大丈夫、俺強いから   作:パンの袋を閉じるアレ

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高校デビューは初日が重要

 とりあえず合格した俺こと御手洗暦はルンルン気分で街道を行く。すれ違う人達が得体が知れない物体を見るかのような目線を向けてくるが、そんなの気にしないね。

 

 そう今日は雄英高校の初登校日! でっちーほどじゃないけど、やっぱり憧れの学校に通えるというのはいいもんだ。

 

 そして到着、国立雄英高校! 周りには俺と同じ制服を来た奴らがうじゃうじゃいる。ほほー、どいつもこいつもヤバそうな面構えしてやがる! さすがはヒーロー校の金字塔だ。

 

 とはいえ、彼らはこれからヒーローを目指す友達であり、ライバルであり、戦友でもある。他者を疎んじてはヒーローにはなれない。まずは友好的に接することが重要だ。(但し女子限定)

 

 

「ちぃーす! これからよろしく! 御手洗暦でーす!」

 

「え、ええよろしくお願いいたしますわ……」

 

「ノコ?」

 

「アンタ誰?」

 

 

 途中で髪が茨の可愛い娘とキノコっぽい可愛い娘とサバサバしたセミロングの可愛い娘がいたから挨拶しといたぜ。やっぱり第一印象は大切だもんね。

 

 

「おいおい! なんかお前面白そうな奴だな! 俺は鉄哲徹鐵! 俺もヒーロー科なんだよ! 仲良くしようぜ!」

 

「……あー、ごめん。俺ソッチの気はないんだ。悪いけど他の男をあたってくれ。例えばかっちゃんとか……」

 

「誰だよ! つーか違ぇわ! ダチになろうって話だよ! 勘違いすんな!」

 

「あ、そういう意味だったの? ごめんごめん。中学で『来る者は拒まないタイプです』って自己紹介したら『来るモノ♂は拒まない』って解釈されて女子から変な人気出たからさあ。またクラスの男子全員との蜜月本出されると思って身構えちゃったよ」

 

「ハハハッ! やっぱ面白ぇわお前!」

 

「笑うところちゃうわい。おっと、名前を言ってなかったね。俺は御手洗暦。クラスは……そういやまだ確認してないな」

 

「多分、お前A組だぜ。さっきクラス表見たけどB組にお前の名前なかったもん」

 

「もしくは落第したからないとか……? イヤァァァァァ!!」

 

「そんなわけねぇだろ! じゃあどうやって校門通ったんだよ」

 

「あ、学生証見せたな」

 

「だろ? やっぱA組なんだって。クラスは違うけどよ、お互い頑張ろうぜ! じゃあまたな!」

 

「ああ、そうだな。お前も頑張れよ」

 

 

 そのまま走り去っていく鉄哲の後ろ姿を見て俺は感動した。なんていい奴だったんだ……! 

 

 かっちゃんと初対面のときなんか第一声が『死ねッカスッ!』だったからなあ。鉄哲の爪の垢を煎じて飲ませたいよまったく。

 

 さて、とうとうA組の教室前まで来た。バリアフリーを意識してかドアがめちゃめちゃデカイ。こんな背丈の個性持ちもいるのかあ。

 

 まあそんなこと考えながら俺は元気よく扉を開けた。あっ、かっちゃんだ!

 

 

「うぃーす! かっちゃんおはよう!」

 

「チッ! よりにもよって俺と同じクラスかよ……!」

 

「また毎日ラブラブ出来るね! それじゃ再会の記念にともだチ○コしよっか」

 

「誰がするかそんなこと!」

 

 

 んん? かっちゃんの側にいるのは説明会で注意してきた眼鏡君じゃないか。

 どう見てもかっちゃんとつるむようなタイプじゃない。一体全体どういうことなのか?

