「起立! ありがとうございました!」
泉谷透子の号令が、昼休みの開始を告げた。
早速鞄から二人分のお弁当を取り出した香織が、凄まじい勢いでハジメの元へ参上する。
「ハジメ」
「うん。仗助達はどうするの?」
「ああ! オレらも今日はベントーあんだよ。なァ、億泰?」
「おう! 山岸〜!」
「はぁ。ちょっと待ちなさい」
「失礼しま〜す。由花子さん、仗助くん! 億泰くん!」
途端に賑わい出す教室で、ハジメの周囲は特に人が集まる。隣のクラスから康一もやって来て、六人での昼食だ。
四人分の弁当箱を持ってきた由花子は、当然のように康一の隣をキープしつつ、仗助と億泰の前にも弁当を差し出した。
「ほら、仗助に億泰の分よ。康一くんに感謝して食べること」
「おっしゃーッ! サンキュー、康一! 由花子!」
「おお! これが康一がいつも食べてる弁当か……ホカベンの幕の内より豪華なんじゃあねえか?」
「市販品と一緒にしないでくれるッ!? 特別に、康一くんと同じ中身にしてあげてるんだからねッ!」
なんでも今日は、高校生離れした腕前を誇る由花子の手料理を味わってみたいと(康一に)頼み込んだ仗助達に、由花子の手作り弁当が振る舞われるらしい。
この女、根本的に康一以外がどうでもいいと考えてるものの、康一が大切にしている相手とはそこそこ上手く交流している。仗助らにもバレンタインデーに義理チョコを配る程度には気に掛けていた。
なお、そんな由花子と似たような思考回路をし、ハジメファーストな香織もまた、当然のようにハジメには毎日手作り弁当である。
ハジメや康一に対してヘイトを向ける男子も多いが、他でもない香織と由花子が鬼より怖いので、報復に出る猛者などほぼいない。
「ねえ」
そこへもう一人、自分の弁当箱を持った泉谷透子がやって来た。
透子は、真ん中分けにしたセミロングの亜麻色髪と、赤いセルのハーフリム眼鏡ぐらいしか特徴の無い、表情の乏しい少女である。
同じクラスに香織、由花子、さらに同レベルな美少女の八重樫雫がいるせいで話題にのぼり難いが、泉谷もかなり洗練された美少女だった。
普段は光輝、坂上龍太郎、雫のグループに入っているが、彼らとも一歩引いた立ち位置にいるようで、ちょくちょく他のグループにも混ざっている。
また彼女もスタンド使いで、本人は「最弱ヨワヨワスタンド」と自嘲しているが、仲間からは便利な能力だと思われている。
「わ〜たしもこっちで食べて、い〜?」
「あれ? 今日はこっちか」
「今朝の一件で、天之河がず〜っと不機嫌。坂上と八重樫以外は近づかない方〜が無難」
機嫌が悪い光輝は、やたら説教臭くなる。箸使い一つにいちいち高説を垂れるようなのと、一緒に食べたくはないのだろう。
ちょうど香織と由花子の間に収まった透子は、自分の弁当箱を開いて黙々と食べ始めた。
「ウメェーッ!! こりゃあたまげたぜ! トニオさんとこの超人的な美味さじゃあなくって、家庭的な味っつーのかなァ!? 毎日食べても飽きない、こういうのが『お袋の味』ってんですかーッ!?」
などと、この中でも実は家庭環境が断トツで壊滅している――でも今は変わり果てた父親と風変わりなペットとで楽しく暮らしている億泰が、オーバーリアクションで由花子の手料理を褒める。
由花子も億泰の評価に満更でもないようだが、どちらかというと彼女を褒められて誇らしい康一の姿に喜んでいるようだった。
「そんなに美味しい?」
興味を引かれた透子だが、ケチな億泰は弁当箱ごと背を向けて、一口も渡さないつもりのようだ。
見かねた仗助から譲渡された唐揚げを一口かじる。数秒もしない内に、透子は無表情なままガックリ肩を落とした。
「完敗だ……」
「お、大げさだな、おィ……」
などと和気あいあいとしていた時間は、唐突に終わりを告げる。
「な、なんだ!?」
突然に頓狂な声を上げた光輝に、教室中の注目が集まった。
彼の足元に、光で描かれた紋様が出現している。
その光が一瞬にして教室全体に広がった。
「まさかッ!?」
「スタンド!!」
ハジメや仗助達が、一斉に自分のスタンドを呼び出す……が、事態を把握することができない。
「みんな! 外に――」
愛子先生の悲鳴に近い声を最後に、ぶどう丘高校2年1組にいた全生徒は、地球上から消失した。
後に集団神隠し事件と称される、奇妙な出来事である――。
視界を白く塗りつぶす強烈な光が収まると、ハジメ達はだだっ広い石造りのホールで立ち尽くしていた。
他のクラスメイト……あの瞬間に教室にいた全員が、このホールにいるらしい。
「『エコーズ・ACT1』ッ!!」
即座に康一が、一番射程距離の長いACT1を頭上へ飛ばした。
作りは簡素だが広く清廉な雰囲気で、何となくだが西洋の教会を思わせる。
「こりゃあ……ワープか? それとも幻覚か?」
「分からねえ……けど、あんまり良くねえ状況だな……!」
仗助のクレイジー・ダイヤモンドと億泰のザ・ハンドが、背中合わせに周囲を警戒する。
「香織!」
「任せて。『モーンフル・パシュート』!」
香織もまた、傍らに自らの分身たる異形の
金属製のレールが象った人型フレームの内側に、無数の眼球が敷き詰められた、うっかり直視すると正気が削られかねないグロテスクなスタンド――モーンフル・パシュート。
合計17個の眼球は全て、香織と感覚を共有しており、360度を見回すことができるのである。
「! 誰かいるわ」
「囲まれてる」
香織が確認するまでもなかった。
クラスメイト全員をぐるりと囲むのは、中世ヨーロッパ風の宗教服を来た一団だ。
中でも一番豪華な衣装に身を包んだ老年の男性は、一見すると人が良さそうだが裏のある微笑みで、信用ならない雰囲気を醸し出している。
系統こそ違うが、仗助はなんとなく以前に遭遇したスタンド使いと似た雰囲気を感じ取る。
(だが、スタンド使いじゃあねーみてえだな。香織のスタンドを見てノーリアクションなんざ、あの承太郎さんぐらいの胆力がないなら不可能だ!)
無数の目玉が別々に蠢くモーンフル・パシュートを直視した知り合いのスタンド使いは、軒並み肝を潰すか腰を抜かしている。岸辺露伴でさえ、初見では悲鳴を上げたのだ。
「ようこそ、トータスへ。勇者様と、そのご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位を拝命していますイシュタル・ランゴバルド。以後、お見知りおきを」
恭しく頭を垂れた、イシュタルと名乗る老人は、スタンドの方には見向きもしない。それが演技であるなら、かなりのタヌキである。
「仗助」
何やら光輝達を中心にイシュタルの話に皆が聞き入りだした中で、透子が小声で耳打ちした。
「あァ、分かってるぜ。ひとまずジイさんの話は聞いておくが、いざとなったらオレと億泰が動く」
「でもよォ、この状況はマズイぜ!? ここがどこかも分からない、戦えねークラスメイトは大勢いる! こんな状況は初体験だッ」
億泰の危惧するところは最もだ。だからこそ、全員の力を合わせるのである。
「じゃァ康一と香織とで周囲を警戒して、いざとなったら由花子。お前のスタンドでみんなを守ってくれ」
「どうして仗助が私に命令するの!?」
「まあまあ、由花子さん。ボクからもお願いだよ」
「分かったわ、康一くん。命に替えてもみんなを守ってみせる」
「急に主人公っぽいこと言い出した……」
手のひら返しの速さに呆れるハジメだったが、彼にも隣から熱視線が注がれている。
「……香織。みんなのことをお願い」
「うん♡」
こうして微妙にダルい雰囲気になりつつも、スタンド使い一行はゾロゾロとイシュタルに続いて移動を始めたクラスメイトを追い駆けた。
香織のスタンドには別枠の能力があるので、解説はそっちを出してから。
名前の由来は「バイオハザードRE:2」の楽曲で、G第三形態戦のBGMです。
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない