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檜山大介は心の底から苛ついていた。
普段から彼を苛つかせる要素は多々ある。正義マンな天之河光輝とか、古臭い髪型してるのに女子にモテる東方仗助とか。
だが何よりも、檜山の惚れてる白崎香織が、ひと目も憚らず陰キャ代表みたいな南雲ハジメとイチャイチャしていることが許せない。
同レベルの美女の山岸由花子もチビの広瀬康一と付き合っているが、由花子がヤバいヤツなのは周知の事実だし、康一にも「やる時はやる」雰囲気がある。むしろ康一にちょっかいを出そうとしたが睨み返され、微動だに出来ないほど威圧されて以来、檜山は康一が苦手だった。
それはそれとして。とにかく檜山はハジメが嫌いだった。前世で何かあったんじゃないかというぐらいに嫌いだ。
アニメ好きのオタクの分際で美人の彼女がいて、成績も香織のスパルタ教育のお陰でトップレベル。スポーツも体力面ならやっぱりトップレベル。顔は……光輝や仗助ほどではないが、地味だけど意外と可愛いなんて一部の女子が騒いでいる。
「あ、あんなクソ底辺のオタク野郎が……この間も
格下と思っているハジメに負けるハズがないのに……! 自分達が男同士でむさ苦しい青春を過ごす中、香織と二人で図書館だったり街に出たりデート三昧。互いの家にお泊りもしているらしい。
(許せねえ! あんないいスケとイチャイチャと……ッ!! あ、あのカオリの巨乳を下等なオタク野郎風情が好き勝手に……ぬオオオオオオッ!!)
「檜山のヤツ、初日だってのに飛ばすなー」
「この世界を守ろうって真剣なんだ。俺も負けてられないな!」
光輝と龍太郎が勝手な解釈をして勝手に発奮しているが、檜山の殺気立った視線には気づかないらしい。
「ゼェ、ゼェ……と、ところで億泰よォ……!」
「話し掛けるな、仗助ェ……! オレもう体力が……ッ!」
「むっ! ジョースケとオクヤス、無駄口を叩く余裕があるようだな! ランニングもう十周追加だッ!!」
シュトロハイムの容赦のない激に、朝から走らされっぱなしのスタンド使い8人(愛子先生含む)が一斉にゲンナリする。仗助と億泰に批難の視線が集中した。
レベルやらステータスのパラメータがおかしい彼らに対し、シュトロハイムは基礎訓練のみを命じた。
「私の見たところ、君達にはすでに身に着けた戦法があるだろう。スタンド使い……というらしいが、我々には存在しない概念だ」
という訳で、せいぜいが運動して体力を付ける以上は訓練のしようがないらしい。
「も、もう無理ぃ……はあ、はあ……」
一番体力の無い愛子先生が、フラフラコースを外れていく。その先には檜山の姿が。
「ん?」
今はハジメではなく、走る度に大きく弾む香織の胸ばかり見ていた檜山は、愛子先生が射程範囲に近づくまで全く気付かなかった。
「『グリーングリーンズ』! こいつの生命力を私に移せッ!!」
愛子先生から飛び出した、名前に反して全身ピンク色の細身で顔面部分に穴の空いたスタンドが、檜山から何かを吸い取って本体へ還元していく。
「ギャァァァァァァッ!!」
目を回して倒れる檜山の一方で、顔色が土気色になるほどバテていた愛子先生の活力が蘇った。
スタンド『グリーングリーンズ』の能力は、生命力の移送だ。自分から他者、他者から自分、他者から他者と自由に移すことが出来る。
能力に目覚めた当初は制御が出来ず、自宅の家庭菜園や鉢植えに自分の生命力を無意識に分けて異常成長させてしまっていた。
自宅内が軽いジャングルになるわ、生命力枯渇で体調を崩すわと散々な目に遭ったが、透子が暴走していたスタンド像に気付いたことで制御方法を身に着けたのだった。
なお近距離パワー型である。
「ふうー」
「いや、『ふうー』じゃねえだろ!?」
「あんた昨日、香織にスタンド乱用すんなってセッキョーしたばっかじゃあねえか!」
仗助&億泰のダブルツッコミに、愛子先生がテヘペロ♪ と可愛らしく微笑むのだった。
なお、転がった檜山は回復魔法も受け付けない重度の疲労状態だった為、医務室へと担ぎ込まれた。なぜかその際、うわ言で何度も「南雲」の名前を出したので、それを聞いた女子の間でホモ疑惑が広まったのだった。
あれから一週間。勇者天之河を中心に、レベルアップして超人的な力を身に着けた者が現れだした。
特に光輝は目覚ましい成長を見せており、国王から下賜された聖剣も相まって名実共に勇者として覚醒しつつあった。
「ふむ。天之河光輝、異世界から来た民間人と侮っていたが……どうやら素質は本物のようだな」
と、シュトロハイムも一定の評価を下している。
そこでもう一歩踏み込んだ訓練が実地されることとなった。
その日の朝、いつものようにクラスメイト達が訓練場に集合すると、すでにシュトロハイムと騎士達の準備は整っていた。
訓練場の中央には仮説された木製の台があった。その上で両腕と足を縛られ、目隠しと猿轡をされた男が震えながら座らされている。
「天之河、剣を持て」
シュトロハイムの命令で聖剣を抜いた光輝が、縛られた男の前に立たされた。
「この男は先日、城下町の商家に押し入って経営者の老夫婦を殺害し、金品を奪った上に放火までした盗賊だ。すでに裁判で死刑が決定している」
「何ですって!?」
シュトロハイムの話に、光輝の表情に明確な怒りが表れる。人一倍強い正義感を持つ光輝にとって、凶悪な犯罪者というのは一番に許せない存在だった。
だが!
「天之河。この男の首を刎ねろ」
「……………………え?」
下された命令の意味を、光輝は最初、理解できなかった。
この男はなんと言った?
「聞こえなかったのか? お前が、この男の処刑を執行しろと言ったのだ。さあ、剣を取れ」
「ち、ちょっと待ってください!! 俺に……、人を殺せっていうんですか!?」
「その通りだ! お前に、この男を殺せと命令しているのだ!!」
何度聞いても理解が追いつかない光輝だが、シュトロハイムは捲し立てる。
「貴様ッ!! 我らハイリヒ王国の一員として魔人族との戦いに参加すると、国王陛下の前でした宣言は大法螺だったのかッ!!」
「ちがっ、違います!! 俺はこの国の……人々を守る為に戦うつもりです!」
「ならばこの男を斬れ! こいつは大罪人だッ!! 法的に死が命じられている身分だ!! お前が自分を勇者であると言うなら、正義の為に斬るべき相手を斬れッ!!」
「で、出来ませんッ!! ひ、人を殺すなんて俺には――ッ!!」
「このぶァカ者がァァァァァーッ!!」
光輝の能力値は、勇者だけあって非常に高い。全ステータスが3桁超えというのは、高くても70〜80というクラスメイトの中でもずば抜けていた。
その光輝が、シュトロハイムに顔面を殴られてふっ飛ばされたのだ。これには部下の騎士達や、仗助にハジメといったスタンド使いも驚かされる。
「これは命令しているのだッ!! 勇者といえども組織の中では一介の騎士ッ!! 上官の命令は絶対だァァァァ〜ッ!!」
「あ、う……あ……っ」
尻もちをついたまま、立ち上がることも出来ない光輝に、やがてシュトロハイムは愛想を尽かしたようにクラスメイト達へと振り返った。
「誰かッ! 我こそはと思う者、前に出ろ!」
当然、答えるものはいない。仗助達でさえ、シュトロハイムの凄味に気圧されていた。
「誰もいないのかッ!! 戦場では、大なり小なり他者の命を奪うことになる。魔人とて人間だ。人の形をして、意思を持ち、会話もできる。今のうちに慣れておく訓練だったのだが――」
「あのー」
失望したようなシュトロハイムが声量を落とした、その時だ。抑揚のない少女の声が、ようやく周りに伝わった。
泉谷透子である。
「さっきから手を上げてたんですけど」
「むっ。すまん、気づかなかった。お前がやるのか?」
「誰もやらないなら。今のうちに試しておきたいことがあります」
前に出ようとした透子だが、すぐに仗助と億泰が止めに入った。香織や由花子でさえ、厳しい表情で透子の肩を掴んでいた。
「待てって、透子!」
「必要なこと。今やっておかないと、いざって時にビビって仲間の足を引っ張ることになる」
「けど、罪人って言っても人間だぜ? 後でいやーなものが心に残るぞ、多分」
「お願い、やらせて。私にとって必要なこと。お願い」
眼鏡のレンズ越しに、強い意志の籠もった視線で仲間達の顔を順番に見ていく透子。やがて根負けした仗助達が道を譲ると、彼女は処刑台の前まで僅かな迷いも見せずに歩みだした。
騎士の一人が剣を差し出してくると、透子は「いらない」と手で遮る。
「『リヴァーズデザート』」
透子の喚び出したスタンド像は小さい。両手の十指のみを覆って装着される。
赤と青の管が螺旋を巻いた金属質の指装甲。その能力も微々たるものだ。
ガチガチと歯を打ち鳴らす死刑囚の頬を、透子がスタンドを纏った両掌で包む。
死刑囚の肩が跳ねた。
「……ほい」
そして、透子のダルい掛け声と同時に。
死刑囚の頭部が沸騰し、内部から弾け飛んで四方へ飛び散った。
「ふごッ!?」
一番の被害者は、他でもない透子だ。頭蓋骨の欠片が無数の散弾となって彼女を襲う。
「やっべ! おい透子!!」
シュトロハイムでさえも呆然と立ち尽くしている中、仗助が透子へ駆け寄った。
透子の顔面は、嫁入り前の娘がしてはいけない重傷を負っていたものの、クレイジー・ダイヤモンドによって即座に元通りとなる。
遅れて億泰やハジメ達も駆け付けたが……光輝を含めたクラスメイト達は、何が起きたかまだ理解が追いついていない。
むしろ状況を理解したクラスメイトから凄惨な光景にパニックを起こし、気絶したり恐怖のあまりゲロを撒き散らしていく。
一方、騎士団員達は恐怖や驚愕の表情こそあれ、取り乱すものはいない。シュトロハイムに至っては、死体の損壊状態を確認してさえいる。
「むう。内圧によって頭蓋骨の中身が爆発四散するとは! このような魔法は見たことも聞いたこともないッ! 何をしたのだ、イズミヤトーコッ!!」
傷の治った透子は、仗助に礼を述べると再び死刑囚の前まで戻った。
「私の能力、水分の常温相転移。熱湯を熱湯のまま氷へ。氷を氷点下のまま沸騰させる。生物に用いればこなることは分かってたけど、試したことはなかった」
つまり、透子は人体頭部の水分を瞬間的に沸騰させ、頭蓋骨を粉砕する内部圧力を発生させたのである。
シュトロハイムは、自分を見上げる透子の瞳に湛えられた、まるで底なしの沼地のような闇に肝を冷やす。
(こ、この少女ッ! このシュトロハイムを竦ませる、闇夜に羽ばたく鴉のような『漆黒の意思』ッ!! この少女にあるのは……何が何でも目的を果たすという、本能にも似た意思力だッ!!)
仲間達――クラスメイトではなく、スタンド使い達の元へ戻っていく透子に、シュトロハイムは恐怖すら覚えるのだった。
そして、もう一人。透子の行為を、シュトロハイムとともに一番近くで観ていた光輝もまた、恐怖に震えていた。
(あ、あり得ない……い、泉谷……あいつ、
光輝にとって、透子は龍太郎や雫とともに、
(泉谷……お、お前のような……お前のようなヤツは……ッ!!)
結局、この日の訓練は全員が自主練という形となった。
余談だがシュトロハイムも、光輝の精神を追い詰めるような訓練を課せたとして叱責され、部下に「もっとバレないようにせねばな」と真顔で漏らしていたという。
オリ主のスタンド披露が凄まじく血なまぐさいことに!
というか、オリ主のスタンドを見せる為だけの話でした。
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない