大丈夫、俺強いから 作:パンの袋を閉じるアレ
スポーツテストの項目といえば50メートル走、握力計測、立ち幅跳び、反復横飛び、ボール投げ、持久走、上体起こし、長座体前屈の8種目だ。
前にも言ったが、俺の個性は感覚強化。運動力を上げる個性ではない。そのためこのスポーツテストには不利と人は考えるだろう。
だが、俺にはこの肉体がある。個性で負けるのなら素の肉体で凌駕すればいい。やはり筋肉、筋肉は全てを解決する……!
とりあえず全力で頑張ろう。今の俺にはそれしか出来ないのだから。
~50メートル走~
「次、切島、御手洗。お前らだ」
「うっす! 頑張ろうぜ御手洗!」
「おう──あれ、鉄哲? ここはA組だぜ? お前クラス間違ってるって」
「誰だよ鉄哲って! 俺は切島鋭児朗だ!」
「よろしく鉄哲」
「話聞いてたかお前!?」
「乳繰りあってないで早く走れ」
記録 3秒85
~握力~
「540キロ!? あんたゴリラか!? タコか!」
「個性:複製腕っていうのかよお前の個性! すっげぇ便利だな!」
「タコって……エロいよね……」
「ふふふっ、甘いな君達」
「だ、誰だ!?」
「確かに540キロは凄い……。それは認めよう。だが俺の個性、感覚強化はその上をいく!」
「感覚強化って握力に影響あんのか?」
「うるせぇ!」
「沸点低ッ!?」
「これから俺の数値を見たとき、お前らは驚愕目が飛び出るだろう!」
「昔のギャグ漫画のテンプレだな」
「いくぞ! うおぉぉぉぉぉおお!!!」
「おおぉ!! こ、これは!」
「………」
「………」
「結果は……106キロ……?」
「十分すごいんだけど、障子と比べるとなあ……」
「ま、まあ、障子のは特殊だからさ。感覚強化だっけ? 今回のテストに向いてないだけだから落ち込むなよ。俺なんか59キロだぞ。ほとんど素で106キロは凄いって!」
「………」
「御手洗?」
「ぐすん……」
「泣いたー!?」
記録 106キロ
~反復横飛び~
「オイラは峰田実! 御手洗暦、オイラと反復横飛びで勝負しろッ!」
「なんだお前? 悪いけどこっちは除籍がかかってるんだ。そんな暇ないんだよ。うかうかしてるとお前が除籍されちまうぞ」
「うるせえぇ!! 朝からイチャつきやがって! あんな甘ぇ光景見せられてるこっちの身にもなれこの野郎ッ! しかもなんだ! お前実技試験のときも女の子侍らせていたじゃねーか!」
「いっちゃんのこと? なんで知ってんのお前」
「オイラも同じ会場だったんだよバカヤロぉぉぉ!!」
「あっそ。悪いけどパス」
「──逃げるのか?」
「あん?」
「勝てないからって逃げるのかって聞いてんだよッ!」
「そんな挑発に乗るかよ。子供でも引っ掛かるかって話だ」
「………」
「………」
「やってやろうじゃねえかよ! この野郎ッ!」
「ハーレム王にオイラはなるッ!!」
『スタート!』
「ふおぉぉぉぉ!! 見たか! これがオイラの力だあぁぁ!!」ブヨンッブヨンッ
「す、すげー! 残像が見えるほど速く動いてやがる!」
「負けた───!!」
「いよっしゃあぁぁぁぁ!!」
「……なにあれ?」
「さあ……?」
御手洗暦 98回
~ボール投げ~
「せぇぇいッ!!」
ピピッ『記録 121メートル』
「投げるのは二回までだ。早くやれ」
「もいっぱあぁぁぁぁつッ!!」
ピピッ『記録 128メートル』
(ほとんど素でこれか……。個性は感覚強化だが、それを補う形で長年肉体のトレーニングをしてきた、か……。合理的だな)
「どうしたんすか相澤先生? あ、言わずとも分かってますよ。フリスク欲しいんすよね?」
「マジで除籍にするぞお前」
ダイジェスト形式だが、まあそんな感じで和気あいあい?しながら記録を出していく俺達。
お、次に投げるのはでっちーか。ここまでいい成績残せてないからなあ。そろそろ個性を使わないと厳しくなってきたぞ。
ピピッ 『46メートル』
「な……! 今確かに個性を使おうと………!」
「俺が個性を消した。まったく……つくづくあの入試は合理性に欠けるよ。お前のような奴でも入学出来てしまうんだからな」
「個性を消した……? あっ……そのゴーグル! まさか貴方が抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッドなんですか!?」
「イレイザー・ヘッド?」
「アンタ知らないの? 見たたけで個性を消すっていう個性を持つアングラ系ヒーローだよ。大のマスコミ嫌いって話さ」
「へー知らなかったなあ。あ、ジロちゃんスポドリ飲ませて。もちろんく・ち・う・つ・しディジェッ!?」
「自分で飲め」
イヤホンジャックはやめて……ゴホッ……。
しかし……イレイザー・ヘッドか。ほーん、そんなヒーローいたんだ。でも髪の毛が逆立つのは一体どういう仕様なんですかね? スーパーサイヤ人かなにか?
それはそうとでっちーはもう後がないっていう顔をしていた。しかし瞬時に覚悟を決めたような顔つきにもなっていた。
一体何が──? それを知るためにも俺は個性を使って視力を強化! そしてでっちーの右手を凝視した。
「SMASH!!」
なんとでっちーは指先だけでボールを投げたのだ! しかも指先だけだというのに投げたボールはあっという間に粒になるまで飛んでいき、見えなくなった。
先生の計測器に表示されたのは705.3メートル。かっちゃんとほぼ同じ記録だ。
そのことに我慢ならないかっちゃんがでっちーに襲い掛かる。あの構えから察するに間違いなく爆発の個性を使うつもりだ。
もちろんそんなことはさせない。極限まで上げた視力は動体視力も極限。かっちゃんの動きを見極めるのは造作もないことだ。
「みたらし野郎──!? がはっ……!?」
力で投げるのではなく、力を流す。渋川流柔術開祖、渋川先生の教えである。
かっちゃんは盛大に反転し地面へと叩きつけられた。
「クソッ……! なにしやがるテメェ!!」
「それはこっちの台詞さかっちゃん。さすがに爆発はマズイでしょ。下手したらかっちゃんが除籍されちゃうかもよ?」
「ぐっ……! どけよこのカスっ!!」
「ですよね先生?」
「その通りだ御手洗。爆豪もその辺にしておけ。それ以上やるならこっちとしても処分を検討するぞ」
「……チッ」
観念したのか、かっちゃんの腕から力が抜けた。ふー、これだからかっちゃんは手のかかるんだから。
腹立たしそうに集団に戻るかっちゃんを見送ってると相澤先生が近づいてきた。
「よく止めたな。御手洗。俺はドライアイなんだ。あまり個性を使いたくない」
「「「個性は凄いのになんかもったいない!」」」
さてその後も持久走、上体起こし、長座体前屈でもそこそこの記録を残し、全ての項目を終わらせた俺達は一堂に集められ、誰が除籍処分されるのかを恐る恐る待っていた。
「それじゃあパパッと発表して終わるか」
ビクッと震える一同。その中でもでっちーの顔はヤバイ。ジャイアントシチューを食べたのび太君のような顔をしていた。
ああ、まさかでっちーが除籍だなんて……。
「ちなみに除籍はウソ」
……あれ?
「君たちの最大限を引き出すための合理的虚偽だ」
「「「えぇ──!?」」」
「というわけでこれにて終わり。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しておけ。解散」
えっと状況はいまいちわかんないんだけど……とりあえずはヤッター!
「相澤君の嘘つき!」
「……見てたんですか」
職員室に向かう途中、相澤が出会ったのはオールマイトだった。
彼の台詞を聞く限り、どうやらピンからキリまで授業を盗み見していたようだ。
「合理的虚偽って! エイプリルフールは一週間前に終わってるぜ。君は去年の一年生……
『見込みゼロ』と判断すれば迷わず切り捨てる。それが君という人間だ」
極限まで合理性をつきつけた男、相澤消太。またの名をイレイザー・ヘッド。
血も涙もないような性格だとオールマイトは考えていたが、そんな男が前言撤退したことに驚愕した。考えられる理由、それは……。
「君も
「……君も? ということは貴方もですか?」
「うぐっ……!?」
分かりやすいくらいの狼狽えに相澤は肩を落とした。生徒に肩入れするとは教師としてどうなのかと思うが、まあこの人ならやりかねないなと納得した。
「ゼロではなかった。それだけです。見込みがない者はすぐ切り捨てます。半端に夢を追わせることほど残酷なことはないんで」
「(君なりの優しさってことかい相澤君……) それと御手洗君のことなんだが……」
「すいません。俺アイツ嫌いです。それじゃあ」
「ええっ!? ちょ、ちょっと! 相澤くーん!?」
~~~
ガラッ
「いやーキツかったすね今日は~」
「なあ今日はすっげぇキツかったゾ~」
「なんでこんなきついんすかねえ。こんなん毎日続けたらやめたくなりますよ~」
「コーラ! コーラ!」
「……でんちゃん、これ昼間腹減んないっすか?」
「腹へったなー」
「この辺にィ、美味いラーメン屋の屋台、来てるらしいっすよ」
「あっ、そっか」
「行きませんか?」
「行きてーな~」
「じゃけん昼行きましょうねー」
「おっそうだな。あっそうだ、おい耳郞」
「……なに?」
「お前さっき俺らが測ってるとき、チラチラ見てただろ?」
「はあ? 見てないけど?」
「ウソつけ絶対見てたぞ」
「なんで見る必要なんかあんの。あとそのしゃべり方ウザいから止めて」
「「……はい」」
そんなこんなで汚い会話をしつつ教室に戻ってきた俺達。本来今日は入学式とクラスの顔合わせだけの予定だったので後は下校するだけである。
個性把握テスト中に仲良くなった上鳴電気ことでんちゃんが何かと調子のいいやつだったので二人でこの後遊びに行くことになったのだ。
むむ、二人だけじゃ寂しいな。もっと呼ぼう。
「それじゃあ、カラオケする人この指とっまっれ!!」
「おっ、カラオケか! いいなあ、俺も行くわ!」
「そんじゃ俺も!」
「はいはーい! 私も行くー!」
「女子と、カラオケ……! ふへへへへっ……!」
クラスの半分はついてきてくれるようだ。おっ、待てい。肝心な奴呼び忘れてるゾ。
「かっちゃーん! カラオケ行かなーい?」
「付き合ってられるかボケがっ!!」
「……かっちゃんはともかく、入学初日だから遊べる人はすくねぇのは仕方ないか」
「お前めげねぇな」
「で、どうする? 駅前のカラオケでもいいか?」
「何の話してらっしゃいますの?」
着替い終えて最後にやってきた面々。先頭に立って話しかけてきたのはおっぱいに黒のポニーテール、さらにはおっぱいが特徴的な原付ランナーだった。
おっ、でっちーやいっくんもいる。でっちーも指を治してもらってきたみたいだ。
「テストで一位だった人! 一位の人はどうする?」
「失礼な! 私には八百万百という両親からいただいた名前がありますの! ちゃんと名前で呼んでくださいまし!」
「ごめんごめん。テストじゃ自分の順位しか頭になかったからさー。あ、俺は御手洗暦。ちょうどよかった。これからみんなでパーティーしに行くんだけど、ももちーはどうかな? もちろん後ろの三人もね」
「も、ももちー?」
「嫌だった?」
「いえ、そういうわけではありません。むしろ嬉しいくらいですわ。それにパーティーとは? 私、様々な企業や財閥の方々のパーティーに参加したことがありますが、そのようなパーティーでしょうか?」
「企業……」
「財閥……」
「ううっ、お金持ちやあ……」
「ど、どうしたんだい、麗日君!?」
はえー、ももちーってスゴいお金持ちなんすねー。それにしてもなんかお茶子ちゃんの様子が変だ。なんでだろう。
「大丈夫大丈夫。ももちーも絶対気に入ると思うから! これからするのは乱交パーティー…痛い!」
「お前はなにを教えてんだ」
「らんこう……パーティーですの? それはいったいどのような催しものでしょか?」
「ヤオモモも無視していいから」
「催しものってかみんなあるモノを催すんだけどね。そう、精えジェガンっ!?」
「マジふざけんなよテメェ……!」
「ちょ、耳郞ちゃん! 口調っ、口調!!」
多分過去一ともいえるイヤホンジャックで俺も心臓はボロボロだ……。
「あるモノ? どういったものですか?」
「あ、あのねヤオモモ……あいつのことは放っといていいから……」
「後のことはジロちゃんに聞くといいよ。ジロちゃんはなんでも知ってるから」
「はあっ!?」
「まあそうですのね! 耳郞さん、どうか教えてくださいませ!」
「えぇっ!?」
「大丈夫! ジロちゃんは経験豊富だから(カラオケ)」
「いい加減黙れ……!」
「耳郞さん!」
「ジロちゃん!」
「あーもう……!
ウチはまだ処女だっつーの!!」
「……」
「……」
「……あっ」
「……あー、その、ごめんなザクレロっ!?」
眼球へのダイレクトアタックをされたの最後に俺の記憶はそこで止まった……。
「よーし、席につけおま……何があった?」
ホームルームしにやって来た相澤が見たのはカオスな光景だったという──。
ももちー「は、破廉恥な……!」←帰宅後調べた。