? はっ! 冗談も大概にしろよデク! 今さら個性が発現するとでも思ってんのかよ! おめぇとうとう夢と現実の区別がつかなくなったのか、えぇ?」

 

「と言いつつ、個性が出ないか毎日確認してたんでしょ。優しいなあかっちゃんは」

 

「俺がこいつを心配すっかよッ! 落ちようがどうしようが興味ねぇよ!」

 

「ええー? 君達幼馴染みでしょ? 仲良くしようよ。うちの学校じゃ爆豪×緑谷のカップリングは王道なんだしさあ。俺様系ドSと陰キャ系隠れMの幼馴染み物っていうジャンルで腐女子達には大人気なのに……」

 

「誰だ、んなモン書いてる奴はッ! ぶっ殺してやるッ!」

 

「ちなみに新ジャンルとして俺が混じっての昼ドラも真っ青のドロドロ三角関係物が出てきてだな。俺試しに読んで見たけど結構ハードなプレイばかりだったな。三人繋がってのトレイン性──おろろっ。思い出しただけで胃酸が……!」

 

「自爆してんじゃねぇよ!」

 

「おっ、個性:爆破だけにってか? HAHAHAHA!」

 

「おいデクこいつ押さえてろ……! 爆殺してやるッ……!」

 

「か、かっちゃんが頼ってくれた……!」

 

 

 余談なんだが、途中にでっちーがなんか女の子から逆ナンされてデレデレしてたな。なに、でっちーったらああいうのが好みなの? 今度あの子に似たエロ本でも差し出ししてあげるか。

 

 そんなこんなで受験の説明会場である講堂にやって来た折寺トリオ。

 

 何が始まるのかとワクワクしながら待っていると壇上の教卓に誰かいた。なんだこのオッサン!?

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー! エヴィバディセイヘイ!!』

 

 

「「「………」」」

 

 

『こいつぁシヴィー! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ! アーユーレディ!?』

 

 

「「「………」」」

 

 

『YEAHHHH!!』

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

 悲しいほどの総スカン……。

 

 めげないメンタルは尊敬に値するよ、おっさん……。

 

 

「うわぁ! ラジオヒーロー、『プレゼント・マイク』! スゴい、本物だ……!」

 

「やっぱ雄英クラスとなれば所属してる教師は皆有名人なんだなー。あ、かっちゃんガムいる?」

 

「テメェは黙って話を聞いてられねぇのか!? 寄越せや!」

 

 

 わざとらしくクッチャクッチャと咀嚼音を立てるかっちゃんを見て俺は悲しくなった。いつの間にこんな行儀が悪い子になったのか。これはおばさんに報告した方がいいね。

 

 

『いいかいリスナー! リスナーにはこの後10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうんだぜ!! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!』

 

 

 ふむふむ。俺はグループCか。でっちーはB。かっちゃんは……Eか。みんなバラバラだな。同校同士で協力させないようにってことか。

 

 

『演習場には三種の仮想(ヴィラン)を多数配置しており、攻略難易度に応じてポイントを設けてある! リスナーは各々の個性で行動不能(・・・・)にし、ポイントを稼ぐのは君達の目的だ!』

 

 

 破壊ではなく、行動不能か……。ふむ。攻撃型以外の個性でも使い方によっては活躍出来るようにあえて行動不能という言葉を選んだのか。

 

 

『それと他人への攻撃などアンチヒーローな行為はご法度だぜ!? 気をつけてくれよ!』

 

 

「爆豪対策もしっかりしてんね。さすが雄英」

 

「爆豪対策ってなんじゃい! あと笑ってんじゃねぇよデク!」

 

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

 

 数多くいる受験生の中から元気よく手が挙がる。いかにもザ・真面目って感じの眼鏡君だった。

 

 

「プリントには四種の敵と記載されております! 誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

 

 プリントの誤載一つであの批判っぷりを見るに曲がったことが大嫌いといった性格なのだろう。

 すると眼鏡君がこっちを見た。あ、これは嫌な予感が……。

 

 

「ついでにそこの縮毛とトゲトゲ髪と黒髪の三人!」

 

 

 三人とはでっちー、かっちゃん、俺のことだろう。しかしトゲトゲ頭って……プププっ、ワロタwww。

 

「先程からボソボソと……気が散る! 物見遊山なら即刻ここから立ち去りたまえ!」

 

 

「OH……。そいつはすまねぇ。かっちゃんには俺からもキツく言っておくよ。邪魔して悪かった」

 

「す、すみません……」

 

「……! ……ッ!」(暴れそうなところを御手洗に押さえつけられてる)

 

 

「分かってくれたなら幸いだ。それでプリントの三種の敵の件は……」

 

『OK! 説明をしよう!!四種目のヴィランは0P! そいつは言わばお邪魔虫!! スーパーマリオブラザーズはやったことあるかい? そいつに出てくるドッスンみたいなもんさ! 各会場に一体所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!!』

 

「有難う御座います!失礼致しました!」

 

『理解してくれて嬉しいぜリスナー! さぁー他のリスナー! 出発の時刻だぜ! 指定されたバスに乗って会場に向かってくれ!』

 

 

「い、いよいよか……」

 

「そんじゃあ頑張ってね、かっちゃん、でっちー。合格したら三人で焼き肉食いに行こうね」

 

「行くかボケぇ!」

 

 

 席を立とうとしたとき、プレゼント・マイクが最後に激励を残した。

 

 

『最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!! かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!

 

 

 

 

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!! それでは皆良い受難を!!』 

 

 

 

 いよいよ始まる実技試験。緊張する者、不安視する者、鳥肌が立つ者、沈着する者と受験者の反応は多々あれど、人生の分岐点となる大事な試験にこの場にいる全員の闘志が熱く燃えていた。

 

 

 ──このバカを除いては。

 

 

 

 

「でもナポレオンって恐妻家だったんでしょ? 戦術の天才でも夫婦間の苦難は乗り越えられなかったのにそんな名言で後押しされてもなあ」

 

 

『HEYそこぉ! 水を差すなああぁぁ!!』

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 さてさて始まりました実技試験! いやー、テーマパークに来たみたいだ。テンション上がるなー(棒読み)

 

 まんま市街地を再現した会場に集められた俺達はプレゼント・マイクの合図で一斉にスタートした。もちろん俺も街中にいる敵ロボ目掛けて全力前進DA!

 

 

 すると建物の影から仮想敵が現れた。ほう、1ポイントの敵か。まずは小手調べといこうか。

 

 

 俺の個性は感覚強化。その名の通り、感覚を操作することが出来る個性だ。

 

 え? そんな個性で大丈夫かって? 確かにこの個性はあくまで五感の操作だ。例を挙げると視力がよくなったり、嗅覚が犬を凌いだりと感覚の底上げがメインだ。

 

 

 だがだが! 俺にはこの鍛え上げられた肉体がある!

 

 俺の個性は戦闘向きじゃないからねぇ。トレーニングは欠かさなかったのよ。ヒーローを目指すと決めたとき、じいちゃんの知り合いの武道家に弟子入りして身体鍛えて貰ったんだよなあ。

 

 渋川流柔術とか流水岩砕拳とか……。おかげで肉体だけはハイスペックになった。それに個性が加われば純粋な格闘戦では敵なしなのよ。

 

 

 え? ロボットには効くわけないって? はははっ、ところがぎっちょん!

 

 

『標的捕捉。標的捕捉。ブッ殺「せいっ!」』バギャッ!

 

 

 装甲の薄い部分を貫手で突く。この程度の敵なら個性が無くとも充分なんだよ! ひゃっはー!

 

 

 貫手だけではなく、他の格闘術を駆使して敵ロボを活動停止に追い込んでいく。周辺に目ぼしい敵がいなくなれば聴覚を強化しソナーのようにして索敵もしたりも出来る。

 

 敵を探してる途中、俺は目を疑った。

 

 

「おっ、可愛い子発見!」

 

 

 今しがたロボットを破壊したのはオレンジ色のサイドテールがプリティーな女の子。しかもちょーかわいい。しかもお手てがデカイ。ハンディ・ハンディ様にそっくりやん!(知らない人はググって、どうぞ)

 

 とはいえ美人さんに声をかけないのは傷ついた子犬を見て見ぬ振りするのと同義である。俺は紳士らしく、服についたゴミを払ってからお近づきを試みた。

 

 

「へい! そこのかーのじょ!」

 

「ん? 誰? ……あー、説明会で注意されたやつか」

 

 

 第一印象が最悪すぎる……! どれもこれもかっちゃんのせいだ!

 おっと待て待て。大切なのは"今"じゃないか。ここから好感度を上げていけば問題ないよね。

 

 

 

「今の発頸すっごくよかったよ。こう、なんていうのかな。腰を使い方といい、手首のスナップといい、結構やりなれてる感があったよ。それと顔も可愛いね。スレンダーな体型もいいね。陸上選手のようなスタイリッシュ感があって俺好みだよ」

 

「そ、そう? ちっちゃい頃から武道やってたから……って、後半ほとんど関係なくない!? 恥ずかしいし!」

 

「女の子の容姿を誉めるのに理由なんて必要ないんだよ。キレイだったらキレイ、可愛かったら可愛い。これ世界の真理アルよ」

 

「うー……!」

 

 

 照れてる顔もかーわーいーい!

  

 もうちょっとお喋りしたいけど、時間は限られているのでここでおしまいにしよう。本当に名残惜しいけどね。

 

 

「自己紹介が遅れたね。俺の名前は御手洗暦。個性は感覚強化だ」

 

「あ、あたしは拳藤一佳。個性はまあなんとなくわかってるだろうけど、大拳。拳を大きく出来るんだ」

 

「よろしくね、いっちゃん」

 

「いっちゃん!?」

 

 

 なるほどお手てを大きく出来るのか……。これで手コキされたらどうなるんだろうか、ゴクリ……!

 

 いっちゃんと乳繰りあってると凄まじい振動が足を伝ってきた。見ればビルを越えるほどの巨躯の仮想敵がこちらをしっと捉えていた。

 

 

「なんだよあれ……!」

 

「多分プレゼント・マイクが言ってたお邪魔ギミックってやつじゃないかな。お邪魔どころがこの試験そのものを中断しかねないデカさだけどね」

 

 

 周りの受験者達もさすがに敵わないと思ったのか、逃走一辺倒だ。

 ……ふーん、君達はそれでいいの? ヒーローを目指す奴が『無理だから』って理由で踵を返してもいいの?

 ──少なくとも俺はそうは思わないね。

 

 

「なあ一旦逃げよう御手洗! あたしでもさすがにあれには……! ……御手洗?」

 

 

「ふむふむ……おっ、この鉄パイプいけそうだな」

 

 

 瓦礫の中から見つけたのは鉄パイプだ。しかも先が斜めに折れて鋭くなっている。

 

 俺はそれをやり投げのように構えて、ロボットをよく観察する。そして気づいた、()()()()()()だと。

 

 

「おい! まさかそんなので倒す気!? 無理に決まってるって!」

 

「こらこら。考えられる全ての手を尽くしてもダメだったら諦めるしかないけど、やる前から諦めちゃダメっしょ。ヒーローってのはそういう存在でしょ?」

 

「それは……そうだけどさ……」

 

 

 さて、話を戻すとこれまで倒してきた三種のロボットだが、外見こそは違うものの内部構造はほぼ同じだ。そのためどこがエンジンでどこがメインカメラなのかがある程度分かる。そしてこの実技試験の内容は仮想敵の無力化。つまりは全壊させなくとも、動けなくすればポイントは入る仕組みなのだ。

 

 

 すなわち、あの大型のロボットを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 個性で視力を極限まで上げることで俺の目は望遠鏡のように遠くを見れるだけでなく、動体視力も強化されて周囲の時間が遅く感じるようになっていた。

 そんな超視力が捉えたのは装甲の僅かな隙間から見えるケーブルの束。鉄パイプの矛先が狙いを定めた。

 

 

 パジェロ!パジェロ!(存在しない歓声)

 

 

「おりゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 投擲された鉄パイプは敵ロボの装甲の隙間を掻い潜ってケーブルを突き破った。断線したのはセンサーカメラから基板まで伸びるメインケーブルだ。それが切れたことはつまり仮想ロボに搭載されたAIがこれ以上の活動は不可能と判断し、活動を停止したことを意味した。

 

 その巨躯が地面に沈んだのを確認すると天に向かってガッツポーズ。

 

 

「お前……」

 

「ふっ……」(キメ顔)

 

「あー……キメてるところ悪いんだけどさ……その、えーと、ズボンのチャック開いてるよ……」

 

「………」ジィー

 

 

 最後まで締まらないなあ、トホホ……。

 

 

 しばらくしてると試験終了の合図がしてその日はお開きとなった。

 とりあえずいっちゃんとは連絡先を交換した。やったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尚、三人とも合格したけど焼き肉にはかっちゃん来てくれなかった。解せぬ。

 

 

 

 

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