 

 

「確か君は……。なるほど、君も合格していたのか。あの時はそう感じなかったが、合格した以上少なくとも実力者ということか。俺は飯田天哉。私立聡明中学出身だ」

 

「俺は御手洗暦! 好きなものはみたらし団子と爆豪勝己。嫌いなものは苦いものと爆豪勝己だ。よろしくな、いっくん!」

 

「ぶっ殺されてぇのかテメェはッ!!」

 

「い、いっくん!? そんなあだ名つけられたのは初めてだな……」

 

 

 お、そいつは嬉しいね。つまりは俺がいっくんの初めての相手ってわけだ。

 

 

「それはそうと見たところ、君と爆豪君は知り合いかい? なら君からも机に足をかけるのを止めるよう言ってくれないか! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ない!」

 

「そんな奴らのことなんか知らねぇよ!」

 

「こういうのは俺じゃなくておばさん(爆豪ママ)に報告するといいよ。かっちゃんはおばさんに頭が上がらないからね」ピロリン

 

「テメェなにしてんだぁああ!! あのババアに連絡してんじゃねぇえ!! 『ピロリン』 っ!? くっ……!」

 

 

光己〈御手洗君から話は聞いたよ

 

 

「があぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

「お、恐ろしいな君は……」

 

「おっすおっす。俺にとっちゃ誉め言葉だ」

 

 

 かっちゃんへの最終兵器はおばさん。ここテストに出るよ。ガラッ

 

 ん? また新しいクラスメイトが来たようだ。どれどれ、どんな人なのかな……ってそこにいたのはでっちーだった。横にいるのは確か入試の時にでっちーと話してた女の子じゃないか。あっ(察し)

 

 

「お、おはよう、御手洗君」

 

「おはようでっちー。入学初日から朝帰りとはやるじゃねぇか。今夜は赤飯だな」

 

「え? ──あ、ち、違うから! たまたま教室の前で会っただけだから!」

 

「そうやって必死に否定しているのが逆に怪しい……。『でっちーのお母さんへ。息子さんが大人への階段を二段抜かししました』……っと、こんな感じでいいか」

 

「お願い止めて御手洗君!!」

 

「あの……デク君。この人は……?」

 

「どーも! でっちーと同じ中学出身の御手洗でーす! これからよろしくぅー!」

 

「あ、どうも麗日お茶子です」

 

 

 空いた席と現在立っている生徒の人数を合わせてみるとどうやらA組の生徒はこれで全員のようだ。

 

 ふむ、個性は分からないが全員が濃い面子だ。……ん? あそこにいる耳たぶから伸びるコードがキュートでボブカットがパンクな三白眼の女子生徒はま、まさか!?

 

 

「あれれ? もしかしてジロちゃん? おひさ!」

 

「………久しぶり」

 

 

 折寺に転校する前の学校で同級生だったジロちゃんこと耳郎響香じゃないか! 相変わらずクールな立ち振舞いだ。

 

 修行のため、祖父が住んでいる静岡にいた頃小三から中二の終わりまで一緒の小中学校に通っていたのがこのジロちゃんだ。折寺に行くことを知らせたときのジロちゃんは悲しい顔してたな……。でも大丈夫! 私が来た!

 

 

「ジロちゃんが雄英受けてたなんて知らなかったよ。しかも合格したんだね、おめでとう」

 

「……まあウチにとっちゃ、あれぐらいは楽勝だったね。それにしてもアンタも雄英受験してたんだ、奇遇だね」

 

「あれ? 夏休み終わりに『俺雄英受験するわ』ってメール送ったよね。その後返信もきたから読んでないってことはないはずなんだけど……」

 

「いっ!? べ、別に忘れてただけ! アンタのことなんか記憶に残らないような奴だから忘れてたの!」

 

「ええー、俺みたいな奴忘れたくともそんなキャラクターしてないよ。むしろ皆の記憶に残るように振る舞ってるんだから」

 

「アンタのその性格はキャラ付けだったんかい……」

 

「どっちかっていうとこの性格をさらにパワーアップしたキャラと言ってくれたまえ。まあジロちゃんも元気そうで良かったよ。最後に会ったのは中二の三学期末だったかな? あの時とほとんど変わらないままで可哀想なおべッ!!??」

 

「どこ見て言った?」

 

「あ、が……い、いえ身長の話です…はい……」

 

 

 ジ、ジロちゃんのイヤホンジャックも久しぶりだなあ……。ああ……中二の頃を思い出すよ……。

 

 あとなんかちっこい葡萄から睨まれた。なんだあいつ?

 

 

 そんなやり取りをしてるとチャイムが鳴った。とうとう始まる雄英高校のヒーロー講座に皆のテンションは最高潮だ。どんな先生が来るのか、皆が期待で胸を膨らませると男性の声がした。

 

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。

 

 

 

 ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 

 

「「「な、なんかいるぅー!!??」」」

 

 

 廊下に寝袋に身を包んだ怪しげな男がいた。口にはゼリー飲料が咥えられ、一気に中身を吸い込むとそれをしまいこんだ。あー、あれ俺も好きなメーカーのやつじゃん。

 

 

「……はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限だ。君達は合理性に欠けるね。あと御手洗、写真を録るな」

 

 

 なんかおもしれぇ人だからネットにアップしようとしたら怒られた。ぴえん。

 

 やれやれとため息を吐いた男にクラスにいる全員が唖然としていた。

 ダボダボの服に謎のマフラー。髪はボサボサで無精髭。ヒーロー科には相応しくない格好だったからだ。

 

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

「「「担任!?」」」

 

 

 まさかの担任である。やっぱ一枚録っとくか……。

 

 すると先生は何かを取り出した。それは雄英指定の体操服だった。

 

 

「早速だけど全員これに着替えてグラウンドに出ろ。話はそこでする」

 

 

 

 

 

「「「個性把握テストぉ!?」」」

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるのにそんな悠長なことしてる暇なんてないよ」

 

「先生、どら焼食っていいすか」

 

「ブッ飛ばすぞお前」

 

 

 あーん、ひどぅい!

 小腹が空いたからちょっとした腹ごしらえにおやつ食べようとしただけなのに……。これも合理的判断だと思うんだよなあ。

 

 

「雄英は自由な校風が売り文句……。そしてそれは教師側も然り。爆豪。中学時代のソフトボール投げは何メートルだった?」

 

「67メートル」

 

「じゃあ個性使ってもいいから思いっきりやってみろ。その円から出なきゃなんでもいい。早よ」

 

「頑張れーかっちゃーん!!

 

「応援すんなやクソがッ!!」

 

 

 怒りながらも腕をストレッチするかっちゃんに先生がボールを渡す。先程の激怒っぷりが嘘のようにひいて冷静な顔つきになっていた。一見何も考えてなさそうで考えてるのがかっちゃんクオリティなのだ。

 

 体力だけは有り余ってるかっちゃんのことだ。投げ方はシンプルだろう。

 単純明快に球威に爆風を乗せ──投げたッ!!

 

 

 

──死ねぇッ!!」

 

 

 BooM!! 

 

 

……死ね? 

 

 

 

「……まずは自分の最大限を知ること。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 

 先生の手にある計測器に表示された記録は705.6メートル。

 中学の10倍以上の飛距離だ。

 

 

 

「マジか! 個性思いっきり使えるのかよ! さすがヒーロー科!」

 

「705メートルってすげぇ!」

 

「なんだよこれ! すっげー()()()()じゃんか!!」

 

 

 

「………面白そう、か。

 

 

 

 ヒーローになるまでの三年間、そんな腹積もりで過ごす気なのかい? 非合理だね君達は」

 

 

 

 先生はどうやらご立腹の様子。面白くないねと言わんばかりの態度に全員がビビって萎縮してしまった。

 

 するとA組全員の顔を一瞥していく。でっちー、かっちゃん、いっくんにジロちゃんと……あれ? 今俺の時スルーしませんでした?

 

 

「……よし決めた。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断して──、

 

 

 除籍処分にしようか」

 

 

 

「「「えぇぇぇぇッ!!??」」」

 

 

 

「最下位除籍って……! まだ入学初日ですよ!? 理不尽過ぎる……!」

 

 

 

 たがその一言が相澤の逆鱗に触れた!

 

 

 

「理不尽? 変なこと言うね」

 

 

 

「自然災害、大事故、身勝手なヴィラン達……。何時、どこから来るか分からない厄災。この世は理不尽だらけだ」

 

 

 

「そんな理不尽を覆していくのがヒーロー。君達の夢なんだろ?」

 

 

 

「放課後マックで談笑したいならお生憎様。これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続けていく。それが雄英高校ヒーロー科のやり方さ。さあ……

 

 

 

 ──Plus Ultra(更に向こうへ)、全力で乗り越えて来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあどら焼がダメならフリスクならいいすか?」

 

「よかったな皆。御手洗が代表して除籍になるってよ」

 

「ああ! 嘘ですごめんなさい!」

 

 

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