……先に断っておきますが、ユエさん(仮)はハジメとはフラグそのものが立たない予定です。
「あ〜う〜……」
然程時間を置かずに、透子は意識を取り戻した。鼻の奥から前頭葉にツンとする痛みが走る。
「血〜ぃ……詰まってら。フンッ」
「目が覚めた?」
鼻腔に溜まった血の塊を追い出していると、鼻息の荒くなった透子の顔を、吸血鬼少女が真上から覗き込んでくる。
なんと透子は、吸血鬼少女に膝枕されていたらしい。
多少面食らったが、どうやら自分が無事に彼女を助けられたのだと確信して、表情を変えないままに微笑んだ。具体的には、ミクロ単位で口角を吊り上げた。
「無〜事なようでなにより」
「お陰様で。あなたも血を吐いたんじゃあなくて、鼻血が回っただけだったみたい。体に異常は無かった」
「スタ〜ンド使いすぎると鼻血出〜る。……みんなは?」
「あっち」
その先には、元が何なのか分からないほど粉砕された巨大な魔物の死体が転がっていた。
ハジメがスタンドでその魔物から煮こごりを作り、ドッピオが煮こごりを摘んで渋い顔で口に入れている。
「かなりマシになったが……ハードグミにしてももう少しこう……」
「塩味を付けただけ文句言わないでくださいよ。土中のミネラルから塩分抽出するのって大変なんですから」
「さらっとすごいことしてるんだな、ハジメ……」
あんな煮こごりでも、今の自分達には唯一とも呼べる食料なのだ。腹の虫を豪快に鳴かせた透子は、這いずるような動きで食卓に参加。男連中に悲鳴を挙げさせたのであった。
なお、魔物の死体は吸血鬼少女の封印解除にともなって出現したガーディアンで、透子が眠っていたのは1時間程度の間に出現し、瞬殺されたらしい。
透子が無表情で、作った本人のハジメと興味本位で口にした吸血鬼少女さえもゲンナリさせる食事を終えたところで、ドッピオが切り出した。
「さて。一応は腹も満たされたし、そろそろ君について聞かせてもらおうか。吸血鬼の少女よ」
「同じ話を2回するのが嫌だって言うから、透子が起きるまで待ったんだ。もうダンマリは無しだよ」
「分かってる。そこそこボリュームのある話だから、途中で寝ないで」
吸血鬼少女は口許に指を当てて、タバコでも吸うような仕草を交えて話し始めた。
「『石仮面』というアーティファクトがある。人間の血に反応して飛び出した骨針が脳を刺激して、被った人間を吸血鬼に変える禁忌のアーティファクト。
吸血鬼は怪力と不死身、吸血による他生物の能力吸収、肉体操作による
私の生まれた国では、吸血鬼の弱点を取り除いた究極生命体を生み出そうと様々な研究が行われていた。その過程で、額に穴が空いた特殊な石仮面が発見された。
私の父は王族で、強引に発見された石仮面を奪った。父は王家に伝わる『エイジャの赤石』こそ石仮面に嵌めるものだと考えて、事実その通りだった。けど赤石を嵌めた石仮面は通常の方法では発動しなかった。父や研究者……当時はまだ普通の吸血鬼だった私も、発動の方法は分からなかった。
やがて研究に行き詰まった私は、石仮面を被ったままうっかり日光の前に出てしまった。日中なのに窓を開けてしまって、あの時は本気で死を覚悟した。
けど……その『日光』こそが最後の一手だった。日光を受けた赤石によって特殊な石仮面は発動した」
一息に語り終えた吸血鬼少女は、そこでまたタバコを吸うような仕草をする。なんでも封印される前はヘビースモーカーだったらしい。
一心地付いたのか、吸血鬼少女は話を続ける。
「特殊な石仮面は砕け散ってしまい、残ったのは赤石だけ。けど私の肉体は日光を克服して、そして……あなた達のいうスタンドに目覚めた。
不死身、不老不死、スタンドパワー。トータスの全生命体をブッチギリで超越した私は、夜しか生きられない吸血鬼だけでなくて人間達も支配下に置いて、私の国を建国した。永遠に続くと考えていたクージョウ王朝……永世女王たる我が名はティオ・クージョウ一世。今思うと、儚い野望だった……」
やれやれだわ、と首を振った吸血鬼少女――話の流れからして、この先は王朝の崩壊やら気の重い話なのだろう。
ハジメもドッピオも、透子にも話に気になる部分があったが、吸血鬼少女に先を促す。
「……私の国は代々、この世界を支配する『神』を殺すべく水面下で活動していた。けど私という圧倒的な存在を得て、一気に攻勢に出る――はずだった。
臣下全員が洗脳され、私の敵になるとは思わなかった……。
自分の創った国を、自分で滅ぼすことになるなんて思わなかった。
そしてなにより……」
それまで淡々と語っていた吸血鬼少女が、僅かに目を伏せた。学帽で隠されて表情が伺えないが、陰鬱な顔なのは確かだろう。
吸血鬼少女は大きく息を吐くと、腹を括って話を続けた。
「『神』があれほど強大だとは思わなかった――」
かつて吸血鬼が興した国があった。
その吸血鬼は
加えて知性と理性まで兼ね備えていた吸血鬼は、王として軍勢を率いてトータスを支配する『神』に戦いを挑んだのだった。
だが――その国はある日、忽然と地上から消滅してしまった!
残ったのは人っ子一人いなくなった廃墟のみ。王となった吸血鬼はどうしたのか!? 集った軍勢の行方は!?
何一つ分からないまま、その国は歴史の闇へと埋もれていった。
現代からおよそ、300年前の事である……!
「っていう話を、王国の図書館で読んだんだ。多分それが、君の建てた国だったと思う」
「300年……意外と最近だわ。感覚では1000年ぐらい封じられていたのに」
「やっぱ放置してても余裕だったんじゃないかな、この人」
ハジメから客観的な王国の滅亡を聞かされても、吸血鬼少女はタバコを吸う仕草をするだけで、もうクールな表情を取り戻していた。
「ところで……あ〜、呼ぶ時はティオ、でいいのか? それとも陛下とでも呼ぶか?」
「ん……」
ドッピオの言葉に頷きかけた吸血鬼少女だが、しばらく考えて首を振った。
「歴史に名前が残っているなら、亡国の王の名前をいつまでも引きずってるわけにはいかない。どうせ『ティオ・クージョウ一世』も自称」
「フッ。なるほどな」
外へ出た時を考えてか、それとも生まれ変わった気持ちで再スタートを切るつもりか。ドッピオも最近似たような選択をしたので、悪党じみた微笑を持って肯定した。
「そ〜ゆ〜ことなら〜」
そして、ここぞとばかりにこの女も名乗り出る。
「この泉谷透子が
「いらない」
断られても構わず、透子は顎に手を当ててシンキングタイムに入った。
吸血鬼少女が何か言いたげなジト目をハジメとドッピオへ向けるも、どっちも黙って首を振るだけだった。
「よ〜し! 今日から君は『
「……やれやれだわ」
「あはは……ところで――」
特に拒否しなかったので、吸血鬼少女の新しい名前は『ユエ』に決定した。
ハジメも「強引だな」と苦笑しつつ、ユエの話でどうしても確認せねばならない部分に踏み込んだ。
「え〜っと……ユエさん」
「どうしたハジメ?」
「ユエさんは『神』と戦っていたんですよね。それってエヒト神のことなんですか?」
「? いや。『神』って言ったらあの――!?」
どうやら楽しいお話の時間は終わりなようだ。
異変に最初に気付いたのは、吸血鬼として優れたユエだった。地鳴りのような足音が、凄まじい速度で接近していた。
「ッ!? オレ達が来た方向だぞ!!」
「透子、大丈夫!?」
「あ〜……ごめん戦闘はま〜だ無理〜」
殺気を察知したハジメ達も即座に身構えた。スタンドを出そうとして頭痛が再発した透子は、モノリスの残骸辺りまで撤退する。
足音の主は門のすぐ前まで迫り、体当たりで扉を砕こうとしているようだ。
門の強度的に、後数秒もせずに侵入してくるだろう。
「『レディステディゴー』ッ!!」
ハジメはスタンドによる簡易銃を束ね、襲撃に備えた。
門を打ち破り、出現したのは巨大な四足獣。ハジメと透子にも見覚えがある。サンタナ――いや、あの体色は通常のベヒーモスだ。
セットしていた簡易銃を一斉に放ち、捻れた二本角を持つ頭部を狙い撃つ。
タタタタタッ、という軽い発砲音と反して、集束された弾丸は巨大な獣の頭部を容易く粉砕した。
「よしッ!!」
「油断するな、ハジメ!!
「へっ!?」
ハジメに忠告を入れながら、ドッピオが一抱えもある岩石を頭部を失ったベヒーモスへと投げつける。
すでに骸かと思われたベヒーモスだったが、その腰の当たりで皮膚が裂け、先端が三本爪となった触腕が突き出して飛んできた岩石を殴り返した。
触腕はさらにもう一本出現して、無骨なベヒーモスを翼のように彩った。皮膚の無い、筋肉繊維が剥き出しのおどろおどろしい剛腕が力任せに地面を叩く。
そして吹き飛ばされた頭部の奥からも、肉をかき分けて新たな頭部が姿を表す。夥しい血液とともに這い出したのは、人間の上半身だった。
噴き出す触腕と同じく皮膚のない、筋肉剥き出しな上にサイズもベヒーモスの胴体に合わせて大型化していたが……そいつは真っ直ぐにハジメを睨むや、迷宮全体を震わせ咆哮を挙げた。
『見ツケタゼぇぇぇ……南雲ぉぉぉぉぉーっ!!』
「……うっそあれ、檜山じゃあね〜か……」
「檜山ァ!? うそぉーっ!!」
声と顔から透子は気付いたが、ハジメにはもう、檜山と言われても判別できないほどに、元クラスメイトは完璧な化け物へと成り果てていた。
吸血能力と、肉を食べての技能吸収の親和性よ!
しつこいぐらいの檜山ですが、このまま迷宮のボスとして居座ります。
ちなみにモデルはバイオ2のGとバイオ3のネメシスです。
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない