大聖堂から、これまただだっ広い来賓用の広間に通され、クラスメイト全員が座ってもまだ余裕があるテーブルに着いた一行は、盛大な持て成しを受けた。
テーブルの上に並べられた豪華な料理の数々。見目麗しいメイドによる給仕。大半の生徒は、この未知の刺激に夢中となった。
一方、スタンド使いグループは冷徹なまでに落ち着いている。
「ハジメ」
「うん。『レディステディゴー』」
ハジメのスタンド『レディステディゴー』は、左右三本、合計六本の腕型スタンドだ。
皮膚が青白く、親指、中指、小指にデザインが異なる石の指輪を嵌めてる以外は外見に差異がない。
スタンドはテーブルの食べ物や、仗助達の前に置かれたグラスへ次々に触れていく。その能力は、触れた物体を構成する物質の把握と掌握だ。最大で左右の掌で包めるサイズまで、しかも構成情報は本人の知識に完全依存とはいえ、これ以上無い毒見役といえる。
なお、ハジメは能力の精度向上の為に、香織と由花子によるスパルタ教育で大学院生並みの知識を身に着けさせられている。バリバリの文系なのに。
「……うん。僕達の知ってる食べ物と、ほとんど同じだ。飲み物もただのジュース、毒でもアルコールでもないよ」
「それでも食べる気しねェけどな。さっきの由花子のベントーのがうまそうだったぜ」
「褒めてももう作らないわよ」
こうしている間にも、康一と香織は周囲の警戒を続けていた。
「康一君、なにか異常は見つかった?」
「う〜ん。エコーズの射程範囲には、そんなに人がいないみたいだ」
「私の方も空振りだわ。もう少し『眼の数』を増やしてみようかしら」
香織の『モーンフル・パシュート』。グロテスクな外見だが、17個の目玉は飾りではない。それぞれ独立させた遠隔自動操縦型のスタンドとして機能させられる。
ルールは『眼球一つにつきターゲット一つ、簡単な命令を一つ与える』こと。
自動操縦だが感覚の共有は続行され、遠くに飛ばして景色を観ることも可能だが……万が一破壊された場合、ダメージもきっちりフィードバックされてしまう。
ついでに複雑な命令も出来ない上に取り消しも変更も出来ないなど小回りが利かない不便さもある。
今は「広間の外を一周してこい」という命令で2つほど飛ばしているが、スタンドが壁をすり抜けられなかったらどこかに引っ掛かって自力で回収しなければならないところだ。
「さて皆さん。混乱している方もいらっしゃるようですので、まずはなぜ、皆様がこのトータスへ喚ばれたかお話します。全ては、偉大なるエヒト神のお導きなのです」
大仰にイシュタルが手を差し向けた先には、広間を見下ろすよう掲げられた巨大な壁画があった。
光り輝く剣を掲げ、長い黒髪と額に
その姿に本能的とも呼べる危機感を察知して、透子は無意識に拳を固くしていた。
「……つまりよォ、どういうことだ?」
イシュタルの長い上に自己陶酔の入った話が終わると、億泰はすぐにハジメに尋ねた。
「つまり、僕達はエヒトって神様がこの世界の人間達を救うために寄越した救世主なんだって」
「救世主ぅ〜? 何から救うんだ? スタンド使いかァ?」
「君、どこから聞いてなかったの?」
さすがに呆れたハジメだが、整理した内容を一から説明する。
「ここは地球とは違う異世界で、人間と魔人族が長く争ってたんだって。でも、魔人族が魔物を使役する術を身に着けて情勢が悪化。そこに、人間族の救世主として――」
「オレ達が喚ばれたのか?」
「いーや。どうやら本命は天之河一人で、他はおまけらしい」
仗助の冷めた視線の先では、大本命の勇者様が握りしめた拳を見つめている。ありゃヤバいな、と危機感を覚える仗助だった。
「じゃあ、オレらはもう帰っていいんじゃあないか?」
「そうもいかないみたい。ほら」
