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前回ハジメの放ったレーザーは、理系の友人によれば「放射能出そう」「そうじゃなくても使った人間が中性子で即死しそう」「6部の看守が使った隕石スタンドみたいな性質にすれば出来るんじゃね?」とのことでした。
掌に収まる石から発せられたレーザーは、迷宮の壁を一直線にどこまでも蒸発させた。
溶け出した溶岩流と、そこから噴き出す岩石蒸気も物ともしないユエは、レーザーの発生源まで走った。
「ハジメッ!!」
呼び掛けた声に返事が無い。ユエは出せる範囲に分身を出現させて拳の風圧で噴煙を吹き飛ばした。
後方ではドッピオが床を掘り返して溶岩流への防波堤を作っている。その後ろではさっきのレーザーを直視してしまった透子が立ったまま失神しているが、そのうち目が覚めるだろうから放置されていた。
なお透子のスタンドなら溶岩を固められそうだが、対象に触れなくては発動させられない為、イシキガあろうがどっちにしても今回は役に立たない。
「いた! ハジメ!」
ハジメは両手首を合わせて掌全体を前方へ突き出した態勢――かめはめ波の恰好で呆然と立ち尽くしていた。
透子と違って気を失っている訳ではなさそうだ。しかし自分の起こした破壊の痕跡に、理解が追いついていないように見受けられる。
床を半球状に削って、さらに真正面の壁まで真円型に溶かされている。まだ熱を持っている表面はツルツルに固まりつつあり、それに伴ってフロアを満たした蒸気も急速に鎮まっていった。
「ハジメ。生きてる? 目を開けたまま寝てる?」
「あ、う……ユエ、さん?」
「そう。こう見えてアダルトなユエ姉さん。あなたの名前は?」
「南雲ハジメ……だ、大丈夫です。ちゃんと正気でいま……うっ!?」
我に返った途端、ハジメは腹部を中心にして猛烈な激痛に襲われた。視線を下げれば、脇腹周辺がザックリ切れて、かなり派手に出血していた。
体調と気分的な二つの意味で血の気が引く。
「傷、見せて。処置してあげる」
「えっ!? あ、ちょっと!?」
ユエは素早くハジメを寝かせると、シャツを引き裂いて患部を露出させる。迷宮の道中で主にハジメが作成した消毒液や包帯まで準備していた。
「運がいい。出血は酷いけど傷自体は浅い。ただ石片が食い込んでるから、取り除く」
「素手で!?」
「スタンドが良いなら使うけど、精密動作性低いよ?」
「手でお願いしますっ!!」
「任せて。この白魚のような美しい指先で優しくシテあげる」
何故か品を作って妖しく微笑んだユエだったが……麻酔無しでの異物摘出の激痛は、戦闘による高揚感が途切れたハジメにとって気絶すら許されない地獄の苦痛であった。
「そっちじゃない、戻れーッ!!」
「うおっ!? き、急にどうした……?」
唐突に奇声を発して再起動した透子に、さすがのドッピオも驚かされた。
透子は周囲を見回し、「なんだ〜夢か」と全く起伏のない胸を撫で下ろした。
「光の中に〜時が視えた〜」
「本当に大丈夫か? 閃光で脳がやられたか?」
「クラクラすっけどわ〜たしは平気〜。それよかハジメは〜?」
ドッピオが顎で指した方では、
「はうぅっ!? ユエさん、もう少し優しく……くうぅぅっ!? そこは、駄目……僕もう……あうあ〜っ!?」
腹に指を突っ込まれたハジメがビクンビクンしていた。
「愉快なことになってるな〜」
「しなくてもいい戦いで重傷を負ったんだ。あれぐらいのペナルティはあって然るべきだろう」
「ハジメ印の消〜毒液、一番使ったの本人か〜」
「あっちはユエに任せればいい。オレ達はこっちだ」
「ん〜? こっち?」
どこかへ歩いていくドッピオを追いかけた透子は、壁に穿たれた穴の縁へとやって来た。
そこには……夏場のアスファルトにへばり付くガムのように、半ば溶け崩れた眼球が蠢いていたのである。
「まっさか……檜山か〜これ?」
『その……声は、泉谷、か……?』
「驚いたな〜おい。ま〜だ生きてんのか」
淡々とした口調過ぎて感情の表に出ない透子が、本当に檜山の生命力に驚愕しているのかはさておき。
もはや檜山だった名残は眼球一つ、それも再生するどころか今にも崩れて溶け落ちそうである。聞こえた声も掠れて細い。病床の人間が遺言でも伝えるかのようだ。
『……泉谷ァ……やっぱ南雲のヤツぁ……強ぇよなァ……』
だが、どこか吹っ切れた檜山の口振りがやけに爽やかで、そのあまりの違和感に透子は眉根を数ミクロン潜めた。
「お〜前、ハジメのこと嫌いだったんじゃあ〜ないのかよ?」
『大っ嫌いだぜェ……あ、あんなヤツ……! オレが欲しいもの何でも持ってて、オレに出来ない事を平然とやってのける……あいつと比べたら天乃河だってまだ可愛げがあるってもん……だぜ』
「拗らせたスト〜カ〜みたいな物言い〜だな」
『……そう、かもな。ひ、ヒャハ……ハ、は……』
カタカタと震えた眼球に亀裂が走る。どうやら本当に
『泉谷……消える前に伝えて、おく……』
「遺言か?」
『アァ……オレに石仮面を被せたのは中村だ。知ってるだろ、中村恵理……』
「中村〜って……よく鈴と一緒にいた〜あいつ?」
あまり接点の無い相手だが、一応はクラスメイトだ。
鈴と同程度には元気な娘だが、いつも無理して笑っている……そんな印象を透子は持っており、実のところかなり苦手な娘だ。関わると不幸の道連れにされそうなのが怖い。
黙って話を聞く透子とドッピオに、もう相手の姿も視えていない様子の檜山は話し続けた。
『あいつもトータスの誰かに仮面をもらったようだし……オレを変異させた時点でもう、あいつも人間じゃあ……なかった。黒幕までは分からねえ、がな……』
「利用ぉ〜されたな」
『そうさァ……オレぁ捨て駒に過ぎねえ……中村は協力すればカオリをオレのものに出来るとか抜かしてたが、どうせオレを釣るエサだったんだ……ろうぜ』
とうとう眼球が二つに割れて、端から灰と化して風化し始めた。
『王国か、聖教教会の誰かは知らねえ……けど、お前の敵は案外と近くにいるかも、だぜ? あのシュトロハイムだって……怪しい、もんだ……』
「檜山、お前〜……」
『へへへっ。マジになるって、悪くねえな……せいぜい、
最期の言葉は伝えたかった本人に届くことも無く、異世界からやって来た檜山大介だった存在は、トータスの地下迷宮深くにて生涯を閉じたのだった。
「中村……それに、石仮面を渡したトータス人か……」
だが、檜山に対して特別思い入れの無かった透子は、即座に頭を切り替えていた。この先、必要なければ二度と思い出す事もないだろう。
「トーコ。オレには事情がさっぱりだが、どうやら君の戦いは地上に出てからが本番らしいな」
「他人事みたいに言うけど〜多分、ドッピオも巻き込まれるぞ〜」
「それはそうだろうな。オレも異世界からの召喚組だ。カーズとやらの思惑が絡んでいるやも……いや、十中八九絡んでいるだろう」
「下手〜したら迷宮で〜の行動も全て筒抜けか〜、おい。こりゃあキツイぜ〜」
そうこうするうちに、ハジメとユエの方も終わったらしい。腹に包帯を巻かれ、白眼で気を失ったハジメを背負ったユエが、妙にツヤツヤした笑顔でやって来る。
「ハジメはどんな具合だ?」
「愉しかった……間違い。縫合して消毒したから、もう大丈夫かと思う」
「…………。そうか」
笑顔の理由については、深く聞かないドッピオだった。
放置されていたフロア最奥の大扉前に、一行は立った。
「これでまた下り階段だったら泣けるな」
「怖〜いこと言うな〜、ドッピオ」
「そうだった場合、トーコとハジメを抱えて地の底までスタンドで掘り進む」
そうして最後の扉を開いた先は、予想外の光景だった。
地下だと言うのに陽の光に照らされ、地面には草花が生え、小川までが流れていた。
フロアの奥には、中世どころか近世英国風の立派な屋敷が建ち、立派な門構えの内側にはこれまた見事な庭が広がっている。
外にワープしたかと思ったが、日光の正体は天井から吊るされた人工太陽的な装置だった。まだ地下にいるのは確からしい。
「見ろ、畑まであるぞ」
ドッピオが指さした先には、小川に隣接するようにそこそこ大きな畑があった。作物は植えられおらず、手入れもされていないのか雑草だらけだったが。
その気になれば、ここに自給自足で住めそうな環境が整っていた。
3人は警戒を緩めずに、ひとまず屋敷へと向かった。ハジメを休めせる場所が無いかとの考えだったが、門を潜ったその瞬間。庭の植え込みから大きな影が飛び出し、3人へと向かって来た。
「バウッ!」
「おわっ!? い、犬ぅ!?」
飛び掛かられたユエがスタンドを出さなかったのは、それが魔物でもなんでもない、白地に黒いブチ模様の入った普通の犬だったからだ。
ブチ犬は長い尻尾をブンブン振るい、3人の周りをグルグル走り回る。
「バウッ!」
そしてもう一回鳴いて、屋敷の方へと走って行った。
「何なんだ、あの犬は?」
「ただの犬……だった。大きいけど、犬……」
ブチ犬が屋敷に向かって吠えていると、やがて玄関を開けて大柄の青年が現れた。
「どうしたんだい、ダニー。随分と機嫌がいいね――おや?」
穏やかな口調でブチ犬へ語りかけた青年は、身長195センチ、体重も105キロはありそうな筋骨隆々の巨漢だった。ドッピオのようなスタイリッシュな細マッチョではなく、シュトロハイム系統のムッキムキゴリマッチョだ。
青年は3人――気を失っているハジメ含めた4人に気がつくと、思わず会釈を返したくなるような、爽やかな微笑みで出迎えた。
「よくここまで来てくれたね。僕はジョナサン・ジョースター。このオルクス大迷宮を始めとする7つの迷宮を創った『解放者』さ。もっとも、後世には『反逆者』として伝わってるみたいだけどね」
檜山はこれで本当に死亡です。予想外にしつこかった……。
いっそのことジャギ様でもインストールさせておけば、もうちょっと作劇も楽だったかも。
おまけ。
レーザーの名前を考えよう、と言われたハジメは、いつか自作した銃に付けようと温めていた名前を引っ張りだした。
ハジメ「……ど、ドンナーシュラーク」
透子「……それ、どんな〜意味?」
ドッピオ「独語で『雷の打撃』だな。だがなぜイタリア語にしない? 『ティロ・フィナーレ』とかどうだ?」
ハジメ「うるさいな! 好きなんだよ、ドイツ語!!」
透子「スタ〜ンドは英語で『よ〜いドン』なのに?」
ハジメ「もういいだろ!?」
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない