ミスター・サタンみたいになれるポテンシャルあったと思うんですけど。
愛子先生は、ヴァレンタイン宰相の依頼を受けて農地開拓に旅立つことを決めた。
国内だけでは把握しきれない情報を得るには各地を巡るのが一番だ。
だがヴァレンタイン宰相の思惑については、完全に信じていいのか判断付いていない。
「だと思ったので、直接話しに来た。よろしく、スタンド使い……でいいのか。ともかく諸君、私がファニー・ヴァレンタインだ」
「……すっげー巻毛」
透子のド直球に失礼な発言にも、ヴァレンタインは特に気にした風もなく「セットに専用の美容師を雇っている。無論自費で、だ」と返してくる。
トータスの権力者の大多数が傲慢で目下や格下の者から口答えされると烈火の如く怒り出す中、異質すぎて逆にメチャクチャ浮いている。
「あの〜、ヴァレンタイン閣下」
「何だね……南雲ハジメ君」
「僕が調べた限り、この世界で大っぴらにエヒト神や教会を敵視している人間はいません。閣下も敬虔な聖教徒だと聞いていました」
ハジメから、遠回しに自分が信用に足るかを伺われていると瞬時に理解したヴァレンタインは、腕組して少し考えてから話し始めた。
「例えば……そうだな。君達、土地の値段は一体誰が最初に決めていると思う? お金の価値を最初に決めている者がいるはずだ、それは誰だ?」
「え?」
思わぬ返しに、ハジメは仲間達……というより香織へ振り返る。しかし彼女も、仗助達も困った顔をしたり首を振ったりするばかりだ。
ヴァレンタインは続けた。
「法令や法律は? いったい誰が最初に決めている? 民主主義だからみんなで決めてるか? それとも自由競争か?」
しばしの沈黙を挟み、答えたのは社会科教師の愛子先生だった。
「それは、
意外な答えに、ヴァレンタインすら「ほう」と感服する。
愛子先生は続けた。
「この世のルールとは『右か左か』? テーブルに等間隔で並べられたナプキンを最初に誰が、どちら側に置かれた物を使うか。均衡している状態で一度動いたら全員が従わざるを得ない。そういうことですよね」
「聡明な女性は好きだ……興奮してきた、服を脱げ」
「ひゃい!?」
「冗談だ」
たちの悪いセクハラは置いておいて。
仗助と億泰、康一あたりは愛子先生の話がチンプンカンプン、由花子も理解はしたが納得はしていないようだ。
一方、ハジメは「そういう考えもあるのか」と感心し、香織は話半分でずっとハジメの横顔を見ていた。透子は黙って聞いているようで、目を開けたまま寝ている。
「そうだ。時代は最初に行動した者が創る。だが、この世界の行く末に人間の意志など介在しない。常に神と、それ盲信する連中によって狂わされてきた! 君達からしてハイリヒ……いやトータスの文明は酷く遅れているはずだ」
「……確かに、歴史の長さの割には千年ぐらい進歩が停滞してる感じですけど」
「千年だとッ!? そ、そこまでか……ッ! おのれエヒト神ッ!!」
せいぜい三〜四百年の遅れだと思っていたヴァレンタインは、ショックの余り素のリアクションを返していた。
ざっくり計算しても、西洋史において中世と呼ばれているのは5世紀から15世紀の頃。間を取ってトータスの文明が10世紀相当としたら、千年ぐらいの計算となる。
「さ、最悪1500年も文明が遅れているのか……シィィットッ!!」
「そ、そんなに気を落とさないでください、閣下! 地球でも文明が急速に発展したのは19世紀からですから! 200年もあれば追いつけますって!」
ヴァレンタインの精神的ダメージも置いておいて。
彼としてはエヒト神討伐に、愛子先生達の力を是非とも貸してほしいのだという。その為の地盤作りの一環として、農地開拓にかこつけた新たな同志の勧誘がしたいのだとか。
また、現在のトータスを生で見て現状を知ってもらいたいという思いもあった。
「センセはどォ〜思ってんすか?」
「協力してもいいと考えています。このまま王都にいるだけでは分からないこともたくさんありますから」
「ありがとう。心よりの感謝を」
いちいち気取った言い回しが嫌味にならないヴァレンタインだが、ハジメにはどうしても確認せねばならない留意事項があった。
「閣下は……この国に革命を起こすつもりなんですか?」
「その通りだ」
「魔人族との戦争中に?」
「私の考えでは、エヒトを討てば魔人と闘う理由も無くなる。彼奴らも聖教会と似たような統一宗教の元で人間に戦争を仕掛けてくるが……」
「魔人族の黒幕もエヒトか」
ポツリと透子の一言を、ヴァレンタインも「確証は無いがな」と否定しない。
だがこの考えが事実だとするなら、エヒトの打倒はあらゆる状況を好転させる最善の一手だと言える。
「革命には多くの血が流れる。君達に手を汚せとは言わない。だが最低限邪魔をせず、手を貸してもらいたい」
深く頭を垂れたヴァレンタインの心と行動に、一点の曇りない。全てが『正義』だと確信しての行動だった。
ハジメ達は少し相談し、ヴァレンタインへの協力を決めた。
その次に瞬間、部屋の扉を勢いよく開け放ち、シュトロハイムが現れた!
「そうと決まれば行動開始だァァァァ〜ッ!!」
「うるさいぞ、シュトロハイム。何時だと思ってる?」
「心配無用ッ! 我が優秀な部下ドノヴァンが、廊下に消音魔法を施した! 例え爆薬百樽が爆発しようと安眠確実ッ!!」
「だとしても深夜にお前のテンションはキツいぞ。彼らも引いてる」
革命の同志であるシュトロハイムとヴァレンタイン。二人並ぶと絵面が非常に濃ゆくなる。仗助でさえ、隣に立ったら霞むぐらいだ。
愛子先生は、そのままシュトロハイムの信頼する側近とともに旅立ち、その旨は翌日の訓練場にて公表されたのだった。
(チャンスッ! これは千載一遇のチャンスじゃあないのか!?)
檜山は胸中のドス黒い炎を燃え上がらせ、逆に冴え渡った頭を働かせる。
ハジメは今日、一人で図書館にいるのを確認した。
愛子先生がいなくなり、仗助と億泰と康一の3人だけがグラウンドを走っている。香織は珍しく雫と一緒で、由花子だけは分からないがハジメと二人きりということはあり得ない。
つまり、ハジメを襲ってボコボコにするのは、今日を置いて他になかった。
「おい」
「ああ」
小悪党仲間の近藤、斎藤、中野の三人に目配せすると、彼らもよく分かったもので、さり気なくバラバラに訓練場を抜け出した。
向かい先はモチロン図書館だ。
(南雲めェ……あんなヤツ、一人じゃ何も出来ねえクソオタの分際で!! 俺ェーの香織…をぜってぇ取り戻してやるッ!! へへっ、うへへへへへっ!!)
暴走した下衆な欲望に突き動かされた檜山は、最後の最期まで
次回、檜山死す!? おたのしみに。
ヴァレンタインのステータスプレート
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ファニー・ヴァレンタイン 推定40代 男 レベル:どジャアァァ〜〜ン
天職:政治家
筋力:全てが『正義』だ
体力:短期間でメタボから細マッチョに
耐性:罵って喜ばして欲しいかッ!
敏捷:最初にナプキンを取る
魔力:ここに神殿を建てよう
魔耐:虫さされを一瞬で消す
技能:言語理解・愛国心・いともたやすく行われるえげつない行為・ビール一気飲み・足音がしない・足でマンダリンを弾く・我が心と行動に一点の曇りなし……!・ラブトレイン
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実はZガンダムのシロッコにしようか迷っていたキャラ。なんでこいつを出したのか……そこんとこ、自分でも実はよく分かりません。けど王国側の味方がリリアーナ王女だけって頼り無さすぎますから。
オリ主である透子の活躍頻度はこのままで良いでしょうか。
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多すぎるからもっと控え目
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ちょうどいい
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少ない