ハジメに促された億泰が顔を向けると、転移に巻き込まれた中で唯一の大人である愛子先生が、子供に戦争参加を要求するイシュタルに猛抗議の真っ最中だった。
しかし愛子の小柄が災いして迫力が足りず、しかも召喚はエヒト神によるものなので帰還させる方法が無いと告げられて押し黙ってしまう。
「お、オレたち帰れねェのかよ!?」
「みたいだな。チッ、勝手抜かしてやがる」
苛立ちを口にしたのは仗助だけだが、全員思っていることは同じだ。
そこへ声を上げたのは、尊大な勇者様だった。
「みんな、聞いてくれ!」
光輝は積極的な戦争参加を表明し、無駄にカリスマ性のある光輝に唯々諾々とクラスメイト達も賛同し始めた。
良くない流れだ。そう判断した中で、真っ先に声を上げたのは――。
「ばっかじゃないの?」
白崎香織だった。
「香織、君は反対なのふぐっ!?」
何か喋ろうとした光輝の口の中に、モーンフル・パシュートの目玉が飛び込んで、強引に黙らせる。命令は『自分達が話し終わるまで黙らせて』だった。
「さっきからそっちの都合ばかり。乗せられる天之河も、何も考えずに賛同するあなた達も、少しは考えて喋ってくれる?」
ツカツカと大股でイシュタルへ詰め寄った香織。堂々と腕を組んだ立ち姿は見惚れるほどカッコいいが、傍らに立つ金属フレームの怪人は拳を振り被っていた。
「うぐあっ!?」
マズイぜ、とハジメ達が止める間もなく、モーンフル・パシュートがイシュタルの顔面を思いっきりぶん殴った。
パワーは人間並みのスタンドだが、質感が完全に金属のそれなので、イシュタルは金属バットで殴られたのと大差ない被害を受ける。
「ぎゃァァァァ〜っ!! じ、仗助くぅ〜〜〜ん!!」
「お、おう! おい香織、殺す気かよッ!?」
駆け付けた仗助がチャッチャと治したものの、イシュタルは完全に気を失っていた。
控えていた僧兵が一斉に殺気立つも、香織がギロリと一瞥しただけで大人しくなる。
「……愛子先生」
「は、はい!」
「私達は独自に帰還方法を探します。戦争したい人は、勝手にどうぞ」
言いながら、スタンドの眼球が一つエヒト壁画を睨んだ。
「あ! 香織、駄目だ!」
ハジメの静止も虚しく、眼球が猛スピードで壁画の顔の部分へ突撃。着弾と同時に大爆発を起こした。
広間全体が揺れるほどの衝撃の中、ハジメは一目散に香織へ向かう。
「何してるんだ、香織!?」
「あの顔、ムカつくな〜って」
「そんなことより……ああ、傷になってる! 爆撃は止めてねって前にも言ったじゃないか! 仗助〜!」
血が滴ってる香織の右腕。前腕の辺り皮膚が裂けている。大きな怪我ではないが、場所が悪くて出血が酷い。
眼球は命令遂行中は遠隔自動操縦だが、感覚が繋がってる本体にしっかりダメージが返るのだ。素体である金属フレームの人型が損傷しない限り、例え全ての眼球が破壊されても致命傷には至らない。かといって、気軽に自爆させられる程度の軽症でもない。
「まったくもう! 仗助がいるからって、自分から怪我をするのは止めてね? 大切な恋人が傷ついて平気でいられるわけないじゃないか!」
仗助に治された腕に傷跡も無いと確認したハジメが、珍しく語気を荒くして香織を叱りだす。
クラスメイト達が軒並み怯えたりハジメを嫉妬で睨む中、仗助は場を閉じようと愛子先生に呼び掛けた。
「あ〜っと、先生? 今香織が言ったのは一応、限りなくオレらの総意ではあるんすけどぉ〜……そういうことなんで」
「は、はぁ……あなた達なら構いませんけど……」
空気がグダグダしてきたところでイシュタルが目を覚ましたものの、顔面が消し飛んだエヒトの壁画に気づくと、再び泡を吹いて気を失うのだった。
光輝の演説とかはカット。
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない