ありふれたスタンド使い達   作:サイデリア

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 地上組の話ですが、場面は地下です。


大迷宮の雑な攻略

 ハジメ達がオルクス大迷宮の地下150階(推定)にて、ユエをパーティに加えて出発したのに少し遅れて。

『表の』オルクス大迷宮・()()()()()()に、仗助達を中心とした選抜攻略隊が到達したのだった。

 なお、別に人類初の偉業でも何でも無く、たま〜に現れるやたらと凄味のある軍人や冒険者がちょくちょく攻略している。シュトロハイムやワムウ皇帝がそれだ。

 

 そしてせっかくたどり着いた地下100階だったが、そこは凄まじい水量の地下河川が轟々と流れる以外に何もない、殺風景な空間だった。

 

「なンもねーっすねェ。フツー迷宮の最深部っていやー、お宝とかドラゴンみてーな大ボスがいるって相場が決まってるもんすけど」

「だから期待するなと言っただろう、東方! このシュトロハイムもかつて同じ思いを味わったのだ。全然懐かしくもないがな!」

「ど、どうしてそんなに余裕なんだ、こいつら……」

 

 仗助とシュトロハイムがやいのやいのと言い合う横で、龍太郎が肩で息をしてぐったりしていた。

 別に龍太郎の体力が二人に劣っていたのではない。シュトロハイムはビームやら徹甲弾を(サイボーグでもないのに)体から射出し、仗助はスタンドバトルがメインなので肉体的な消耗が少ないだけだ。精神的にはどちらもそれなりに疲弊している。

 龍太郎の過度な疲労は、切り込み隊長として常に最前線で戦い続けてきたからだ。仗助がいるからと治癒師を抜いた結果、行き倒れ寸前まで疲労が蓄積しているのだった。

 

「でも……これなら俺だって光輝の代わりになれるだろ?」

 

 汗だくの暑苦しい笑顔なのに、そう言って笑う龍太郎の顔は晴れやかだった。

 ほとんどのクラスメイトが光輝を見限った中、龍太郎は唯一の例外だった。

 

「俺はずっと光輝の後ろを歩くだけだった。あいつは頭もいいし、決断力もあるから、あいつに着いていけば間違いなかったからな。

 けど、今のあいつは……これまで信じてきたものがひっくり返って、動けなくなってしまった。だからほんのちょっとでも与えてやりてえんだ、生きる希望ってやつをよぉ!」

 

 などと一人で盛り上がっている龍太郎だが、意外にも億泰が彼に共感を示したのだ。

 

「わかる……わかるぜ、坂上。オレも昔は兄貴に付いていくだけだったから」

「虹村……」

「オレも手を貸すぜ! なにすりゃあいいのかわかんねーけど、きっとお前の心意気は天乃河にも伝わるぜ!」

「ありがとう、虹村! 俺も何をしたらいいのか全然考えてないけど、とりあえず戦えないあいつの分まで頑張ってみるぜ!」

 

 といった具合で、億泰と龍太郎の間に新たな友情が芽生えたのだった。

 

「青春だね〜。ジョジョにはああいうの、ないの?」

「うおっ!? 谷口、いつの間に!?」

 

 あーだこーだ言い合っていた仗助とシュトロハイムの間に、忽然と姿を現したのは谷口鈴。選抜チームでは康一と並ぶ小柄(ディフォルメ成分含む)なムードメーカーだ。

 独特なペースを持ち、女性陣に変なアダ名を付けたりセクハラを働いたりという変わり種だ。例外的に男子の中では仗助にだけアダ名を付けて呼んでいる。

 だが、最下層までの強行軍の中で天職・結界師としての才能が完全に開花し、敵を結界で挟み潰す、結界の内側で爆発を起こして対象を消滅させるなど、やたら攻撃的な能力を身に着けていった。突然出現したように見えたのも、隠遁結界の気配遮断によるものだ。

 

「だんだんとスタンド使いみたいになってきたな、谷口」

「おお! それじゃあ、ジョジョや虹村くんみたいなマッシブなの出せるかな? まだボヤーってしてるけど、目に魔力を集中させればスタンド視えるからね! 鈴の覚醒も近い!」

 

 なぜだか鈴は、スタンドについて異常とも呼べる興味と執着を見せていた。悪意や策略の気配こそ無いが、好奇心に正直で一直線な気質は、あの岸辺露伴に通じるものがある。

 

(『弓と矢』について知ったら、面白半分で自分に刺しそうだな、こいつ……)

 

 仗助の危惧するところに、他のスタンド使いも一様に同意するのだった。

 

 しかし、鈴ほどではないがスタンドに興味津々なのは、園部優花と八重樫雫も同じだった。

 彼女達は、地下河川の川底を探索しようとスタンドを駆使する香織と康一を、穴が空くんじゃあないかというほど熱心に見つめていた。

 あまりにも力強く凝視された康一は、危うくエコーズ・ACT1の操作をミスりそうになった。

 

「ちょっと園部。何を康一くんにガン飛ばしてんのよ」

「ひぇ……っ!? ちちち違いますよ山岸さん! 目に魔力を集中させるから、目つきが悪くなってるだけですってば!!」

「ま、まあまあ由花子さん。園部さんは一生懸命過ぎるだけだよ」

 

 当然のように由花子から恫喝される優花だが、彼女も鈴と同じくスタンドを強く求めている。何故なら彼女が敬愛する、畑中愛子もスタンド使いだからだ。

 憧れの人と同じ能力が欲しい……というミーハーな理由が第一なのはともかく、彼女も投術師として格段に戦闘力を上げた他、「投術」という部分を拡大解釈して全長8メートルものゴーレムに一本背負いを仕掛けるなど、順当にバグりつつある逸材だ。

 もう一人の雫は……もうちょっと事情が異なっていた。

 

『どうだ、雫! こいつらのスタンドの姿が視えるか?』

「ぼんやりと、だけど。集中してればなんとか……」

『焦る必要はない、雫。お前にはこの「妖刀アヌビス」が憑いているのだからな。すでにそんじょそこらの使い手では相手にならないほどの実力が身についているはずだ』

「それは君の能力あってだ、アヌビス。私は飽くまでも自分の技術力を上げたいんだ」

 

 一見すると独り言だが、雫の会話相手は腰に差した刀――もっといえば、刀に宿った犬頭の精霊だか悪霊だ。スタンド使いは幽霊を認識できるので、康一と香織にもアヌビスの声は聞こえている。

 元は光輝の聖剣や龍太郎の手甲具足と同様に国王から下賜されたものだったが、迷宮へ再突入して戦闘をこなす内に突如として覚醒したのだ。

 アヌビスは雫に実戦的な剣術を授け、また物質を透過して『斬りたいものだけを斬る』能力を発揮したが……飽くまで自分の実力で戦いたいという雫の意を汲んで、今はアドバイスに留めているそうだ。

 

「やっぱり、ここにもハジメと透子のいた痕跡は無い。やっぱり65階の奈落の底は、全然違う場所に繋がっていたのかも」

 

 戻ってきた偵察用の眼球ごとスタンドを引っ込めた香織が、急流を見つめて呟いた。真横でされていた会話に一切興味を示していない。

 

「可能性があるとしたら、この川の先……」

「飛び込まないでよ、香織さん!?」

「心配無用よ、康一くん。もうそこまで焦ってない。ハジメと透子を信じるって決めたから」

 

 微笑み返す香織だが、その表情はどこか虚ろである。当然だが迷宮踏破の疲れではなく、ハジメを想っての心労のせいだ。

 この女の頭の中は95パーセントがハジメで占められており、残りの5パーセントでそれ以外を処理している。出会ってから今日までの間、どんなに長くても一週間以上と離れていた経験が無いのもあって、色々と機能不全に陥っているのだ。

 そのポンコツっぷりは、自作したハジメぬいぐるみが肌身から離せず、迷宮にまで持ち込むほどだった。

 

「ハジメ……元気してるのかしら? ちゃんと食べてる? 凍えて眠れなかったりしない? ソワソワソワソワ」

 

 口に出すほどソワソワしている香織だが、迷宮突入時からずっとこうなので、雫もいい加減に慣れてきた。

 

「げ、元気だしてよ香織。南雲くんも泉谷さんも、きっと無事よ。しぶとそうだし」

「うん。そこはもう気にしてない。ハジメの能力って応用力すごいから、遭難とか緊急時には滅法強いのよ。透子も透子でちゃっかりしてるから、上手いこと生きてるし、今も出口に向かって行動してるって確信してるの」

 

 つらつらと早口になりながら、何故か香織の鼻息が荒くなっていく。

 

「そ、それなら何が心配なのよ?」

 

 嫌な予感を感じながらも、付き合いの良い性格をしている雫は、うっかり踏み込んでしまう。

 質問を受けた瞬間、香織は煌々と輝いて視える瞳をクワッと見開いた。

 

「ハジメと透子がうっかり一線を超えてやしないかと」

「なんですって?」

「だってだって! こんな薄暗くて狭苦しい洞窟よ? 襲い来る魔物を倒しながら進むのってストレス溜まるじゃない! 人間ってストレス溜まると恋愛で解消しようとしたり、生命の危機で性欲が高まったりするのよ? 透子って中身あれだけどガワは綺麗でしょ? だから何かの拍子でムラムラ〜って来ちゃうって充分に考えられると思うの。大人しそうだけどあっちはすごいんだから、ハジメって」

 

 恋人の貞操を気にしつつも、うっとりと頬を染める香織は、ドン引きする余り無意識に後ずさりしていた雫の肩をガシっと掴んだ。なお、康一と由花子は巻き込まれないよう、とっくに仗助達の方へと避難している。アヌビスもダンマリを決め込んでいた。

 

「八重樫。あなたもし、あの年中夏バテしてるようなダル〜い雰囲気の透子が、弱りきった様子で『今だ〜けはこうさせて〜』って甘えてきたら、理性を保てる自信ある? 私は無いわ」

「そ、そうなの……っ、てか手ぇ離して――」

「まして男のハジメじゃあ……あれで内側には熱いの秘めてるハジメだったら『仗助みたいには出来ないけど、必ず君を守るよ』ぐらい言うわ。そしたら透子と言えども『クーデレ』の『ーデ』期ぐらいにはなっちゃう……そしたら……ッ!!」

「お、落ち着いて香織!? 南雲くん、一途なタイプ(だと思う)から、きっと泉谷さんとは何も――」

「そしたら二人が地上に戻った時、私ってばハジメと透子で両手に華じゃないかしら〜っ♡ どうしましょう、甲斐性みせないと、うふふふふっ♪」

「いや、そっちぃ!?」

 

 この後雫は、シュトロハイムが脱出のスクロールを使うまでの間ずっと、香織の理性崩壊した与太話を聞かされ続けるのであった。

 

 なお、選抜チームにはもう一人、影の薄い男がいるのだが……迷宮攻略中に彼が他のメンバーとの会話に参加することはついぞ無かった。

 また、彼が地下100階に落ちていた謎の(やじり)を興味本位から回収していたことにも、誰一人として気付くことは無かった。




 クラスメイトにも順調に強化、及び狂化フラグが立ちつつあります。
 香織のキャラが訳分からなくなってきた……。あ、ヒロインが百合だったりバイだったりしたら、それは完全に作者の趣味です。

オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。

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