今日のボス――魔物の肉を食べて食あたり。
――我々はこの男を知っているッ!
かつてイタリアギャング『パッショーネ』のボスとして君臨し、ディアボロと名乗っていたこの男は、配下のスタンド使いから反逆を受けた末に『終わりの無いのが終わり』という無間地獄に堕とされた!
死んでも死んでも死の直前に戻されて死に続けるディアボロは、いつしか考えることを止めて襲い来る運命に身を委ねるようになっていった。
そして今回! ディアボロがたどり着いたのが、薄っすらと壁が光る地下洞窟である。
「……今回は、どういう死に方をするんだ……どこから来る……もうどうでもいい、すぐに次が始まる……」
絶望と諦観に染まったディアボロ。彼は目の前に迫った身の丈3メートルを超える熊のような怪物――爪熊の恐ろしいカギ爪を無防備なまま迎え入れた。
だが、鋭い爪はディアボロの脳天を突き刺そうとした瞬間、カキンと甲高い音を立てて半ばからへし折れてしまった。
折れた爪の先が地面に転がり、乾いた音を立てる。
「いった……なんだ?」
ディアボロが感じたのは、キャッチャーフライを取り損ねてボールが頭にぶつかった、程度の痛みだった。熊の剛腕など受けたら、控えめに見積もっても首から上が飛んでいきそうなものだが。
「ガオォォンッ!!」
爪熊は逆側の腕でもディアボロに殴り掛かったが、やはりディアボロには耐えられる程度の鈍い痛みしか無く、逆に爪熊の腕の方がへし折れてしまった。
まるで
「ど、どういうことだ……」
ディアボロにとって自分が死ぬことは日常茶飯事であり、カナダでグリズリーに殺された経験だってあった。
「な、何だか分からんが喰らえッ!!」
体の内側から力が溢れ出るような気がして、ディアボロは反射的に拳を振るった。
そのパワーとスピードから放たれた一撃は爪熊の胴体を容易く貫通し、上半身と下半身を破断させて余りある。
まるで……無間地獄へ堕ちると同時に失った自らのスタンド――キング・クリムゾンにも匹敵する破壊力だ。
「こ、この力は……オ、オレに何が起きたというのだ……」
溢れ出る力にますます混乱するディアボロだが、ゆっくり考える余裕は無いようだ。
爪熊が死んだことで、隠れていた他の魔物がわらわらとディアボロに群がってきたのである。
尾が二本ある狼と、下半身が異常発達した兎を前に、ディアボロも思わずぎょっとして後退りしたが……すぐに考えを改めた。
「……少し、慣らしに付き合ってもらうぞ」
一斉に飛び掛かって来た魔物の群れを前に、ディアボロは拳を構える。
透子達が奈落の底へ降り立つ、数十分前の出来事だ。
「いいかッ!? その場を一歩も動くんじゃあないぞッ!! スタンドも動かすな! 警告に従わないなら敵対行動と見做すッ!!」
「めっちゃくちゃビビってんじゃあないか〜このおっさん」
透子達が迷宮で遭遇した謎の男――ディアボロは、一見すると高圧的な態度のようで、実際はへっぴり腰で後退しながら怒鳴っている。大型犬と遭遇したチワワのようだ。
透子はハジメに動かないよう目配せする。ハジメは頷いて、スタンドを一旦引っ込めた。もちろん、すぐにでも攻撃に移れるよう準備して、だ。
「落ち着け〜おっさん。取って食ったりしないから〜。こっちはただの遭難者〜」
「遭難……だと?」
「そ〜なんです。おっさんもその口? もしくは冒険者とか」
「…………」
抑揚のない、気が抜けるような透子の口調に、ディアボロが怪訝そうに眉根を寄せる。緊張感が無さすぎて、却って不信感を抱かれたかもしれない。
しかし透子は構うことなく話し続けた。
「わたしは泉谷トーコ。こっちは南雲ハジメ。そっちは〜な〜んて呼べばよろしくて?」
「…………」
ディアボロは少し長めに考え込んでいたが、やがて静かに口を開いた。
「ビネガー・ドッピオだ。ドッピオと呼ぶがいい、イズミヤトーコとナグモハジメ」
自分がなぜ、どうしてこんな場所にいるのか分からない……というディアボロ改めドッピオに、透子とハジメは順を追って、それこそここが地球と異なる世界であることから説明していった。
「地球ではない異世界、だとッ!? ……さ、さすがにそんなケースは初めてだ……」
スタンドを知っていたのでもしやと思ったが、案の定ドッピオも地球出身者であった。
トータスについて知ってる範囲で大雑把に話し、次いでこの場所が古代人の造った地下迷宮の一画だとも伝えていくうち、ドッピオの表情が初対面時とは違う方向へ険しくなっていく。
「す、少なくとも地下数十階……下手をすれば百階だと!? それもエレベーターも無く徒歩で戻らねばならない……だと……ッ!!」
知りたくなかった……とでも言いたげに、ドッピオは頭を抱えた。加えて、迷宮内部には魔物が無数に徘徊しているというのだから始末に負えない。
「ねえトーコ? 今更だけど、ここまで正直に話しちゃって良かったのかな?」
「確かに怪しい人だども〜騙してこっちに得なんて無〜い」
「うん。それはそうなんだけど……」
ハジメが漠然と感じ取っている不安は、透子にも理解できる。ドッピオのまとう独特の雰囲気は、明らかにカタギの人間の『それ』ではないのだ。康一の舎弟を自称する小林玉美――彼を何百倍か危険にしたような『凄味』が、彼にはあった。
端的に言えば、ヤクザや極道のそれだ。
スタンド使いとはいえ、気の優しい性分のハジメには、絶対に近づきたくない人種だった。
「……なァ、君達」
「な〜んすか?」
ドッピオは怖がらせないよう気を遣ったのか、なるべく温厚そうな雰囲気で顔を上げた。
「君達が……私に害意が無いことは理解できた。そして私も……君達と敵対するつもりはない。むしろ脱出の為に手を組めると思うのだが……どうだろうか」
「そ〜の言葉が聞きたかった〜!」
サムズアップした透子に、ドッピオがまたもやビクついた。スタンドをまとったままだったのが良くなかったらしい。
「んじゃ〜パーティ組んだお近づきの印に〜……これ進呈」
スタンドを引っ込めて素手に戻した透子は、ウエストポーチから細長い金属質のプレートをドッピオに差し出した。
何だろう、と後ろから覗き見たハジメが、ギョッと目を丸くする。
「ステータスプレート!? なんで持ってんの!?」
「スペアくれ〜って言ったら団長が普通にくれたぞ〜っと。ドッピオ〜使い方は――」
未知の道具に興味を引かれたドッピオは、ほんのちょっぴりの躊躇もしないでプレートの魔法陣に血を垂らした。
すぐにプレートが、ドッピオの持つ規格外のパラメータが表示する。
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ビネガー・ドッピオ(本名:ディアボロ)30歳代前半 男
レベル:帝王はッ! このディアボロだッ!!
スタンド名前:[喪失中]
天職:ギャング
筋力:超すごい(近距離パワー型・破壊力A相当)
体力:バラバラにされてもミミズのように這い出してくる
耐性:百万回死に続けても正気
敏捷:死んだことを後悔する時間も与えない
魔力:時間に干渉可能
魔耐:『絶望』に立ち向かう
技能:言語理解・スタンド使い[喪失中]・■■■■
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グッチャグチャであった。
シュトロハイムのようなぶっ壊れと、スタンド使いのパラメータが一緒くたになっている。
「や〜っぱスタンド使いか〜よっと。喪失中ってのが気になるけど」
「……と、透子? もっと気にするところあると思うんだけど、本名とか……」
「気にすることな〜いと思うけど。人間隠したい過去の百や二百あ〜るだろ」
「そんなに後ろ暗い人生なのか、君……」
フォローを入れたつもりが、逆にドッピオから心配される透子であった。
「しかし……面白いものだな」
ドッピオは改めて、自らのステータスプレートを眺める。自分の能力を客観的に観る機会など、今まで無かった。……ちゃんと分析されているのかはさておいて。
「自覚していない自分の状況や、隠したい情報すら露呈するか」
「ま〜だドッピオって呼〜ぶ?」
「……ああ、そうしてくれ」
ふと、
「ドッピオは……今はもう
「……そういうの、あると思います。人間だったら」
「フッ……そうだな」
ハジメの言葉にドッピオが薄っすらと浮かべた笑みは、なるほど確かに
「んじゃ〜改めてよろし〜く、ドッピオ」
「よろしくお願いします、ドッピオさん」
「ああ。よろしく」
こうして誕生した新たなパーティは、早速行動を開始した。
そして十分もしないうちに、
「……下り階段しか無くね?」
特大の壁にぶち当たり、途方に暮れることとなった。
さらっと流したけど、本来ハジメが背負うはずだった艱難辛苦は全部、光輝と檜山が持っていってくれました。誰かラブトレイン使った?
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない